土鍋は、蒸す・煮る・炊く・ゆでる、どんなおかず作りもできる万能鍋。 美味しくてヘルシー料理が手軽にできると、注目されています。家族との団欒や、仲間との食事で、鍋メニューが登場することも多くなりました。外食を控え、家で食 事をする内食派が増えて、改めて土鍋が見直されたのではないでしょうか。 また、土鍋メニューをウリにしている飲食店もできています。 複数名で使うイメージのある土鍋ですが、最近では、一人分用の土鍋も流行っていて、個々に食卓に並べて使う事も多くなりました。 土鍋がどうして美味しい料理が作れるのか、そのワケを探ってみましょう。 金属製の鍋と土鍋でお湯を沸かし、温度の上がり方を比べてみると、土鍋はゆっくり上昇して いくことがわかります。この性質が根菜類と米をおいしくする理由です。 土鍋とゆきひら鍋に同量の水を入れて同じ火力で加熱し、温度の上がり方を比べた結果です。 ほっくり蒸したお芋は、甘さがおいしさの身上です。根菜類や米が加熱によって甘くなるのは、 でんぷんが酵素によって糖に分解されるため。土鍋で調理すると、その酵素が働きやすい温度 帯「40~60℃」を時間かけて通るため、より甘みが増します。 肉じゃがのように、ちょっと煮くずれしているくらいがおいしい料理もありますが、おでんやポトフなどでは、野菜のきれいな形をくずさないで仕上げたいも のです。根菜類は煮はじめにゆっくり加熱することで、表面の組織の強度が増すだけではなく、均一に火が入るため、その後グツグツ煮込んでも煮くずれ が起りにくくなります。 土でできている土鍋は、金属製の鍋に比べて熱伝導率が悪いため温度はなかなか上がりませんが、いったん 上がったら冷めにくいのが特徴です。土鍋で調理するときは、いったん強火で沸騰させたら、あとは弱火に切 り替えましょう。 土鍋は、火を止めても高温が持続します。この温度は素材に火を入れたり、味を含ませるのに好都合な温度。これを上手に利用できるかどうかが土鍋使 いのカギです。 根菜類は90℃以上、肉類は75℃以上がやわらかくなりやすい温度帯です。いったん温度が上がると冷めにくい土鍋では、火を止めた後も、その温度を長 い時間キープできます。やわらかい火あたりが、根菜と肉類をじんわりやわらかくします。 煮物のおいしさは、具にしっかり味がなじんでいること。煮物は、煮た後に味がしみ込みはじめますが、このとき、温度が高いほうが味はしみ込みやすい といわれています。温度が下がりにくい土鍋なら火を止めた後でも、余熱で味がよくしみ込みます。また、次の簡単なひと工夫で余熱調理がパワーアッ プ。火を消す直前に強火にし、ふたまであつあつにして火を止めます。その後土鍋を新聞紙と古いタオルにくるんでください。保温効果が高まり、さらに おいしく仕上がります。 温度が急に上がりにくい土鍋は、1で説明したように米の甘みが増します。また、金属製の鍋とは違って火あた りがやさしく、鍋全体を包み込むように温めるため、火があたっている部分とそうでない部分の温度差が少なく、 炊きムラができません。 鍋物用土鍋を使って家庭用ガスコンロで炊くときの、基本的な炊き方をご紹介します。火力調節は1回だけのシ ンプルな方法です。米の量は、多くてもすくなくてもおいしく炊けません。おすすめは3合です。 *土鍋の厚さや形によって加熱時間や火加減が変わるため、ご飯炊き専用の土鍋をお使いになる場合は、説明書に従って炊いて ください。 材料 5~6人分 ・ 米…3合 ・ 水…540ml 作り方 1. 米を洗う・水につける 米は洗って、ざるに上げ、軽く水けをきってから土鍋に入れ、分量の水を加えて30分以上つける。 ◎水の分量540mlは、米と同じ体積です。米は洗っている間に水を吸うので、炊くときに加える水の分量は、米と同じ体積でOK! ただし、洗った 米を一度ざるに上げて水けをきることを忘れないで。 2. 米を炊く 1の土鍋にふたをして中火にかけ、10分かけて沸騰させ、沸騰したら弱火にして20分加熱し、火を止めて10分蒸らす。 ◎火力を中火~強火にして何回か炊いてみて、10分で沸騰する火加減をみつけてください。蒸気が出るのを確認し、きちんと沸騰させるのがおい しく炊くコツです。 *レシピに特に水やだし汁の分量についてことわりがない場合には、すべて540mlの水でOK。記載がある場合は、レシピに従ってください。水に つける時間は、夏場は30分、冬場は1時間が目安です。 土鍋には、他の金属製の鍋にはない、いったん温度が上がると冷めにくい特性があります。 ここではこの特性を生かした、素早く、簡単に美味しい土鍋料理メニューをご紹介します。自分なりにアレンジしてオリジナルの土鍋メニューも楽しんでみ てください。 春になっても箱に入れてしまわずに、他の鍋と同じように、ふだんのおかず作りに使ってみては。 シンガポールライス オシャレなカフェご飯が、土鍋で簡単に作れる! 米と鶏肉をいっしょに炊き込むだけ。鶏肉のうまみがご飯全体になじみます。鶏肉もちょうどいい感じに火が入ります。 レシピ/木村つぎえ 1. 米は洗ってざるに上げて水けをきり、土鍋に入れて水540mlを加え30分以上水につける。 2. 鶏肉に塩をすり込んで10分ほどおき、 しみでた水分をペーパータオルなどでふき取る。 次に酒をふりかけて全体になじませ、大きめのそぎ切りにする。 3. (1)の土鍋にAを加えて軽く混ぜ、(2)をのせてふたをして炊く。 4. 炊き上がったら鶏肉を取り出す。ご飯をほぐして皿に盛り、鶏肉を添えて香菜を飾る。 5. 混ぜ合わせたたれをつけながらいただく。 *お好みで花椒塩をつけてもおいしい。 春キャベツと豚薄切り肉の土鍋蒸し たった2つの材料と、最小限の手順で、メインのおかずが完成! 野菜の水分だけで蒸すのは土鍋の得意な調理法。野菜の風味も凝縮! レシピ/斉藤真理子 1. キャベツは1cm幅のざく切りにし、洗って軽く水けをきる。 2. 土鍋に1を入れ、その上に豚薄切り肉を並べてふたをし、強火にかける。沸騰してふたの穴から蒸気が上がってきたら、弱火にして10分加熱す る。 3. 土鍋のまま食卓に出し、ポン酢でいただく。 なめらかプリン 驚き! スイーツと土鍋の意外な組み合わせ! とろけるような食感のプリンは、土鍋で作るデザートの自信作です。 レシピ/栗林久子 1. 鍋に牛乳を入れて火にかけ、沸騰直前で火を止める。 2. ボウルに卵を割り入れ、砂糖を加えて泡立て器で、ざらつきがなくなるまで混ぜ合わせる。 粗熱のとれた(1)の牛乳を少しずつ加えなから溶きのばし、ざるでこしてバニラエッセンスを加える。 3. 表面の泡を取り除き、カラメルを入れた器に流し入れる。ブルーベリージャムをのせるプリンにはカラメルは入れない。 4. 土鍋に、二つ折りのきれいにたたんだハンドタオルを敷いて、万能落としぶたをのせ、その上に卵液の入った器をのせる。 5. (4)の器の1/3~1/2高さまで熱湯を入れて強火にかけ、沸騰させる。 (沸騰までの時間は約5~6分。このとき、ふたはしない)。 6. 沸騰したら火を止めて土鍋のふたをし、そのまま25分おいて余熱で火を通す。 7. 粗熱がとれたら冷蔵庫で冷やす。食べる直前に力ラメルの入っていないプリンにジャムをのせる。 紹介しましたメニューで、土鍋ならではの美味しさ、便利さを再確認し てみましょう。 最近では、いろいろなタイプの土鍋が、お店に並び、手 に入るようになりました。 それぞれに特徴があるので、お気に入りを 見つけて楽しんでみてはいかがですか? (参考文献) 春夏秋冬 土鍋でごはん 著者: 小西雅子/東京ガス「食」情報センター 土鍋は、煮る・蒸す・炊く・ゆでる 何でもこなせる万能鍋 オールシーズン出しておいて、 どん どん使いましょうじんわり加熱、ぬくぬく保温! 土鍋だからこ そおいしくできるレシピ集 ※記事・写真の無断使用を禁じます。
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