M&Aのスキルを高める(PDF 372KB)

巻頭言
岸本 義之(きしもと・よしゆき)
([email protected])
M&Aのスキルを高める
Strategy&(旧ブーズ・アンド・カンパニー)
東京オフィスのディレクター・オブ・ストラテ
ジー。20 年以 上にわたり、金融機 関を含む
岸本 義之
幅広いクライアントとともに、全社戦略、営
業マーケティング戦略、グローバル戦略、組
織改革などのプロジェクトを行ってきた。
海外企業が大型の M&A を繰り出して巨大
M&A を得意としている企業であっても、逆に
化してきている一 方 、日本 企 業は「 M&A が下
自信過剰から失敗を引き起こしてしまうことが
手」という評価が定着してしまっているようで
ある。本号の論考の三本目は、陥りがちな5つの
ある。海外からの「持ち込まれ案件」を高値で
「思い込み」と5 つの「過大評価」の罠について
つかまされたり、国内の同業との「対等の精神
解説している。
で徐々に経営統合」を行うことによって、むしろ
買収成立後の経営統合についても、その重
時間をロスしてしまったり、というようなイメー
要性が高まっている。時間をかけて徐々に統合
ジがついて回る。
というペースでは、競合にむしろ追い抜かれて
こうした問題を回避する方法は、まずは「自ら
しまうからである。早期にシナジーの成功事例
主体的にM&A を仕掛けるとしたら、どのような
を生み出し、全体最適のための難しい意思決定
長期ビジョンのもとに、どのような企業を M&A
を行うには、事前に統合計画をきちんと立てて
するか」ということを事前に考えておくことで
おいて、勢いのあるうちに壁を乗り越えること
ある。本号の論考の一本目は、欧米の大手企業
が有効である。本号の論考の 4 本目は、買収後
による、こうしたビジョンを解説している。隣接
の統合プロセスにおける成功の鍵を解説して
領域に規模を拡大するのではなく、自社が強い
いる。
ケイパビリティを持ち、それを活かせる領域に
日本企業の中にも、M&A 担当チームを設置
絞り込んで M&A を行い、それに合わない領域
して 、迅 速に検 討を行うためのスキ ルや 経 験
は むしろ売 却して いくというの が 、ス ー パ ー
値を蓄 積し始 めた 企 業 が ある。そうした 企 業
コンペティターの姿である。
は、投資銀行などのアドバイザーの言いなりに
こうした 長 期ビジョンが 事 前に設 定されて
なるのではなく、自らの意志で、戦略的な目的
い れば、M&A のスピードを速めることができ
のもとに M&A を行おうという姿勢を明確にし
る。ビジネスケースを定め、戦略的デューディリ
ている、また、財務・税務・法務だけでなく、戦略
ジェンスを短期に実行し、統合計画の早期作成
デューディリジェンスのためにも外部アドバイ
に着手できるようになる。本号の論考の二本目
ザーを活用するという企業も増えてきている。
は、スピード時代の M&A プロセスの要諦を論
どのようなシナジーを生み出せるのかの見極
じている。
「時間を買う」M&A であれば、そのプ
めが、どこまでの対価を払ってもよいかの判断
ロセスに時間をかけるわけにはいかないので
には不可欠なためである。外部アドバイザーを
ある。
うまく活用することも含めて、M&A のスキルを
また、M&Aにおいて起こりがちな落とし穴に
高めることは企業戦略の実行上、ますます重要
ついても、気を付けておくべきである。欧米で
になってきている。
Strategy&
S t r a t e g y & Fo r e s i g h t Vol . 2 2 015 W i n t e r
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