19本編(PDF:558KB)

「平成 26 年度職員による政策研究」
研究報告書
テーマ:文化財は元気な未来を拓くおらほの「宝」
~保存だけでなく地域活性化につなげる方策の検討~
グループメンバー
教育委員会事務局文化財・生涯学習課
大月 久史(リーダー)
教育委員会事務局教育総務課
西 加奈永
野尻湖ナウマンゾウ博物館
関 めぐみ
長野県埋蔵文化財センター
大竹 憲昭
長野県埋蔵文化財センター
町田 勝則
長野県埋蔵文化財センター
鶴田 典昭
長野県埋蔵文化財センター
黒岩
平成 27 年1月
隆
目
次
1
はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
2
目指すべき「ありたい姿」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2
3
現状の分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2
4
政策のターゲット・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2
5
どのような変化を求めるか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3
6
新しい政策を考える際のキーワード・・・・・・・・・・・・・・・・
3
7
政策の立案・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3
8
政策の提案について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
7
9
グループメンバー各人の政策研究に参加しての感想等・・・・・・・・
8
10
おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
14
1
はじめに
結論から述べると我がグループが提案した政策は、リアルとバーチャルの二つの軸で、これ
までにない文化財の発信を行う政策を提案した。よって、研究報告書の冒頭で、文化財(の重
要性)を発信することがなぜ必要なのかを述べたいと思う。
善光寺や松本城、縄文の土偶や古墳、道祖神まつりなどの文化財からわれわれは、過去の人
びと(先人)の文化的・生活的活動を学びとることができる。文化財を知り、学ぶことは地域
の歴史を学ぶことでもある。
歴史を学ぶ意義はどこにあるのだろうか。歴史は決して過去の出来事の記録ではなく、過去
の出来事から現在を知り、未来への進むべき道を知ることができる。また過去の過ちを再び繰
り返さない戒めにもなる。
地域の歴史はみな固有の特徴をもつ。わが町、ひいては長野県のすばらしき誇りを学び将来
に活かすこともできる。
地域の歴史の証拠である文化財を知り、よく学ぶことは、われわれの将来を正しく明るい方
向に導くことにもなる。だからこそ文化財を適切に保存し、未来に引き継いでいくことが、現
在のわれわれの責務でもある。
よって、文化財のもつ重要性を一人でも多くの方に理解してもらうための発信が必要となる。
そのため、我がグループはこれまでにない文化財の発信を以下の過程を経て決定した。
1
2
目指すべき「ありたい姿」
グループ活動の第一歩として、提案する政策を実施することで、どのような状況、ありた
い姿を実現したいのかを話し合い、決定した。メンバー各人に意見を出してもらったところ、
多くの意見が出たために、三つに分類して集約し、以下のとおり我がグループが提案する政
策を通して目指すべき「ありたい姿」とした。
(1)地域に文化財が根付いている
文化財が暮らしの中の一部として、住まう人々の心に当たり前に息づき、気にかけられ
ている。
(2)世代を超えて文化財を共有している地域
年長者のみではなく、若い世代にも文化財が継承されており、文化財を通じて世代間の
交流が図られている。
(3)私の歴史に誇りを持てる地域
自分を形作ってきた地域に愛着を持ち、そこに根付いてきた文化・伝統に誇りを持てて
いる状態。
3
現状の分析
上記、ありたい姿の決定を受けて、現状分析を行った。現状分析は、ありたい姿の三項目
に対して、それぞれどのような現状にあるかという考え方で進めたところ、以下のとおりと
なった。
(1)歴史に対する意識の差がある
特定の人々によって文化財が継承され、属人的に管理がなされているケースもある。守
り伝えていこうという意識が共有されていない
(2)文化財が知られていない、活かされていない、失われている
時代と共に伝統文化や伝統的な建造物等に対する興味が薄れていく、また、存在自体を
知っていても保存がなされないままに劣化してしまう場合もある。教育素材としての活用
が図られていない。
(3)地域の中での人のつながりが希薄
過疎化により人口の流出が激しい中、世代を越えて地域の人々が集まるきっかけともな
っていた伝統行事の継承がむずかしくなり、さらに地域間の交流が薄れる循環に陥ってい
る。
4
政策のターゲット
(1)既存の政策
ア 長野県立歴史館、埋蔵文化財センターにおける歴史講座等
イ 遺跡現場見学会等
ウ 長野県立歴史館、埋蔵文化財センターにおける夏休み子どもチャレンジ教室等
2
(2)既存の政策の課題
県立歴史館の企画展のアンケートの回答者は、平成 24 年度は約 67%、平成 25 年度年度
は約 64%を 50 代以上となっている。また、平成 25 年度に実施した「信州の文化財ガイド
ツアー」の参加者も 50 代以上が約 90%にのぼり、ア、イの参加者の多くは 50 代以上が占
めている状況である。一方で、ウの対象は小学生となっており、10 代から 40 代に対して
アプローチできる政策が手薄になっている。さらにグループで議論する中では、時間的・
場所的な問題から、仕事をしている人は参加しにくく、歴史や文化財に関心のない人には
情報が届きにくいのではないかという意見も出された。
(3)新しい政策が対象とする層
10 代~40 代の文化財に関心の薄い人々。
5
どのような変化を求めるか
10 代~40 代の歴史や文化財に興味のない人に、まずは興味を持ってもらう。そして、自発
的に文化財に触れてもらう。
県としては、文化財に対して興味・関心を持つ人々の数の底上げを図る政策を提言する。
6
新しい政策を考える際のキーワード
10 代~40 代の層に関心を持ってもらうために、該当層の興味を引くものと関連付けた、新
しいアプローチ法を考える。
議論の中で浮上した、該当層が興味を持つと考えられるキーワードは、インターネット、
スマホ、出会い、女子会、グルメ、レア(希少価値)である。これらキーワードを政策を考
える際のヒントとして用いる場面もあった。
7
政策の立案
上記1~5までの話し合い、分析により、我がグループが提案するべき政策は、10 代半ば
~40 代の人々に文化財について興味を持ってもらい、その結果、自主的に本物を見てみたい
と思ってもらえるところまで変化させられる政策ということになった。
これを受けて、グループ内で政策立案についての話し合いが始まり、7月 18 日のテーマアド
バイザーとの意見交換会に向けて以下のとおり「イベント的な政策」と「調査研究が関わる政
策」の政策案をまとめた。
また、政策立案の参考として、文化財活用の先進地、長和町の「第 10 回黒曜石のふるさと祭
り」にスタッフとして参加した。参加して感じたことは、町の中学生が進んで祭りに参加し、
自分のふるさとに黒曜石という素晴らしい文化財があることを多くの子どもたちが感じている
ことに感銘を受けた。
3
≪イベント的な政策≫
・「わが町山の文化財」
ユーチューブ動画コンテスト(市町村対象)
写真、絵画コンクール(一般対象)
上記二つについては、国又は県予算で上位入賞作品の場所を実際に訪れるトレッキング
ツアーを企画する。
・県内日本百名山文化財カルタ (一般:小中学生)
日本百名山は、長野県域に所在する山が 29 と日本一である。
日本百名山の選定基準の一つに、昔から人間との関わりが深く、崇拝され山頂に祠が祀
られている山であるという基準がある。
主に上記2点について、子どもたちがかるたで遊びながら県内の日本百名山とそれにま
つわる文化財を覚えてもらうための、かるたを製作する。
モデルは群馬県の上州かるた。
・山の文化財オリエンテーリング大会、スタンプラリー(一般対象)
文化財を各チェックポイントに設定、またはチェックポイントで文化財クイズ
・山と文化財と婚活イベント(一般:独身者)
縁結びスポットとされる文化財の場所でイベントを行う。
名勝、天然記念物が見える景色がきれいな場所でイベントを行う。
・ユーチューブで紹介したい山の文化財を「募集する」と「行ってみて紹介する」
(後者は我々がその場に行って動画を作成する。)
≪調査研究が関わる政策≫
・お祭りに潜入レポート(一般対象)
お祭りの三ツ星評価(覆面調査員がミシュラン的に評価)⇒ガイドブック、HP 等のインタ
ーネットで公表。
・市町村別に研究者を誘致し、外部から評価してもらう。(市町村を窓口に)
・山岳信仰を再調査。
(市町村を窓口に)
※マスコミに紹介してもらう。
・市町村を対象にした文化財コンサルタント(市町村を対象とする)
県で文化財に関する各方面の専門家に委託し、市町村教委等からの文化財に関する相談に
対応する。
以上の政策案をテーマアドバイザーに提出したが、全ての政策について、既存の政策と変わ
らないか、もしくは少し改良したものに過ぎないという厳しい評価であり、ゼロから再考する
ことになった。
また、他グループの政策案等も示されながら、既存の枠や考え方にとらわれずに、政策を考え
るべきという助言もいただいた。
4
テーマアドバイザーに提出した政策案は、行政の立場や前例など、何かしらの枠にはめて考
えていたことは否めず、それがそのまま政策案に表現されてしまっていたと思う。
その後のゼロからの政策案の考え直す作業では、前例や既存の枠などを取っ払って考えた結
果、1回目に比べれば、質量ともに良い政策案を立案することができた。それが以下の政策案
である。
≪イベント的な政策≫
・ミスター仏像フォトコンテスト
県内の仏像の写真を一般を対象に応募してもらい、造詣の美しさ(イケメン具合)のみで
順位をつける。一般的に仏像の顔はどれも同じ顔ではないかと思われているが、実はそうで
はないということを広く知ってもらうことが狙い。
・空飛ぶ文化財
山を擬人化し、その山から見た文化財を見るとどのように見えるかを、実際にヘリコプタ
ーや気球等で飛んでもらい上空から文化財を見てもらう。
佐久市の国史跡の龍岡城跡は、日本に二つしかない五稜郭であり、きれいな星形を見るに
は上空(真上)から見るしかない。佐久市は気球フェスティバルが行われる気球の街である
ので、気球で上空から五稜郭を眺めてもらうイベントを行う。もしくは、高所作業車で五稜
郭を見てもらった後に、そこから五稜郭に向かってバンジージャンプを敢行する。
千曲市の国名勝地の姨捨の棚田は、満月が各田んぼに写る「田毎の月」として有名である。
この田毎の月を上空から見てもらうイベントを行う。
・北陸新幹線開通記念巡回展及び沿線駅弁(縄文弁当、弥生弁当)販売
北陸新幹線沿線4県(長野、新潟、富山、石川)を、「海と山の出会い」をテーマにした
企画展(塩の道の歴史など)を巡回させる。またこの企画に併せて、縄文弁当、弥生弁当を
駅弁として販売する。
・街中博物館
街中の飲食店に土器、土偶のレプリカを置く。飲食店の利用者は、土器、土偶を空気のよ
うに感じてもらうことで、気付いたら文化財が身近な存在であるという状態を狙う。
≪対話型イベントその他の政策≫
・時空を超えたセールスマン
県立歴史館職員、埋蔵文化財センター職員が持っている面白い歴史コンテンツをテレビ局
に売り込み、ドラマ化を狙う。(大河ドラマ等)また、旅行雑誌への紹介文の掲載。
・歴史モノフィルムコミッション
県内各地をロケ地として歴史モノ映画、アニメーションの誘致を行う。
・国宝8レンジャー
県内所在の国宝8件を戦隊モノキャラクターに仕立て上げ、文化財保護を拒む悪役(悪徳
不動産ディベロッパー等)と戦うという寸劇を通して、子どもたちに文化財を知ってもら
うとともに、守るべきものであることも知ってもらう。さまざまな県内イベントに出演し、
寸劇を披露する。
5
善光寺レッド、松本城ブルー、縄文のヴィーナスピンク、仮面の女神イエロー
仁科神明宮パープル、安楽寺ホワイト、大法寺グリーン、茶碗ブラック
・山の文化財きもだめし
怪談が得意な住職(カリスマ住職、もしくは意外な語り部)に、怪談を披露していただき、
その後山の文化財を巡るきもだめしを敢行する。
≪システム、ネット上のコンテンツに関する政策≫
・しあわせ信州御利益カウンセリング
県内の寺社仏閣の御利益について整理し、ユーザーが恋愛成就、金運、健康、商売繁盛、
家内安全、交通安全、安産祈願などのボタンを押すとマップ上にそれにまつわる寺社仏閣が
表示されるネット上のコンテンツを構築する。例えば恋愛成就のボタンを押すと地図上にハ
ートマークが表示され、恋愛成就の御利益があるとされる寺社仏閣が表示される。
・文化財カウンセリング
ユーザーがいくつかの質問に答えると(心理テストのようなもの)、そのユーザーにおす
すめの文化財が表示されるというネット上のコンテンツを構築する。例えば仕事に疲れてい
て、癒しを求めているというような結果になったら、名勝地をおすすめするなどの内容。
今の気分からの検索と、カテゴリーからの検索の二本立て。紹介する文化財は、77 市町村
から公募をする。
・「あなたの顔は〇〇仏だ!」アプリ
自分の顔をスマホのカメラで撮ると、文化財(県内所在、県内ゆかり)のこの顔に○○%
似ているという結果を表示するスマホ用アプリを構築する。中高生がこのアプリを遊びで使
ってもらうことで、遊びながら顔がある県内の文化財を覚えてもらうことが狙い。
・過去の歴史モノドラマのゆかりの地マッピング
主に過去の大河ドラマに出演した俳優の名前を入力すると、その俳優が演じた人物のゆか
りの地、文化財を紹介するネット上のコンテンツを紹介する。例えば妻夫木聡のファンが、
妻夫木聡で検索すると「天地人」直江兼続ゆかりの地、文化財をマップ上に表示し、そこを
訪れてもらうように誘導する。大河ドラマによる誘客効果は限りあるものなので、消えてし
まったかつての誘客効果を少しでも掘り起こすことを狙う。
・人生山あり谷あり歴史すごろく
県内の文化財にまつわるイベント、エピソードをすごろくに落とし込む。例えば松本城に
関しては、「貞享義民の百姓一揆がおきる一回休み」、善光寺に関しては「御開帳が開催さ
れる7コマ進む」などのアクションが考えられる。すごろくにすることで、世代を超えて遊
んでもらい、文化財を身近に感じてもらうこと、世代間で共有することを狙う。
・おらほの文化財 100 選
アンケート調査や聞き取り調査によって、県民推薦の文化財 100 選を選び出し、ネット上
もしくはガイドブックの形式で紹介する。
・100 年後に伝える 1000 の宝物!『信濃の遺産 1000』プロジェクト
市町村合併以前の村単位で推薦してもらい、データベースを構築する。データは主に写真
・位置情報・由緒によって構成される。
6
以上の政策案を8月 27 日のテーマアドバイザー意見交換会に提出したところ、概ね、前回の
指摘をクリアした政策案であるという評価をいただいた。その意見交換会の中で、話し合い、
最終的に我がグループの政策提案は、
「時空を超えたセールスマン」と「信州文化財コンシェル
ジュ」に決定した。この二つを選んだ理由としては、文化財の発信においてリアルとバーチャ
ルという二つの軸でこれまでにない発信をするというコンセプトであり、前述した我がグルー
プが求める政策の条件に合致するものと認められたためである。
○時空を超えたセールスマン(リアルな発信)
・従来の定時的、定点的な発信とは違い、様々なタイミングを捉え、フレキシブルかつタイムリ
ーな文化財の発信を行う。
・発信する対象は、メディアに対する間接的なものと、一般県民に対する直接的なものがある。
・予算額 需用費(衣装代等)200 千円
○信州文化財コンシェルジュ(バーチャルな発信)
・インターネット上に県内文化財を新しい切り口で紹介、提案するコンテンツを構築する。
・
「願いごと(御利益)」
「今の気分」
「芸能人」
「今が旬」というキーワードで文化財を紹介する。
・予算額 委託費(ホームページ作成等)500 千円
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政策の提案について
提案する政策が決定し、発表スライド及び配布資料を作成し、プレゼンテーションの練習
を行った。ここで一番苦労した点が、発表時間が5分間しかないという点であった。初めて5
分間を意識してプレゼンテーションを行ってみた際に、当初予定していた内容の半分も話せず
に5分が過ぎてしまったこともあり、いかにコンパクトかつ伝えたい内容を盛り込むかの試行
錯誤を発表当日まで繰り返した。
事前準備の甲斐もあり、当日のプレゼンテーションは概ね5分以内で伝えたい内容を伝え
ることができた。北川チーフアドバイザーと知事の質問にも、グループ全体で対応できたと思
う。
このプレゼンテーションでは、知事の前でプレゼンテーションを行うことと、伝えたい内
容をいかにコンパクトに伝えるか考えることの二つの貴重な経験をすることができた。
7
9
グループメンバー各人の政策研究に参加しての感想等
(1)教育委員会事務局文化財・生涯学習課文化財係
大月 久史
私が政策研究に参加した理由は、所属する文化財・生涯学習課でテーマを出したため、課か
ら一人も参加しないわけにもいかないという消極的なものであった。しかし、約半年に渡る活
動を終えてみて、通常業務では学び、感じることができないことを体験できたため、参加して
よかったと思う。
以下に、政策研究に参加して学んだことを三つ記したいと思う。
・政策の立案方法について
政策を立案するに当たって、ありたい姿を描き、それに対して現状はどうなのかを洗い出
す。そして現状とありたい姿のギャップを埋めるために何が必要かを考える作業が、そのま
ま政策立案する作業となる手法をこの政策研究で学んだ。通常業務で新規事業等を考える際
に、現状をどう変えたいかよりも、どのぐらいの予算で、何をやるかというところに意識を
集中してしまう傾向にあると思う。現実は、財政が厳しい中でやりくりをするため、そうい
った面に意識が集中してしまいがちであることも、ある程度は認めなければならないのかも
しれない。しかし、政策は実施することが目的ではなく、実施することで現状をありたい姿
に近づけることが目的であるので、何のために実施するのかにこだわりを持つことの重要性
を学んだ。
・既存の政策、考え方、方法等にとらわれないことについて
我がグループでは、前半で約 10 の政策案をテーマアドバイザーに提出したが、その全て
について、既存の政策との違い等が感じられないため、考え直しというご指導をいただいた。
確かに、その時点で提出した政策案は、行政の立場等何かしらの枠にはめて考えていたこ
とは事実であったと思う。その後、既存の枠、考え方等を排除して、約 15 の政策案を考え、
テーマアドバイザーに提出したところ、そのうちの2つについて最終的に政策提案するこ
ととなった。
これは、政策立案の話だけにととまらず、日常業務の遂行に当たっても、既存のやり方、
考え方に漫然と流されるのではなく、よりよい新しいやり方を考えるということにも繋がる
考え方だと思う。
・異なる立場の人々が協働することについて
我がグループでは、県埋蔵文化財センター職員、町立博物館学芸員、県教育委員会職員と
いう所属組織も立場も異なるメンバーで組織され活動を行った。こういった中での活動では、
意外なことに気づかされるような意見を聞くことができ、異なる立場のメンバーが集まるこ
とが多くの場面でプラスに働いたと思う。
通常業務の中でも市町村職員、民間企業、一般県民等、さまざまな立場の方と協働する場
面は想定され、調整で大変なこともある反面、プラスとなる面も必ず得られるという姿勢で
臨むようにしたい。
8
(2)教育委員会事務局教育総務課企画係
西加奈永
・政策研究参加の動機
政策研究に参加した理由は、自分の出身地域で、馴染み深い寺社や史跡等の管理に手が行き
届いていない現状があると感じていたことからである。
長野県内には指定文化財が多くあるが、それ以外にも、地域の中のよりどころとして古くか
ら存在してきた史跡等も数多い。しかし、それらはごく限られた一部の人々の善意によって保
存・管理されているのが実情であるように思う。
指定文化財も含め、古くから残されてきたものを残し活用したいと願う人々がいるのであれ
ば、それを行政として手助けする仕組みを考えたい、というのが「文化財はおらほの宝」グル
ープに参加した動機である。
・政策について検討してみて
グループ活動で、実際に埋蔵文化財センターや野尻湖ナウマンゾウ博物館で働く方々と話す
中で分かってきたのは、現実はシビアであるということだった。
自分は、大学で日本史を専攻し、周囲にも歴史や文化財に関心を持つ人が多かった。しかし
一般的には、実際問題として命や健康に即座に関わるわけではない「文化」に対する関心は高
いとは言えず、農村にある小さな史跡はもとより、指定文化財に対する認知度も低い状態であ
るということを認識した。
多くの人々に意識されることがなければ、保存・管理をすることは難しい。
先に述べたとおり、当初は地域の身近な史跡等を後世に残すことに主眼をおいた政策を考え
たいと思っていたが、まずは「広く文化財に興味を持ってもらえる」ことが重要だと認識した。
・おわりに
政策研究を通じて感じたのは、多角的に物事をみることの大切さだった。色々な立場の人の
意見を聞くことで、自分が最初に考えていたことの“甘さ”も自覚することができた。
グループ内には、「歴史や文化財に全く興味のない人」、「仕事で全く関わっていない人」
はいなかったが、もし議論の段階でそういった人の意見を聞くことができたら、もう一歩踏み
込んだ政策を検討することができたかもしれない。
現在も様々な取組が行われているが、これまで興味を持ってもらえなかった人たちに、文化
財に目を向けてもらうための政策を考えるのは思ったよりも大変だった。しかし、グループで
検討する中で、いくつかのアプローチ方法が見つかった。さらに発表の結果、予算化が検討さ
れることになり、非常に嬉しく思っている。
9
(3)野尻湖ナウマンゾウ博物館 関めぐみ
今回、政策研究に参加させていただき、多くのことを学び、考えることができた。学芸員1
年目に政策研究に参加できたことはたいへん良い経験となった。
文化財を取り巻く現状とありたい姿についてじっくり話す機会というのは、これまでほとん
どなかった。そういった中で政策を考えるために現状とありたい姿についてグループのメンバ
ーと時間をかけて話し合うことができた。現状理解と理想の確認をすることにより、普段の博
物館での活動も客観的に考えるきっかけとなった。私自身の反省点として、今回なかなか自分
の意見を提案する事ができなかった。既存の政策とは異なる視点で文化財に興味をもっていた
だくためには、どのような切り口がいいのか、これまでにない形を考えるというのは非常に難
しかった。私自身の思いつくものが既存のものと差別化出来ているかと言われると、あまり新
鮮味がないように感じられてしまい、なかなか発言できなかった。自らのアンテナを高くして、
どういったところに人々の興味の対象があるのか、何が求められているのかをもっと考える必
要があると感じた。既存の政策からいかに飛躍したことを考えられるか。佐藤テーマアドバイ
ザーなどと話す中で、発想の転換やどういったことに注目するのか考え方のヒントをいただい
た。先進地視察の一環として、長和町の黒曜石体験ミュージアムで行われた黒曜石のふるさと
祭りにスタッフとして参加したことは、大変良い刺激を受けた。
現状として博物館来館者が減っていることもあり、一般の人にどのようにして文化財の価値
や必要性を伝えていくかは今後も考えていきたい。博物館でも様々な普及活動を行っているが、
そもそも文化財などについて学ぶ必要性などがあまり認知されていないと感じる。文化財から
学ぶことは多い。2014 年は長野県が様々な災害に見舞われた。土石流災害や御嶽山の噴火、
さらに 11 月には白馬村を中心とする地震などが起きた。これらの自然災害を未然に防ぐとい
うことはなかなか難しい。しかし、過去の出来事について学び、それを活かして、どのように
して被害をおさえるかを考え、実践することは可能である。文化財はそういったことを考える
きっかけとしても活用できるのではないかと感じる。文化財の価値や必要性をより多くの人に
知っていただきたい。そのためにも、政策研究で学んだことを今後の博物館の活動に活かして
いきたい。最後になるが、今回の政策研究を通して、普段あまり関わる機会のない方々と広く
交流できたのは、大きな財産となった。今後もこのつながりは大切にしていきたい。
10
(4)長野県埋蔵文化財センター調査部 大竹 憲昭
この政策研究会は若手職員が自由闊達に意見を述べ合い研究する会であるため、私のような
(56 歳)年寄りは、若手職員の発言を控えさせる存在になる可能性が高いので、参加を控える
べきとの周りからの意見もあった。ただ「文化財の新しい発信」について常日頃考えてきた私
にとって文化財・生涯学習課から提案された研究テーマ「文化財は元気な未来を拓くおらほの
宝」はまさに自分の積年の悩みに適合するものであり、若手職員の邪魔にならないように謙虚
に参加させていただくべく参加申し込みをした。
集まったメンバーは 7 名、県職員 2 名と市町村職員(博物館学芸員)1 名の 3 名は、若手~
中堅のピカピカ、バリバリ、残る 4 名は私の職場である埋蔵文化財センターの職員で、私を筆
頭にすべて 50 歳代の年寄りのボロボロだったが、意見交換のミーティングは、結構充実してい
たと感じた。世代差はあっても○○部長だ、△△課長だ、などの役職名をつけて呼ばないよう
に配慮したので、結構フランクに話ができたのではなかったかと思う(自分がそう思っていた
だけかもしれないが)
。
「文化財の新しい発信」というテーマについて、世代の差はあっても一緒に、同じ立場で議
論できたことは、大変よかった。同じ専門の人間が何人集まっても出てこないような視点や発
想が次々だされた。なかなか文化財の重要性をわかってもらえないと感じ続けてきた何十年の
課題が解消されたところもあった。
手前味噌かもしれないが、専門外の若い人だけで研究・検討をやっても、いまだかつてない
ような奇抜で魅力ある政策提案もできるであろうが、われわれ年寄りの長年の経験話もいくら
かでも参考にしていただくと、若い人の斬新な発想に、年寄りの実行可能な計画がうまくマッ
チして、新しい発想の中に重みのある政策提案が作成できたのではないかと考えている。
佐藤テーマ・アドバイザーにも絶妙なアドバイスをいただけた。佐藤アドバイザーの年齢は
若者組と年寄組の間で、双方の世代ギャップを埋めてくれた。また、本当に専門外なので、ま
さに佐藤アドバイザーに、文化財に対し興味をもっていただく、理解していだくことを目標に
した、佐藤アドバイザーの質問や指摘にうまく答えることが文化財の新しい発信と考えた。
長野県に奉職して 30 年近く、大変楽しく、充実した 1 年を送れた。政策研究会は魅力ある集
まりだった。
11
(5)長野県埋蔵文化財センター調査部 町田 勝則
少子高齢化の進む今日、地域社会は共同体の崩壊を根源に、数多くの課題を抱えるようにな
った。核家族化や離農等社会組織の変化を捉え、これを行政的な施策として再編成を試みるこ
とは、地方自治の範囲をはるかに超えた重い課題である。現状を鑑み、地方自治にできる努力
の範囲は何か。地域社会の根幹をみつめ直すことで、何か、できることがあるのではないかと
考えている。
地域社会について考えることは、地域文化を考えることでもある。地域で育まれた習俗や伝統
は、文化財(遺産)として、形あるものとして継承される。であるからこそ、文化財は、われわ
れひとりひとりが、そこに(地域に)生きた証、これからも生き続ける証を写しだすものといえ
る。その凝縮された―歴史―そのものを語る素材を学び、それのもつ本質的な価値を学び理解
することが、ひいては地域文化、地域社会、そして自分自身を見つめ直すことに繋がっていく。
たとえ地域を離れていても、自らの心を支え、自らの存在を肯定的に示してくれるもの、”誇
り”を持たせてくれるものが、文化財なのである。
私たち文化財保護行政を担うものにとって、こうした地域アイデンティ創出の根幹となる文化
財を通して、地域社会に協力していきたいと考える。文化財が大切にされ継承されていくこと。
文化財が元気になれば、きっと地域社会も元気を取り戻せる。
こんな考えをもって、文化財を活用した地域社会の再生、活性化を進めたいと思い、1 年間
政策提案について取り組んできました。
大きな柱は 2 つ。ひとつは文化財の価値を歴史叙述(5W1H)する手法。学芸員等、専門的知
識をもつものが、博物館等から飛び出して、文化財のある場所で、あるいは人通りのある街頭、
人々が集う喫茶店や居酒屋で語りかける(時空を超えたセールスマン)。特に重要なことは、一
つの文化財はただそのひとつの文化財の歴史的価値だけではなく、それを取り巻く多種の文化
財の価値、あるいは周辺環境の状況を含めた総体的価値を語る必要性である。このことが極め
て重要なことで、それが正しく語られてこそ、地域文化生成の本質を学びとることができ、そ
こに住む、あるいはそこで育ったものたちが地域アイデンティテイを確認でき、自信や誇りや
自覚できることに繋がると考える。
さらに、もうひとつの手法は文化財と係る機会を生み出すこと。現代社会を生きる我々は、
ひとりひとりが様々なニーズを持っている。そのニーズに、いつでも、どこでも答えるコンテ
ンツとして、ネット等の検索機能を利用し、時空制限なしに情報提供する(信州文化財コンシ
ェルジェ)。重要な点は情報検索の結果、受信者が個々のニーズに関連した文化財にヒットし
、それの知識を得ること。「ふ~ん、こんなところにも文化財があるのか。自分の質問に文化
財はなにか、関係するのか。へー、そうなんだ。」と..…。さらに、「ちょっと、行ってみよー
」と現地にいく行動を起こすまでいければ幸い。行動を起こすとなれば、そこに時空を超えた
セールスマンが出動し、文化財の価値を歴史叙述することにも繋がっていく。
12
(6)長野県埋蔵文化財センター調査部 鶴田 典昭
研究会では、問題の設定、在りたい姿、現状分析、政策の内容の検討という工程の中で、政
策が提言されていく、という流れを体験することができた。埋蔵文化財の記録保存を通常業務
とする私にとって、とても貴重な体験であった。
研究テーマ「文化財は元気な未来を拓くおらほの宝~保存だけでなく地域活性化につなげる
方策の検討~」での、在りたい姿は以下の 3 点にまとめられた。
●地域に文化財が根付いている
●世代を超えて文化財を共有している地域
●私の歴史に誇りを持てる地域
いずれも、「地域」という言葉が含まれており、「地域」が本研究テーマのキーワードであ
ると考えている。
現状分析では、上記の在りたい姿からは、遠ざかった状態にあることが確認された。現状を
在りたい姿に近づけために、二つの政策を提言した。『信州文化財コンシェルジュ』と『時空
を超えたセールスマン』である。
提示した三つの在りたい姿は「地域」に暮らす人々の、地域社会に対する関わり方の問題で
ある。主体者は「地域」の住人であり、地域に暮らす人々の地域に対する「内面を向いた認識」
ということができる。提示した政策は、地域から外界に向けた外側への発信である。その方向
性の不整合に、戸惑いを感じながら議論に参加した。実際に、そのような戸惑いについて発言
したこともあった。
検討を進める中の現状分析で、10 代~40 代の若い世代に地域の文化財に対する関心が少な
いという現状が浮彫りになった。この問題が、三つの在りたい姿を実現するために、大きな壁
となっていることは間違いない。現在、地域の博物館や文化財関係の行政機関が、展示会やイ
ベントなどで地域の文化財の普及活動をおこなっているが、参加者は高齢者が多く、10 代~
40 代の若い世代の関心は少ない。この様な現状を鑑みるに、これまでの活動とは切り口の異な
った活動(政策)が必要であることは明らかである。『信州文化財コンシェルジュ』と『時空
を超えたセールスマン』は、従来の視点とは異なる政策である。そういった点が、評価された
のだと考える。
しかしながら、在りたい姿は「地域」に暮らす人々の意識が変わらなければ、実現できない。
主体者は、それぞれの地域の住人である。このことを、念頭において政策を進めていく必要が
あると感じている。
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(7)長野県埋蔵文化財センター調査部 黒岩 隆
県職員となって 26 年、今まで県の政策を改めて考える時間を持つことはなかった。今回初め
て、自分の仕事にも関わる文化財を素材に、県民のための政策を考える機会を得た。
高校の教員と遺跡調査研究の仕事を交互にやってきた自分は、専門的な仕事と教育的な仕事
を両立してきた形となる(教員も専門職かもしれないが…)
。そんな背景の中で、今回職場から
の推薦ということで参加して、当初は面倒くさい感はあったが、最後は成果も上がり、参加し
てよかったという気持ちとなった。
そこで、最初のキックオフミーティングにはじまり、10 回のグループ活動、テーマアドバイザ
ーとの懇談、そして知事へのプレゼンテーションを通して、感じたことを思うままに箇条書き
する。
・長野県職員として、自分は長野県民のために役に立つ仕事をしなくてはならないという
自覚を改めて持った。
・政策を考えることによって、長野県の足りない部分が見えてきた気がする。
・自分のやってきた仕事の専門性が大切だと改めて感じた。
・自分の殻を破り、
「縄文人クロ」によってプレゼンテーションを行ったことで思った以上
に効果があったのには驚いた。
・生活に直結しない文化財を、一般県民にアピールする難しさを感じた。
・文化財は、すべての部署につながりを持てる貴重な素材であることに気付かされた。
・普段触れ合うことのない他部署、他職場の若手職員と一緒に一つの仕事をすることがで
きて、新鮮で楽しかった。
・他部署、他職場の職員と一緒にできる仕事が他にもあれば楽しいと思った。
・キックオフミーティング、プレゼンテーション後の懇親会では、多くの普段触れ合うこ
とのない人たちと交流が持てて有意義であった。
・今回の政策研究のような県の企画に、職場の他職員も参加することが、長野県のために
は望ましいと考える。
・今回知り合った他部署、他職場の人たちとの交流を今後も続け、今後の仕事に活かして
いければと考える。
・今回の政策研究、およびその手法を、今後の職場の仕事に活かしていければと思う。
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おわりに
職員による政策研究に参加したことで、メンバーそれぞれに学んだこと、感じたことがあ
るかと思うが、主にまとめると、既存の枠にとらわれない考え方、多角的に物事を見ること、
立場を異にするメンバーとの協働、自分たちの考えや、文化財についてのよりよい発信につ
いて考えること、概ね以上のような貴重な経験ができたことが有益であった。
これらの経験は、政策研究の場だけにとどまるものではなく、今後の通常業務に関わるも
のばかりであるので、しっかり活かして、それぞれの仕事をよりよいものにしていきたいと
思う。
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