下水処理に必要な消費電力量 70%削減を目標とする

― 記者発表資料 ―
平成27年2月26日
日本下水道事業団
-下水道革新的技術実証事業(B-DASH プロジェクト)-
下水処理に必要な消費電力量 70%削減を目標とする
「無曝気循環式水処理技術実証研究」について
実証施設の完成記念式典を開催しました
日本下水道事業団(JS)では、高知市・国立大学法人高知大学・メタウォーター株
式会社の 3 者と共同で、国土交通省国土技術政策総合研究所からの委託を受け、国土
交通省が実施する「下水道革新的技術実証事業(B-DASH プロジェクト ※ )」において、
「無曝気循環式水処理技術実証研究」を実施しています。
本研究は、既設施設を活用し、良好な処理水質を確保しながら、消費電力量を 70%
削減する標準活性汚泥法の代替技術である「無曝気循環式水処理技術」について、実
し も ぢ
証フィールドである高知市 下知 水再生センターにおいて、その処理性能や省エネルギ
ー効果、コスト縮減効果などの実証を行うものです。
本研究は、平成 26 年 6 月に着手し、実証施設の建設工事を実施して参りましたが、
平成 27 年 1 月 28 日より運転を開始しました。これを記念して、平成 27 年 2 月 26 日
に下知水再生センターにおいて完成記念式典を開催しました。初めに、岡﨑誠也 高知
市長、脇口宏 高知大学学長、谷戸善彦 日本下水道事業団理事長、木田 友康 メタウ
ォーター株式会社代表取締役社長より、主催者挨拶がありました。ご来賓を代表して、
たか ひろ
髙島英二郎 国土交通省国土技術政策総合研究所下水道研究部長、山根堂 宏 高知市議
会議長よりご祝辞を頂いた後、ご来賓および共同研究体の代表者によるくす玉開披が
行われました。今後、引き続き実証試験を実施し、各種データの取得・解析を行うこ
とにより、本技術の実証を進めていく予定です。
JS では、本実証事業の実施を通じて、水処理施設の省エネルギー化や高度処理化な
ど、様々な課題に対応した技術開発を促進し、下水道ソリューションパートナーとし
て、地方公共団体のニーズに応える支援業務の一層の充実を図っていきます。
※ B-DASH プ ロ ジ ェ ク ト : Breakthrough by Dynamic Approach in Sewage High Technology Project
国土交通省国土技術政策総合研究所の委託研究として、民間企業や地方公共団体、大学などが連携して行う実規
模レベルの実証研究。
(問い合わせ先)
技術戦略部
水処理技術開発課長
橋本 敏一
TEL:03-6361-7844
FAX:03-5805-1828
E-mail:[email protected]
写
写真1
写真3
完成
成記念式典挙
挙行状況
「水の天使
使」柴田美奈
奈さんによる
る司会
写真2
写
JS 谷戸理事長に
谷
による主催者
者挨拶
写真
真4
くす玉
玉開披
【補足資料】
平成 27 年 2 月 26 日
報道関係者各位
高知市・国立大学法人高知大学・日本下水道事業団・
メタウォーター株式会社
共同研究体
国土交通省 下水道革新的技術実証事業(B-DASH プロジェクト)
「無曝気循環式水処理技術実証研究」について
1.実証研究の概要
国土交通省では、新技術の研究開発及び実用化を加速することにより、下水道事業
における大幅なコスト縮減や再生可能エネルギー創出等を実現し、併せて、本邦企業
による水ビジネスの海外展開を支援するため、平成 23 年度から「下水道革新的技術
実証事業(B-DASH プロジェクト;Breakthrough by Dynamic Approach in Sewage
High Technology Project)」を実施しています。
B-DASH プロジェクトでは、実規模レベルの施設を設置して技術的な実証を行い、
その成果を踏まえて、導入ガイドラインを策定することにより、全国展開を図ること
を目的としています。なお、B-DASH プロジェクトは、国土交通省国土技術政策総合
研究所からの委託研究として実施されます。
平成 26 年度は、①下水汚泥から水素を創出する創エネ技術、②既存施設を活用し
た省エネ型水処理技術(標準法)、③既存施設を活用した省エネ型水処理技術(高度処
理法)、④ICT による既存施設を活用した戦略的水処理管理技術、⑤既存施設を活用し
た ICT による都市浸水対策機能向上技術の 5 つの革新的技術に関する実証事業の提案
が公募されました。
高知市、国立大学法人高知大学、日本下水道事業団、メタウォーター株式会社の 4 者
は、上記②の公募に対して、既存施設を活用し、良好な処理水質を確保しながら消費
エネルギーを抑制する標準活性汚泥法代替技術として「無曝気循環式水処理技術」の
実証を提案し、採択されました。
本実証研究では、実証フィールドである高知市下知水再生センターの 1 系列(処理
能力 6,750 m 3 /日)を実証施設に改造し、実施設規模による実証試験を行うことにより、
革新的技術の処理性能や省エネルギー効果、コスト削減効果などについて実証を行い
ます。
1
2.実証研究の背景
我が国の下水道事業では、急激な人口減少・高齢化社会が到来する中、料金収入の
減少による財政難や技術力の確保不足、施設老朽化など、多くの課題を抱えています。
このような状況のなか、
「新下水道ビジョン」に示されているように、流入量減少に対
応した処理場のダウンサイジングや建設費・維持管理費の削減を可能とする新技術、
既設躯体を活用した改築更新技術、消費電力量の削減などが求められています。
平成 24 年度末現在、全国で水処理施設を有する下水処理場は 2,141 箇所であり、う
ち標準活性汚泥法は、オキシデーションディッチ法に次いで多い 648 箇所で採用され
ており、処理水量 10 千 m 3 /日以上の下水処理場では約 75%で採用されています。また、
下水処理場の電力消費量のおよそ半分は水処理に係るものであり、その大部分が反応
タンクでの曝気に要するものです。
したがって、今後、下水処理場の改築更新の増大が予想されるなか、標準活性汚泥
法の既存施設の改築更新に適用可能であり、かつ、電力消費量を大幅に削減する革新
的な省エネ型の水処理技術が希求されています。
本実証研究は、既存施設を有効活用しつつ、消費電力量の大幅削減と良好な処理水
質の実現する、標準活性汚泥法代替の革新的技術を実証するものであり、下水道経営
の健全化と継続性の確保に貢献するものと期待されます。
3.実証技術の概要
本実証研究において実証する革新的技術「無曝気循環式水処理技術」は、生物処理
に必要な酸素を大気中から自然の溶解原理に基づき取り込む「無曝気」※方式である
ため、消費電力量を大幅に削減できることや、処理水の「循環」により安定した処理
水質を得ることが可能であること、既存の下水処理場への設置が容易であることなど
を特徴とする、標準活性汚泥法代替の水処理技術です。
※曝気用のブロワは不要ですが、低動力の通気ファンは必要となります。
3-1.実証技術のフロー
本技術は、微生物を保持する担体と大気圧下での気液接触により酸素溶解を行う散
水方式を用いた生物処理と、その前段および後段に浮上担体を用いた「ろ過」を組み
合わせた水処理方法です。
本技術は、図1に示すとおり、3 つの水槽から構成され、1 槽目を第一バイオリアク
ター(第一BR)、2槽目を第二バイオリアクター(第二BR)、3槽目をファイナル
フィルター(FF)と呼んでいます。
第一BRは、浮上担体による「ろ過」方式を採用しています。ここでは、主に流入
下水中の夾雑物や浮遊物質(SS)の除去を行います。また、第二BRからの循環水
を第一BRに戻すことにより、担体に付着した微生物による有機物除去を期待できる
ことから、本実証研究ではその除去効果についても検証します。
処理のメインとなる第二BRは、従来の散水ろ床法を改良し、微生物の付着しやす
い担体を充填した生物膜法を採用しています。ここでは、散水方式(無曝気方式)の
採用と、第二BR処理水を「循環」させることにより、低動力でかつ安定した生物処
2
理を行います。また、従来の散水ろ床法の課題であったろ床閉塞等について、担体の
曝気洗浄を行う等により対策を図っています。
最後のFFは、第一 BR および第二 BR より細かな浮上ろ材を充填した「ろ過」方
式を採用することにより、仕上げ処理を行います。ここでは、第二BRの担体から剥
離した生物膜等の微細なSSを除去することにより,処理水質の安定化を図ります。
図1
実証技術のフロー
3-2.本技術の特徴
①
消費電力量の大幅削減
従来の標準活性汚泥法では、生物処理に必要な酸素を供給するため、反応タンクに
大量の空気を送り込む送風機設備を必要としていました。本技術では、大気圧下での
気液接触により酸素を取り込む方式を採用することにより、低動力で酸素供給を行う
ことが可能です。そのため、水処理に係る消費電力量の大部分を占める送風機設備の
消費電力量を削減することにより、水処理全体の消費電力量を大幅に低減します。
表1
水処理全体の単位処理水量あたりの消費電力量の比較
従来技術
本技術(目標値)
(標準活性汚泥法)
0.06 kWh/m 3 (注)
0.2 kWh/m 3
〔従来比▲70%〕
(注)消費電力量は運転条件により異なります
②
安定した処理水質の確保
本技術では、第二BRでの処理効果をより向上・安定化させるため、第二BR処理
水を循環させる方式を採用しています。
3
また、
、循環水の
の一部を第一
一BRに循
循環すること
とにより、 循環水中に
に多くの溶
溶存酸素
が含まれ
れているこ
ことから、ろ
ろ過による
るSSや夾雑
雑物の固液
液分離による
る物理処理
理に加え
て、微生
生物による
る有機物除去
去の効果が
が期待できま
ます。
さら に、FFに
において、第
第二BRか
から剥離した
た生物膜等
等の微細なS
SSを効率
率的に除
去する ことにより
り、安定的に
に良好な処
処理水質を確
確保します
す。
の制御やろ
ろ過・洗浄操
操作の自動
動化により、 容易な運
運転管理
以上 に加えて、 循環水量の
を実現 します。
物理・生
生物処理
物理処理
理
生物処理
循環水
処理水
処
原水
P P
第一
一BR
図2
2
③
ファイナ
ナル
第二BR
生物処 理と物理処
処理の組み合
合わせによ
よる処理安定
定化
既存
存処理場へ
への適用容易
易性
これま
までに供用
用開始した下
下水処理場
場は約
2,100 箇
箇所以上に 達し、今後
後、既存施 設の
改築更新
新が増大す
することが予
予想されま
ます。
本技術
術は、標準
準活性汚泥法
法との同程
程度以
下のスペ
ペースで設
設置可能であ
あり、また
た、沈
殿池等 に納まる高
高さとなっ ていること
とから、
設の改築更
更新への適用
用が容易で
です。
既存施設
また、
、海外への
の普及展開な
など、新設
設が求
められ る場合にお
おいても、施
施設がコン
ンパク
トであ ることによ
より、建設コ
コストの抑
抑制を
です。
図るこ とが可能で
図3
本技術の
の設置に
必要な スペースの
のイメージ
4.実証
証施設の概
概要
高知市
市は、北に
に急峻な四国
国山地、南
南に黒潮が流
流れる太平
平洋に挟まれ
れているた め、温
暖な気候
候で年間降
降雨量は 27
700 mm と 非常に多い
いのが特徴 です,
実証施
施設を設置
置する高知市
市下知水再
再生センター
ーは、観光 名所の「は
はりまや橋」
」や「高
知城」等
等を含む、 高知市の中
中心市街地
地 1,200 ha を処理区域
域とする、 処理人口 81,000
8
人、処理
理能力 66, 600 m 3 /日 の下水処理
理場です。放
放流先は浦
浦戸湾であり
り、その水
水質改善
にも大 きく貢献し
しています。
。
証研究では
は、下知水再
再生センタ
ターの既設の
の標準活性
性汚泥法施設
設の 1 系列
列(東 7
本実証
系、処理
理能力 6,7 50 m 3 /日) を改造し、
、実規模に
による実証試
試験を実施
施します。
4
5.現在
在までの経
経緯と今後の
の予定
実証施
施設は、平
平成 26 年 6 月に現地で
での施工に
に着手し、土
土木施設の
の改造、機械
械・電気
設備工事
事を 12 月 までに実施
施しました。
。
その後
後、試運転
転を経て、1
1 月 28 日に
に種汚泥を 投入し、実
実下水によ る実証施設
設の立ち
上げを 開始しまし
した。処理水
水量を段階 的に増加さ
させ、2 月中
中旬からは実
実証設備の
の冬期の
力(4,400m
m 3 /日)で運
運転を行っ
っています。
。現在、約
約 2 週間が経
経過し、良
良好な処
処理能力
理水質が
が得られて
ています
今後 は、最適な
な運転条件の
の検討や省
省エネルギー
ー効果、処
処理の安定性
性などにつ いて、
実証を進
進める予定
定です。
着工前
反応タン
ンク内の改造
造工事状況
(平成
成 26 年4月 時点)
(平成
成 26 年 8 月
月撮影)
第二 BR槽内の
の風景
第二BR
R槽への担体
体投入状況
成 26 年 12 月撮影)
月
(平成
(平成
成 26 年 12 月
月撮影)
5