研究課題:光触媒技術等を活用した畜舎脱臭及び汚水処理試験 担当部署:鳥取中小畜試 環境・養鶏研究室 担当者名:庄野俊一・池岡進 協力分担:なし 予算区分:県単 研究期間:継2011~2013年度(3年間のうち2年目) 1.目的 畜舎から発生する悪臭の除去及び簡易汚水処理施設から排出される処理水中のCOD( 化 学 的 酸 素 要 求 量)、 色 度 を 低 減さ せ る た め 、 光触 媒 等を 活 用し た 脱臭 技 術及 び 汚水 処 理 技術を開発する。 2.内容 (1)紫外線ランプと太陽光を紫外線源とし、粒状光触媒を用いて活性汚泥処理後の汚水 に対する浄化試験を行った。光触媒への汚濁物質の吸着を含めた除去率は色度が69%、 CODが38%であったが、光触媒の分解のみによる純除去率は色度が22%、CODが19%と 低かった。 (2)黒ぼく土を利用した土壌ろ過法を検討したところ、土壌体積の1~5倍量の活性汚 泥処 理 水 を ろ 過 し た 場 合、 実 験 室 レ ベ ル で 除 去率 は 色度 が 44~86% 、CODが12~ 51% と高い効果が認められた。目詰まり対策は、表土を数cm剥ぎ取ることが有効であった。 1 m 3コ ン テ ナ を 利 用 し た 半 実 規 模 試 験 に お い て も 、 土 壌 体 積 の 1 倍 量 の 汚 水 を ろ 過した時、色度が78%除去された。 (3)酸化チタンを担持したネットを鶏舎内に張り、紫外線を当てることにより、鶏舎の 主な悪臭であるアンモニアが約60%除去出来た。 (4)豚舎臭気の低減を図るため、豚舎換気扇周囲にネットを2重に張り、水噴霧を行うこ と に よ り ア ン モ ニ ア を50%以 上 除 去 出 来 、濃 度 を1ppm以 下に 抑 える こ とが 可 能で あ っ た。そして、豚舎内の臭いセンサーによる臭気指数値20以上が18以下に低減出来た。 3.達成度 (1)光触媒による汚水浄化は効果が低く、資材量を増やせばコスト面が課題となったた め、黒ぼく土を利用した土壌ろ過法を検討した。実験室レベルで高い浄化能力が確認 できた。 (2)コンテナに土壌を入れてろ過する方法により、中規模程度でも高い浄化能力が確認 できた。土壌の交換労力の低減方法として、外壁の外れるコンテナや重機で移動でき るコンテナの利用やローダ等で土が搬出できるバンカーサイロタイプにすることが考 えられた。 (3)酸化チタンを活用した畜舎脱臭試験では、脱臭効果が予想以上に認められ、成果を 出せた。しかし、酸化チタンが1kg当たり1万円と非常に高く、畜産現場では適用が困 難であると考えられたため、畜舎周囲の簡易な施設(除塵ネット、水噴霧等)による 臭気低減効果を検討していく。 4.参考資料 (1)光触媒を利用した汚水処理 1)材料及び方法 試験区は図1のように、紫外線ランプ(15W) 2本を配置したプラスチック容器(35×50×30cm) 内に、粒状光触媒150gを入れ、活性汚泥処理し た汚水1Lを入れ、屋外で7時間放置し、色度 とCOD(化学的酸素要求量)を測定した。 対照区は、暗室に設置し、紫外線ランプなし 図1 とした。 紫外線ランプと太陽光を利 用した汚水処理実験装置 2)結果の概要 試 験 区 は 、 色 度 が 69% 、 CODが 38% 除 去 さ れ た ( 図 2 、 図 3 )。 し か し 、 対 照 区 も色度が47%、CODが19%除去され、光触媒への吸着と考えられた(図2、図3)。 したがって、光触媒の分解のみによる純粋な除去率は、試験区から対照区を差し 引いたものとなり、色度が22%、CODが19%で低いものとなった。 さらに浄化能力を高めるためには、光触媒の使用量を増やす必要があり、コスト が高くなることが課題となった。 60 60 40 40 20 20 0 0 試験区 図2 40 処理前 処理後 除去率 COD値 80 除去率(%) 色度(度) 80 30 20 10 0 対照区 光触媒による色度の除去率 50 40 30 20 10 0 試験区 図3 除去率(%) COD 色度 処理前 処理後 除去率 対照区 光触媒によるCODの除去率 (2)土壌ろ過による汚水処理 1)塩ビパイプを使った実験 ①材料及び方法 内 径 65mm塩 ビパ イ プ を 縦 ( 底 部 はネ ッ ト) に した も のに 、 黒ぼ く 土0.5Lを 充 填 し、当場豚舎排水を簡易曝気した汚水を黒ぼく土体積の1~5倍量を通過させた。 ②結果の概要 色度が44~86%、CODが12~51%が除去され高い効果が認められた(図4、図5)。 ただし、ろ過汚水量が増加するごとに、除去率は低下し、10倍量程度でろ過能力 が無くなると考えられたため、実規模での実施を想定した場合、土壌の交換労力を 図4 黒ぼく土ろ過による色度の除去率 図5 黒ぼく土ろ過によるCODの除去率 下げることが課題と考えられた。 2)1m 3コンテナを使った試験 ①材料及び方法 1 m 3 コ ン テ ナ の 底 に 暗 渠 パ イ プ 4 本を 配 置 し 、 黒 ぼく 土300Lを 充填し た。 これ に、当 場養豚汚 水を1 週間 簡易 曝気 した汚 水300Lを (黒ぼ く土の1 倍量) 入れ、ろ過した。 ②結果の概要 色度が78%除去された。 図6 1 m 3コ ン テ ナ を 使 っ た 黒ぼく土ろ過試験 (3)光触媒技術を利用した畜舎脱臭試験 1)材料及び方法 当場ウインドレス鶏舎内を、ポリエチレンフィルムで3.0m×2.5m(7.5m 2 )(高 さ2.5m)仕切り、試験区は光触媒担持クロス3枚とブラックライト(40w×4本)を 設置した(図7、図8)。 その中に鶏を入れるフェンス(2.5m 2 )を設置し、鶏GSR雌10羽を入れた。 図7 試験を実施した鶏舎の状況 図8光触媒担持クロスとブラックライト 設置状況 2)結果の概要 鶏舎の一部をビニールで覆い、酸化チタンを担持したネットに紫外線を当てた区 (試験区)と何もしていない区(対照区)を設置し、アンモニアの除去効果を調査 したところ、58.3%の除去率であった。そして、除去効果は約4ヶ月間持続された (図9)。 図9 アンモニア濃度・除去率の推移 (4)畜舎周囲の簡易な施設による畜舎臭気低減効果の検討 1)材料及び方法 豚 舎換気 扇の周囲 を除塵ネッ トを 2重に 張り、換気 扇から出る臭気と 埃を 抑えるため に 、水噴霧を行っ た。(図10) 2)結果の概要 除塵 ネット と水 噴霧 によ りアン モ ニア 濃度 は1ppm以下 に抑えられ た。 (図11) 豚舎の臭いセンサーによる臭気指 数値20以上が18以下に抑えられた。(図12) (図10 試験概要図) アンモニア濃度 ネットを2重にした 6 5 4 ppm 3 換気扇前(アンモニア濃度) ネット通過後(アンモニア濃度) 2 0 1 6 9 14 19 22 27 33 36 41 46 49 54 57 62 67 70 75 81 84 89 92 97 102 105 111 120 125 131 134 139 145 148 153 160 165 168 173 176 181 188 193 197 202 207 210 215 221 224 229 1 経過日数 (図11 ネットを2重にした アンモニア濃度の推移) 臭気指数 30.0 25.0 20.0 15.0 10.0 換気扇前(臭気指数値) ネット通過後(臭気指数値) 5.0 1 6 19 4 19 22 27 33 36 41 46 49 54 57 62 67 70 75 81 84 89 92 19 07 102 115 121 120 135 131 134 149 145 158 163 160 165 178 173 186 181 198 193 207 202 217 210 225 221 224 9 0.0 経過日数 (図12 臭気指数の推移)
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