Digest 04

04
2015
Vol.45 No.4
Digest
ダイジェスト
特集
破局噴火
その時,何が起きるか……32 ページ
中島林彦(編集部) 協力:前野 深(東京大学地震研究所)
浮かび上がるメカニズム……42 ページ
中島林彦(編集部) 協力:巽 好幸(神戸大学)
東日本大震災と福島第 1 原子力発電所事故か
ら 4 年。原発の再稼働に絡んで超巨大な火山噴
火のリスクが関心を集めている。莫大なマグマ
が一気に噴出,火砕流が広大な山野を呑み込み,
日本列島の大半が火山灰で埋まってしまうほど
の規模で,日本は滅亡の危機に瀕することから
「破局噴火」と呼ばれる。ここ約 10 万年を見る
と 7000 ∼ 1 万年に 1 回の頻度で起きており,
直近は 7300 年前。そろそろ 満期 に近づき
つつあるのではないかとみられている。破局噴
火は一度も現代的な観測が行われていないが,
地質調査やシミュレーション研究などから,実
際どのようなことが起きるのかが徐々にわかっ
JULIA GREEN
てきた。謎に包まれている噴火のメカニズムに
ついても解明の糸口が得られた。
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日経サイエンス 2015 年 4 月号
公衆衛生
待望のワクチンを目指して
エボラ戦争……50 ページ
H. ブランズウェル(カナディアンプレス)
西アフリカで昨年来続いているエボラ出血熱の流行は過去
最大のアウトブレイクで,1 月中旬までに 2 万 1000 人以上
が発病し,8500 人を超す死者が出ている。以前のアウトブ
レイクは散発的で幸いにして小規模だったが,その半面,ワ
クチンや新たな治療法を実際にテストする機会がなく,今回
DANIEL BEREHULAK Redux Pictures
の爆発的流行を封じ込める準備が整わなかった。だが今回は
「ZMapp」など少数の実験的治療薬とワクチンの臨床試験
に向けて急ピッチの取り組みが進行中だ。特に
「cAd3-EBO」
および「rVSV-ZEBOV」という 2 つの実験的ワクチンの大
規模な試験が今年前半に始まる予定。エボラウイルスが人体
を破壊する病理を含め,戦いの最前線をリポートする。
神経科学
聞こえていますか?
植物状態の人との対話……62 ページ
A. M. オーウェン(加ウェスタンオンタリオ大学)
脳に外傷を負って意識を失ったままの状態,いわゆる植物
状態と呼ばれる人は,本当に何もわからない状態なのだろう
か? もしかたら反応できないだけで,私たちの会話を聞い
ているのではないか──。著者は植物状態の人の中に,隠れ
た意識があるケースが存在することを,機能的磁気共鳴画像
法(fMRI)でつきとめた。一見,何の反応もしていないよ
うに見えても,「あなたには兄弟はいますか。イエスならテ
ニスをしているところ,ノーなら自宅を歩き回っているとこ
Gerald Slota
ろを想像して下さい」といった質問に正確にイエス/ノーを
返す患者がいたのである。身体は動かなくても声は聞こえ,
頭の中は動いている。そういう例は確かに存在するらしい。
日経サイエンス 2015 年 4 月号
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Digest
ダイジェスト
機械工学
変幻自在の新材料
COURTESY OF SELF-ASSEMBLY L AB AT MASSACHUSET TS INSTITUTE OF TECHNOLOGY,
STRATASYS, LTD., AND AUTODESK, INC.
プログラマブル材料……70 ページ
T. A. キャンベル(米バージニア工科大学)ほか
気圧や気温の変化に応じて翼の形が適切に変わる飛行機。
路面や天候に応じてグリップ面が変化するタイヤ。地震で崩
れそうになっても自己修復する橋。コンパクトに折り畳まれ
た状態からひとりでに組み上がる人工衛星や家具,ビルディ
ング……。そんな便利な構造物を目指し,形や機能を命令ひ
とつで変えられる「プログラマブル・マター」の研究が進ん
できた。ヒンジ(ちょうつがい)や電子素子などを適所に埋
め込んで適切な状況下で変形できるようにした物体がすでに
3D プリンターを使って作られつつある。安全性の確保など
いくつかの注意が必要だが,夢のような自己組み立て式構造
物の登場は思うほど遠くはないかもしれない。
生命科学
擬態に隠された深いわけ
アリをまねるクモ……76 ページ
X. ネルソン(カンタベリー大学=ニュージーランド)
動物界はペテン師であふれている。生物が別種の生物に似
た形態に進化する「擬態」について述べた教科書をざっと見
れば,実に様々な例が載っているはずだ。サンゴヘビをまね
たキングヘビ。ハチに扮装したハナアブ。そして,それほど
知られてはいないものの多くの点でさらに魅力的なのがアリ
MARK MOFFETT National Geographic
グモ属として知られるハエトリグモの仲間で,どこから見て
もアリなのだ。アリグモに関する近年の研究によって,擬態
がかつて考えられていたよりもはるかに複雑であることがわ
かった。天敵の目をくらます「ベイツ型擬態」と獲物を欺く
「攻撃的擬態」だけでなく様々な理由があり,擬態によって
得られる利点と引き換えに,その代償も払っている。
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日経サイエンス 2015 年 4 月号
サイエンス・イン・ピクチャー
美を顕わにする鏡
顕微鏡は顕美鏡……80 ページ
K. ウォン(SCIENTIFIC AMERICAN 編集部)
顕微鏡は平凡な世界に潜む驚異を明らかにして,私たちの
科学的理解を深め続けている。ときには優れた美的価値を伴
って。2014 年「オリンパス・バイオスケープ国際デジタル
画像コンペティション」から秀作を選んでお届けする。ウン
カの大ジャンプを可能にしている回転歯車機構など,これら
の画像は身の回りの至る所に美が潜んでいることの証拠だ。
適切なレンズを通しさえすれば,それが顕わになる。
農業
カギ握る遺伝的多様性
LEVI BROWN Trunk Archive(coffee); TOM SCHIERLITZ Trunk Archive
コーヒーを救え……88 ページ
H. ロズナー(フリーランスライター)
いま世界で栽培されているコーヒーノキは温暖化に伴って
広がる「コーヒーさび病」などの病虫害によって深刻な危機
にさらされている。栽培種はほぼすべてがエチオピアに生え
ていたほんの少数の株に由来しており,遺伝的に均質すぎて
多様性に極めて乏しいことがこの作物を特に脆弱にしている。
野生株が持つ有益な遺伝子を交雑育種法によって新たに導入
するなどの試みが進み始めた。
エネルギー
太陽光発電の死角
ソーラー・ウォーズ
太陽光発電 変わる構図 …… 94 ページ
D. ビエッロ(SCIENTIFIC AMERICAN 編集部)
屋根の上に並べたソーラーパネルで発電し,家の中で使う
電気をまかなう。余った分は送電網に送り込むことで,電力
会社に「売る」。税金の優遇にも後押しされ,ハワイやアリ
ゾナといった年間を通じて晴れた日が多い地域では急速に普
Zohar Lazar
及したが,よいことばかりではないようだ。電気代を払わな
くてよい人が増える中,膨大な送電網をどうやって維持管理
するかという問題が浮上している。
日経サイエンス 2015 年 4 月号
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