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子育て支援は親支援
柳
原
俊
雄
“親がなくとも、
子が育つ。ウソです。親があっ
が、それ以上に親の苦しみを感ずることが非常に
ても、子が育つんだ。親がなきゃ、子供は、もっ
多い。男女とも初婚年令は年々上昇し、結婚しな
と、立派に育つよ。
”坂口安吾の「不良少年とキ
い若者が増え、なかなか少子化対策が実を結ばな
リスト」からの引用である。確かに、本来“子ど
い状況である。
もを育てる”のではなく、
“子どもは育つ”なん
県医師会では地域での子育て支援に、カナダ生
だと思う。しかし、今の日本においてはそう上手
まれの親支援プログラムである NP(Nobody’
s
くはいかないというのが現実であろう。それぞれ
Perfect 完璧な親なんていない)プログラムの普
の子どもが持っている本来の力を存分に発揮する
及事業を推進してきた。
新潟県のサポートもあり、
ことが出来難い世の中なのかもしれない。
当初プログラム実施に関わるファシリテーターの
その昔、親は生きていくことに精いっぱいだっ
養成に力を入れ、数年間で100名以上の方が受講
た時代があった。とにかく家族・子どもに住むと
され、その資格を取られた。その後県内各地域で
ころと食事を与えなくてはならないと必死に働い
実施されたプログラムは130回を超え、全国でも
た。子どもたちは金のかからない遊びを自分たち
東京、静岡に次いで第3番目の実施回数となり、
で考えた。集団を作り子ども社会ができ、それを
今や NP プログラムの普及県となっている。そこ
見守る地域社会があった。そして知らないうちに
で本プログラムを推進した結果、どのようなこと
子どもは育っていった。こんなことを団塊世代の
が期待できるか、そして実際にその効果はどうで
私は、既に亡き父母を思いだし、夢物語のように
あるかということが問題となる。これまでの実践
考えることがある。
から、プログラムの効果として以下の3点が述べ
時代はめぐり、高度経済成長期を経て、IT 社会、
られている。1)親に対する効果:親の孤立感が
豊かで便利な生活、個人主義、自己責任、不確実
軽減する・自信が増大する・子育てのスキルが強
性、不安定性などの現代社会を特徴づける言葉が
化される。2)ファシリテーターに対する効果:
並ぶなか、超少子高齢化社会そして人口減少社会
ファシリテーターが、NP を通して身につけたス
の到来が予測されている。さらに庶民には実感が
キルや洞察力が、それ以外の仕事や生活の場でも
ないものの国の財政破綻も深刻な問題と言われ
様々な形で役に立つ。3)地域に対する効果:
る。多くの子どもたちが“I feel lonely”と感じ、
NP に参加した親たちのグループは、多くがその
子どもの貧困が問題となり、子どもたちの幸せ度
ままサポートグループを作って活動を続けてい
が低下した。同時に親たちの幸せ度も低下してい
る。これは個人だけでなく地域にとっても有益で
るのではないかと危惧する。いまや子ども虐待は
ある
(CCCホームページ http://ccc-npnc.org/より)
。
特別なことではなく、ありふれた現象である。子
NP プログラムの実践は、地道な草の根の活動
育てを幸せなことと感じられない親が増えている
であるかもしれないが、いつか地域に対する効果
ように思う。子どもが社会の荒波の中ですくすく
が浸透し、子どもを取り巻く地域社会が少しでも
と育っていくのを見守る余裕もなく、子育てに必
よい方向に向かっていくことを期待している。
死で、むしろ苦しんでいるようにもみえる。日常
(県医理事)
の診療のなかで子どもの苦しみはもちろんである
新潟県医師会報 H27.2 № 779