平成 26 年度職員による政策研究 「自然エネルギーの推進と景観保全等とのあり方について」研究報告書(概要版) 平成 26 年度職員による政策研究グループ NO.5 太田(松川村役場) 斎藤(大町保健福祉事務所) 大月(中信会計センター大町分室) 関崎、土屋、松田、塩野(北安曇地方事務所) Ⅰ はじめに(ありたい姿 何を実現したいのか) 太陽光発電をはじめとする自然エネルギーの推進と活用の動きは、固定価格買取制度や地方自 治体の補助制度などを利用し、全国的な広まりをみせており、大北地域においても自然エネルギ ーを活用する発電施設が建設されている。 一方、特に太陽光発電施設に関しては、施設設置自体に対する法的な規制がないこともあり、 周囲に与える景観や生活環境への影響が懸念されることから、設置される地域での住民不安が高 まり、地域紛争に発展するケースもある。 なお、本県のエネルギー需給状況をみると、更なる自然エネルギーの活用が必要であり、地域 住民の理解の下、景観や生活環境へ配慮した自然エネルギーの秩序ある推進を図る必要がある。 Ⅱ 現状 1 景観への影響 県建設部の調査では、 「大規模な太陽光発電施設の設置に関し、景観上の観点から懸念されるこ とがある。」と回答した市町村が31と半数近くある。 2 大北地域の先事事例調査 施設周辺住民からの苦情等はないが、特に太陽光発電施設では設置時に一人しか雇用を生まな い、また、地域外の事業者が設置すると利益が地域へ還元されないなど、地域経済への直接の波 及効果は薄いのではないか、との見解がある。 3 アンケート調査結果 地元住民、観光客とも自然エネルギーの推進自体は賛成であるが、自宅の周辺への太陽光発電 施設の設置計画に対しては、賛否がわかれた。 4 県内市町村の規制の状況 23 市町村が何らかの制度あり。9市町村が制定を検討中。 佐久市、飯田市など7市町村が条例などで太陽光発電施設を対象とする明確な規定を設けてい る。 5 県外事例調査 山梨県が「富士山北麓(ほくろく)世界遺産景観保全地区」を定め、1万㎡を超える太陽光発 電施設について届出が必要としている。市町村では、富士市、浜松市、京都市などにある。 6 太陽光発電施設有害性調査 家庭用太陽光発電施設に関しては、明確な健康被害は報告されていない。 1 Ⅲ ギャップを埋めるために、今、着眼して取り組むこと 「地域住民の理解の下、景観や生活環境へ配慮した自然エネルギーの秩序ある推進を図る」 ↓ 計画の把握や地域の合意づくりを支援する制度が必要 その上で、地域の実情に応じて、一定のルールづくりを行う。 Ⅳ 提案する政策と政策の効果 【計画の把握や地域の合意づくりを支援する制度について】 1 固定価格買取制度の活用 (1) 情報開示を利用した設置計画の把握 周辺住民が知らないうちにメガソーラーの設置計画が進み地域紛争となる事例があることか ら、固定価格買取制度に係る設備認定の情報開示を行うことにより、設置市町村が計画を把握 し必要な事項を指導できるように経済産業省に制度改善を求める。 (2) 地元に対する説明会の開催を固定価格買取制度の認定の要件に加える。 2 合意づくりに向けてのインセンティブ (1) 県補助金補助(※)要件に、「地元説明の実施」を盛込む。 (2) 周辺の環境に配慮した施設整備部分(緑化等)には、収益納付を免除 ※ 自然エネルギー地域基金活用事業 【信州おひさまガイドライン】の制定(地域の実情に応じた、一定のルールづくり) 3 ゾーニング (1) ガイドラインでゾーニングの基準提示(県) 区分案:設置を認めない、景観に配慮して設置、住民に周知して設置、規制なし 太陽光発電施設については、事例が少ないことから、県が情報収集し、ガイドライとしてま とめることにより、市町村と情報共有を図ることができる。 (2) ガイドラインを参考に市町村がゾーニング 自然環境や景観、生活環境との調和を図るため、 太陽光発電施設の設置を推進する地区と抑 制する地区を定めることにより、規制と誘導の効果が期待できる。 (3) 市町村のゾーニング結果をとりまとめ、県が公表 事業者と施設適地の情報をマッチングすることができるという効果が期待できる。 4 地域への還元(エネルギーの地産地消) 地域が主導して、地域に還元できる体系を構築する必要がある。 (1) 地域主導型の自然エネルギー事業の創設 (地域の担い手が地域の資金を活用して行う) 地域の資金を集めたファンドの造成 地域の資源を活かした自然エネルギーの推進 例:温泉熱を利用したバイナリー発電 地域の金融機関や企業に対して、ファンド創設や発電施設設置の情報収集、情報提供、相談 等を行う。 (2) 事業者の地域への貢献活動を表彰制度などにより評価 (3) 地域の防犯(ライトの設置、敷地内監視カメラの活用)、AEDの設置、地区会費の負担、 地区清掃などへの積極的な参加などを盛り込んだ環境保全協定を結ぶことを推奨 2
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