平成26年11月 東京都福祉保健局 障害者就労実態調査報告書 【概要版】 ■調査目的 障害者を雇用している都内中小企業を対象に、障害者雇用の状況や支援体制について調査・分析し、今後の就労支援機 関の支援体制の充実強化、定着支援の充実策の検討に資することを目的とする。 ■調査対象 都内の従業員50人以上300人未満の企業13,268社(平成25年6月 東京労働局発表)のうち、障害者を雇用している企業 から無作為に抽出した1,800社 ■調査方法 (1)アンケ-ト調査 上記1,800社に対する郵送アンケート (2)ヒアリング調査 アンケート回答企業の中から、障害者雇用に豊富な実績を有する企業、就労支援機関を活用している企業 等を抽出し、訪問によるヒアリング調査を実施 ■調査期間 平成26年9月~11月 ■アンケート回収率およびヒアリング実施件数 有効回収数 574サンプル 回収率31.8% ヒアリング実施件数 12件 【回答企業プロフィール】 業種 従業員 n=574 雇用障害者数 n=574 平均 1.94人 n=574 回答企業の従業員数は、200人未満の企業が 全体の4分の3を占め、そのうち100人未満の企 業が26.7%となっている。 業種については、「医療・福祉」が30.0%、次いで 「サービス業」が14.5%となっている。雇用している 障害者の数は、「1人」が42.7%、「2人」が26.3% で、全体の7割を占める。 【雇用されている障害者の状況】 障害の種別 雇用されている障害者の 障害種別は、「身体障 害」が全体の67.0%を占 める。次いで、「知的障 害」が13.0%、「精神障 害」が10.1%となっている。 【雇用されている障害者の状況】 雇用形態 雇用前の状況 就労支援機関への登録 雇用形態は、「正社員」が53.6%で過半数を超えるが、障 害種別でみると、身体障害では正社員が7割近くを占める のに対し、知的障害では、正社員は13.4%にとどまる。 雇用前の状況をみると、身体障害、精神障害では、「企業 等で就労していたが最も多い」のに対し、知的障害では「学 生だった」の割合が高い。 雇用されている障害者の就労支援機関への登録の有無に ついては、約7割は「登録なし」だが、障害種別でみると、知 的障害、精神障害では約半数が登録している。 【雇用のきっかけ・募集について】 雇用のきっかけは、「社会的責任・社会貢献の観点から」が最も多い。「その他」の回答も多くなっているが、「採用後、障害者 手帳を所持していることがわかった」「以前から雇用していた人が傷病により障害者手帳を取得した」等の回答が目立った。 募集方法としては、「ハローワークの障害者求人」が3割を超え、最も多い。「その他」では、「障害者を意識して採用はしていな い」「雇用している人が障害者になった」ケースが大半を占める。 雇用のきっかけ n=574 募集方法 n=574 【採用や職場定着のポイント】 障害者の採用時に重視することとしては、「就労意欲」「職業遂行能力・スキル」「健康管理」等が上位に挙げられた。一方、職 場定着に必要なことでは、「就労継続意欲」「周囲の社員の理解」「周囲の社員との人間関係」が上位に挙がっている。「障害 者の一般就労にかかる就労支援機関実態調査(平成25年度、東京都福祉保健局実施)」における就労支援機関の回答と 比較すると、「利用者の障害特性と作業内容のマッチング」「障害に応じた作業の切り出し・作業手順の整理」等で差が大きい。 障害者の採用時に重視すること 職場定着に必要なもの 【社内の支援体制等】 社内で担当者を決めて支援体制を整えているかどうかを聞いたところ、「いいえ」が6割を占めた。 障害者の雇用にあたり配慮していることとしては、「労働条件の調整や健康管理に対する配慮」「障害者雇用促進に関する 経営者の理解促進」「通勤や勤務中の移動に関する配慮」等が上位に挙げられている。 支援体制の有無 配慮事項 n=574 n=574 【就労支援機関等の活用状況】 就労支援機関の活用状況をみると、 「十分活用している」と「必要に応じ て活用している」を合わせた割合は、 「ハローワーク」が最も高く、36.8%と なっている。以下、「区市町村障害 者就労支援センター」「特別支援 学校」「就労移行支援事業所」が 同じ7.8%となっている。全体的に就 労支援機関の活用度は低い。 n=574 【就労支援機関の支援に対する意見・要望(抜粋)】 ・障害者の雇用定着については企業努力も必要だが、採用時のミスマッチの防止が重要と思う。応募先の企業の業容等に ついての理解促進など、障害者の方々個人にあわせたサポートを行ってもらえれば、全体的な雇用率の向上(雇用の定着) に結びつくと考える。 ・今後精神障害者を採用する可能性は高くなると思うが、他の障害と比べて、特に定着にあたり配慮すべき点があれば、アド バイスをお願いしたい。 【ヒアリング調査より】 ・区の障害者就労支援センターには、トライアル雇用のときから、本人に付き添って支援してもらった。社員の理解を深めるための勉 強会を開いてもらったり、体調を崩したときなどに訪問サポートしてもらったりして助かっている。いろいろ教わるうちに、社内にノウハウ が蓄積されていると感じる。(情報通信業) ・仕事の手順を見直す時や、コミュニケーションや業務態度、ビジネスマナーの面で課題を感じることがあると、企業・障害者従業 員・就労支援機関(市の障害者就労支援センター)の3者面談を行っている。本人が企業の担当者になかなか相談できない悩み やストレスがあった場合には就労支援機関が吸い上げ、企業にフィードバックしてくれるため非常にありがたい。(医療・福祉) ・最初、何もわからないときに、もっと早く必要な情報を入手でき、サポートしてくれる機関とつながる方法がなかったか、と思う。 (サービス業) ■考察 ・都内の中小企業における障害者雇用は身体障害者が中心であり、ハローワーク以外の就労支援機関の認知度・活用度 は低い。今後、中小企業が就労支援機関の継続的な支援を受けながら精神障害者等の雇用を進めていくためには、地域 の就労支援機関やその支援内容等の情報を企業にわかりやすく伝えることが必要である。 ・障害者雇用の経験が少なく、社内での支援体制構築にも困難を抱えている中小企業に対しては、実情に応じた業務の切 り出しやマッチング支援、安定的な勤務継続に向けた企業側のノウハウ蓄積へのサポートが不可欠であり、このようなニー ズに的確に対応できるよう、就労支援機関のスキルアップが求められる。 [本調査に関する問い合わせ先] 東京都福祉保健局障害者施策推進部 自立生活支援課就労支援係 電話 03 (5320) 4322
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