1月全国消費者物価

経済分析レポート
2015 年 2 月 27 日
全7頁
Indicators Update
1 月全国消費者物価
コア CPI の前年比ゼロが視界入り
エコノミック・インテリジェンス・チーム
エコノミスト 長内 智
[要約]

2015 年 1 月の全国コア CPI(除く生鮮食品、以下コア CPI)は前年比+2.2%と、市場
コンセンサス(同+2.3%)を小幅に下回った。消費税を除くベース(大和総研による
試算値、以下同様)でみると、エネルギーのプラス寄与縮小が続いたことで、前年比+
0.2%と前月(同+0.5%)から上昇幅が縮小した。コア CPI の水準は引き続き概ね横ば
いで推移していると評価できる一方で、前年比伸び率は着実にゼロへと近づいている。

2015 年 2 月の東京コア CPI
(中旬速報値)は前年比+2.2%と、上昇幅は前月(同+2.2%)
と同じであった。この東京コア CPI の結果を踏まえると、2 月のコア CPI は前年比+
2.2%(消費税を除くベース、同+0.2%)となる見込みである。

先行きのコア CPI(消費税の影響を除くベース)は、原油安に伴うエネルギーの下押し
圧力を背景に、当面は前年比プラス幅の縮小が続こう。全国と東京のコア CPI の水準(原
数値、消費税の影響を除くベース)をみると、物価指数が例年の傾向に沿って推移する
場合は、いずれも今年の 4 月頃までには前年比マイナスへ転じる見込みであり、エネル
ギー価格次第でそのタイミングが前後することになる。
図表1:消費者物価指数の概況(前年比、%)
2014年
6月
2015年
7月
8月
9月
10月
11月
12月
1月
全国コアCPI
3.3
3.3
3.1
3.0
2.9
2.7
2.5
2.2
(除く消費税の影響)
1.4
1.4
1.1
1.0
0.9
0.7
0.5
0.2
コンセンサス
2.3
DIR予想
2.3
2月
全国コアコアCPI
2.3
2.3
2.3
2.3
2.2
2.1
2.1
2.1
東京都区部コアCPI
2.8
2.7
2.7
2.6
2.6
2.4
2.3
2.2
2.2
コアコアCPI
2.0
2.1
2.1
2.0
2.1
1.8
1.8
1.7
(注1)コンセンサスはBloomberg。
(注2)コアCPIは生鮮食品を除く総合、コアコアCPIは食料(除く酒類)及びエネルギーを除く総合。
(注3)消費税の影響は大和総研による試算値。
(出所)総務省統計より大和総研作成
1.7
株式会社大和総研 丸の内オフィス
〒100-6756 東京都千代田区丸の内一丁目 9 番 1 号 グラントウキョウ ノースタワー
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全国コア CPI の前年比伸び率は着実にゼロへと近づく
2015 年 1 月の全国コア CPI(除く生鮮食品、以下コア CPI)は前年比+2.2%と、市場コンセ
ンサス(同+2.3%)を小幅に下回った。消費税を除くベース(大和総研による試算値、以下同
様)でみると、エネルギーのプラス寄与縮小が続いたことで、前年比+0.2%と前月(同+0.5%)
から上昇幅が縮小した。季節調整値の推移も併せてみると、コア CPI の水準は引き続き概ね横
ばいで推移していると評価できる一方で、前年比伸び率は着実にゼロへと近づいている。
図表2:全国コア CPI の内訳(消費税除く)
4
(前年比、%)
(前年比、%)
10
図表3:全国コア CPI の前年比と寄与度
4.0
(前年比、%、%pt)
8
3
6
2
3.0
4
1
2
0
0
-1
-2
2.0
1.0
-4
-2
-6
-3
0.0
-8
-10
-4
12
13
14
コアCPI
コア非耐久消費財
耐久消費財(右軸)
(年) 15
-1.0
12
13
消費税の影響
エネルギー
半耐久消費財
コアCPI
半耐久消費財
サービス
14
(年)15
サービス
コアコア非耐久消費財
耐久消費財
(注1)コアCPIは生鮮食品を除く総合、コア非耐久消費財は生鮮食品を除く非耐久消費財、コアコア非耐久
消費財は生鮮食品及びエネルギーを除く非耐久消費財。
(注2)消費税の影響は大和総研による試算値。
(出所)総務省統計より大和総研作成
図表4:全国 CPI の水準(季節調整値)
105
(2010年=100)
104
消費税の影響を除く
ベース(参考値)
103
102
コアCPI
101
100
99
98
97
コアコアCPI
96
1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1 4 7 10 1
2005
06
07
08
09
2010
11
12
13
14 15
(月/年)
(注1)コアCPIは生鮮食品を除く総合、コアコアCPIは食料(除く酒類)及びエネルギーを除く総合。
消費税は前年比に与える影響(日本銀行試算値)を基に調整。
(注2)シャドーは政府の「月例経済報告」において「デフレ」の文言があった時期。
(出所)総務省、内閣府資料、日銀資料より大和総研作成
3/7
2015 年 2 月の東京コア CPI(中旬速報値)は前年比+2.2%と、上昇幅は前月(同+2.2%)
と同じであった。これは、①燃料費調整制度による「電気代」の値上げなどによってエネルギ
ーのプラス寄与縮小が一旦止まったこと、②一部衣料品の価格低下などで半耐久財のプラス寄
与が縮小した一方で、
「火災保険料」の価格上昇などを背景にサービスのプラス寄与が拡大した
ことによる。この東京コア CPI の結果を踏まえると、2 月のコア CPI は前年比+2.2%(消費税
を除くベース、同+0.2%)となる見込みである。
1 月コア CPI(消費税の影響を除くベース)を財・サービス別にみると、耐久消費財(12 月:
前年比▲0.5%→1 月:同▲1.3%)は、3 ヶ月連続のマイナスとなった。この主因は、
「テレビ」
の価格が下落したことに加えて、
「ルームエアコン」のマイナス幅が拡大したことである。後者
については、前月よりも価格が上昇したものの、昨年の同時期に消費税増税前の駆け込み需要
によって価格が上昇していたため、その反動が出ていると考えられる。
「電気冷蔵庫」などにも
昨年の裏の影響が出ている点には留意が必要だ。半耐久消費財(12 月:前年比+0.6%→1 月:
同+1.1%)は、前月からプラス幅が拡大した。これは、一部の衣料品が昨年同時期に値下げし
ていた裏の影響で、押し上げに寄与したことによる。コア非耐久消費財(除く生鮮食品)
(12 月:
前年比+0.7%→1 月:同▲0.1%)は、マイナス寄与に転じた。原油価格急落の影響で、「ガソ
リン」と「灯油」の下落幅が拡大して、全体を押し下げた。大和総研の試算によると、コア非
耐久消費財(除く生鮮食品、消費税を除く)の前年比マイナスは 2013 年 4 月以来 21 ヶ月ぶり
のことである。他方、
「電気代」は、燃料費調整制度に伴う値上げによってプラス寄与が拡大し
た。サービス(12 月:前年比+0.5%→1 月:同+0.5%)は、前月と同じとなった。なお、2 月
の東京の結果では、原油安に伴うジェット燃料価格の下落を反映して「航空運賃」や「外国パ
ック旅行」の価格が下落すると見込まれていたが、そのような動きは見られなかった。
コア CPI の前年比は 4 月頃までにマイナスに転じる可能性
先行きのコア CPI(消費税の影響を除くベース)は、原油安に伴うエネルギーの下押し圧力を
背景に、当面は前年比プラス幅の縮小が続こう。日本銀行の 2014 年 10 月末の追加金融緩和に
伴う円安進行などを背景に、食料品などの値上げが相次いでおり、それが消費者物価の押し上
げに寄与すると想定されるものの、
「ガソリン」を中心とするエネルギー価格の押し下げ効果が
それを上回るためである。原油の国際市況や為替レートなどの推移を踏まえると、2 月も燃料費
調整制度による「電気代」の値上げが行われる一方で、
「ガソリン」価格は下落が続くとみられ
る。ただし、店頭のガソリン価格が 2 月中旬になって底打ちの動きを見せていることから、3 月
は「ガソリン」のマイナス寄与拡大が一旦弱まる公算である。また、関西電力の電気料金の再
値上げ(値上げ幅は 10.23%、値上げ予定日は 2015 年 4 月 1 日)に関して、値上げ幅の圧縮お
よび値上げ時期の後ずれについての報道が出ており、今後の動向を注視する必要があろう。全
国と東京のコア CPI の水準(原数値、消費税の影響を除くベース)をみると、物価指数が例年
の傾向に沿って推移する場合は、いずれも今年の 4 月頃までには前年比マイナスへ転じる見込
みであり、エネルギー価格次第でそのタイミングが前後することになる。
4/7
当社のメインシナリオとして、日本銀行が目指す 2%のインフレ目標は期限内の達成が困難で
あるとの見方に変更はない。日本銀行がインフレ目標の期限内の達成を目指す場合、同行は 2015
年秋口をめどに追加金融緩和に踏み切るとみられるが、金融緩和のタイミングが前倒しとなる
可能性もあるだろう。
図表5:東京のエネルギーの寄与(対コア)
0.8
(%pt)
図表6:コア CPI の水準(原数値)
102.0
(2010年=100)
2014年3月の水準
101.5
0.6
101.0
100.5
0.4
100.0
0.2
99.5
0.0
99.0
例年の季節
パターン
98.5
-0.2
2014年2月の水準
2014年4月の水準
98.0
-0.4
97.5
13
14
電気代
灯油
エネルギーの寄与度
(年) 15
13
ガス代
ガソリン
14
東京
15
(年)
全国
(注1)コアCPIは生鮮食品を除く総合。
(注2)いずれも消費税の影響を除くベース、消費税の影響は大和総研による試算値。
(注3)右図の予測値は、今後の方向感を確認するために、例年の季節パターンで機械的に延長したもの
であり、幅を持ってみる必要がある。
(出所)総務省統計より大和総研作成
図表7:GDP ギャップと全国コア CPI
6
(%)
(前年比、%)
4
4
3
2
2
0
1
-2
0
-4
-1
-6
-2
-8
-3
-10
-4
85
90
95
00
GDPギャップ(2四半期先行)
05
10
全国コアCPI(右軸)
15
(年)
(注1)コアCPIは生鮮食品を除く総合、消費税の影響は日銀の試算値を用いて調整済み。
(注2)2015年1-3月以降のGDPギャップは大和予想。
(出所)総務省、内閣府統計、日銀資料より大和総研作成
5/7
他方、前月のレポートで指摘したように、2015 年 1 月以降、食料品を中心に値上げが相次い
でいることから、エネルギー価格を含まない内閣府試算の「コアコア CPI(生鮮食品、石油製品
及びその他特殊要因を除く総合)」は、コア CPI とは対照的に底堅く推移している。政府は、2
月の月例経済報告において、消費者物価の基調判断を「横ばいとなっている」と前月から据え
置いたが、政府が重視する「コアコア CPI」の推移を素直に評価すれば、その判断は上方修正さ
れるべき状況にある。
図表8:値上げ動向
3月
2月
4月
・冷凍食品
・アイスクリーム
・紅茶
・ウイスキー
・コーヒー
・ルウ製品
・ティーバック
・家庭用ソース
・ケチャップ
・食用油
・レトルト製品
・オリーブ油
・トマトソース類
・学校給食
・パスタソース
・牛乳・ヨーグルト
(注1)表の値上げ商品は、必ずしも消費者物価指数の調査対象銘柄(小売物価統計調査)とは限らない。
(注2)2月のルウ製品とレトルト製品の値上げは、調査日の影響で翌月の消費者物価指数に反映される見込み。
(出所)各種報道等より大和総研作成
6/7
財・サービス別にみたコアCPIの動き
全国コアCPIの財・サービス別寄与度分解
4.0
耐久消費財
(前年比、%、%pt)
0.4
3.5
0.3
3.0
0.2
2.5
0.1
(コアCPIへの寄与度、%pt)
0.0
2.0
-0.1
1.5
-0.2
1.0
-0.3
0.5
-0.4
0.0
-0.5
-0.5
-0.6
-1.0
12
13
耐久消費財
コアコア非耐久消費財
サービス
コアCPI
14
半耐久消費財
エネルギー
消費税の影響
15
-0.7
12
(年)
13
14
携帯電話
教養娯楽
冷暖房用器具
その他
15
家事用耐久財 (年)
消費税の影響
耐久消費財
(注)消費税の影響は大和総研による試算値、コアCPIは生鮮食品を除く総合、コアコア非耐久消費財は生鮮食品及びエネルギーを除く非耐久消費財。
(出所)総務省統計より大和総研作成
半耐久消費財
0.4
非耐久消費財(生鮮食品、エネルギーを除く)
(コアCPIへの寄与度、%pt)
1.2
(コアCPIへの寄与度、%pt)
1.0
0.3
0.8
0.2
0.6
0.4
0.1
0.2
0.0
0.0
-0.1
-0.2
12
13
14
家具・家事用品
被服及び履物
教養娯楽
自動車関連
身の回り品
その他
消費税の影響
半耐久消費財
15
12
(年)
13
14
15
食料
家事用消耗品
保健医療
教養娯楽
たばこ
その他
消費税の影響
非耐久消費財
(年)
(注)消費税の影響は大和総研による試算値。
(出所)総務省統計より大和総研作成
一般サービス
0.8
公共サービス
(コアCPIへの寄与度、%pt)
0.5
0.6
0.4
0.4
0.3
0.2
0.2
0.0
0.1
-0.2
0.0
(コアCPIへの寄与度、%pt)
-0.1
-0.4
12
13
外食
教育関連
その他
一般サービス
(注)消費税の影響は大和総研による試算値。
(出所)総務省統計より大和総研作成
14
家賃
通信・教養娯楽等
消費税の影響
15
(年)
12
13
家賃
医療・福祉関連
教育関連
消費税の影響
14
保険料等
運輸・通信関連
教養娯楽関連
公共サービス
15
(年)
7/7
他の関連指標の動向
輸入物価と企業向け価格
4
名目実効為替と原油価格
(前年比、%)
(前年比、%)
3
25
140
20
130
15
120
10
110
5
100
0
90
-5
80
-10
70
-15
60
-20
50
-25
40
2
1
0
-1
-2
-3
-4
10
11
12
13
企業物価
14
(ドル/バレル)
60
↑
円安
70
80
90
100
110
120
円高
↓
130
10
(年)15
(2010=100)
11
12
13
WTI原油先物価格
企業向けサービス価格
14 (年) 15
ドバイ原油スポット価格
名目実効為替(右軸、逆目盛)
輸入物価(円ベース、右軸)
(注)企業物価、企業向けサービス価格は消費税を除くベース。
(出所)日本銀行統計、Bloombergより大和総研作成
企業物価(最終財:うち耐久消費財)
25
企業物価(最終財:うち非耐久消費財)
(前年比、%)
(前年比、%)
20
20
15
15
10
10
5
5
0
0
-5
-5
-10
-10
-15
-15
10
11
12
耐久消費財
13
うち国内品
14
10
(年) 15
11
12
非耐久消費財
うち輸入品
13
14
うち国内品
(年) 15
うち輸入品
(注)企業物価は消費税を除くベース。
(出所)日本銀行統計より大和総研作成
家計の期待インフレ率(1年先)
6
ガソリン価格と灯油価格
(%)
175
(円/18リットル)
(円/リットル)
2,300
170
2,200
165
2,100
160
2,000
155
1,900
150
1,800
145
1,700
140
1,600
135
1,500
5
4
3
2
1
130
0
10
11
内閣府(旧)
12
13
内閣府(新)
14
(年) 15
日本銀行
1,400
12
13
レギュラー・ガソリン店頭価格
14
(年) 15
灯油店頭価格(右軸)
(注1)内閣府の期待インフレ率は消費税の影響を含む、日本銀行は含まない。
(注2)内閣府と日本銀行の期待インフレ率のいずれにおいても上方バイアスがあるため、方向や相対的な水準で評価する必要がある。
(出所)左図は内閣府、日本銀行、右図は資源エネルギー庁統計より大和総研作成