いちごの流水式夜冷育苗による促成栽培

いちごの流水式夜冷育苗による促成栽培
1 試験のねらい
固形培土を用いず、地下永の間断給水を行う流水式夜冷育苗は通常の夜冷育苗とほぼ同様に花
成促進効果が認められた。本年度は流水式夜冷育苗に用いる苗質および処理時の株密度が花芽分
化、生育および収量に及ぼす影響を検討した。
2 試験研究方法
苗質は育菌方法により土耕およびポット(12㎝ポリ鉢)の2処理とし、それらの苗を1㎡当た
り150(粗)、225および300株(密)の密度とした3処理を組み合わせた6処理を設けた。供
試晶種は女峰で、採苗は土耕およびポット育苗とも7月7日に行い、育苗管理は憤行にしたがっ
た。流水夜冷育苗処理(8時間日長、処理温度10℃、根部への給水は1日5回、1回8分間)は
8月10日から9月3日までとし、定植は9月4日、保温開始は10月11日に行った。施肥量はa当
たりN1.8,P.O.2.5,K.Oユ.8kgとした。
3 試験結果およぴ考察
(1)流水夜冷処理開始時の苗の生育は根重を除いてポット区より土耕区の方が大きく、葉柄中の
硝酸態窒素濃度も土耕区が高かった(表一1)。花芽分化は苗質の影響は認められず、密度で
は300株区がやや遅れる傾向にあったが処理間差は小さかった。また、葉柄中硝酸態窒素濃度
の影響も認められず、花芽は比較的安定して形成されると思われた。流水夜冷処理終了時の苗
の生育は株重、葉の大きさ、茎径などで土耕区がポット区より大きかった。密度の影響はポッ
ト区の株重、葉柄長および茎径においてみられ、密になるほど大くなったが、土耕区ではこの
ような傾向はみられなかった。処理中のむれの発生は土耕区で多く苗質の影響が認められ、ま
た密度が密になるほど多くなる傾向であった(表一2)。
(2)定植後の葉柄長はポット区に比べ土耕区が大きく、苗質の差によるものと思われた。頂花房
の開花期、収穫始期はポット区が土耕区に比べ4∼6日早かったが、栽植密度の影響はみられ
なかった。12月までの収量は密度が150株区がやや優れる傾向であったが、処理間の差は小さ
く苗質の差はみられなかった。4月までの収量は土耕のユ50株区が多く、ポットの225および
300株区は少なく、苗質で帖土耕区、密度では150株区が優れた(表一3)。
4.成果の要約
流水夜冷育苗では花芽分化に及ぼす苗質や密度の影響は小さく、花芽は比較的安定して誘導さ
れるものと思われた。処理中の小葉のむれの発生は土耕区並びに密度300株区で多く、菌質と密
度の影響が認められ、窒素の多い大きな苗は粗くして処理を行った方がよいと思われた。ヱ2月ま
での収量には苗質の影響は認められなかったが、密度では粗の方が優れる傾向がみられた。また
合計収量では全体的に土耕区の方が優れる傾向であった。
(担当者 栃木分場 石原良行)
一59一
表一 流水夜冷処理開始時ρ生育
株 重葉柄長葉身長
苗質
(9〕 ㈲ ㈱
葉身巾
㈱
茎 径 根 重
ω 19)
葉数 葉柄中
枚〕 N03−N(ppm)
土耕22,8 14.5’11.2
7,6 10.3
5.1 3.1’ 320
ポット 18.0 9.9 8.7
5.9 7.9
8.7 3,2 33’
注一調査日8月10日。
表一2 流水夜冷処理終了時の生育
処理 花芽分7株重
葉柄長
葉身長一葉身巾 茎 径
根重葉数むれ小z
苗質 密度 化指数 1g)
出
ω ω ㈲
lg) (枚) 葉率協
9.6 6.1 4.ユ 4,9
150株/註1,8 23.0
12,7
9.0 5.2
225 1,6 29.4
13.6
9.2 5.2
10.8 7.4 4.3 4,7
300 1,4 27.2
1工.0
9.2 5.3
10.5 5.2 4.ユ 19.8
土 耕
平均 1,6 26.5
12.4 9.1 5.2
10.3 6.2 4.2 9.8
150 1,8 17.4
11.6 7.9 4.8
7.4 9.3 4,4 0
225 1,8 20.2
工2.0 8.0 4,8
8.8 9.5 4,8 0
300 1,6 22.2
15.8 9,1 5.0
9.0 9.4 4.5 4.5
13.1 8.3 4.9
8.4 9.4 4.6 1.5
ポット
平均 1,7 19.9
注.調査日1989.9.1,zむれを生じた小葉数/総小葉数、y階級値(未分化=0、肥厚期=1、
分化期=2)を与えた時の指数(Σ(階級値x株数)■全株数)。
表一3 葉柄長、頂花房の開花、収穫始めおよび収量
処 理 葉 柄 長
苗質 密度 保畳開始30日後
150杉レ㎡ 7,2 10.2
(㎝) 頂
60日後
90日後 開花始
10.9 9,2 10,26
花 房 収量(g■株)
収穫始 着花数1]一12月合計z
11.27 14.0 81 332
9.9 8,1 10.26
11.26 13.9 68 306
10.0 8.8 ユ0.26’
11.26 14.6 71 313
平均 7,4 10.3
10.2 8,7 10.26
11.26 14,1 73 . 3工7
150 6.2 9.5
10.1 8,3 10,22
11.21 16.6 85 314
225 7,4 10.2
土 耕
300 7,5 10.5
225 5.9 9.8
ポット
300 5.6 9.4
平均 5.9 9.6
9.6 8,8 10,23
11.23 14.0 70 264
9.0 7,5 10.24
11.24 14.4. 69 260
9.6
8二2 10.23 11.23 15.0
注.z1]月から4月までの合計。
一60・r
75 279