21概要(PDF:93KB)

「オープンデータ化の推進と活用について」研究報告書
研究生
今井浩一
文化芸術エンタテイメントライター/エディター
鄭あきひと
伊那谷ソーシャルメディア研究会
田村茂樹
登山ガイド/小谷村地域おこし協力隊
宮島弘之
企業局川中島水道管理事務所/デジタルアーキビスト
当グループの研究は、平成 25 年度における研究の継続研究としてスタートしました。
平成 25 年度から引き続きの研究生は県職員一名のみで、残りの 3 名は平成 26 年度からのいずれも民
間からの参加です。みな、それぞれの分野でのエキスパートであり、それぞれの専門分野を活かして研
究をおこないました。
平成 25 年度における研究テーマは「SNS(ソーシャルネット・ワーク・サービス)の県政への活用」
でしたが、当グループでは知事から特に出された「信州を南北軸でつなぐ交流圏の構築」という課題を
受けて、SNS にこだわらず、幅広い視点で研究をおこなうこととしました。
当グループがまず着目したのは、
「地図」です。
信州を訪れる人が最初に信州を知るために手に取るのは地図です。たとえば信州には「中信」「南信」
「北信」
「東信」という呼び方がありますが、初めての来訪者には何がどこを示すのか殆どわかりません。
そのような人々に場所を正確に伝えるには地図が最適な手段となります。
幸いなことに現代ではスマートフォンが普及し、地図についてもスマートフォン上でアプリにより
活用されています。その際利用されているのが地理空間情報です。ほとんどのスマートフォンには GPS
が搭載されており、GPS をもとにして現在地をスマートフォン上の地図に示すことができるとともに、
その他の観光情報を地図上に示すことが可能となっています。
また、スマートフォンを介している SNS では、情報に合わせて自分の地理空間情報を発信することに
より、受信者をその場所に誘導することができるようになっています。
長野県を始め各地方公共団体でも数種の地図を作成しているところですが、なかなか思うような地図
が見つかりません。かといって、自分の都合の良い地図は、自分にとっては都合がよくても、他の人に
とって、必ずしも良い地図であるとは限りません。
そのような中で、基本的な地図データを無償で提供されれば、それを利用者がカスタマイズして使用
することができる、そんな仕組みを考えました。
一方、長野県立歴史館には各時代において作成された多くの地図が保管されています。これらの地図
はそれぞれその時点での情報が書き込まれており、それひとつで貴重なデータブックとなっています。
この古地図とその時代の統計情報等を組み合わせて解析することにより、信州の変遷が明確となってき
ます。
これらの作業を行う上で地図をそのまま利用することは、原本の破損を招くことから、いったん原本
をデジタル化して活用(デジタルアーカイブ)することが有効なのですが、本県においてはデータの解
像度が低い等、利用面での視点をもったデジタルアーカイブが行われていないことが確認されました。
そこで我々は、
① まず「地図」について、実用に耐えるような精度でデジタルアーカイブを行い、それをオープ
ンデータとして公表すること。
② 地理空間情報を明確にした形で行政情報をオープンデータとして公表していくこと。
を提案し、さらにこれらオープンデータを活用した長野県の施策について、いくつかの提案を行うこ
ととしました。
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オープンデータ活用に向けての施策
(1) 県がオープンデータの活用例を提示すること。
民間によるオープンデータの活用を促す場合、単にデータのみを提示するばかりでなく、県とし
て具体的にオープンデータの活用例を提示することが有効と考えます。
たとえば地図を重点的にオープンデータ化する場合は、スマホアプリ「高遠ぶらり」に準じた形
で各地図を表示させ、山岳等のデータと連携させることなどが有効と考えられます。
(2) 知恵だし会の開催
第2章で示したとおり、横浜市やビッグデータ・オープンデータ活用推進協議会(武雄市、千葉
市、奈良市、福岡市)では、ハッカソン、アイデアソンといった、専門家によるオープンデータの
活用についての検討会を開催しています。
長野県においても、オープンデータに関する要望を伺うとともに、県で活用いただきたいオープ
ンデータを示し、活用を促す手段として、県内各地で「知恵だし会」の開催を提案します。
(3) 役に立つサービス開発コンペの開催
県が公開するオープンデータの活用についてコンペを開催し、アイデアを募集することにより、
積極的な公共の利益に立ったオープンデータの活用を推進することを提案します。
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オープンデータ化から始まる物語の創造
(1) シルク・ドゥ・シルク(Cirque de Silk)
フランス語のシルク(Cirque=サーカス)と英語のシルク(Silk=絹)を合わせた造語です。
信州の近代文化を彩った絹文化を、信州を南北軸につなげる共通項として地図上でとらえ、県内
各地の文化に根差した芸術活動(大道芸)を、シルクロードさながらに街道を巡り開催する企画で
す。
(2) 塩街道はジオ街道
かつて信州まで南北に結び、塩(シオ)を運んだ街道について、歴史、地形的、文化的特徴を、
地図と現地で学び、再確認する催しの企画です。
(3) 山岳県「信州」
ふるくから山と親しみ山とともに生きてきた人々の営みを、美しい地図アプリで世界に発信しま
す。また、信州に関するあらゆる気象データを地理空間情報を活用して地図上に表示します。