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兵庫県版
第三種郵便物認可
2015 01 19 mon.
03
弁護士法人神戸シティ法律事務所
弁護士 高島 浩
(兵庫県弁護士会所属)
第57回
課徴金が導入された景品表示法
1 課徴金制度の導入
昨年の衆議院解散直前に、課徴金制度を導
入した景品表示法の改正案が成立しました。
食品の産地偽装等の不当表示問題が相次ぐこ
とを受けたもので、同法の改正は昨年(平成
26年)だけでも二度にわたっています。
これまで景品表示法は、規制に違反した事
業者に対して不当表示の解消や再発防止に向
けた措置を命じる「措置命令」を法的措置の
中心に据えてきました。この措置命令だけで
も企業名や違反内容が公表されるため、事業
者にとってはダメージが大きいのですが、そ
れでも違反は繰り返されています。改正法成
立直前の時期にも、飲食店を展開する木曽
路が松阪牛ではない和牛を使用しながらメ
ニューに「松阪牛しゃぶしゃぶコース」など
と表示し、旅館業を営む豆千待月が水道水を
加温したものを「温泉」
、養殖のトラフグを「天
然トラフグ」などと表示して、消費者庁より
措置命令を受けたことは、記憶に新しいとこ
ろです。
2 改正の概要
課徴金の対象となる違反行為は、商品や
サービスの「内容」についての優良誤認表示
行為と、
「取引条件(価格)」についての不当
表示行為の 2 点です。前者は、上述のような
商品の産地や品質等を偽装する表示が該当し
ます。後者は、実際は定価であるのに「今だ
けの特別価格」などと表示して有利な価格で
あるかのような誤認を与えるものが該当しま
す。
そして、課徴金の金額は、違反行為期間( 3
年間を上限とする)における対象商品、サー
ビスの売上額の 3 %とされています。
なお、課徴金額が150万円未満となる場合
は課徴金を賦課しないこととされているほ
か、違反事業者が相当の注意を怠ったもので
はないと認められる場合(仕入先の虚偽の説
明を信じて産地を表示した場合で、相当の注
意を払ったものの虚偽を見破ることができな
かった場合など)にも、課徴金は賦課されな
いことになっています。
また、違反行為を自主申告した事業者に対
しては課徴金の半額を減額するする制度のほ
か、事業者が所定の手続に従って自主返金を
行った場合は、課徴金を減免する制度も設け
られています。
3 ガイドラインの策定
前述のように、課徴金額は対象商品等の売
上高の 3 %とされていますが、対象商品等の
売上高をどのように把握するかについては、
曖昧な点が残されています。例えば、木曽路
の牛肉産地偽装を例に挙げると、「松阪牛」
と表示したメニューの売上高の合計金額が課
徴金算定の基礎になると思われます。他方、
豆千待月が「温泉」であることを偽装した例
では、入浴だけでなく食事や宿泊代金を含め
た宿泊プラン全体の代金が算定の基礎になる
と思われます。ただし、「温泉」であること
を目玉として宿泊客を勧誘した場合はやむを
得ないとしても、付随的なサービスに不当表
示があった場合にまで宿泊代金全額を算定の
基礎として課徴金を算定することが果たして
適切であるか、疑問が残ります。
課徴金制度を導入した改正法は、公布日か
ら 1 年 6 月以内に施行されることとなってい
るため、来春までに施行される見通しです。
消費者庁では、それまでに具体的な算定方法
についてガイドラインを公表し、明確化する
方針を明らかにしています。
4 事業者が行うべき対応
措置命令に加えて課徴金を課された場合、
違反事業者は企業イメージ低下や風評に伴う
売上低下など、多大な損失を被ることになり
ます。このため、経営陣、法務部門、営業部
門が連携してチェックを行い、不当表示を未
然に防ぐ組織体制を構築しておくことが重要
になります。
また、従業員の意識を高めるために定期的
な啓発活動やセミナー受講を促し、万が一自
社内で不当表示が行われていた事実が発覚し
た場合には、直ちに正確な情報を収集すると
ともに専門家に相談し、不当表示の解消と違
反の自主申告などの対応を遅滞なく実行して
いくことが、より一層重要となっています。