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平成 26 年度「職員による政策研究」成果報告書 グループ No11
松本地域北部3か村の地域活性化
と情報発信について
~交流人口増加のための取組み~
研究生 ※グループリーダー
松本地方事務所 地域政策課※上条 洋
同
環境課
石坂拓也
同
税務課
山本英俊
同
農政課
垂沢秀俊
同
農地整備課 上條正登、名取静香
同
林務課
小田切貴子
同
商工観光課 原 良輔
同
建築課
武居和成
- 1 -
松本保健福祉事務所 田中 潤
松本農業改良普及センター
小池英彦
麻績村教育委員会
宮下信俊
生坂村総務課
中山茂也
生坂村むらづくり推進室
花房 篤
筑北村産業課
青島 彰
【目
次】
1 はじめに
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1
2 活動経過
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2
3 研究報告
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 4
1 ありたい姿
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 4
2 現状
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 4
3 北部3村の交流人口増加のために今取組むべきこと
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 7
4 北部3村の交流人口増加に向けた具体的施策
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・11
4 おわりに
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・20
- 2 -
1 はじめに
松本地域は、長野県の中央部に位置し、日本の屋根と呼ばれる北アルプスと八ヶ岳中
信高原に囲まれた盆地を中心に、3市5村からなっています。
その中で麻績村、生坂村、筑北村の3か村はその北部に位置し、管内の市村の中でも
高齢化、少子化の進行が著しい典型的な中山間地域です。
近年は、この高齢化・少子化の進展により、人口減少が進み、集落機能の維持や地域
社会の形成が困難になりつつあります。
その一方で、北部3か村には他の地域にはない様々な資源(個性的で魅力的な自然環
境、歴史文化遺産、伝統文化、地域人材)が点在しており、これらの地域資源を有機的
に結び付け有効活用することにより、交流人口が増加し地域活性化が図られ、しいては
移住者等の増加により、持続可能な活力ある地域の実現が可能であると思われます。
これまで3か村では、様々な地域活性化に取組んできましたが、我々は、3か村がそ
れぞれの地域の特性や強みをいかしつつ、連携・協力し地域活性化に取組むことで、こ
れまでにない効果的な取組みができるのではないかという視点で今回この研究に取組み
ました。
また、3か村は、規模的に情報発信力に限界があり、知名度において課題があると考
えられることから、3か村の地域活性化策と合わせて、効果的な情報発信の方策を検討
し、提案していくことで、3か村が連携して取組む地域活性化の方策が、より効果的に
実践されるものと考え研究を行いました。
- 1 -
2 活動経過
活動年月日
場所
活動
取組内容
参加人数
・自己紹介
26.4.28
県庁講堂
キックオフミーティング
・リーダー選出
第1回グループワーク
・課題の抽出
14 人
・各自の検討事項等
26.5.22
26.6.6
松本合同
庁舎
松本合同
庁舎
・情報発信ソースと情報
第2回グループワーク
26.7.3
第3回グループワーク
26.7.14
意見交換(第1回)
・北部3か村の主要スポ
議室
・今後の検討内容
県庁企業
育委員会
室
松本合同
庁舎
第5回グループワーク
第6回グループワーク
テーマアドバイザーとの
意見交換(第2回)
じゃらんリサーチエリア
プロデューサー(長野県担
当)との意見交換
26.8.7
ットを視察
・村別の検討班編成
庁舎
13 人
交換
生 坂 村 会 第4回グループワーク
局分室、教
26.724
・進捗状況報告
テーマアドバイザーとの ・検討内容について意見
村(現地)
、 現地調査(北部3か村)
松本合同
14 人
の意見発表、検討
北部3か
26.6.16
発信方法に関する各自
松本合同
・班別検討結果の報告
・今後の進め方検討
13 人
14 人
・村別の地域活性化素材
の検討
・内容の絞込みの検討
14 人
・3村の観光振興に関す
る意見交換
・行政による観光振興施
4人
策に関する事例把握
・3村の地域活性化素材
庁舎
とその磨き方
第7回グループワーク
・政策提案に向けての内
15 人
容検証、まとめ方の検
討
26.8.20
松本合同
庁舎
第8回グループワーク
テーマアドバイザーとの
意見交換(第3回)
26.9.3
松本合同
庁舎
・特徴的な取組みに関す
る検討
・実施組織体制の検討
13 人
・発表資料の検討
・アンケートの結果分析
第9回グループワーク
・具体的施策の検討
・発表に向けた資料作成
- 2 -
12 人
活動年月日
場所
活動
取組内容
参加人数
・情報発信のためのロゴ
26.9.11
松本合同
庁舎
マーク、キャッチフレ
第 10 回グループワーク
ーズ(案)の決定
14 人
・発表資料の検討
・発表時の役割分担決定
研究報告会リハーサル(地 ・本番発表に向けたリハ
26.9.17
松 本 合 同 方事務所長への報告、意見
庁舎
交換)
・発表内容について最終
第 11 回グループワーク
26.9.22
県庁講堂
15 人
調整
・知事・北川チーフアド
研究成果報告会
バイザー等へ報告
松本市波
26.10.27
ーサル
15 人
・研究成果について3か
田支所(松 北部3か村村長への報告
本 広 域 連 及び意見交換会
村の村長へ報告
・報告内容等について3
合会議室)
9人
か村の村長と意見交換
※上記以外にも、検討班(麻績班、生坂班、筑北班、現状分析・情報発信班)を編成し、
班別に各種検討、調査等を行った。
(現地調査の様子(麻績村:麻績神明宮)
)
(3か村村長への報告会の様子)
- 3 -
3 研究報告
「松本地域北部3か村の地域活性化と情報発信について」
1 ありたい姿
我々研究グループは、松本地域の北部3か村(麻績村、生坂村、筑北村)を、元気で活
力ある魅力あふれる地域にしたいと考え、まず3村がそういった地域になるとは具体的に
どのようになればよいのか、そのありたい姿について考えた。
それが、
「WOW!」である。
「WOW!」=若者からお年寄りまでワクワクという意味で、
・「W」
・・・若者
・「O」
・・・お年寄り
・
「W」
・・・ワクワク
※「ワクワク」とはそこに住んでいる人も訪れる人もみんなが楽しく笑顔になる。
具体的には村民の所得が増える、経済が活性化する、健康で長生きする等いろいろ考え
られるが、我々は次の点に重点を置くこととした。
☆ 3村を訪れる人(交流人口)が増える「5年間で3倍へ」※
☆
訪れた人と村の住人が多くの交流を持ち、村に活気が溢れ、住人は村に誇
りを持てるようになる。
☆ 村を訪れるリピーター、コアなファン(特に若者)が増加し、移住
者が増加する
村を訪れる人や移住者(特に若者)が増加することにより村に活気が戻り、
訪れる人、住んでいる人ともに楽しく、輝ける3村となる。
※交流人口の把握方法については、初年度の数値を基準として5年間で3倍とする。
2 現状
(1)松本地域北部3か村ってどんなところ
・位置
松本地域の北部に位置し、北は長野市、千曲市、南は松本市、安曇野市と接してお
り、典型的な中山間地域である。
村内は山林、原野が多く、河岸段丘や傾斜地も多いことから、集落も点在している。
・交通
麻績村には長野道の麻績ICがあり、また、JR篠ノ井線が南北に縦断しており、
3村には4つの駅があることから、中山間地としては比較的交通の便は良い方である。
地域内交通としては村営バスが運行されており、住民の生活に配慮した時刻等で運
営されている。
- 4 -
・産業観光
3村ともに農業・土木建築・観光以外に主だった産業はなく、村外(周辺市部)へ
通勤している村民が多い。
農業については、米やりんご、ぶどう(巨峰)、
薬草等が主な栽培品目であるが、傾斜地等が多
く、まとまった生産量を確保できる条件のよい
農地が少なく、主要産業とはなっていない。
しかしながら、生坂村においては、現在新規
就農者研修制度によるぶどう栽培を進めており、
観光農園として定着しつつある。
ぶどう狩り(生坂村)
(2)進む3村の人口減・高齢化
北部3か村の人口推移
0
2,000
平成 12 年
~29 歳
4,000
6,000
30 代 40 代 50 代
8,000
60 代
10,000
12,000人
70 歳~
平成 17 年
平成 22 年
平成 26 年
※出展:H12~H22:国勢調査、H26:毎月人口統計調査(共に年齢不詳人口は除く)
(3)移住者の状況
近年の移住者数の推移
H23
H24
H25
計
麻績村
20 人
6人
17 人
43 人
生坂村
1人
2人
10 人
13 人
筑北村
0人
6人
3人
9人
計
21 人
14 人
30 人
65 人
※出展:市町村アンケート調査による集計値(前
観光部移住・交流課調べ)
北部3か村では、それぞれ独自に移住・定住者向け住宅の整備や、子育て支援策の充
実を図り、人口の維持・増加に取組んでいるものの、近年の人口変化の状況を見ると、
急速な人口減、高齢化が進んでおり、地域活性化や集落機能の維持のためには更なる人
口減(特に若者)対策が急務となっている。
- 5 -
(4)減少する観光客
観光客数の推移
1600
1400
1200
1000
800
600
400
200
0
人
聖高原
山清路
修那羅山
H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25
※出展:観光地利用実態調査
3村の観光者数の推移を見ると、年々減少傾向にあ
るものの、ここ3年間は下げ止まりが続いている状況
である。
3村にはそれぞれ村営宿泊(一部日帰り)施設
(シェーンガルテンおみ(麻績村)
、西条温泉とくら、
冠着荘(筑北村)やまなみ荘(生坂村))があり、全体
で年間1万5千人(延べ)ほどが宿泊している。
宿泊客については近年安定した客数を維持しており、
半数が県外からの宿泊者である。
(5)チーム北による取組み
地方事務所では、松本地域北部3か村について、
聖湖でのフィッシング(麻績村)
将来を見据えた地域課題解決を、村職員や地域住民
等と一体となって、広域的・専門的見地から県が支
援する取組「北部3か村活性化支援チーム=チーム
北」を平成 25 年度から組織し、3村の取組みを支援
している。
◎具体的な支援
・野生鳥獣サポート隊支援事業
・地域発元気づくり支援金
(計画段階からきめこまかな助言サポート)
・家屋評価研修会の実施
集落再熱事業における取組み(筑北村)
・集落“再熱”実施モデル地区支援事業による
支援
- 6 -
課
題
・・3村それぞれ「なんとか現状を打破し、地域活性化・人口増を実現したい。」という思いで
様々な取組みを行っているが、財政基盤も弱く思い切った施策展開が行えない・・・
・・まずは1人でも多くの人に3村に訪れてもらい、良さを知ってもらいたいが知名度がない。
・特に、情報発信は1村での取組みに限界が・・・
県(チーム北)による包括的支援
(3村の連携支援、効果的・効率的な情報発信、環境整備に対する助成)
3 北部3村の交流人口増加のために今取組むべきこと
(1) 「奥安曇野ブランド戦略」の展開
北部3村は全国的に有名な観光地「安曇野」の北部に隣接しており、安曇野の奥座敷、
北の玄関口となる地域である。
この安曇野に訪れる観光客の多くは車を利用して移動していることから、魅力的な観光
コンテンツと効果的な情報発信を行うことにより安曇野を訪れる観光客を北部3村まで
招き入れることは十分可能である。
そこで、北部3村を「奥安曇野」地域として発信する「奥安曇野ブランド戦略」を展開
する。
「奥安曇野ブランド戦略」の構築
松本地域
- 7 -
また、「奥安曇野」をブランドとして発信していくにあたり、のキャッチコピー、ロゴ
マークを作成する。
奥安曇野ロゴマーク(案)
奥安曇野のキャッチコピー(案)
「
一歩その先へ、近くて深い奥安曇野
」
この「奥安曇野」ブランドの確立は、誘客、観光
振興面で本家の安曇野にも相乗効果をもたらすこと
も期待され、松本地域全体の活性化にも寄与すると
思われる。
また、安曇野地域は仕事や買い物など3村の住民
とのつながりも深いことから、3村の住民からも比
較的受け入れやすいと思われる。
(2) 県内の周辺市町村(松本市、安曇野市、長野市)からの誘客強化
我々は、観光面での誘客数増加のための政策を検討するにあたり、じゃらんリサーチセ
ンターエリアプロデューサー長野県担当の服部卓郎氏と意見交換を行わせていただいた。
その中で服部氏から「地元の人たちが行かないような観光地に、わざわざ県外の観光客
が多額の交通費と時間をかけて訪れてはくれない。県外からも多くの人が訪れてもらえる
ような観光地には、必ず地元の人たちも多く足を運んでいる。」とのアドバイスをいただ
いた。
そのような視点で検証した場合、北部3か村
は周辺を松本市、安曇野市、長野市、千曲市と
いった人口の多い市に囲まれているにもかかわ
らず、現状では周辺市の住民はあまり3か村を
訪れていない。
そのため、まず、近隣市町村の人々がより多
く訪れてもらえるような観光地を目指す必要が
ある。
また、交流人口の増加にはリピーター客の確
保が不可欠であるが、じゃらんリピーター追跡
調査(リクルートじゃらんリサーチセンター調
べ)によると、観光客のリピート率は「旅行者
の居住地からの距離」が近いほど高くなってお
り、リピーター確保の観点からも近隣市町村か
らの旅行者増(訪問者増)が重要なポイントと
考えられる。
長野から
車
で 40 分
電車で 40 分
松本から
車
で 20 分
電車で 30 分
3村の周辺には、松本市、安曇野市、長野市、千曲市といった人口の多い市が多く存在
することから、まずはこれら周辺市部の居住者をターゲットとして情報発信、誘客を図る。
- 8 -
全国・海外
県内住民
近隣住民
から
↑
口コミ、ネット情報
↑
メディア、ネット情報
(3) 「自然の豊かさ」、「歴史・文化」を活かした誘客
2010 年に(財)経済広報センターが実施した「観光に関する意識・実態調査」
(以下「観
光実態調査」という。
)によると、国内観光旅行で観光地を選ぶ決め手として、
「自然の豊
かさ」、「歴史・文化」が男女ともに上位となっている。
これらの対象となる魅力的な観光資源は北部か3村に数多く存在している(埋もれてい
る)が、現状ではこれらを十分活かしきれていない。
したがって、これらの対象を「上手く磨き」、
「効果的に発信」することにより、観光客
の増加や地域活性化が可能になると思われる。
【国内観光地を選ぶ決め手】
(全体 2007 年実施調査比較)
(5つまで複数回答)
※出展:観光に関する意識・実態調査 2010 年
- 9 -
(財)経済広報センター
(4) 体験型観光の推進
観光実態調査によると、ニューツーリズム(テーマ性が強く、体験的要素を取り入れた
観光)について、
「産業観光」
(産業文化財の見学やものづくり体験等を行う観光)
、
「エコ
ツーリズム」(地域の自然環境や歴史文化を体験し学ぶ観光)に半数以上が関心を示して
おり、観光客は従来の名所・史跡見物的な観光以外に、「体験型」の観光を求めている。
そこで3村の持っている可能性を最大限活用し、訪れる人が「ワクワク」する「奥安曇
野体験型観光」を展開していく。
また、長野県は他県に比べると未だ従来型の名所・史跡見物的な観光に依存している地
域が多く(南信州観光公社のような成功事例はあるが)、更なる観光客増加のためには、
全県を挙げて「体験型観光」を充実させていく必要がある。
そこで、「奥安曇野」がそのモデル地区となるよう関係者が一体となって取組みを推進
していく。
ただし、
「体験型観光」は既に多くの地域で取り入れられていることから、
「奥安曇野体
験型観光」として売り出し、継続的かつ安定的な集客を確保するには、地域特性や3村の
強みを最大限活かした特徴的な取組みを展開し、他地域との差別化を図ることが不可欠で
ある。
また、「奥安曇野体験型観光」については、地域づくり団体や地域住民がその運営や支
援に積極的に関与することにより、
「新たな生きがいづくり」や「収入増」
、
「集落活性化」
に寄与し、そこに住んでいる村民も「ワクワク」できる取組みとする。
【ニューツーリズムへの関心】
(全体・男女別)
(複数回答)
*1「産業観光」
歴史的・文化的価値のある産業文化財(工場遺構などの産業遺産)や工場工房等を見学したり、ものづくり
体験を行ったりする観光
*2「エコツーリズム」
地域の自然環境や歴史文化を体験し、学ぶことを目的に行う観光
- 10 -
*3「ヘルスツーリズム」
温泉療法や森林浴など医学的な根拠に基づく健康回復や維持、増進につながる観光
*4「グリーンツーリズム」
農林漁業体験や農林魚家民泊などを通じ、その地域の自然・文化に触れ、地元の人々との交流を楽しむ観光
*5「エンタメ観光」
映画・ドラマ・アニメの舞台となった土地を訪れるなど、エンターテイメント・コンテンツと連携した観光
※出展:観光に関する意識・実態調査
2010 年
(財)経済広報センター
(5) 効果的な情報発信
どんなに魅力的で集客力のある観光コンテンツを整備しても、それを効果的に発信し、
知ってもらわなければ人々は訪れてくれない。
一方、情報発信は多額の費用をかければそれなりの効果は得られるが、「体験型観光」
においては、実際に1人でも多くの人がメニュー体験し、その魅力や楽しさをより多くの
知人等に発信=「口コミ」していただくのが一番効果的であることから、まず、初期段階
においては、一人でも多くの人がお試し的にでも実際に「体験」していただき、その感想
や体験内容を少ない費用で効果的に情報発信するしくみを構築する。
その後はインターネットでの口コミ(SNS、Facebook 等)
、マスメディアに取り上げ
られる等によりじわじわブームを浸透させ、一過性の集客でなく、持続的な集客につなげ
ていく。
また、来年3月の北陸新幹線の開通、4月の善光寺御開帳、平成 28 年の諏訪御柱祭と
県外への情報発信にむけて好機であることから、この機会を捉えて効果的な情報発信を行
っていく。
4 北部3村の交流人口増加に向けた具体的施策
(1) 「奥安曇野体験型観光構想」の構築
3村で提供可能な体験型観光を
「奥安曇野体験型観光」として包括的に売り出し、若者、
ファミリー層をターゲットとした特徴的な体験型メニューを提供する。
なお、「奥安曇野体験型観光」の特徴は以下のとおりとする。
○「ワンストップサービス」を基本とし、Webや電話1本で全ての体験メニューの予
約から用具等の手配を実施
○まとまった地域内で多種多様な体験メニューを提供できるメリットを活かし、要望に
応じた体験メニュープランをワンストップでコーディネート
○地域住民と行政が協働で実施することで極力リーズナブルな価格設定による体験メニ
ューを提供
○パラグライダー、バンジージャンプ、イベント型キャンプ、スノートレッキング、伝
統工芸等、1年を通じて貴重な体験メニューを同じ地域で体験できる
ハードルが高くなりがちな体験型観光を「近」「安」「楽」で、しか
も貴重な体験メニューも提供
- 11 -
「奥安曇野体験型観光構想」の特徴
(2) 具体的体験メニュー
①アウトドアスポーツ
生坂村には、山、川、空を利用して多くの
アウトドアスポーツを体験できる環境が整
っていることから、これらを有効活用し、
初心者を中心としたリーズナブルな価格で
気軽にアウトドア体験が楽しめる環境を整
備する。
また、冬期間は、聖高原スキー場やその周
カヌー体験(イメージ)
辺を活用したスノーラフティング、スノーシ
ュー体験等を提供する。
また、アウトドアスポーツは、一度その
楽しさを味わうと、
「また体験したい」と思
うリピーターの増加にもつながることから、
交流人口の安定的な確保につながる。
スノーラフティング(イメージ)
- 12 -
②キャンプ
筑北村には2箇所の村営キャンプ場があり、
特に「とくら沢ふれあいキャンプ場」につい
ては、設備や遊具も充実しており、近くに温
泉施設やコンビニ等もあることから、これら
を活用し、さらに地域住民の方々の協力を得
て実施する。
また、キャンプは、ターゲットを特定した
女子だけキャンプ(イメージ)
り、キャンプをしながらイベントを楽しむこ
とのできるイベント参加型のキャンプを企画
し、通常のキャンプによる客層に加え、普段
あまりキャンプを行わない客層を取り込む。
さらに、キャンプをしながら、昼間は生坂
村でアウトドアを楽しむなど、アウトドアや
伝統工芸体験等と組み合わせることにより、
より魅力的なプランを提供する。
こうした取組みにより「奥安曇野ファン」
を開拓していく。
天体観測体験(イメージ)
③歴史・文化・農業体験
伝統工芸(草木染め、機織り、紙漉き)体
験、そば打ち体験、農業体験等を様々な地域
づくり団体等の協力を得ながら提供していく。
これらの一部については「集落再熱事業」
(3村は、市野川地区(麻績村)
、大日向地区
(生坂村)
、坂井地区(筑北村)全ての村で実
施)において、計画されているものあり、こ
れらの取組みと連携して実施する。
そば打ち体験(イメージ)
④その他
北部3か村では、既に地域活性化や交流人
口増に向け実施している取組み(アイスキャ
ンドルまつり(麻績村)
、農業体験ツアー
(生坂村)
、ほっとステイ(筑北村)も多くあ
ることから、これらの取組みを拡充したり、
新たな取組みと連携したりすることで、相乗
効果や「奥安曇野体験型観光」としてのブラ
ンド化が期待できる。
アイスキャンドルまつり(麻績村)
- 13 -
体験可能メニュー一覧表
麻績村
生坂村
・聖湖フィッシング
・パラグライダー
筑北村
・女子だけキャンプ
・伝統工芸体験(草木染め、 ・トレッキング
・手ぶらキャンプ(基本的な用
機織り、紙漉き)
・バンジージャンプ
具一式をレンタル)
・そば打ち体験
・カヌー、ラフティング
・天体観測キャンプ
・りんご狩り
・サイクリング
・ファミリーキャンプ塾
・スノーラフティング
・マレットゴルフ
・キャンプ記念樹の植樹
・スノーシュー
(アウトドアフェスティバル)
・謎解きキャンプ
・スキー
・ぶどう狩り
・薬膳カフェ
・アイスキャンドル祭り
・農家民泊
・農村体験(ほっとステイ)
(3)ワンストップサービス
上記の様々な体験メニューを組み合わせて、プランニングすることにより、観光客のニ
ーズに応じた様々なプランをリーズナブルな価格で提供する、これを「奥安曇野体験型観
光」として発信していく。
また、体験観光は事前予約や準備が面倒といっ
たイメージがあることから、「体験型観光案内人」
を配置し、あらかじめ旅行客の要望や日程を伺い、
上記メニューから要望に添った体験プランの提案、
予約を無料で行うシステムを構築し体験型観光の
ハードルを限界まで低くする。
(4) 「奥安曇野体験型観光」の実施体制
「奥安曇野体験型観光」は民間団体、地域住民、行政が相互に連携、協力して取組まな
ければならない。
そこで「奥安曇野観光連盟」
(仮称)を立ち上げ、この観光連盟を中心として「奥安曇野
体験型観光」を推進していくものとする。
なお、奥安曇野観光連盟の構成団体及び役割は下記のとおりの内容を想定。
構成団体
麻績村
具体例
役割
観光・地域活性化部門
・観光連盟の運営、総括
・ハード面の整備や地域住民等への呼びか
生坂村
け
筑北村
地域住民等
・地域住民や団体等の連携支援
地域おこし協力隊
・運営スタッフとして民間団体とともに運営に
集落支援員
あたる。
村民インストラクター
・個々の特技や趣味を活かして活動
- 14 -
地域づくり
団体
麻績村サポーターOMIMO
・体験型観光の企画、運営、実施を行う
Goat(アウトドアレジャー団体)
・地域住民や行政と連携しながら実際の企
筑北ファン倶楽部
画、運営を担う
いくさか大好き隊
坂井ちょっとやる会
大峠を世に出す会
かたくりを愛する会
企業、NPO
アウトドア関連企業
・用具の提供
・スポンサー協力
地方事務所、観光部
・総合的支援、アドバイス、コーディネート
県
・補助金(元気づくり支援金、国庫補助金等)
・3村の連絡調整
奥安曇野観光連盟(仮称)の設立
<役割>
○奥安曇野地域の体験型観光の総合コーディネート
○奥安曇野ブランドの効果的なPR・広報
○3か村の観光振興業務
<構成>
支援
県
運営主体
北部3村
(観光業務を集約)
関係団体
地域住民等
支援
企業
NPO
(5)「奥安曇野体験型観光」を知ってもらうための効果的な情報発信(特に近隣住民)
① 小中学校における体験学習の場として積極的に活用
現在、県内の小中学校においても様々な体
験学習が行われているが、より身近な体験学
習の場として「奥安曇野の体験メニュー」を
活用してもらい、奥安曇野体験メニューの魅
力を体感してもらう。
⇒体験メニューに興味を持った子どもたちは、
家族とともにリピーターとなる。
地域やふるさとに愛着が湧き、郷土愛の醸
- 15 -
スノーシュー体験
成につながる。
② 9歳、20 歳、60 歳の年齢を対象に、1年間各種体験を無料とする
「奥安曇野体験型観光」は、まず1度体験してもらい楽しさを実感してもらうことが
重要であることから、9歳(ファミリー)
、20 歳(若者)、60 歳(シニア)の特定年齢
者を1年間無料にし、
「奥安曇野体験型観光」のファンを開拓する。
⇒特定の年齢者を一定期間無料としても、その家族や同伴者は有料で体験する可能性が
高く、また一度「ファン」となった旅行者は、無料期間が終了しても引き続き訪れてく
れることから、そのPR効果は大きい。
「一歩その先へ、近くて深い奥安曇野」
③ 「奥安曇野大好き隊」の結成
松本地区勤務の県職員、北部3か村の職員
を中心として、「奥安曇野大好き隊」を結成
奥安曇野大好き隊
松本地方事務所○○課
○
し、積極的なPRを実施する。
・名刺で「奥安曇野」をPR
(名刺は割引券になる)
・職員自ら奥安曇野を訪れメニューを体験
・各種訪問、会議においてパンフレット等を
積極的に配布
○
○
○
〒390-0852 松本市大字島立 1020
電話 ○○○○○ FAX ○○○○○
E-mail
奥安曇野観光連盟 HP
この名刺ご提示で奥安曇野加盟飲食店や
体験イベント等が10%OFF!!
奥安曇野大好き隊名刺(案)
④ コミュ二ティFMの活用
松本地域には、FMまつもとと安曇野FMという2つのコミュ二ティFMがあり、こ
の2つのコミュ二ティFMを活用することで、「奥安曇野」近隣の2市の住民に対して
安価で効果的なPRを行うことが可能と考える。
例えば定期的に「奥安曇野体験型観光」の体験レポートを放送し、その魅力や手軽さ
を発信することにより、近隣市からの誘客に効果が期待できる。
なお、コミュ二ティFMを活用した情報発信については、既に松本地方事務所におい
て、地域の魅力発信番組の放送(平成 25 年度:麻績村、生坂村、筑北村、平成 26 年度:
山形村、朝日村)等を実施しており、今後、新たな情報発信のツールとしての様々な場
面での活用が期待される。
⑤ ホームページ、SNS、facebook、twitter による情報発信
「観光実態調査」によると、国内旅行に関する情報入手源としては「インターネット」
を利用している人は 84%にものぼり、今や旅行に関する情報発信としてインターネット
は欠かせないものとなっている。
そこで、全国的にもネームバリューのある「安曇野」を活用した「奥安曇野体験型観
光」のホームページを作成し、情報発信を行っていく。
このホームページでは、体験・宿泊の予約から、最新のイベント・見どころ情報を掲
載するとともに、安曇野や松本、長野地域の観光情報とも相互リンクさせ、周辺地域の
観光地と連携した広域観光を推進する。
また、ホームページと連携して facebook、twitter による情報発信を実施し、インタ
ーネットを活用した多面的な情報発信を行っていく。
なお、ホームページ等の情報は、常に最新の情報を正確に提供することが非常に重要
であることから、維持・管理をこまめに行うとともに、閲覧者向けに特典を用意したり、
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定期的にリニューアルを図ったりするなど、常に顧客を飽きさせない積極的なしくみづ
くりが求められる。
【国内旅行に関する情報入手源】(全体・男女別)
(3 つまで複数回答)
※出展:観光に関する意識・実態調査 2010 年 (財)経済広報センター
⑥ 奥安曇野サポーター倶楽部
奥安曇野地区を応援してくれる会員を全国に募集し、熱心な奥安曇野ファンを開拓する。
なお、想定される会員サービスの内容(案)は下記のとおりであるが、同様のしくみは
各地で行われているため、特典内容やサービスの検討にあたっては、特色やお得感があ
り、かつ奥安曇野により愛着を持ってもらえるような内容にする必要がある。
○特別会員
会費 10,000 円/年
特典:奥安曇野宿泊施設1泊無料宿泊券
:記念植樹(村木:コブシ(麻績)、かしわ(生坂)、赤松(筑北)の
いずれか1本を植樹し、以後記念木として成長を見守っていただく。)
:奥安曇野特産品の宅配(年1回)
:体験メニューの割引
:会報誌の発行(年4回)
○一般会員
会費 3,000 円/年
特典:無料宿泊券以外は特別会員と同様
○法人会員(企業等)
会費、特典等は個人会員等に準じる
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【情報発信のイメージ】
ファン
倶楽部
の
設立
学校と
の連携
観光
連盟
体験学習事業
に活用
無料
体験
9、20、60 歳を対象に
各種体験を無料に
「奥安曇野大好き隊」!
結成
既存の
情報伝
達手段
ホームページ
地元コミュ二
ティFM
地方新聞の
積極的活用
(6) 「奥安曇野ブランド戦略」における県の具体的役割(提案)
奥安曇野ブランド戦略の推進にあたっては、奥安曇野観光連盟を中心とした3村がその
中心を担うこととするが、3村の調整役として県が松本地方事務所「チーム北」を中心と
した支援チームにより支援を行う。
また、各部局による支援策としては次の内容が考えられる。
●観光部
・体験型観光コーディネーター養成講座の開催
体験型観光を地域ぐるみで構築していくには、地域の事情に精通しかつ関係者、
関係機関との調整や企画・立案を担う中心的役割を担う人材(コーディネーター)
が不可欠であるため、そのための養成講座を開催する。
概要:年4回の講座(基本的知識、先進地事例講座、安全管理、企画演習等)
先進地視察
予算:200,000 千円
(講師報償費・旅費 150,000 千円、会場費・事務費 50,000 円)
・奥安曇野観光連盟への人的支援
奥安曇野観光連盟の立上げの際の支援として、2年間1名職員を研修派遣する。
●教育委員会
・県内市町村での体験型学習の推進
県外で行われがちな体験学習を、近隣市町村(県内)で積極的に実施する
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ことで、県内市町村の地域活性化につながるとともに、児童・生徒が地域の伝統、
文化、自然に親しむ機会を増やし、郷土を愛する心を育てることにつながる。⇒将
来のUターン者増加へも寄与する
(7) 費用((6)で計上した経費を除く)
以下に「奥安曇野体験型観光」の実施(情報発信を含む)に要する経費を算定したが、
以下の経費は基本的に各村(情報発信等の共通経費は3村で折半)が負担することとし、
支出する際には国の補助金や元気づくり支援金を活用するなど、できる限りその軽減に努
める。
① 初期投資費用
区分
Web サイト開設
体験プログラム資材費
金額(円)
説明
380,000 Web サイト開設費、パソコン
2,590,000 アウトドアスポーツ用品等
体験コース整備費
300,000 モニタリングツアー開催経費
スイーツ開発費
600,000 レシピコンテスト開催経費等
計
3,870,000
② 年間運営経費
区分
金額(円)
説明
広告料
672,000 地方紙、情報誌、ラジオ広告等
Web サイト維持費
240,000 Web サイト更新、維持費用
パンフレット作成
1,200,000 体験型観光パンフレット印刷代
観光連盟運営費
3,000,000 臨時職員人件費、事務費
計
5,112,000
※体験型観光プログラムの実施経費は、利用料により負担するため、計上していない。
(ただし、立上げ期間においては、赤字が想定されるため、村による補填も必要)
5 今後に向けて
本研究成果・提案については、26 年9月の研究成果報告会にて発表し、その後 10 月には、
北部3か村の村長さんに対しても同様に報告を行った。各村長の皆様からは前向きな意見、
アドバイスをいただいた。
今後は、各村において引き続き検討を行い、実施可能な取組みについては実行に移せるよ
う、県としても地方事務所「チーム北」を中心に必要な支援を行っていきたい。
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4 おわりに
今回の政策研究を振り返ると、15 名(4月当初は 14 名)という、他の研究グループと
比較しても大人数のメンバーでの検討、さらには「地域活性化と情報発信」という抽象
的なテーマに、研究当初はなかなか議論が進展せず、方向性も定まらない日々が続きま
した。
そのような中で、まず現場を知ろうと北部3か村を実際訪れ、様々な場所を見て、聞
いて、体感したことは、後々の検討を行う上で非常によい経験となりました。
我々、研究グループのメンバーの多くは、松本地方で仕事をし、生活をしているにも
かかわらず、北部3か村を観光等で実際に訪れた経験は少なく、改めて北部3か村にあ
る数々の魅力的な素材(場所、食べ物、人・・・)を知ることができ、それだけでも大
きな財産を得ることができたと思っています。
今回の報告は半年間という短い期間での研究であったため、まだまだ検討の余地のあ
る内容となっていますが、今後の地域活性化や情報発信のヒントやきっかけづくりとな
るアイデアとしては十分活用できると思われます。
本格的な人口減少社会が到来しはじめた中で、地域に人を呼び込み活性化を図る取組
みは、既に多くの地域で様々な実践がなされており、その中で成果を挙げるには、独創
的なアイデアと地域が一体となった努力が不可欠であり、1、2年の取組みで成果が出
るものではありません。
今後は、この研究報告を土台として、3村やそれぞれの地域で更にこの研究を進めて
いただき、いつの日か「奥安曇野」地域が多くの人の笑顔で溢れる日がくることを期待
しています。
最後に、北川チーフアドバイザー、中村アドバイザーをはじめ、我々の研究へ助言、
指導、協力をいただいた多くの皆様にこの場をかりて感謝申し上げ、まとめとさせてい
ただきます。
ありがとうございました。
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