17-18 吉川秀昭、沢井実 (PDF:1768KB)

『目・目・鼻・口』2007年 紙に水性ペン、油性ペン 768×1086mm
『無題』2003年 紙に鉛筆、ボールペン、カラーペン、クレヨン、絵の具 242×332mm
『明日の為に明日に備えて』2003年
紙に鉛筆、ボールペン、カラーペン、
クレヨン、絵の具
332×242mm
小作品『目・目・鼻・口』
2005年 陶土、自然釉
(左から順に)
57×45×32mm
78×38×27mm
81×42×33mm
78×28×22mm
H i d e a k i Yo s h i k aw a
吉川 秀 昭
1970年∼ /滋賀県在住
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M i n o r u S aw a i
沢井 実
1941年∼ /滋賀県在住
吉川さんは知的障害者通所授産施設に通
ながら、とても丁寧に粘土の上に刻まれてゆ
頭の中にはどんどん広がってゆくのでしょう。
沢井さんは主に入院している病室で絵を
せている実在の人物が多く登場します。
要素の1つとして展開していくのです。
い、陶芸や絵画の作品を制作しています。絵
きます。
そんな不思議な制作の方法を、彼はどのよう
描いており、その部屋には、長年描きためた
それらの登場人物はどこかマンガやアニ
このように、内からあふれ出る空想の世界
を描く時も粘土で造形する時も、彼の発想は
彼は、紙に絵を描く時も、同じ方法で「顔」
にして考えついたのでしょう。
大量の作品が保管されています。作品写真は
メーションのキャラクターのようで、見続けて
を描いていくことに加えて、画面の中に自身
一 貫して いま す 。そこに 現 すの は すべ て
のカタマリを描きます。カラフルな色の細い
小さなミクロの点々を、ゆっくりゆっくり積
その中にある1冊のスケッチブック。大きな文
いると、それぞれがストーリーを映しだすマ
の生活と深くつながりのある要素も多く反映
「点々」なのです。
「点々」はそれぞれ、2つの目、
水性ペンを使い、粘土の制作と同じように
み上げて大きな単位のカタマリを形成してゆ
字で「個人賞」と書かれた表紙を開くと、そこ
ンガの1コマのようにも見えてきます。
していきます。彼の絵を、ついついじっくりと
そして鼻と口を表現しているのですが、でき
「点々」だけで「目」
「鼻」
「口」を丹念に描いて
く姿は、生き物の細胞が成長する過程にも似
には目を見張るような沢井ワールドが広がっ
さらにじっくり見ていると、不思議な言葉が
見続けてしまうのは、絵の節々に空想と現実
上がった作品を観るだけでは、誰もそのこと
ゆくのです。紙から10cmほどまで顔を近づ
ています。彼の頭の中に、そういう細胞のイ
ています。
散りばめられていることに気付きます。例え
の間にある接点をたくさん発見するからなの
に気付くことはできないでしょう。一見抽象
けて描くのですから、彼に見えている範囲は
メージがあるのかどうかはわかりません。け
彼は、1枚の絵にいろいろな材料をふんだ
ば、
「 個人 賞」だったり、
「 佳 作」という文 言。
かもしれません。
的な模様のようにしか見えないのですが、そ
とても狭くなっていると思えます。しかし広
れども、人が何かをゼロから作ろうとする時、
んに使って描いていきます。よく見ると下地
「残斬賞」といった彼がつくった架空の賞の名
れは実は「顔」のカタマリなのです。いくつも
い範囲を見るのではなく、目の下すぐのその
それは、私たちの誰にもある、そして忘れられ
は水彩絵の具で薄く覆われ、その上へ上へと
前も描かれています。評価というものに対し
の「顔」がびっしりと密集しているのです。そ
小さな狭い視野の中であるからこそ、逆にど
てしまっている、いのちが生まれ出るなつか
執拗に塗り重ねられているのがわかります。
て強い関心があるのか、自分が描いた絵に自
の無数の点は、規則正しく一定の間隔を保ち
こまでも限りのない広大なイメージが、彼の
しい感覚なのかもしれません。
(はた よしこ)
また、絵の中には、興味があったり、好意をよ
らの手で付加価値を付け、それ自体も作品の
(横井 悠)
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