スワームロボティックシステムにおける適応的機能創発過程の解析

平成 26 年度 修士論文概要
進化型ロボティックスワームにおける適応度景観と進化動特性解析
Analysis of Fitness Landscapes and Evolutionary Dynamics on Evolutionary Robotic Swarms
機械システム工学専攻 生産システム A 研究室
M136389 八木 優志
【背景と目的】
Swarm Robotics(SR) とは多数の自律ロボットによって構成されるマルチロボットシステムのう
ち,課題の達成にロボット間の協調が不可欠であるものを取り扱う分野である.SR では均質なロ
ボットが局所的な相互作用により現れる群れ行動を創発することを目的とし,この制御器の設計
方法の一つに Evolutionary Robotics(ER) が挙げられる.これまで,SR のタスクの難易度は進化
計算における適応度やタスクの成功数などをもとに行われてきた.しかし,難易度のおおよその
傾向はタスク設計者の予想の傾向を示すが具体的にどう進化計算に影響するかは分かっていない.
そこで,本研究では進化計算における進化の過程を視覚的に説明するために使われる適応度景観
を用いてタスクの難易度がどのように適応度景観の違いとして現れるかを解析した.
【実験設定】
今回適応度景観を解析するタスクとして環境中に配置されたすべての餌を巣へと持ち帰るタスク
である協調採餌問題を取り扱う.制限時間内にすべての餌を巣に持ち帰るとタスク成功となる.
実験は 1 つの餌のタスクにおいて,1, 2, 3 台のロボットで運搬できる餌をそれぞれ 1 から 20 台の
ロボットで解いた.また,3 台のロボットで運搬できる 2 つの餌のタスクを 5 から 20 台のロボッ
トで解いた.以上の実験から進化過程におけるタスクの成功数と Smith らの提案する neutrality
の指標 Ea を導出した.Ea が大きいほど neutrality の要素が大いことを示す.
【結果と考察】
実験の結果ではロボット台数が少ないほどタスクの成功数が下がり,また同様に,餌が 1 つのタ
スクに比べ餌が 2 つのタスクで成功数が下がることを確認した.進化過程の 100 世代ごとに Ea
を計算した結果を Fig.1 に示す.1 から 100 世代までの Ea は 2 つの実験で違いは見られず,0 付
近の適応度の領域で高い値となる.しかし,101 世代以降で 1 つの餌のタスクは最高適応度の上
位 10%程度の高い適応度の領域に親個体が集中し,Ea の値は高い適応度から,最高適応度まで
に単調減少し 0 となった.これに対し,2 つの餌のタスクにおいては,最高適応度の上位 60%程
度の広い領域に親個体が分布しており,Ea の値は高適応度になるにつれ,徐々に小さくなり最終
的にほぼ 0 となった.このように,実験を通して適応度景観上の高い適応度の領域において,難
易度が高いタスクであるほど neutrality が小さくなる傾向が確認された.
(a) Ea of one food resource task
(b) Ea of two food sources task
Fig. 1: Ea of one food resource task and two food resources task devided by each 100 generations