解 答 - 難関私大文系専門 増田塾

2015 入試解答速報
難関私大文系専門予備校
2 月 15 日
早稲田大学(法学部)国語
解答と解説
解 答
(満点︓50 点)
大問一(16 点)
問一ノ一(1 点) ウ
問一ノ二(1 点) エ
問一ノ三(1 点) イ
問一ノ四(1 点) オ
問一ノ五(2 点)
⽉〜陰
問⼀ノ六(1 点) エ
問一ノ七(1 点) ウ
問一ノ八(2 点) イ
問一ノ九(6 点
(Ⅰ)オ
Ⅰ︓2 点
(Ⅱ)ア
Ⅱ〜Ⅴ︓各 1 点)
(Ⅲ)ウ
(Ⅳ)ア
(Ⅴ)オ
大問二(16 点)
問二ノ一(2 点 各 1 点×2) A
不朽
B 駆逐
問二ノ二(2 点) エ
問二ノ三(2 点) イ
問二ノ四(2 点) オ
問二ノ五(2 点) オ
問⼆ノ六(2 点) ウ
問二ノ七(2 点) イ
問二ノ八(2 点) オ
大問三(18 点)
問三ノ一(2 点) ウ
問三ノ二(2 点) オ
1
解答速報の著作権は増田塾に帰属します。許可無く⼀切の転⽤・転載を禁じます。
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問三ノ三(2 点) イ
問三ノ四(2 点) エ
問三ノ五(2 点) ア
問三ノ六(2 点) エ
問三ノ七(6 点)
【解答例】他者の顔は<私>に対し⼀⽅的に呼びかけるという非対称的な関係を結ぶが、
その呼びかけによる憑依が<私>の安寧を奪い不安と秩序の混乱を与え、さらに呼びかけに対し従属す
るか非―従属するかの選択こそが<私>にとっての「自由」である事を訴えかけてくるということ。
(一
⼆六字)
(※配点は予想配点です)
解 説
大問一
問一ノ一 ウ
傍線部の「その間」とは、直前の「村上の御時〜講ぜしめられし(時)」のこと。そこから「宮鶯暁の光
に囀る」という題の詩について村上・⽂時のやりとりがあるということがわかるので、ウ「〜詩につい
ての問答の様子」が正解。
問一ノ二 エ
「御製」
「作らしめ給ふ」といった敬意から、村上(天皇)の詩と考える。
「霧濃やかにして〜」の句は、
字数などを考えても和歌ではないのは明白。
問一ノ三 イ
ここでの村上・文時の詩には、「宮鶯暁の光に囀る」という御題があったことを忘れてはならない。「宮
中で鶯が明け方の日の光の中でさえずる」という場面を想定して漢詩を作っているのだから、文時の詩
の「曲・音」は「鶯の鳴き声」を表すことになる。
問一ノ四 オ
後続部分の「⽂時の詩またもって神妙なり」と対⽐であることも⼿がかりになる。
「作り抜く」とは⾒慣
れない表現であるが、オ「抜群の作品を作る」を⾒て「そういうことか」と思えば⼗分である。
2
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問一ノ五
⽉〜陰
傍線部「下の七字」は、村上の漢詩「霧〜底。⽉〜陰」の後半を指す。漢詩では「五⾔絶句」や「七⾔
律詩」というように五字・七字で⼀句を作るのが定番であるし、ここの「⽉〜陰」も漢字の部分だけ抜
き出せば「⽉・落・⾼・歌・御・柳・陰」と七字になる。書き下し⽂になっているため七字以上に⾒え
たかもしれないが、村上・文時どちらの漢詩もきちんと漢字七字分となっている。
問⼀ノ六
エ
文法的には「やは」
(→係り結び)と「候ふ」
(→終止形接続 or 連体形接続)が手がかり。エ「べき」が
その二つに対応している。
問一ノ七 ウ
ウだけが主語=村上。それ以外はすべて主語=文時。ウ「召して」が尊敬語で、その他には尊敬語は使
われていないことからも裏付けは容易にとれる。
問一ノ八 イ
内容一致問題は、本来なら各選択肢と本文を丁寧に照会するのが基本だろうが、今回はイとウの内容が
相容れない(両方正しいということはあり得ない)構成なので、このどちらかに絞って考えてよいと思
われる。その他の選択肢は、大まかに矛盾がないかだけ確認できればよい。
⽂章後半では、村上御製の漢詩について、⽂時が「A︓御製は勝らしめ給ふ」→「B︓対座に御座す」
→「C︓実には⽂時が詩は今⼀膝上りて侍り」と評価を変えていく。本⾳では⾃分の詩の⽅が優れてい
るのは分かっているが、村上天皇の顔を⽴てて、Aといったのである。しかし、村上天皇もそれを察し
て本音を引き出そうとするので、最後には「自分の方が優れている」という本音(C)をいって、いた
たまれなくなってその場を逃げるように去るのである。ここまでわかればイ「互角の出来映えだと考え
ていた」が誤りと判断できよう。
問一ノ九
(Ⅰ) オ
…注に「中央政界を追われた⽩居易は…左遷されていた」とあるのが、この漢詩に込められた作者の⼼
情を読み取る際のヒントにもなる。オ「鬱々として楽しまない」はうってつけである。
「炎涼」といった
表現も、「暑いときも寒いときも」と考えれば「⼀年を通じて」と意訳にしても問題はないだろう。
(Ⅱ) ア
…「不覚」は「覚えず」と読むが、
「春眠暁を覚えず」といった有名表現などからも⼗分に予測が可能だ
ろう。「忠州に来てすでに⼆年になるということに気づかなかった」=「いつの間にか 2 年たっていた」
ということ。
3
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(Ⅲ) ウ
…「押韻」に注目。偶数句の末尾字「年・辺・湲」に注目すれば、⾳読みしたときに「-en」という共通
の韻を踏んでいるのがわかるだろう(この漢詩は七⾔律詩なので、初句の末尾字「遷」もきちんと押韻
している)。選択肢の中で、音読みしたときに「-en」となるのは、ウ「船」だけ。
(Ⅳ) ア
…漢文の語順は英語に似ていて「主語+述語+その他」となる。
「坐水辺」も「述語+その他」→「水辺
に坐す」…と読むことができれば、選択肢は実質ア・オの⼆択となる。オは「⼥性の美」
「この地の川辺
に腰を据えた(=この地に居を構えた)」がズレ。残るアが正解となる。
(Ⅴ) オ
…傍線部の「緑潺湲」は「きれいな⽔がさらさら流れている」くらいの意味なのだが、注でもなければ
受験生には解釈困難だろう。文脈から推定することになる。この詩は川辺で景色などを眺めているとい
う場面だが、傍線部直前に「砂・石」とあるから、それと関係するオ「春江」(「江」には川の意味があ
る。ここでも春の⻑江という意味か)くらいしか該当するものがない、と判断しよう。
大問二
問二ノ二 エ
傍線内の「権威の平準化」
「流動的な性格」を本⽂中の別表現に⾔い換えてみると、そこにヒントが⾒え
てくる。傍線直前直後を⾒ると、雑誌『キング』はラジオに近い特性をもつ、と述べられている。ここ
からラジオの特性を説明している箇所に注目すると、9 段落 4〜6 ⾏目と 10 段落 1〜3 ⾏目などが詳し
い。ここから「権威の平準化=活字リテラシーによって社会は段階的に序列化されていたが、この序列
がラジオによって解消された」
「流動的な性格=ラジオは既存の社会システムを編成替えし伝統的権威や
合理性による⽀配を崩す(つまり社会を流動的なものとする)」と言い換えると、この内容に合致するの
はエと判断できる。アは「権威を…浸透させていく」
「平準化」を誤解した説明になっている。イは「過
去の情報を⼈々が参照できる」が「権威の平準化」などの説明として不適切。ウは「活字を読む能⼒を
多くの人々に普及させていく」だと、これまでの「権威的な活字リテラシー」は変化させることなく、
人々の方を変化させることになる。あくまで変化したのは出版物(活字メディア)の方であるため、こ
れも誤り。オは「情報」や「出来事」を平凡なものにする、としている点が誤り。ウでも指摘したが、
あくまで変化したのは出版物。
問二ノ三 イ
内容だけではなく、表現⾯にも注意を向ける必要のある問題。傍線「〜たらねばならない」は「〜する
必要が生まれた」という意味。これを踏まえると二〇世紀においては人々は「ラジオの聴取者である必
要があった」となる訳だが、ではなぜなのか、という理由に関してはまず傍線直前の「⼆〇世紀の⾼度
4
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⽂明の原理はラジオの知的統⼀」を参考にする。また 4 段落で登場する「ラジオ化/ラジオ⽂明」に関
しては 8 段落 1〜2 ⾏目に「ラジオ⽂化」として詳しい説明がされている。以上から傍線の理由は
①︓⼆〇世紀の⼈々はラジオにより「知的に統⼀」された
②︓またラジオにはその統⼀された知を「⽂化」として「煽動・指導」する性質もある
③︓①②から、⼈々はラジオが提供する「知」に合わせなければならなくなった
以上①〜③のため、とまとめられる。ここから正解はイ。アは「⾳からのがれることができなくなって
しまう」が何を「たらねばならない」のかについて誤解しているため誤り。ウはラジオの情報が「もっ
とも早く、役に⽴つ知識」としている点が「たらねばならない」の理由として不適切。エは前半が傍線
直前の内容と対応していそうだが、後半部分がこれも「たらねばならない」の理由として不適切。オは
メディア側の事情を説明しているが、傍線はあくまで「聴取者」側の意識の話をしているため、設問要
求に応じた説明になっていない。
問二ノ四 オ
新聞の性質についての直接的な説明が少ないため、新聞と対比的に捉えられているラジオ・
『キング』の
特徴も参考にしたい。ポイントは 3 段落 1 ⾏目「新聞紙=地⽅的⼩社会の要求⇔ラジオ=知的統⼀」の
箇所。また空欄直後の「ラジオ=大衆的・独裁的」という特徴も踏まえると、ラジオは「大衆を独裁的
に知的統一」するのに対して、新聞は「地方的小社会ごとに独自に知を提供する」と考えれば、個の意
志を尊重する、という意味を持つ「自由主義的」を含むオが正解と判断できる。ある語句の特徴につい
ての説明が少ない場合は、それと対⽐的な語句の説明から逆算する、という手段は有効。
問二ノ五 オ
傍線については 9〜13 段落に詳しい説明があり、この部分と各選択肢との照らし合わせ、という作業で
解答を決定していく。アは 9 段落全体と対応しているが、特に 9 段落 2〜6 ⾏目を踏まえると、ラジオ
は軽音楽と結びつきそれにより運転手・職人・主婦・文盲・子供といった「大衆的な好みをもった階層
に広く浸透」したことがしっかり述べられている。イの前半は 9 段落 1〜3 ⾏目とほぼ同内容で、「広く
聴衆に浸透することが可能になった」という説明も妥当性のあるもの。ウは 9 段落 3〜6 ⾏目と合致。エ
は 9 段落 6〜7 ⾏目と合致。オは前半が 9 段落 7〜10 段落 2 ⾏目と合致しているが、「その場かぎりの
意⾒や⾯⽩さが⼒を持ち得た」は不適切な説明。10 段落 1〜2 ⾏目などで「録⾳装置などはまだ普及し
ていない」とは指摘されておりここから「その場限り」とも連想できそうだが、問二ノ二でも確認した
通り 9〜10 段落で強調されているラジオの特徴はあくまで「流動的な性格=ラジオは既存の社会システ
ムを編成替えし伝統的権威や合理性による⽀配を崩す(つまり社会を流動的なものとする)
」であり、こ
れは「その場限りの意⾒や⾯⽩さ」という説明では不⼗分。以上から正解はオ。
問⼆ノ六
ウ
5
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傍線「その効果」を的確に言い換えることがポイント。問二ノ五オでも指摘したが、ラジオには内容を
伝えるだけでなく、
「印象」を伝える「情緒的な機能」がある。この点が指摘できているのがウの「その
声自体が…重大さや厳粛さを伝え得た」という箇所。以上から正解はウ。その他の選択肢はすべてラジ
オが伝える「内容」に着目した説明になっており、すべて不適切。
問二ノ七 イ
まずここまでの内容でラジオ≒『キング』である事は確認した上で、12〜13 段落で『キング』は「共感
による合意を求める(共感による合意形成を組織する)ファシスト的公共性」があると何度も強調され
ている。ここからイ「国⺠的な⼀体感」が最適解と判断できる。確かにラジオ≒『キング』は「信憑性」
を伝えるなどという説明もあることからエの「信頼感」なども候補に挙がるが、ここで筆者が強調した
いのはあくまで『キング』のもつ「共感による合意」であることを⾒逃さない。
問二ノ八 オ
14〜17 段落の内容と対応した問題。まず傍線そのものは「ベルリン・オリンピックで前畑秀⼦が⾦メダ
ルを獲得したこと、そしてその中継放送に国⺠全体で熱狂し、感激したこと」と⾔い換えられるが、で
はそれらが形成された理由はというと、14 段落 9〜10 段落に詳しい。
「ラジオの持つ⼒」が国⺠的体験
の神話を形成し、さらに『キング』の記事がそれを補強(つまりラジオを実際聞いていない人にも放送
を聞いたかのように思わせる)しているから、とまとめると傍線の理由づけとなる。また「ラジオの持
つ⼒」は問⼆ノ五〜七の考察から「情緒的な機能を持ち、共感による合意形成を組織する」と⾔い換え
可能。以上を踏まえると、オは前半が「ラジオの持つ⼒」の説明として適切であり、また後半が先ほど
まとめた傍線の理由付けと合致する。ここから正解はオ。アは「オリンピック〜⽇本⼈の成果〜強い印
象を与えたため」が理由付けとして不適切。ラジオで放送された「内容」が⼤事なのではなく、
「ラジオ
の持つ⼒」が「国⺠的記憶」を作り上げる、と捉えるべき。イ・ウは『キング』がラジオを補強した、
という点に着目できていないため誤り。一方エはよく読むとラジオ自体を必要としていないような説明
になっており、これも誤り。
【大問三 解説】
問三ノ一 ウ
傍線直後の「⾃⼰意識が憑依を前提にしている」がポイント。これと同意表現と⾔えるのが 3 段落 2 ⾏
目「いかなる意識も〜憑依というこの予めの関係をすでに基礎にしてのみ浮上する」と 4 段落 1〜2 ⾏目
「憑依から出発して初めて、〜⾃⼰意識が考えうるものになる」の部分。ここから傍線は「憑依≠意識」
であり、むしろ「憑依⇒意識」であると述べているのだ、と解釈できればウが最適解と判断できる。ア
は「⾃⼰意識⇒憑依」という説明になっている点が誤り。イは「⾃他を対⽴させることによって」が 2
段落 1〜2 ⾏目「⾃他を対⽴させる以前に」に反する。エもイと同様に理由により誤りであるのに加え、
6
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⾃⼰意識を「破棄する」という内容は本⽂中にない。オは「他者が悲惨とは無縁の現象をつきぬけて」
が 2 段落 3 ⾏目を誤解している。結局<私>に「とり憑く」のは「非―現象的な悲惨」であり、オはそ
の点が説明不充分。
問三ノ二 オ
悩ましい問題。傍線内の「「同―の中の―他」という構造」と「不安」をそれぞれ課題⽂中の別表現に⾔
い換えることで正解を導き出していく。まず「不安」は 5 段落 1〜2 ⾏目で
・
「他者の顔によって、<私>が「わが家」から追い出され、わが家での安寧を奪われること」…ポイン
トA
とある。そして「「同―の中の―他」という構造」は 4 段落 4〜5 ⾏目にて
・
「主体性とは、対話者たちが…お互いに合意する対話のなかでの、互いに対する現前の様相とも異なる
様相」に応じたもの…ポイントB
と説明されている。ここでオを⾒ると、
オ「<私>が」=「主体性」(ポイントB)
オ「対話者どうしの相互…されるものではなく」=「お互いに合意する対話のなかでの、互いに対する
現前の様相とも異なる様相」(ポイントB)
オ「他者の顔によって〜」=「他者の顔によって、<私>が「わが家」から追い出され、わが家での安
寧を奪われること」(ポイントA)
とポイントA・Bをしっかりおさえていることが確認できる。以上から正解はオ。アは「対話者どうし
の合意にもとづく平和のうちに…構築される」が誤り。同様の理由でエも誤り。イは主体性そのものが
「同―の中の―他」であるのだから、それが「主体性が〜平和な相互的合意」をする、という説明は誤
り(「にも関わらず」という表現が続いても「相互的合意」をしてしまっている点は変わりがない)。ウ
は「「同」と「他」が互いに相⼿を不安にさせる」が課題⽂中に記載なし。
問三ノ三 イ
傍線「他者は、<私>と同じ資格で主体ではない」は 6 段落 2 ⾏目の「非対称性」と同意。また同じ⾏
の「憑依は<私>を不安にする」は「他者からの憑依⇒<私>の不安」ということだから、これが他者
と<私>の「非対称」な部分だと解釈することができる。以上からイの前半は正しいと言え、また後半
は 6 段落 3〜4 ⾏目と対応しており、誤解した表現などもないことから、最適解はイだと判断できる。ア
は「自己はその対称形の間主観性から…回帰できない」が誤り。6 段落 1〜2 ⾏目から他者と<私>の関
係は「非対称」だと説明されており、
「対称形の間主観性」ではない。同様の理由でウも誤り。そもそも
<私>と他者の間には「対称形の間主観性」は無い訳だから、無いものから回帰する、という説明も不
適切。エ・オはア・ウの時と同様の考え⽅により「対等な主体の関係を取り戻さなければならない」
「間
主観性を構築する必要がある」などという主張は課題文中にないことに気づけばどちらも誤りと判断で
7
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きる。
問三ノ四 エ
こちらも悩ましい問題。7〜12 段落から複数の要点を抜き出し、傍線を⾔い換えていくことで解答への
ヒントが⾒えてくる。まず傍線「憑依と不安の⼆つの概念」から考える。「憑依」に関連する表現は 7〜
12 段落では「(他者の)顔の呼びかけ(命令)」
「顔は<私>を平和へと呼び招き」
「現象を超えた他者の
眼差し」
「他者の非―現象的な悲惨を前にして」などが挙げられる。そこで 8 段落 1 ⾏目「顔は<私>を
〜挑発でもある」に注目すると、
「暴⼒の放棄」という呼びかけは「暴⼒の挑発」でもあると指摘されて
いる。これがどういう意味か探るために 9 段落に目を向けると、
①︓<私>はこの他者の呼びかけに対しそれが「禁⽌(暴⼒の放棄)
」か「挑発」なのか区別できない
②︓①のために<私>は不安に陥り、また確率した目的性の秩序を乱す
③︓①②によって<私>は「恐怖」を抱く
④︓③は<私>に「平和の呼びかけを暴⼒と取り違え、結果恐怖からの逃⾛を準備する」可能性を与え
る
以上のようにまとめられる。ここでようやく「可能性」という語句が登場するが、この時点ではまだ「逃
⾛」の可能性に過ぎず、傍線「暴⼒と戦争の可能性」とは直接繋がらない。
そこで 12 段落にも目を向けると、他者の顔の呼びかけ(つまり憑依)が「(呼びかけに対し<私>が)
歓待するか、歓待を絶ち暴⼒をもって応えるか、双方ともに可能な空間」を開く、と述べられている。
ここで⾔う「暴⼒をもって応える」が傍線「暴⼒と戦争の可能性」だと捉えれば、7〜12 段落は「憑依
⇒不安⇒恐怖⇒恐怖からの逃⾛の⼿段としての暴⼒と戦争の可能性」という展開で論じられていると解
釈できる。以上が傍線の言い換えによる解釈となるが、それに加え選択肢判断の為に 10 段落も考慮に⼊
れる必要がある。この段落で強調されているのは、他者からの問いかけには「平和への呼びかけ(汝殺
すことなかれ)」という内容が含まれており、そこに<私>が恐怖を覚えるような怒りや憎悪(つまり暴
⼒の「挑発」)が含まれているかどうかは<私>からは決定不可能である、ということである。以上を踏
まえると、最適解はエ。アは「<私>は世界の〜けることができ」が 9 段落 2〜3 ⾏目と合致しない。イ
は「「汝殺すことなかれ」というメッセージが理解されるようになる」とあるが、<私>は平和のメッセ
ージを「暴⼒の挑発」と読み取ってしまうこともあるのだから、このようなメッセージを「理解される
ようになる」とは⾔い切れない。ウは最後の「平和を求めるようになるから」は 9 段落 4 ⾏目や 12 段
落 2〜3 ⾏目を確認すれば<私>は「暴⼒をもって応える」可能性も持っていると⾔えるため、適切な説
明とは⾔えない。オは「平和のメッセージが本質的に決定不可能」が 10 段落の誤読。決定不可能なのは
あくまで呼びかけに含まれる「憎悪や悲しみ」でしかない。
問三ノ五 ア
12 段落のみで正解は判断できる。傍線「可能性」に注目し、12 段落 3〜4 ⾏目の「その顔が、<私>〜
8
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可能な空間を開く」が傍線の言い換えだと判断できれば、同内容が述べられているアが正解と判断でき
る。イは 13 段落 3〜4 ⾏目の「レヴィナスにおける他者の顔の命令が、直接その種のダブル・バインド
をもたらす訳ではない」という箇所と合致しない。またエは<私>が他者をダブル・バインドに巻き込
むとしており、さらに課題文を誤読している(他者が<私>を巻き込む、が正しい)。オは「ダブル・バ
インド構造は、〜」の箇所が課題⽂中に記載なし。ウは「責任とは、他者の顔の命令に従うこと」が 12
段落 3〜4 ⾏目の「(<私>は他者の命令に対し)従属をも非―従属をも可能にする」と合致しない。
問三ノ六
エ
6 段落と 12〜15 段落の内容から判断する。エは「主体性の〜ほかなく」は 14 段落 1〜4 ⾏目と合致、
また「その呼びかけ〜緊急に求める」は 15 段落 1〜2 ⾏目と合致している。以上から正解はエ。アは「他
者がつねに〜位置を占める」が 14 段落 1〜2 ⾏目と合致しない。イは「⾃⼰と他者とが互いに相⼿を先
験的に尊重する」が課題文中に記載なし。ウは「他者へ応答するか否かを自己が自由に選択する」とあ
るが、15 段落 1〜2 ⾏目をよく読むと「応じる」こと自体は決定しており、
「どのように(平和的に/暴
⼒によって)応じるか」は「自由に選択できる」と述べられていることがわかる。以上から「応答する
か否かを自由に選択」は課題⽂を誤解した説明であり、誤りと⾔える。オは「非対称的な〜選択できる」
が 14 段落 2 ⾏目と合致しない。
問三ノ七
【解答例】他者の顔は<私>に対し⼀⽅的に呼びかけるという非対称的な関係を結ぶが、その呼びかけ
による憑依が<私>の安寧を奪い不安と秩序の混乱を与え、さらに呼びかけに対し従属するか非―従属
するかの選択こそが<私>にとっての「自由」である事を訴えかけてくるということ。(⼀⼆六字)
【採点ポイント】
①︓「他者の顔と<私>の関係」=<私>に対し⼀⽅的に呼びかけるという非対称的な関係
※14 段落 3〜4 ⾏目で端的にまとめられているので、ここを活⽤すると良い。
②︓「①に対する<私>の反応」=他者の顔に憑依された<私>は不安と秩序の混乱に陥る
※7〜12 段落より要旨をピックアップし、特に課題⽂全体のキーワードである「憑依」
「不安」を解答
に含むことで「本文全体を振り返り」という設問要求に応じていることをアピールする。また②によっ
て後述の③にも上手く接続できる。
③︓「<私>の⾃由のありかた」=呼びかけに対する「従属するか非―従属するか」の選択
※14〜16 段落の内容の⾔い換えである 12 段落 3〜4 ⾏目の「従属/非ー従属の選択」という表現を
用いると上手くまとめられる。また傍線では他者の顔が自由のありかたを「問う」と述べられているの
で、<私>の自由とはこういうものだ、と他者の顔が「訴えてくる」などの表現で締めるとより設問要
求に応じた解答となる。
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