中小自動車部品サプライヤーの階層別特徴-全国約900社

研究ノート
中小自動車部品サプライヤーの階層別特徴
全国約900社アンケート調査の検討
遠山 恭司, 清
一郎, 菊池 航,
自動車サプライヤーシステム研究会
はじめに
一郎教
そこで本稿は, 関東学院大学の清
1. アンケート回答企業の階層別概要
授を中心とした研究グループによって
2. 主要製品の生産と設計分担
年
月に実施されたアンケート調査結果を利用
3. 取引関係とリーマン・ショック不況への対
応
し2) , 3次に及ぶ約
社の中小サプライヤ
ーのデータを階層別に分析する3)。
4. 海外進出サプライヤーの特徴
年代
おわりに
はじめに
本稿の目的は, 全国の中小自動車部品サプ
ライヤーを対象としたアンケート調査結果を
利用し, 中小自動車部品サプライヤーの特徴
を階層別に明らかにすることである。
自動車産業のサプライヤーを対象にした研
究はこれまで膨大に積み重ねられてきたが,
中小サプライヤー, あるいは, 2次・3次層
という下層構造にまで踏み込んだ定量的な研
究は必ずしも多くない。 特定の地域における
下層構造を含むサプライヤーシステムの全体
像を明らかにした研究として, 金子 (
) や藤本・清・武石 (
,
) があげられ
るが, その後, 中小サプライヤーを中心とし
た下層構造の一般像を把握しようとする研究
は, 資料上の制約もあり, 管見の限り, ほと
んどなされてこなかった1)。
1) 1次サプライヤーと2次サプライヤーの企業
間関係を分析した近年の事例研究としては, ト
ヨタへ主に供給するアイシン精機を取り上げた
李 (
), カーエレクトロニクス部品に着目
してデンソーや村田製作所などを取り上げた佐
伯 (
) があげられる。 また, 朴 (
) は,
ヴィッツのパワーステアリング開発を事例に,
1次サプライヤーから3次サプライヤーにおよ
ぶ企業間関係の実態を明らかにしている。
2) 約
社から有効回答を得た (回収率
%)。
なお, アンケート調査の枠組みについては, 遠
山・清・自動車サプライヤーシステム研究会
(
) で詳細な説明を行っているので, そち
らを参照していただきたい。 アンケート調査票
の設計では, 以下のメンバーの尽力が大きい。
青木克生氏 (明治大学), 伊藤誠悟氏 (武蔵大
学), 兼村智也氏 (松本大学), 北原敬之氏 (早
稲田大学自動車部品産業研究所), 木村 弘氏
(広島修道大学), 黒瀬直宏氏 (嘉悦大学), ダ
ニエル・ヘラー氏 (横浜国立大学), 田村 豊
氏 (愛知東邦大学), 中川洋一郎氏 (中央大学),
西岡 正氏 (兵庫県立大学), 野村俊郎氏 (鹿
児島県立短期大学), 目代武史氏 (九州大学),
山崎修嗣氏 (広島大学), 林 松国氏 (小樽商
科大学)。
3) 同アンケートを利用した地区別分析について
は, 関東学院大学のホームページで公開されて
立教経済学研究
第
以降, 自動車産業は海外生産のさらなる拡大,
リーマン・ショックや東日本大震災などの環
巻
第3号
年
層にいくほど依存度が低くなっている。
販売先数をみると, 1次サプライヤー 社,
境変化を経験してきた。 本稿が利用するデー
2次サプライヤー
タは, 藤本・清・武石 (
) で作成された
社と, 下層にいくほど販売先数が少なくなっ
社, 3次サプライヤー
調査項目を参照しつつ, こうした外部環境の
ている。 1次サプライヤーは, 自動車メーカ
変化への対応も含んだものである。 そのため,
ーからの受注を中心に, 多数の販売先を有す
本稿は, 中小サプライヤーを中心としたサプ
ることで, 大きな売上を達成しているようで
ライヤーシステムの現在の全体像についての
ある。 外注比率は, 1次サプライヤー
基礎的な情報を提供するものと位置づけられ
2次サプライヤー
よう。
%と, わずかな差ではあるが, 下層にいくほ
%,
%, 3次サプライヤー
ど外注比率が低くなっている。 下層のサプラ
1. アンケート回答企業の階層別概要
イヤーほど, 売上規模が小さく, 自動車売上
比率が低く, 販売先数が少なく, 外注比率が
まず, 本アンケートに回答した約
社の
中小サプライヤーについて, 階層別に概要を
明らかにしておきたい (表1)。 回答企業数
は, 1次サプライヤー
社 , 2次サプラ
社, 3次サプライヤー
一方,
比率と収益性は, 必ずしも,
階層の深さとのあいだに相関を見て取ること
ができない。
比率は, 平均値を見る限
社, その
り, 各階層とも高くないため, 研究開発を積
社である。 その他とは, みずからを4
極的に行っている中小サプライヤーは必ずし
イヤー
他
4)
低くなる傾向があった。
次サプライヤーと回答したか, 無回答の企業
である。
も多くないと考えられる。
次に, 営業利益であるが, 営業利益率5%
はじめに, 売上高についてみてみよう。 売
上高は, 1次サプライヤー
次サプライヤー
以上を占めているのがもっとも多いのは, 1
百万円, 2
次サプライヤーではなく, 2次サプライヤー
百万円, 3次サプライ
である。 わずかな差ではあるものの, もっと
百万円と, 下層にいくほど小さくな
も収益性の高い階層が2次サプライヤーであ
っている。 階層によって, 明確な差が存在し
るというのは, 興味深い事実であるように思
ている。 売上高に占める自動車関連売上比率
われる。 一方, 営業利益率でマイナスが占め
は, 1次サプライヤー
る割合がもっとも小さいのは, 1次サプライ
ヤー
ヤー
%, 2次サプライ
%, 3次サプライヤー
%と, 下
ヤーであった。 営業利益率においてマイナス
を記録するサプライヤーが少ないという意味
いる全国と地域の分析 (
1
), 遠山 (
), 遠山・清・自動
車サプライヤーシステム研究会 (
) を参照
していただきたい。
4) アンケート調査は, 日本自動車部品工業会の
加盟企業を対象としておらず, 一般に世に知ら
れる大規模な1次サプライヤーを含まない。 そ
のため, ここで記述している1次サプライヤー
の特徴は, 中小規模の1次サプライヤーである。
具体的には, 従業員数がもっとも多い企業でも
名強である。
で, 安定した収益力を得ているのは1次サプ
ライヤーであると推測される。
2. 主要製品の生産と設計分担
これまでの研究において, 日本の自動車産
業では, とりわけ大規模な1次サプライヤー
について, 高い製品開発能力を保有している
ことが明らかにされてきた。 しかし, 中小サ
プライヤーにおける製品開発を分析した研究
中小自動車部品サプライヤーの階層別特徴
表1
回答企業の概要
1次サプライヤー
2次サプライヤー
3次サプライヤー
5%以上 (
0∼5% (
マイナス (
5%以上 (
0∼5 (
マイナス (
5%以上 (
0∼5% (
マイナス (
その他
回答企業数
売上高 (百万円)
自動車関連売上比率 (%)
販売先数
比率 (%)
従業員数 (人)
うちエンジニア数 (人)
外注比率 (%)
営業利益 (%)
)
)
)
)
)
)
)
)
)
5%以上 (
0∼5% (
マイナス (
)
)
)
(資料) 自動車サプライヤーシステムに関するアンケート調査 (単純集計・クロス集計報告書およびアンケートデータ
より独自に編集・作成。
表2
主要製品 (第1位回答) の生産
1次サプライヤー
2次サプライヤー
3次サプライヤー
その他
月産個数 (平均)
受注量 (%)
(
年比)
増加
減少
受注単価 (%) 増加
(
年比)
減少
(資料) 表1に同じ。
は少ない。 本節は, 中小サプライヤーにおけ
%, 3次サプライヤー
る主要製品の生産とその設計分担を階層別に
製品について, 1次サプライヤーは豊富なバ
検討する。
リエーションを少量で供給し, 3次サプライ
まず, 主要製品の月産個数 (平均) をみる
と, 1次サプライヤー
ヤー
万個, 2次サプライ
万個, 3次サプライヤー
万個であ
%であった。 主要
ヤーは少ないバリエーションで大量に供給し
ていることがうかがえる。
次に, 主要製品の設計について検討したい。
った (表2)。 同時に注目したいのが, 主要
設計については, ①自社独自設計, ②納入先
製品のバリエーション数である (図1)。 主
が基本設計をして自社で詳細設計を分担して
要製品におけるバリエーション数を階層別に
いる, ③納入先による設計, という3つの選
比較すると,
択肢から回答を得ている。 ①から③へと選択
種類以上と回答した割合は,
1次サプライヤー
%, 2次サプライヤー
%, 3次サプライヤー
%であった。
一方, 1∼3種類と回答した割合は, 1次
サプライヤー
%, 2次サプライヤー
肢が進むにしたがい, サプライヤーの製品開
発への関与は小さくなる。
図2は, 階層別の分析結果に加え, 海外生
産を実行しているサプライヤーを集約してそ
立教経済学研究
図1
第
巻
第3号
年
主要製品 (第1位回答から第3位回答) のバリエーション数
図2
主要製品 (第1位回答から第3位回答) の設計分担
中小自動車部品サプライヤーの階層別特徴
図3
主要製品 (第1位回答) の設計分担と収益性
の結果を示したものである。 自社独自設計は,
3次サプライヤー8%と, 下層にいくほど少
1次サプライヤー
なくなっている。
%, 2次サプライヤー5
%, 3次サプライヤー2%と, 下層にいくほ
大部分のサプライヤーが設計能力を有して
ど少なくなっている。 自社独自設計と回答し
いないといえるが, 見方を変えれば, 3次の
た製品は, 1次サプライヤーにおいてはカー
ような下層においても設計能力を有するサプ
エアコン用コンプレッサー, モータースピー
ライヤーの存在が確認された6)。 また, 海外
ドコントローラー, コントロールケーブル,
進出を実行しているサプライヤーは, 自社独
シートトリムなどであった。 2次サプライヤ
自設計
ーにおいては, ドアエンジン, 排気ガス浄化
計
装置, エキゾーストマニホールド, プランジ
劣るものの, 設計能力を有する割合の高いこ
ャー, ブレーキパッド, エアロパーツ, ウィ
とがわかる。
ンドウォッシャーノズルなどがあげられた。
%, 納入先基本設計で自社詳細設
%と, 1次サプライヤーの値にはやや
設計のあり方と収益性はどのような関係に
3次サプライヤーでは, ブラケット, ブレー
あるだろうか。 図3は, 主要製品における設
キライニングなどであった5)。 納入先基本設
計のあり方と直近年度売上高営業利益率につ
計で自社詳細設計を行うという回答も, 1次
いて, 階層別に整理したものである。 営業利
サプライヤー
%, 2次サプライヤー
%,
5) 他にも, 治具, 金型, 工作機械といった回答
があった。
6) 藤本・清・武石 (
) では, 3次サプライ
ヤー層はすべて, 納入先設計による生産であっ
た。
立教経済学研究
第
益率5%以上の比率がもっとも高いのは, 納
入先基本設計で自社詳細設計の主要製品を供
給する1次サプライヤーであった。 その後,
巻
第3号
年
3. 取引関係とリーマン・ショック不
況への対応
自社独自設計の主要製品を供給する2次サプ
ここでは, 中小サプライヤーの取引関係と
ライヤー, 自社独自設計の主要製品を供給す
リーマン・ショックへの対応について階層別
る1次サプライヤーが続いた。 自社独自設計
に検討する。
の主要製品を供給する1次サプライヤーは,
営業利益率マイナスのサプライヤーが少なく,
(1) 取引関係
安定した収益性の高さがうかがえる。
図4は, 各サプライヤーの主要製品の供給
営業利益率5%以上の比率がもっとも低い
のは, 納入先設計の主要製品を供給する1次
先について, 階層別に整理したものである。
一つの主要製品を複数の階層・企業に供給し
%を
サプライヤーであり, その次に低いのが, 納
ているケースがあるため, 合計値は
入先設計の主要製品を供給する3次サプライ
超えている。 1次サプライヤーにおける主要
ヤーであった。 特に, 納入先設計の主要製品
製品 (第1位回答) の供給先は, それぞれ,
を供給する3次サプライヤーは, 営業利益率
主力販売先である自動車メーカー
マイナスのサプライヤーも多く, 収益性が低
サプライヤー
く, 厳しい経営状態が推測される。
3次サプライヤー1%であった。 2次サプラ
%, 1次
%, 2次サプライヤー
%,
イヤーにおける主要製品の供給先は, それぞ
図4
主要製品 (第1位回答) の取引先
中小自動車部品サプライヤーの階層別特徴
図5
主要販売先への売上依存度
れ, 主力販売先である1次サプライヤー
2次サプライヤー
%,
「逆流」 型取引, 「飛び級」 型取引について
%, 3次サプライヤー2
若干の検討をしてみたい。 「逆流」 型取引で
%, 自動車メーカー8%であった。 3次サプ
あるが, 1次サプライヤーから2次サプライ
ライヤーにおける主要製品の供給先は, それ
ヤーへ供給された製品としてはエンジン廻り
ぞれ, 主力販売先である2次サプライヤー
のシャフト, ヒートシンク (半導体用) など
%, 1次サプライヤー
%, 3次サプライヤ
であった。 限られた事例ではあるが, 1次サ
ー6%, 自動車メーカー7%であった。 1次
プライヤーは, 同じ製品を, 2次サプライヤ
サプライヤー同士や2次サプライヤー同士と
ーのみに供給するのではなく, 1次サプライ
いった水平的な取引や, 1次サプライヤーが
ヤーや自動車メーカーにも供給していた8)。
2次サプライヤーへ供給する 「逆流」 型の取
また, 2次サプライヤーから3次サプライヤ
引, 2次サプライヤーから自動車メーカーへ
ーへ供給された製品としては, シートカバー
の供給, 3次サプライヤーから自動車メーカ
ー・1次サプライヤーへの供給といった 「飛
び級」 型の取引が存在することを確認でき
る7)。
7) こうした複雑な取引構造の在り方は, 藤本・
清・武石 (
) で指摘された。
8) こうした取引関係は, わが国最大のグローバ
ル・サプライヤーであるデンソーにおいても,
国内外に存在する。 どの階層でのビジネスであ
るかは問題ではなく, 収益性や競争力, 顧客満
足度, 経営資源の有効かつ効果的な活用を考慮
した, 高度な戦略的経営判断によるものである。
同社の共同研究メンバーからのご教示による。
立教経済学研究
表3
第
巻
第3号
年
主要製品の主力販売先との取引関係
(
1次サプライヤー
2次サプライヤー
年代以前が過
主力販売先との
取引開始時期
∼ 年代 ( )
年代 (
)
半
年代 (
)
知識の共有 (
)
工程改善支援 (
)
設備貸与 (
)
特にない (
)
3次サプライヤー
)内は%
その他
∼ 年代 ( )
年代 (
年代 (
)
が最多
年代 (
が二番
)
)
主力販売先から
の支援
工程改善支援 ( )
知識の共有 (
)
設備貸与 (
)
特にない (
)
知識の共有 (
)
工程改善支援 ( )
設備貸与 (
)
特にない (
)
設備貸与 (
)
知識の共有 (
)
)
工程改善支援 (
特にない (
)
製品最終納入先
(上位3つまで)
トヨタ, ホンダ,
トヨタ, 日産, ホ トヨタ, ホンダ,
日産, マツダ, い ンダ, 三菱自, マ 日産, 三菱自, マ
すゞ, ダイハツ
ツダ, スズキ
ツダ, スズキ
トヨタ, 日産, ホ
ンダ, 日野, マツ
ダ, 三菱自
(注) 製品最終納入先 (上位3つまで) は, 累積回答率の高い順。 数値は省略。
(資料) 表1に同じ。
ワイヤーがあげられる。 ここでも2次サプラ
イヤー
イヤーは, 3次サプライヤーのみに供給する
次サプライヤー
のではなく, 同じ製品を1次サプライヤーに
きな違いはない。
供給していた。
%, 2次サプライヤー
%, 3
%となり, 階層による大
一方, 主力販売先への売上依存度が低い
一方, 「飛び級」 型の取引であるが, 2次
%未満と回答したサプライヤーが占める割合
サプライヤーから自動車メーカーへ供給され
は, 1次サプライヤー
た製品としては, 窓のウォッシャーノズル,
ヤー
ポールパーキング, ビット・ソケットといっ
ており, 特定の販売先へ依存しない中小サプ
た小物部品や自動車生産ラインに必要な部品
ライヤーが一定程度存在している。 海外進出
などであった。 3次サプライヤーから自動車
を実行しているサプライヤーは,
メーカーへ供給されるケースはあまりないが,
売上高依存度と回答したサプライヤーの少な
トリムを供給している事例などがあった。
いことが注目される。
次に, 主要製品の主力販売先との取引関係
%, 2次サプライ
%, 3次サプライヤー
%となっ
%以上の
主力販売先との取引開始時期は, 1次サプ
について検討したい。 図5は, 主力販売先へ
ライヤーは
の売上依存度を示したものであるが, 図2と
と3次サプライヤーは
同じように, 階層別の分析結果に加え, 海外
た (表3)。 下層にいくほど, 主力販売先と
進出を実行しているサプライヤーの結果を示
の取引が始まってからの期間は短い傾向にあ
している。 主力販売先への売上依存度につい
った9)。 自動車メーカーと1次サプライヤー
て, ほぼ1社への依存とも言える
%, 2次サプライヤー
%, 3次サプライヤー
ど高くなっている。 ただ,
∼
年代が多かっ
%以上と
回答したサプライヤーが占める割合は, 1次
サプライヤー
年代以前, 2次サプライヤー
%と下層にいくほ
%以上と回答し
たサプライヤーが占める割合は, 1次サプラ
9) なお, 各階層における自動車部品事業開始年
の構成比をみると,
∼
年に開始した割
合は, 1次サプライヤーが約 %, 2次サプラ
イヤーが約 %, 3次サプライヤーが約 %で
あった。 戦前に開業したサプライヤーは1次サ
プライヤーにおいても約2%であり, 残りのサ
中小自動車部品サプライヤーの階層別特徴
図6
リーマン・ショック後の対応
の取引の大部分は, 長期に渡って継続されて
高い。 中小サプライヤーの主要製品が最終的
きたものであった。 また, 各階層において2
に納入される自動車メーカーについては, ど
割程度ではあるものの,
の階層においても, もっとも納品量の多い自
年代に取引を開
始したサプライヤーが存在した。
動車メーカーはトヨタであった。 トヨタに続
主力販売先からの支援は, もっとも回答数
が多かったのは 「特にない」 であり, 1次サ
プライヤー
%, 2次サプライヤー
3次サプライヤー
き, 最終的な納入先としてはホンダと日産が
多かった )。
%,
%であった。 主力販売
(2) リーマン・ショック不況への対応
先からの支援を内容別にみると, 工程改善支
リーマン・ショック後のサプライヤーの対
援, 知識 (改善事例等) の共有, 設備貸与が
応や政策の支援は, 階層によって異なってい
多かった。 ただ, 階層によって回答率の高い
たのだろうか。 まず, サプライヤーの対応を
支援内容は異なっており, 1次サプライヤー
階層別に検討したい (図6)。 上位3つの複
は工程改善支援, 知識の共有, 設備貸与であ
数回答を可とした設問であるため, 回答の合
り, 2次サプライヤーと3次サプライヤーで
計値は
%を超えている。
も同様ではあるが, やや設備貸与の回答率が
プライヤーは,
年以降に自動車部品事業を
開始した。 上層ほど, 自動車部品事業を開始し
た時期が早い傾向にあった。
) 1次サプライヤーではトヨタ
%, ホンダ
%, 日産
%, 2次サプライヤーではト
ヨタ
%, ホンダ
%, 日産
%, 3次
サプライヤーではトヨタ
%, ホンダ
%,
日産
%であった (複数回答)。
立教経済学研究
表4
第
巻
第3号
年
現在の問題点と今後の経営方針 (上位3つの複数回答)
(
現在直面している問題点
)内は%
今後の経営方針
受注量の減少 (
)
受注単価の引き下げ (
)
1次サプライヤー 受注先の生産縮小 (海外生産移転を含む) (
受注先からの製造品質要求の高度化 (
)
既存主要取引先との関係強化 (
)
)
既存製品分野での国内新規取引先開拓 (
)
) 生産工程・作業方法の改善・合理化 (
非自動車分野への多角化 (
)
取扱い自動車関連製品の多角化 (
)
受注量の減少 (
)
受注単価の引き下げ (
)
2次サプライヤー 受注先の生産縮小 (海外生産移転を含む) (
海外企業との競合激化 (
)
既存主要取引先との関係強化 (
)
生産工程・作業方法の改善・合理化 (
)
)
) 既存製品分野での国内新規取引先開拓 (
非自動車分野への多角化 (
)
取扱い自動車関連製品の多角化 (
)
受注量の減少 (
)
受注単価の引き下げ (
)
3次サプライヤー 受注先の生産縮小 (海外生産移転を含む) (
海外企業との競合激化 (
)
生産工程・作業方法の改善・合理化 (
)
既存主要取引先との関係強化 (
)
)
) 既存製品分野での国内新規取引先開拓 (
非自動車分野への多角化 (
)
取扱い自動車関連製品の多角化 (
)
受注量の減少 (
)
受注単価の引き下げ ( )
受注先の生産縮小 (海外生産移転を含む) (
受注先からの製造品質要求の高度化 (
)
生産工程・作業方法の改善・合理化 (
)
既存主要取引先との関係強化 (
)
)
) 既存製品分野での国内新規取引先開拓 (
非自動車分野への多角化 (
)
取扱い自動車関連製品の多角化 (
)
そ
の
他
(資料) 表1に同じ。
もっとも多かった対応は, 非正規社員の削
%, 3次サプライヤー
%に及んだ。 続い
減であった )。 雇用については, 正規社員の
て回答数が多かったのは, 債務保証を含む資
削減を行ったサプライヤーも多かった。 正規
金提供であり, 1次サプライヤー
社員を削減したのは, 1次サプライヤー
次サプライヤー
%であった。 アンケートには, 工程改善支
%と, 下層にいくほど増加した。 ま
援や知識 (セミナー等) の提供という選択肢
た, 既存設備の改善, 新規設備の導入,
/
活動の導入が行われ, 新規設備の導入
については1次サプライヤーが, 既存設備の
改善・
%, 3次サプライヤー
%, 3次サプライ
%, 2次サプライヤー
ヤー
%, 2
/
活動の導入については2次
サプライヤーが多かった。
リーマン・ショック後の行政からの中小サ
も設けられていたが, 大多数のサプライヤー
がそれらの支援は受けなかった。
中小サプライヤーが現在直面している問題
点と今後の経営方針について, 表4から検討
したい。 中小サプライヤーにとって最大の問
題点は, どの階層においても, 受注量の減少
プライヤーへの支援について, もっとも回答
であった。 1次サプライヤー
数が多かったのは 「特にない」 であり, 1次
プライヤー
サプライヤー
と, 下層にいくほど回答率が高くなっている。
%, 2次サプライヤー
%, 2次サ
%, 3次サプライヤー
%
二番目に大きな問題点は, 受注単価の引き下
) 全体でみてみると, 海外進出サプライヤーほ
ど非正規社員を削減し (
%), 営業利益率
5%以上のサプライヤーほど削減していない
(
%) 事実もある。
げであった。 1次サプライヤー
サプライヤー
%, 2次
%, 3次サプライヤー
%と, 各階層において5割程度を占めた。 そ
のほかにも, 受注先の生産縮小 (海外生産移
中小自動車部品サプライヤーの階層別特徴
転を含む), 海外企業との競争激化と回答し
あった。
た企業が多かった。 各階層において, 需要の
減少と企業間競争の激化の影響を受けている
4. 海外進出サプライヤーの特徴
ことが確認できる。
では, 中小サプライヤーは, どのような経
それでは, 中小サプライヤーにおける海外
営方針をもっているのだろうか。 重視されて
進出の状況をみてみよう。 海外へ単独で進出
いるのが, 既存主要取引先との関係強化, 生
した, 合弁事業がある, 技術提携していると
産工程・作業方法の改善・合理化であり, ど
の回答を得た中小サプライヤーは
の階層においても5割の回答率を超えている。
海外進出を計画中とした回答は
既存製品分野での国内新規取引先開拓という
表5により, 海外進出を実行している
回答も多いが, 1次サプライヤー
概要を階層別に検討しよう。
%, 2
社であり,
社であった。
社の
%, 3次サプライヤー
海外進出サプライヤーの売上高は, 表1で
%と, 下層にいくほど減少している。 一
示したアンケート回答企業全体の傾向と比較
次サプライヤー
方で, 非自動車分野への多角化は, 1次サプ
ライヤー
%, 2次サプライヤー
3次サプライヤー
%,
%と, 下層にいくほど
増加している。 下層にいくほど, 自動車部品
倍, 2次
して, 1次サプライヤーでは約
サプライヤーでは
では
倍, 3次サプライヤー
倍と, 下層にいくほど差が大きい。
自動車関連売上比率は, 1次サプライヤー
事業で生き残ることを容易ではないと考え,
%, 2次サプライヤー
%であり, 全
非自動車分野へ参入する必要性に迫られてい
体の傾向とは変わらない。 しかし, 3次サプ
るのかもしれない。
ライヤーは,
アンケートには, 海外生産の開始・拡大,
%であり, 全体の傾向と比
較してやや低い。
海外における人材の育成, 海外における設備
比率は, 1次サプライヤー
%, 2
投資の強化といった選択肢も設けられていた
次サプライヤー
が, こうした海外での経営活動に関連する項
%と, 下層にいくほど低くなっている。 営業
目を選択した中小サプライヤーは
利益率をみると, 2次サプライヤーにおいて
表5
%程度で
%, 3次サプライヤー
海外進出サプライヤーの企業概要
次サプライヤー
次サプライヤー
次サプライヤー
その他
サンプル数
売上高 (百万円)
自動車関連売上比率 (%)
販売先数
比率 (%)
従業員数 (人)
うちエンジニア数 (人)
営業利益 (%)
(資料) 表1に同じ。
5%以上 (
0∼5% (
マイナス (
)
)
)
5%以上 (
0∼5% (
マイナス (
)
)
)
5%以上 (
0∼5% (
マイナス (
)
)
)
5%以上 ( )
0∼5% (
)
マイナス (
)
立教経済学研究
表6
自社の既存人材で確保 (
)
1次
中途採用などで新たに確保 (
サプライヤー 経営現地化により駐在廃止 (
取引先からの支援 ( )
自社の既存人材で確保 (
)
2次
中途採用などで新たに確保 (
サプライヤー 経営現地化により駐在廃止 (
取引先からの支援 ( )
3次
サプライヤー
自社の既存人材で確保 (
)
中途採用などで新たに確保 (
そ
自社の既存人材で確保 (
)
経営現地化により駐在廃止 (
中途採用などで新たに確保 (
取引先からの支援 (
)
他
巻
第3号
年
海外進出サプライヤーに対する外部からの支援
進出に際す
る外部から
の支援 (%)
海外駐在人材
(複数回答) (%)
の
第
)
)
あり (
なし (
)
)
進出に際する
最大のサポート先
(実数)
進出に際して
最もサポートを受けた内容
(実数)
販売先 (1)
工場建設の許認可取得 (2)
仕入れ先 (1)
人材あっせん (1)
日本の公的機関 (1)
現地国の公的機関 (1)
)
)
あり (
なし (
)
)
資金調達 (5)
販売先 (6)
販路開拓支援 (3)
仕入れ先 (3)
人的ネットワークの紹介 (3)
日本の公的機関 (1)
工場建設の許認可取得 (2)
現地国の公的機関 (1)
人材あっせん (1)
)
あり (
なし (
)
)
販売先 (2)
仕入れ先 (1)
人的ネットワークの紹介 (2)
販路開拓支援 (1)
工場建設の許認可取得 (1)
)
)
あり (
なし (
)
)
販売先 (1)
販路開拓支援 (1)
(資料) 表1に同じ。
5%以上と回答した企業が多いのが注目され
ついては社外からの支援を受けることはなか
る。 一方で, 3次サプライヤーは, 営業利益
った。 しかし, 海外進出に際し, およそ半数
率5%以上という回答がなく, さらに, マイ
のサプライヤーが外部からなんらかの支援を
ナスと回答した割合が
%を占めており, 収
受けたと回答している。 必ずしも回答企業数
益性が低い。 海外進出サプライヤーの収益性
が多くないために傾向を見出すことは難しい
は, アンケート回答企業全体の傾向と比較し
が, 販売先や仕入れ先にサポートを受ける企
て, 必ずしも高くはないようである。
業が多かったようである。 ただ, 1次サプラ
中小サプライヤーは, 自社のみの経営資源
イヤーと2次サプライヤーには, 日本や現地
で海外進出を実現できるのだろうか。 表6は,
国の公的機関に支援を受けているケースもあ
海外進出サプライヤーが, 進出に際して必要
った。 もっともサポートを受けた内容をみる
な人材をどのように確保し, どのような支援
と, 工場建設の許認可取得, 資金調達, 販路
を外部から受けたのかを示したものである。
開拓支援, 人的ネットワークの紹介が行われ
まず, 海外駐在人材の確保であるが, 自社の
ていた。 とりわけ, 2次サプライヤーにおい
既存人材を活用することがもっとも多かった。
て資金調達と回答した企業が多く, 海外生産
1次サプライヤー
に必要な資金を供給する制度が整備されれば,
%, 2次サプライヤー
%, 3次サプライヤー
%と, 下層に
いくほど増加している。 次に多かったのが,
中小サプライヤーによる海外進出がより積極
的に展開される可能性も考えられよう。
中途採用などで新たに確保するという回答で
次に, 表7から, 海外進出サプライヤーの
ある。 他にも, 取引先からの支援を受けるサ
進出状況を階層別に検討してみたい (表7)。
プライヤーもいたが, その割合は1割未満で
進出先をみると, 階層を問わず, 中国とアセ
あった。
アンへの進出が多い。 両地域への最初の進出
大部分のサプライヤーは, 海外駐在人材に
時期は,
年代以降であり, 調査時点が
中小自動車部品サプライヤーの階層別特徴
表7
進出形態
(複数回答可)
進出先
1次サプライヤー
(回答企業数: )
2次サプライヤー
(回答企業数: )
3次サプライヤー
(回答企業数: )
海外進出サプライヤーの進出状況
北米:1
単独:1
欧州:1
単独:1
最初の
進出時期
∼
年代:1
年代:1
主たる
進出理由
販売先
(複数回答可)
その他:1
現地欧米系;1
市場獲得:1
現地欧米系;1
中国:4
合弁:2
単独:2
年代:2
年代:2
市場獲得:3
取引先要請:1
現地日系:2
現地欧米系:1
現地民族系:1
第三国への輸出:1
対日逆輸入:3
アセアン:4
合弁:1
単独:3
年代:2
年代:2
コスト削減:1
市場獲得:1
取引先要請:2
現地日系:4
対日逆輸入:2
北米:7
合弁:1
単独:4
技術提携:1
年代:1
年代:1
年代:5
市場獲得:3
取引先要請:4
現地日系:6
現地欧米系:1
欧州:1
―
年代:1
その他:1
―
中国:21
合弁:6
単独:11
技術提携:6
年代:6
年代:9
年代:6
コスト削減:9
市場獲得:5
取引先要請:7
現地日系:15
現地欧米系:2
現地民族系:3
第三国への輸出:4
対日逆輸入:15
アセアン:21
合弁:9
単独:11
技術提携:1
年代:1
年代:3
年代:9
年代:8
コスト削減:5
市場獲得:10
取引先要請:6
現地日系:17
現地欧米系:2
現地民族系:3
第三国への輸出:4
対日逆輸入:10
北米:1
単独:1
年代:1
市場獲得:1
現地日系:1
中国:5
単独:5
年代:1
年代:3
年代:1
コスト削減:3
市場獲得:1
取引先要請:1
現地日系:5
アセアン:2
単独:2
年代:2
取引先要請:2
現地日系:2
(注) 値は回答数。 複数回答項目では回答企業数と回答総数が一致しない。
(資料) 表1に同じ。
年末であるにもかかわらず,
年代以
ヤーにおいてはコスト削減と取引先要請が一
降と回答した企業が多かった 。 主たる進出
位で, 市場獲得が続いている。 すなわち, 下
理由は, 1次サプライヤーにおいては市場獲
層にいくほど, コスト削減のための海外進出
得, 取引先要請, コスト削減の順であり, 2
という性格が強くなっている。 販売先をみる
次サプライヤーにおいては市場獲得, コスト
と, もっとも多かった回答は, 現地日系への
削減, 取引先要請の順となり, 3次サプライ
供給である。 1次サプライヤーと2次サプラ
)
イヤーにおいては, 続いて, 対日逆輸入が多
) 経済産業省の行っている 「海外事業活動基本
調査」 各年版で輸送機械・中小企業をみると,
本調査に比べて企業規模が大きいものの,
年代後半から
年代にかけて調査対象・回答
企業数が大幅に増えている。
くなっている。 中国とアセアンの自動車市場
伸張と日系メーカーの現地生産拡大に対応し
ている部分と, 現地生産品目の価格競争力を
日本での部品取引に活用している中小サプラ
立教経済学研究
図7
第
巻
第3号
年
海外進出サプライヤーの経営動向 (2007年比)
イヤーのあり方が看取される。 現地欧米系や
どのように変化したかをみてみよう。 近年の
現地民族系へ供給するサプライヤーは, 1次
研究では, 海外進出・展開を果たした企業が,
サプライヤーと2次サプライヤーの2割程度
そうでない企業に比べて, 経営パフォーマン
であり, 3次サプライヤーには存在しなかっ
スにおいて優れているという結果が提示され
た。
ている )。 本調査の回答企業数は少ないが,
一方, 北米・欧州へ進出したサプライヤー
自動車産業の中小サプライヤーのみを対象と
は, 中国・アセアンへの進出と比べると少な
し, かつ, 階層別にも分けられるところに特
い。 北米・欧州へ進出した時期は, 相対的に,
徴がある (図7)。
古い年代であることも確認できる。 北米・欧
売上高の変化について, 1次サプライヤー
州へ進出する理由は, 市場獲得と取引先要請
は, 全国平均に比べて増加が少なく, 減少と
であり, コスト削減ではない。 販売先をみて
いう回答が上回り, 見劣りする結果が出てい
も, 現地欧米系と現地日系への供給は行われ
る。 逆に2次・3次サプライヤーは, 売上高
ているが, 第三国への輸出や対日逆輸入は行
が増加した企業が全国平均よりも多く, 売上
われていない。 サプライヤーにとって, 北米
高が減少した企業も少ない。 第2に, 従業員
・欧州へ進出することと中国・アセアンへ進
数の変化をみると, 2次サプライヤーは減少
出することの狙いは異なるものであったとい
という回答が全国平均を上回るものの, 1次
える。
最後に, リーマン・ショック前の
年と
比べて, 海外進出サプライヤーの経営動向が
) たとえば天野 (
日本政策金融公庫 (
), 中小企業庁編 (
) などを参照。
),
中小自動車部品サプライヤーの階層別特徴
サプライヤーは全国平均より良好で, 3次サ
プライヤーは, 増加・不変という回答のみで
おわりに
あり, 減少と回答した企業がゼロであった。
第3に, 受注数量において, 1次・2次サプ
本稿は, 全国の中小自動車部品サプライヤ
ライヤーは全国平均とほぼ同じ動向であった
ーを対象としたアンケート調査を利用し, 階
が, 3次サプライヤーは, 減少という回答比
層別に検討を加えてきた。 その結果, 下位階
率が4割を下回り, 増加と不変の回答で6割
層でも高い収益性を獲得するサプライヤーが
を超えている。
存在すること, また, 非常に少数であるとは
次に, 販売先から外注比率までを検討しよ
いえ, 下位階層でも主要製品を独自設計する
う。 販売先数の変化において, 3次サプライ
サプライヤーが存在することなど, 下位階層
ヤーは減少したとの回答がゼロで, 増加した
においても力強い中小サプライヤーが存在し
との回答が
%を占めている。 1次・2次サ
ていることが窺えた。 さらに, 先行研究で指
プライヤーでも販売先数が増加した比率は全
摘されたとおり, 本アンケート調査において
国平均よりも
%以上高い結果となった。 海
も, 同じ階層に所属するサプライヤー同士の
外売上比率の変化をみると, 3次, 2次, 1
水平的な取引, 上位階層から下位階層へ製品
次の順で増加したとの回答が高く, いずれも
が供給される 「逆流」 型取引, 1つ上の階層
全国平均を大きく上回っている。 最後に外注
を飛び越して2つ上の階層へと製品が供給さ
比率について, 1次・2次サプライヤーは,
れる 「飛び級」 型取引が確認された。 最後に,
増加と減少という回答が全国平均よりも高く,
海外進出している2次・3次サプライヤーが,
3次サプライヤーは, ほとんどが不変であり,
中小サプライヤーの全体的な傾向と比較して,
減少という回答がゼロであった。
高い経営成果を実現していたことも強調して
リーマン・ショック後における海外進出サ
おきたい。 多面的で複雑な性格を有するサプ
プライヤーの経営動向をまとめよう。 もっと
ライヤーシステムの実態へのより厳密な分析
も回答企業数の多かった海外進出2次サプラ
は, 今後の課題としたい。
イヤーは, サプライヤーの全国平均値に比べ,
売上高, 従業員数, 受注数量, 販売先数, 海
[付記] 本稿の分析に対して, アンケート
外売上のいずれにおいても増加の回答が多く,
調査に関わる多くの先生方や各種の関連する
厳しい経営環境の中で大いに健闘していると
研究会メンバーから貴重なご助言を賜った。
いえるだろう。 回答企業数がわずかに8社と
記して感謝の意をあらわしたい。 本校の誤り
少ないために一般化はできないものの, 海外
は, すべて筆者らの責任に帰するものである。
進出3次サプライヤーにおいて, 売上高・販
なお, 本稿は科学研究費補助金基盤研究A
売先・海外売上比率が増加したという回答が
(研究代表者:清
多く, 従業員数・外注比率が減少したという
の成果の一部である。
一郎, 課題番号
)
回答がゼロという経営パフォーマンスにも驚
かされる。 経営資源に制約されながら, 海外
参考文献
進出というリスクに挑戦した中小サプライヤ
天野倫文 (
ーの底力が表出したものといえるであろう。
)
東アジアの国際分業と日本企業
新たな企業成長への展望
李在鎬 (
有斐閣。
) 「2次サプライヤーにおける
重視論の再検討―アイシン精機の部品仕入先の
事例―」,
日本経営学会誌
第5号,
頁。
立教経済学研究
金子義郎 (
題点」,
第
) 「自動車関連中小工業の実態と問
あいち経済時報
, 愛知県経済
研究所。
巻
第3号
年
遠山恭司 (
) 「長野県上田・佐久地区の自動車
サプライヤーシステム調査報告」,
金子義郎 (
済研究所年報
) 「自動車関連中小工業実態調査結
果 (第2報)」,
あいち経済時報
, 愛
知県経済研究所。
佐伯靖雄 (
)
号,
中央大学経
頁。
遠山恭司・清
一郎・自動車サプライヤーシステ
ム研究会 (
) 「完成車組立工場地区別におけ
る中小自動車部品サプライヤーの特性―全国
自動車の電動化・電子化とサプ
ライヤー・システム―製品開発視点からの企業
間関係分析―
第
晃洋書房。
究
第
) 「自動車関連2次・
立教経済学研
巻第2号。
日本政策金融公庫総合研究所 (
自動車産業グローバル・サプライヤーシステムの
変化に関する研究会 (
社アンケート調査結果から―」,
)
「日本企業
の海外展開とその影響に関する調査」 結果 。
朴泰勲 (
) 「日本自動車産業の階層的分業構造
3次サプライヤー調査結果の概要」 関東学院大
と組織間関係―トヨタ系部品メーカー間の開発
学。
期間短縮をめぐる協業システム―」,
自動車産業グローバル・サプライヤーシステムの
変化に関する研究会 (
) 「自動車関連2次・
学会誌
第
藤本隆宏・清
号,
日本経営
頁。
一郎・武石彰 (
) 「日本自動車
3次サプライヤー調査結果の概要 (地域別の特
産業のサプライヤーシステムの全体像とその多
徴)」 関東学院大学。
面性」,
中小企業庁編 (
)
中小企業白書 。
機械経済研究
,
頁。