ベル企業レポート 8095 イワキ・・・医薬品原料・表面処理薬品 2015年2月

(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
8095 イワキ
~医薬品原料とジェネリック医薬品で新市場の開拓をめざす~
2015 年 2 月 12 日
東証 1 部
ポイント
・海外拠点への先行投資、海外からの輸入原料高が影響し、今 2015 年 11 月期の業績も
横ばい圏にとどまろう。しかし、来 2016 年 11 月期からは表面処理薬品の化成品部門が
黒字化してくるので、業績は回復トレンドに入ってこよう。
・主力のジェネリック(後発医薬品)向け医薬品原料は着実に需要が拡大している。しか
し、薬価改定の影響や円安による輸入原料高が負担となった。さらに、エレクトロニク
ス部品向け表面処理薬品は、タイの製造子会社や韓国の販売会社などまだ立ち上げ期に
ある。その影響で、2014 年 11 月期は減益を余儀なくされた。
・当社は、医薬品、医薬品原料、化成品、食品原料の 4 つの事業分野を主力として、バ
ランスの取れた経営を行うことを目標とする。収益性という点では、医薬品原料に強み
を有する。医薬品の原料ではジェネリック(後発医薬品)の成長が期待できる。化成品
では、電子部品用の表面処理薬品で、アジアの生産販売拠点作りに力を入れている。
・2014 年 11 月期に創業 100 周年を迎えたが、この間、事業基盤の強化、収益構造改革、
化成品分野の子会社メルテックスの収益確保に力を入れてきたが、まだ道半ばである。
医薬品ではサプライチェーンを生かした強みを一段と発揮すること、化成品ではアジア
での需要拡大が見込める電子部品用の表面処理薬品で、タイでの現地生産を含め、独自
の開発・生産体制を強化することを急いでいる。
・今後の業績拡大については、1)ジェネリック医薬品の製品及び原料を伸ばす、2)メ
ルテックスの海外生産販売を伸ばす、3)健康食品(サプリメント)の表示改正に伴って健
康食品用原料を拡大することが期待できる。また、4)一般用医薬品の低収益性を改善し
つつ、輸入原料に対する為替対応を進めることも重点的な課題である。
・売上高で 600 億円、経常利益で 24 億円以上が見えてくると、ROE は 8%に乗せてくる。
そうなれば、当社の収益力は株式市場で着実に評価され、PBR も 1.0 倍に戻してこよう。
その力はあるので、企業価値の創造に向けて、強みを活かす新製品の開発、不採算事業
の改革など、もう一段の戦略的布石が問われるところである。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
1
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
目 次
1.特色
医薬品、医薬品原料、化成品で製造機能を強化
2.強み
ジェネリック医薬品原料が最大の収益源
3.中期経営計画
4.当面の業績
バランスよく成長分野を伸ばす
収益構造改革は今一歩、来 2016 年 11 月期から増益へ
5.企業評価
収益力の向上には、もう一段の布石が必要
企業レーティング C
株価(15 年 2 月 12 日) 221 円
PBR 0.43 倍
時価総額 75 億円 (34.1 百万株)
ROE 3.5%
PER 12.4 倍
配当利回り 2.7%
(百万円、円)
決算期
売上高
営業利益
経常利益
当期純利益
EPS
配当
2005.11
52124
663
1054
554
21.4
6.0
2006.11
50673
377
626
146
6.1
6.0
2007.11
50505
277
553
146
6.1
6.0
2008.11
50012
21
72
-167
-7.0
6.0
2009.11
47947
300
87
-118
-4.9
6.0
2010.11
50412
494
645
381
15.9
6.0
2011.11
53797
1215
1330
1633
54.4
7.0
2012.11
51953
1126
1303
739
21.9
6.0
2013.11
52465
1007
1154
754
22.3
6.0
2014.11
54145
890
971
505
15.0
7.5
2015.11(予)
53000
900
950
600
17.8
6.0
2016.11(予)
55000
1250
1300
800
23.7
6.0
(14.11 ベース)
総資本 39716 百万円
純資産 17379 百万円
自己資本比率 43.8%
BPS 514.7 円
(注)ROE、PER、配当利回りは今期予想ベース。2011.11 期はメルテックス合併記念配 1 円、
2014.11 期は創業 100 周年記念配 1.5 円を含む。
担当アナリスト
鈴木行生
(日本ベル投資研究所 主席アナリスト)
企業レーティングの定義:当該企業の、①経営者の経営力、②事業の成長力・持続力、③業績下方修正の
可能性、という点から定性評価している。A:良好である、B:一定の努力を要する、C:相当の改善を要す
る、D:極めて厳しい局面にある、という 4 段階で示す。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
2
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
1.特色
医薬品、医薬品原料、化成品で製造機能を強化
医薬品原料を得意とする
当社は医薬品、医薬品原料、化成品の製造・販売企業である。元々は薬種問屋(商社)か
らスタートして、医薬品の製造、化成品の製造へと展開してきた。
岩城修社長(3 代目)は、ビジネスを通して社会に貢献することを基本とし、お金のため
という利益第一主義ではなく、働くことは世のため人のため、お客様の喜びを目的とし、
そのお裾分けが利益であるという考え方で経営に臨んでいる。信条は、お客様の喜びが第
一義的であるという点にある。働く(ハタラク)とは、端(ハタ)を楽(ラク)にするこ
とであり、顧客の喜びが業績にはねかえってくると考えている。
事業内容と主な製品
事業分野 売上構成比 利益構成比
医薬品
32
〈33〉
7
〈8〉
事業内容
(%)
事業内構成比
一般用(OTC)医薬品の卸売
ドラッグストア向け一般用医薬品の製造販売
ジェネリック(後発)医療用医薬品の製造販売
動物用医薬品の販売
55
25
20
医薬品原料
香粧品原料
31
〈30〉
71
〈67〉
ジェネリック医薬品等原料の製造・輸入・販売
化粧品等原料の製造・輸入・販売
80
20
化成品
15
〈15〉
-7
〈-4〉
電子部品用表面処理薬品の製造販売
医薬中間体、写真感光材等の製造販売
75
25
食品原料
機能性食品
15
〈15〉
23
〈23〉
天然調味料、乾燥野菜、乳製品等の輸入・販売
天然調味料の開発製造
健康食品向けサプリメント原料の販売
その他
7
〈7〉
6
〈6〉
40
60
プリント配線板等の製造プラントの製造販売
医療機器の販売
化粧品通販
(注)2014年11月期ベース、利益構成はセグメント利益。〈 〉内は2013年11月期。
事業の中身を 2014 年 11 月期の売上内訳でみると、医薬品 32%、医薬品原料・香粧品原
料 31%、化成品 15%、食品原料・機能性食品 15%、その他 7%という構成である。医薬品
では、岩城製薬が製造しているもの、ドラッグストアや薬局向けの卸売、動物用医薬品の
卸売が主なものである。なお、大手ビッグ 4 が 9 割を占める医療用医薬品の卸に関しては、
15 年以上前に撤退し今は手掛けていない。
原料では、製薬メーカー向けの医薬品原料、化粧品メーカー向けの香粧原料を製造、販
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
3
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
売し、ここが当社最大の収益源である。化成品は、電子部品などに使う表面処理薬品が主
で、そのほかに医薬中間体、プロ向けやレントゲン用の写真感光剤もある。食品原料では、
受託加工、乾燥野菜、天然調味料や、健康食品(サプリメント)向けの機能性食品原料な
どがある。
精密化学品、食品原料にも展開
当社は大正 3 年の創業で、2014 年 7 月に 100 周年を迎えた。薬種問屋からスタートとし
て、現在は 4 つの分野で事業を展開している。製造から卸、販売までを手掛け、また、原
料から製品まで作っているという点で幅広い。
創業者の岩城市太郎は 1914 年(大正 3 年)に、日本橋の薬種問屋で働いた後、23 歳で独
立した。以来、
「誠実一路」
「利は労して稼げ」をモットーに会社を発展させた。1931 年(昭
和 6 年)に岩城製薬所を設立し、製薬に参入した。そこで、マーキュロクロム(ヨードチ
ンキ)を日本で初めて製造した。
2 代目の岩城謙太郎は、製薬を学び、その後早稲田大学を出て、戦後はシベリアにしばら
く抑留され苦労した。市太郎が 1962 年(昭和 37 年)に亡くなった後、謙太郎が社長に就
任し、今のイワキの基盤作りに大きく貢献した。1963 年に、社名を岩城商店からイワキに
変え、東証 2 部に上場した。
当時、日本のさまざま機器はメッキ性能がよくなかった。そこで、米国のマステン・ラ
イト社と合弁でジャパンメタルフィニッシングカンパニー(現メルテックス)を 1960 年(昭
和 35 年)に設立した。メルテックスはエレクトロニクスの成長に合わせて、1986 年に今の
ジャスダックに上場した。その後 2011 年 4 月にイワキの 100%子会社となった。また、2
代目の謙太郎は 1959 年に食品部門を開設し、インスタント食品の発展に対応して各種原料
を取り扱っていった。食品原料は、ポテトチップスの粉末など食品そのもので添加物は扱
っていない。
4 本柱でバランス経営
岩城修社長(64 歳)は、
1973 年大学卒業と同時にイワキに入社し、
社員として一から活動、
その後マネジメントの中枢を担い、1994 年社長に就任した。
初代は、現社長が小学校 5 年生の時に亡くなったが、誠実であることに厳しく、謙虚で
あった。オーナーの態度は会社の風土に出るものである。2 代目は、上場を機に社名をカタ
カナのイワキに変え、事業の基盤を強化した。千葉薬専を出て、薬剤師の資格を取るとと
もに、早稲田大学の応用化学工業経営学科に入り直して、マネジメントも学んだ。薬種問
屋から医薬品の製造、電子部品用めっき薬品の製造に手を広げていったのである。
3 代目は、現在社長になって 21 年目である。4 代目の慶太郎氏は現在 37 歳、本社取締役
であると同時にメルテックスの社長を務めていたが、この 2 月に副社長に就任する予定だ。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
4
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
セグメント別業績
医薬品
医薬品原料
香粧品原料
化成品
食品原料
機能性食品
その他
調整額
合計
(百万円)
2010.11
2011.11
2012.11
2013.11
2014.11
売上高 営業利益 売上高 営業利益 売上高 営業利益 売上高 営業利益 売上高 営業利益
17153
-222 17525
-110 16637
13 17145
127 17435
105
13915
692
15045
963
14911
1023
16446
1070
17400
999
9667
196
9537
489
9005
156
7970
-68
8091
-94
8214
415
8242
433
7792
418
7762
365
8055
319
1924
18
3888
100
3983
115
3619
95
3727
79
-463
-605
-442
-661
-376
-600
-480
-582
-566
-518
50413
494
53797
1215
51953
1126
52465
1007
54145
890
(注)2011.11期よりセグメントを組み換え:医療機器は医薬品からその他へ、
機能性食品は医薬・香粧原料から食品原料・機能性食品へ
化粧品通販は医薬・香粧原料からその他へ
岩城修社長の経営の基本観は、1 つの事業に偏らずに、東京タワーの脚のように 4 本の事
業を確固たるものに、バランスをとることにある。3 本脚では不安定で、将来は 5~6 つの
事業をコアとしたいと考えている。また、リスクをコントロールするために、1 つの事業分
野においても、特定の得意先に依存しすぎないようにしている。
社長になった時に、医療用医薬品の卸から撤退する決断をした。当時、この事業は年商
100 億円ほどあったが、赤字であった。この頃から業界では医薬品の卸の統廃合、再編が進
んでいった。当時 2 代目は代表権のない会長であったが、会長には相談せずに決断した。2
代目が作り上げてきたものをやめるので、自ら判断するしかないと考えた。医療用医薬品
の卸からは 1994~1995 年に一気に手を引いたが、社員は一人も辞めさせなかった。別の事
業分野に移したのである。
リーマンショックの時は、メルテックスの事業のリストラが必要になった。それまでメ
ルテックスは比較的順調で、会社も無借金であった。しかし、家電、電子部品の不況で、
メルテックスの需要はピークの 60%水準まで落ちた。資金繰りも厳しくなってきたので、現
メルテックス社長を本社から送って、再建の舵をとらせた。2008 年にはメルテックスの工
場を 2 つから 1 つへリストラし、乗り切ったのである。
また、セルフケア・ニュートリションとしての健康食品に力を入れてきた。このサプリ
メント原料では、三菱ウェルファーマがノンコアビジネスとして撤退したので、そのビジ
ネスを譲り受けた。元々、鹿児島県福山町の黒酢を三菱ウェルファーマが仕入れ、それを
当社が販売に関して分担していた。この三菱ウェルファーマの事業を当社が譲り受けたの
である。
食品加工品では、米国から乾燥ポテト、オニオン、粉末ポテトなどを輸入するほか、カ
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
5
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
ップ麺用のスープや固形かやくを取り扱っている。日本では遺伝子組み換え(GMO)につい
て消費者が慎重である。よって、ポテトでもノン GMO が求められ、残留農薬についても関
心が高いので、品質について、よくチェックする必要がある。
当社の特色は、①4つの事業分野を有すること、②子会社に製造部門をもつこと、③売
上高の約 4 割は自社で製造をコントロールしていること、にある。いわば商社がメーカー
機能をもっているわけだ。また、医薬品の取扱いについての社歴は長く、信頼できる体制
を築いている。取引においては、代理店を通すのではなく、直接取引している原料が多い。
輸出機能も充実しており、メーカー機能をもっていることから品質を十分保証することが
できる。検査(インスペクション)についても高い精度を有している。
2.強み
ジェネリック医薬品原料が最大の収益源
ジェネリック原料に強く、ジェネリック医薬品では皮膚科用塗り薬でトップクラス
業界での地位を見ると、医薬品の原料、健康食品の原料、外皮用剤(医家向けの皮膚用
ジェネリック医薬品)などで一定の地位を有し、収益性を発揮している。また、化成品の
表面処理薬品では業界トップのものがあり、ここでも強みを有している。
医薬品卸の大手は、メディパルホールディングス、アルフレッサ、東邦ホールディング
ス、スズケンである。岩城製薬の製品はこれら大手の 4 社にも販売している。
岩城製薬は年商 85 億円規模、2011 年に創業 80 周年を迎えた。医療用医薬品の中でも、
ジェネリック(後発医薬品)を作っている。同時に、医薬品の原料も生産している。ジェ
ネリックでは皮膚科用の塗り薬でトップクラスである。また、医薬品の原料では大手製薬
メーカー向けやジェネリックメーカー向けの原料を 30 品目ほど手がけており、ここでは安
定した力を有している。
医薬品の卸は、かつては問屋機能に意味があり、それなりの力を発揮してきたが、流通
合理化の中で、採算性は低下してきた。物流コストが合わなくなってきたのである。元々、
自社の物流機能をもっていたが、これは縮小整理した。一般用医薬品の卸も収益性は低く、
この分野では自社企画品のウエイトを上げようと力を入れている。OTC(店頭で販売する一
般用医薬品)の販売は赤字であるが、その OTC メーカーに原料を販売している。その意味
において結びつきは強い。当社のバリューチェーンでみると、原料、卸、販売にはシナジ
ーがあると、岩城社長は判断している。
食品は大半が輸入品である。トマトパウダー、オニオン、ポテトパウダーなど多様であ
る。ボーエン化成(株式の持分比率 36.7%)で生産しているカップラーメンの粉末スープ
もここに属しているが、そのウエイトは高くない。また、機能性食品に力を入れており、
ここがどこまで戦えるかがポイントである。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
6
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
主要 3 社の構図
連結の売上高が 540 億円、イワキ単体の売上高が 420 億円であるから、その差が 120 億
円ほどある。イワキ単体は商社としての販売機能を担っている、この本体を通さず、独自
に販売を行っているのはメルテックスである。よって、化成品の主力であるメルテックス
は独立している。それ以外では、化粧品や健康食品の通販を行っているアプロスも独立し
ている。アプロスは中堅の通販会社で、一定の利益は出している。
主要会社別にみると、岩城製薬がジェネリック医薬品とその原料で最も稼いでおり、商
社であるイワキ単体の収益性は低い。メルテックスは 2 期連続赤字であり、いかに黒字化
するかが課題となっている。
主要グループ企業の内容
イワキ
(商社)
年商420億円
医療用医薬品、一般用医薬品
医薬品原料、香粧品原料、食品原料
サプリメント原料
100%子会社
100%子会社
岩城製薬
メルテックス
(医薬品メーカー)
(化成品メーカー)
年商85億円
年商70億円
ジェネリック医薬品
医薬品原料
香粧品原料
表面処理薬品
電子部品の受動部品向け表面処理薬品で業界トップ
表面処理の薬品には、洗浄、脱脂、活性化、エッチング、化学研磨、めっき、剥離など、
それぞれのプロセス毎に異なったものが用いられ、狭い意味でのめっきはその 1 つにすぎ
ない。また、表面処理には、きれいにする、錆びなくする、磨り減るのを防ぐ、電気特性
を変える、機械特性を変えるなどの機能があり、とりわけ電気特性が重視されている。
当社は電子部品向け表面処理薬品において業界トップクラス、シェア 25%を有する。2
位は石原ケミカル(コード 4462)
、3 位は日本高純度化学(コード 4973)である。電子部品
の用途別では、受動部品(チップコンデンサ、チップ抵抗など)でトップ、コネクターで 5
位、リードフレームで 5 位、という地位にある。とりわけ、錫めっきに強く、電子部品売
上の 7 割が錫関連である。
プリント配線基板(PWB)では業界 3 位、シェア 15%である。その中の硫酸銅ではシェア
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
7
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
41%で業界トップである。化学銅で 3 位、デスミア(穴壁面からの加工残除去)で 6 位で
ある。当社のプリント配線板の売上高のうち半分以上がこの硫酸銅である。
当社は、ローム&ハース、クックソン・エレクトロニクスという 2 社の外資系企業と提
携関係を結び、ライセンス製品をベースとしながら、事業を展開してきた。現在は自社商
品の強みを生かし、汎用よりは高付加価値化、ニッチよりはフルラインを目指している。
ローム&ハースからの導入品(ライセンス生産)は活かしながらもの、自社開発力を一段
と高めようとしている。
また、企業単位で競合状況をみれば、DOW、ATOTECH が PWB で直接競合しており、海外展
開では JCU(コード 4975)が先行している。電子部品では石原ケミカルとぶつかっており、
こことの差をいかに広げていくかが問われている。
表面処理薬品の輸出は、かつての円高局面で、ユーザーである電子部品メーカーが海外
シフトしたため、その対応が問われた。ドル建て輸出は 10%もなかったが、円建てでも値
引きは要請されたので、数量は確保できても、利益が出なくなった。技術優位性はあるの
で、台湾、韓国よりもいい品質のものは提供できるが、コスト面では海外現地生産を急ぐ
必要があった。但し、世界的にもトップクラスの商品を海外に持ち出すと、その生産ノウ
ハウが流出する可能性があるので、そこは守っていく。基本は LCO(ローカリー・コンプリ
ーテッド・オペレーション)、つまり現地ビジネスは現地の人材、資源で対応しようという
考えである。
3.中期経営計画
バランスよく成長分野を伸ばす
創業 100 周年、グループ経営を展開
2014 年 7 月に創業 100 周年を迎えた。90 周年の時には、1 年に 10 回ボランティア活動を
行って、10 年で 100 回ほど実行しようという目標を掲げた。社員の自主性を大事にしつつ、
イベントを作ってきた。
次の 100 年も輝く会社であるために、規模ではなく不易流行を軸としている。当社とし
ては変えてはいけないもの、時代に合わせて変えていくべきものを実践していく。顧客に
役立つことを中心に、価格競争ではないビジネスを追求する考えだ。
グループ企業は数多くあるが、商社としてのイワキ、岩城製薬、メルテックスの 3 社を
軸に事業を展開しており、各社のマネジメントはかなり独自性を持っている。採用も各社
で行っており、役員も各社で輩出している。
全体のマネジメントは、各社のトップが入った取締役会で実行されており、その中では
岩城製薬が業績のリード役に立っている。今期より社外取締役が 1 名選任された。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
8
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
中期的な経営の方向
次の100年に向けた持続的成長を目指す収益構造改革の推進 *事業基盤の強化
・医薬品事業・・・ジェネリック医薬品の拡大と一般用医薬品の収益向上
・医薬品原料・香粧品原料事業・・・ジェネリック向け原料の安定供給と差別化
・食料品・機能性食品事業・・・市場開拓による独自性の発揮
・化成品事業・・・海外生産の軌道化と新領域の開拓
*収益構造の改革
・商社機能の見直しとポートフォリオの変革
・設備投資による供給力の拡大と生産体制の効率化
*グループ会社の連携
・組織運営体制の強化による経営効率の追求
・オープンイノベーションのための仕組み作り
(注)会社が目指している方向をアナリストの視点でまとめたもの。
収益構造の改革が問われる
経営方針としては、事業基盤の強化と収益構造の改革がテーマである。次の 4 点に力を
入れている。1 つは、事業の 4 本の柱(脚)を太くしていくことである。政府はジェネリック
の使用促進に向けて、2018 年 3 月末までにジェネリックの数量シェアを 60%以上にすると
いう目標を設定している。それに対応するジェネリックの強化では、医薬品も原料も伸ば
す。また、医薬品原料は海外販路の拡大も目指し、海外からの輸入にも岩城製薬を活かす。
売上構成では医薬品のウエイトが高いが、利益面では OTC の卸の収益性を黒字化にもって
いくことである。その上で、それ以外の分野の構成を高めていく。
2 つは、医薬品原料の中で、ジェネリック(後発品)の原料を伸ばしていく。医薬品の原
料の仕入れでは、30%は岩城製薬で、その他の国内 60%、海外 10%という構成である。品
質保証の重要性が問われるので、中国、インドから直接輸入して安く販売するというわけ
にはいかない。必ず品質の確認と保証が必要になる。当社の役割が生きるわけである。香
粧品原料では、アジア地域への拡大で強化を図る。
医薬品原料は、ジェネリック用や一般医薬品用を製薬メーカーに販売している。一般用
(OTC)はドラッグストアの安売りで単価が下がっていくが、ここはやめられない。OTC 用
の原料で当社は製薬メーカーに一定の強みをもっている。製薬メーカーに原料を供給する
一方で、それらの企業の OTC 医薬品の卸機能を担っている。サプライチェーンの川下に OTC
の卸を持つメリットが差別化要因となっているからである。
3 つ目は、化成品の収益性改善である。化成品は、以前に比べて国内での成長性は低くな
っている。電子部品メーカーは次第に集約されていく方向にあり、海外展開が活発である。
エンソンとの独占販売ライセンスが切れたが、その影響は大きくない。エンソン自身が他
社に買収されていく中で、新しいものが出ていないからである。むしろ、メルテックスの
自社開発がどこまで通用するかがポイントである。同時にアジアに出ていく必要があり、
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
9
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
その体制を整えている。また、化成品では岩城製薬の合成技術を軸に新領域へ入っていく
こともできよう。
4 つ目は、サプリメント原料は伸びが見込める。従来からの食品原料は手間がかかるもの
の、輸入原料の拡充により強化する方向にあるが、円安が課題である。機能性食品は健康
食品メーカーへの拡販に努める。
ジェネリック原料に期待
イワキというと、医療用医薬品の卸が中心の会社というイメージがあるが、これは全体
の一部にすぎず、医薬品原料や化学品の製造に強みをもつメーカー色が強い。
イワキにとっての成長が期待できる分野はいくつかある。1 つはジェネリック医薬品であ
る。医療費の抑制に向けて、国はジェネリック医薬品の使用率を高めることを政策目標と
して挙げており、そのインセンティブ(加算制度)を付けている。
そこでの 1 つのポイントは、ジェネリック医薬品原料の信頼性保証である。米国ではイ
ンスペクション(検査)を国がやっているが、日本は民間に任されている。日本でもイン
スペクションが必要となったので、その役割をきちんと果たせるかどうかが重要である。
当社は岩城製薬がその経験を十分積んでいるので問題ない。
また、岩城製薬は、ジェネリック医薬品用の原料を作っている。ジェネリックは薬価が
低いので、原料も安いものが求められる。低価格、高品質をいかに実現していくかが問わ
れる。当社は 30 種の原薬を生産しており、さらに原料の拡充を図っている。
また、当社は医療用医薬品の卸ルートも持っているので、ジェネリック医薬品の拡販に
も力を入れている。当社は皮膚病用のジェネリック医薬品外皮用剤では、薬価収載の品目
数でトップクラスである。
一般用医薬品で、自社企画品の製品化に力を入れており、首都圏ドラッグストア向けに
加えて、西日本へも事業領域の拡大に力を入れている。
原料では、岩城製薬を活かして、ジェネリック原料の強化に努めている。原料の輸入に
ついても、品質保証の確かさを軸に販路を広げている。スイッチ OTC の原料についても、
痛み止めや抗アレルギー剤など、比較的難しいものに力を入れている。
医薬品事業は赤字から黒字化したが、そもそも赤字の主因は一般医薬品(OTC)の卸にある。
しかし、原料から製品まで扱っていることで、強みが出ている面もある。よって、今のと
ころ原料にのみ特化して、卸を縮小・撤退するという考えはない。両者の相乗効果(シナ
ジー)を狙っている。ここは引き続き課題である。
子会社に動物用の薬品を扱っている販売会社が 2 社あるが、千葉にある販社(販売会社)
は豚や鶏用を扱っており、北海道にあるもう 1 社は馬や牛用の薬品を扱っており、内容が
異なるので、販社を統合する必要はない。
動物用医薬品は現在黒字であるが、今後の展開は厳しい。北海道と千葉に拠点を有する
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
10
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
が、牛などの大型動物用、鶏などの小型動物用医薬品メーカーが業界再編の中で減少して
おり、その医薬品の取り扱いも今後減る可能性がある。TPP の影響を受ける可能性もある。
外資が強い分野であるので慎重にみておく必要がある。
岩城製薬における設備投資の推進
ジェネリック医薬品の成長は今後とも期待出来る。岩城製薬はジェネリック外皮用剤で
は 80 品目を取りそろえ、品揃え№1と高い評価を受けている。大田区の蒲田工場の増産体
制を整えていく必要がある。軟膏、クリーム、ローション剤などの仕込み、チューブ、充
填工程に投資し、能力を増やしていく。
ジェネリック医薬品の利用は日本全体で数量ベース約 45%であるが、外皮用剤関連は 2 割
弱とまだ低く、金額ベースでも 1 割程度と推測されている。今のペースでいくと、当社の
ジェネリックも毎年 20%の能力アップが必要であり、仕込みと充填のバランスを図っていく
ことが重要である。
また、岩城製薬は、化粧品分野でも新しい展開を見せている。資生堂の医療機関向け化
粧品(
「NAVISION」
、
「NAVISION DR」
)の発売元として、卸を通さず、医療機関(病院、クリ
ニック)に販売している。当社は皮膚の薬を得意としており、すでにナビジョンの専任営
業において、1300 の医療機関に販売している。ここでは、国内シェア№1 である。
ナビジョンは資生堂とコラボ(協働)している。医療機関でしか販売できない。医療行
為として皮膚をきれいにしていく。医療用については、当社が総代理店となっている。市
場は狭いが、信用が大事なので着実に伸ばしていく方向だ。
さらに、静岡県の掛川にある静岡工場のジェネリック医薬品向け原薬の強化も必要であ
る。2013 年 11 月期は能力を 20%ほどアップした。また、2020 年に特許切れとなる医薬品の
ジェネリック原薬の選定も開始しており、将来は棟の建設も必要になろう。さらに、輸入
原料の活用による競争力の強化も図る方向で、原薬の商社機能にも一段と力を入れていく。
ジェネリック用の輸入原料については、2015 年以降から大型新薬のパテント切れが相次
ぐので、その準備が必要である。5 年で 23 品目のパテントが切れる。そのため、ジェネリ
ック薬品にとってはチャンスである。当社としても、岩城製薬で生産できるものについて、
優先順位をつけていく。それ以外については、海外メーカーで生産される原料を当社が輸
入するという連携をいち早く強化していく方針である。
化成品の海外市場を開拓
もう 1 つの成長可能な分野は化成品である。ここを担う子会社のメルテックスは、表面
処理用の薬品で海外展開に力を入れている。台湾、香港に加えて、マレーシアに連絡事務
所、タイに現地法人、中国の天津と韓国に販社を作った。韓国の販社は、それまで日本か
ら営業していたものを現地拠点から直販し、サービス体制も強化するようにした。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
11
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
メルテックスは従来から子会社としてジャスダックに上場していたが、2011 年 4 月に
100%子会社化して、上場をやめた。また、2011 年 6 月に事業を再編して、表面処理薬品に
特化し、生産と販売も一本化した。これによって、効率化を進めている。
化成品については、アジア展開に力を入れている。得意先が海外シフトしていくので、
それについていく。まずは日本の現法に売っていくところから基盤を広げていく。
ライセンス製品から自社技術製品へのシフト
メルテックスは米国からの輸入販売から事業をスタートさせたが、今でもライセンス生
産しながら業務提携先であるローム&ハース社のライセンス製品を約 5 割、クックソン・
エレクトロニクス社のライセンス製品約 2 割を売っている。この比率をいかに下げ、自社
製品比率を上げていくかが重点施策である。自社製品比率 30%を早期に 50%にもっていく
方針である。ここでいう海外売上比率には社内的に国内輸出と分類している売上(日系企
業の海外工場への売上)を含んでおり、海外への直接輸出と国内輸出の合算値ベースでの
目標である。
コア技術でグローバルリーダーを目指す
表面処理薬品分野のメガトレンドはいかに環境負荷がない方向にもっていくかである。
単なる化学薬品の利用ではなく、バイオエレクトロニクスや回路フリーなプロダクツの追
求が大きな流れである。めっき代替品が出てくる可能性も長期的には高い。代替品と原材
料の供給者には十分注意する必要があり、顧客は技術革新とコストダウンを求めている。
また、国内は成熟、成長のアジアには新規参入者が登場している。
その中で、当社はどういうポジションをとるか。アライアンスによる技術導入で国内市
場を開拓した時代、自社技術で導入(ライセンス)製品を減らしてきた時代を経て、自社開
発品で市場のグローバル化を進める時代に挑戦しようとしている。これをグローバル TSP
(テクノロジー・ソリューション・プロバイダー)と位置付けている。そして、その先に
は、真のグローバルリーダーになることをビジョンとして見据えている。
グローバル TSP を達成するために、①コア技術・製品群の育成、②グローバル化、特に
アジア市場の拡大、③生産体制の再構築、④業務・財務効率の向上、⑤魅力ある会社作り、
を挙げている。
コア技術・製品群の育成では、電子部品・半導体向け錫めっき、半導体向け技術や環境
負荷軽減技術に重点投資して、パワーIC、コネクター、ソーラー、パッシブなど、いずれ
も成長することは間違いないので、この分野を攻めていく。
グローバル化では、中国、台湾、韓国、アセアンで、各国の特性に合わせた展開で市場
を開拓する。そのために、現地化の強化に向け、アライアンスパートナーとも組んでいく。
海外でのプレゼンスの向上には M&A や JV(ジョイントベンチャー)も視野にスピードアッ
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
12
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
プを図っていくのである。
生産体制の再構築では、国内生産の絞り込み、アジアでの生産化、計画調達の強化、在
庫回転率の向上などを実行する。
画期的な新製品の開発にも力を入れている。電子基板にめっきなど表面処理を行うと、
銅配線の銅を溶かしてしまってダメージを与える。このダメージを少なくすると、配線す
る時の銅の量を減らせるので、配線の線幅が狭くできる。基板の高密度化に貢献するので、
スマホ(スマートフォン)などの小型・高性能化に効果がある。この銅配線に対するダメー
ジを 20 分の 1 にまで軽減できる表面処理薬品を開発した。この分野で年商 5 億円を目指し
ている。
また、新製品では、金の使用量が従来の 3 分の 1 になるような新しい表面処理薬品の拡
大を目指している。自社製品で、MIT 発のベンチャー企業と契約したコネクター用金メッキ
薬品の金使用量を大幅に下げる商品である。高速通信機器や車載用に伸びが見込める。
メルテックスの目指す方向と位置付け
グローバル化
今後
アジア市場
グローバル
TSP
テクノロジー・ソリューション
高付加価値化
現在
かつて
国内市場
FSP
OEM
フィールド・サービス
技術営業サービス
相手先ブランド
生産
導入型
技術アライアンス
自社技術開発型
製販アライアンス
メルテックスのタイ工場の本格稼働
メルテックスは、2014 年 5 月に韓国に営業拠点を設立した。今までは代理店経由であっ
たが、現地ニーズに対応するために直販に切り替えた。中国での深圳に天津の支社を作る
準備をしている。営業力強化のためである。
新製品としては、高密度パッケージ用が評価テスト中である。ルーセントカパーシリー
ズも 3 月から販売を開始する、こうした新製品も今期から売上に貢献してこよう。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
13
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
化成品を担当するメルテックスのタイの現地生産は 2014 年 5 月から本格化してきた。サ
ンプル生産から一部量産に入ってきた。まだ規模は小さいので 2014 年 11 月期は赤字、今
期中には黒字化に目途をつけるという段階である。
表面処理薬品は熊谷と四日市で生産しているが、販売先である日本の電子部品メーカー
の海外生産シフトに対応して、遅ればせながら海外工場をスタートさせた。海外販売比率
が高いものから移管していく。原材料の現地調達によって、生産コストの低減を目指す。
一方、メルテックス本体は新製品の開発に力を入れており、高密度パッケージ基板向け表
面処理薬品など 3 品目で市場を開拓する。大手パッケージメーカーからの評価は高いので、
このプロセスでシェア 10%を狙っている。
キャッシュ・フローの推移
(百万円)
2010.11 2011.11 2012.11 2013.11 2014.11 2015.11(予)
営業キャッシュ・フロー
税引後当期純利益
減価償却費
負ののれん益
段階的取得に係る差損益
売上債権の増減(-は増加)
1626
338
561
-1133
1006
344
1721
1764
701
-1172
0
-268
1614
625
740
0
0
112
524
717
779
0
0
-1532
432
534
866
0
0
-904
1500
600
900
0
0
0
投資キャッシュ・フロー
有形固定資産の取得
有形固定資産の売却
子会社株式の取得
258
-1099
44
1227
138
-610
861
0
-683
-508
168
0
-962
-374
54
-501
-607
-534
80
0
-800
-700
0
0
フリー・キャッシュ・フロー
1885
1858
930
-438
-175
700
財務キャッシュ・フロー
有利子負債の増減
配当金の支払い
-134
35
-144
-845
-615
-171
-1073
-762
-235
-170
138
-201
438
842
-252
-700
-500
-200
現金等期末残高
3430
4425
4290
3704
4124
4124
(注)メルテックスの完全子会社化に伴う影響が段階的取得差損益、負ののれん益、
子会社株式取得などに出ている。
設備投資はキャッシュ・フローの範囲内
設備投資については、2013 年 11 月期はタイの現地工場への出資、2014 年 11 月期は岩城
製薬のジェネリック医薬品関連の増強が主力であった。2013 年 11 月期設備投資は 752 百万
円であったが、このほかにメルテックスアジアタイランドへの出資が 6 億円ほどあった。
これはタイ工場への設備資金である。その意味では、この期の設備投資は実質的に 13 億円
程度であった。
2014 年 11 月期の設備投資は 820 百万円(前期 752 百万円)であった。これに対し減価償
却は 866 百万円(同 779 百万円)であるから、投資負担はさほど重くない。設備投資の主
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
14
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
力は岩城製薬の設備増強で、今 2015 年 11 月期も同じペースの投資が続こう。
投資の中身では、チューブ充填や打錠用の投資が増える。岩城製薬の蒲田工場は、外皮
用剤のチューブ充填機に続いて、打錠機やローション充填機を入れていく。
医薬品原料を生産する静岡工場も能力アップを図っていく。また、メルテックスでも新
製品対応の設備投資が増える方向である。
キャッシュ・フローを見ると、2012 年 11 月期はフリー・キャッシュ・フローがかなり出
たので、その分を借入金の返済にまわした。2013 年 11 月期は、岩城製薬の設備増資やメル
テックスのタイ工場の新設など、設備投資がかなり増えたので、これまでの蓄積を取り崩
して対応した。2014 年 3 月期は、内部資金(内部留保+減価償却)で賄うことができる水
準ながら、運転資金の発生次第で外部借入が必要になった。今後とも設備投資に伴う資金
的な負担はさほどないとみてよい。
健康食品の規制緩和に期待
当社はサプリメントの原料に強い。健康食品(サプリメント)の表示については、規制緩
和がいい方向に進めば、需要増に結びつくので当社の原料も拡大しよう。
これまでの健康食品は「~に効く」といった効能の表示はできなかった。基本は食品で
薬ではないので、
「1 回何錠」というような表示もできなかった。
特保(特定保健食品)については、一定の効能を表現することはできるが、そのための
エビデンス(証拠)を得るためにデータを集め、分析する必要があるので、かなりのコス
トがかかる。
今回の新たな機能性表示については、申請は必要であるが、エビデンスがあれば効能に
ついて表現できる。ただ、その指針の公表が少し遅れている。よって、健康食品メーカー
の開発も様子見となっている。ここがはっきりしてくれば、開発、マーケティング、販売、
宣伝に大いに力が入ってこよう。
5.当面の業績
収益構造改革は今一歩、来 2016 年 11 月期から増益へ
2011 年 11 月期はメルテックスの子会社化で過去最高の業績を達成
2011 年 11 月期は、売上高 53797 百万円(前年度比+6.7%)、営業利益 1215 百万円(同 +
145.8%)
、経常利益 1330 百万円(同+106.1%)
、当期純利益 1633 百万円(同+328.3%)
、
となった。業績好転の要因は、ジェネリック原料の拡大と完全子会社化したメルテックス
の寄与にあった。当期純利益については、メルテックスの子会社化に伴い、負ののれん益
11.7 億円が発生したことによる。
売上げ面では、ジェネリック医薬品が順調で、医薬品の原料もジェネリック向けに伸び
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
15
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
た。医薬品の卸もきめ細かな販売が効果を上げた。営業利益面では、メルテックスの 100%
子会社化に伴い、化成品の利益がフルに入ってきたことが効いた。負ののれん益が発生し
た理由は、メルテックスの資産を安く買うことができたので、これによって特別利益が発
生した。
セグメント別に見ると、医療用医薬品は岩城製薬が製造するジェネリックはいい方向で
あったが、この部門の 5 割を占める一般用医薬品の卸売りは厳しかった。花粉症や猛暑関
連製品が伸びたので、医療用が赤字をカバーして、全体のマイナスは縮小した。
医薬品原料、香粧品原料では、売上高の 8 割を占める医薬品原料がジェネリック向けに
好調であった。香粧品原料も新規取引の開拓が進んだ。食品原料では、輸入品の取引高が
多いので、円高メリットがプラスになった。
バランスシートでは、2011 年 11 月期の有形固定資産が-1277 百万円となっているが、
これは資産の売却によるものである。負債で短期借入金が-1078 百万円,長期借入金+637
百万円となり、全体として有利子負債の減少に結びついた。
バランスシート
2010.11
2011.11
2012.11
2013.11
(百万円)
2014.11
現預金
受取手形・売掛金
棚卸資産
その他流動資産
有形固定資産
無形固定資産
投資その他資産
3512
14598
4219
662
8737
320
3469
4554
14305
4428
804
7460
273
3294
4426
14250
4385
710
7479
340
3692
3835
15809
4571
819
7405
351
4887
4341
16803
4998
1124
8048
311
4090
資産合計
35518
35119
35284
37678
39716
支払手形・買掛金
短期借入金
その他流動負債
長期借入金
その他固定負債
負債合計
11413
4040
1982
840
2224
20500
11146
2962
2295
1477
2001
19881
11414
2362
1950
1315
2372
19413
12229
2658
2172
1157
2580
20797
12492
3730
2411
927
2776
22336
株主資本
その他包括利益
少数株主持分
純資産
11555
137
3324
15017
15111
126
0
15238
15613
257
0
15870
16163
717
0
16881
16353
1026
0
17379
32.9
43.4
45.0
44.8
43.8
自己資本比率
(注)2011年11月期の株主資本の増加と少数株主持分の減少は、
メルテックスとの株式交換による完全子会社化によるもの
2012 年 11 月期は電子部品用表面処理薬品の影響で減益
2012 年 11 月期は、売上高 51953 百万円(前年同期比-3.4%)
、営業利益 1126 百万円(同
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
16
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
-7.3%)
、経常利益 1303 百万円(同-2.1%)、当期純利益 739 百万円(同-54.7%)となった。
小幅ながら減収減益となった要因は、医薬品での不採算取引の削減、ジェネリック向け
医薬品原料の増加はあったものの、表面処理薬品を主力とする化成品の大幅減益が響いた。
電子部品関連の需要不振と海外シフトの影響による。全般に上期に比べて、下期の需要が
低調であった。
セグメント別にみると、医薬品は、グループにあった小泉薬品(試薬品)を東邦薬品に
譲渡したので、その分の売上高 14 億円が減少したが、利益面での影響はほとんど出ていな
い。OTC での自社企画品の増加、不採算取引の削減、岩城製薬のジェネリックの伸びなどに
よって、2012 年 11 月期は黒字化した。受託生産も伸びているので、これも貢献した。
医薬品原料・香粧品原料では、ジェネリック用が伸びた。大手製薬メーカーは原料を自
社で調達していることが多いが、ジェネリックメーカー、OTC メーカーでは医薬品原料を外
部から調達している。この分野で当社はトップクラスの実績をもつ。キャパシティの拡大
が必要で、増設に力を入れている。GMP(医薬品製造品質管理基準)の観点から、輸入原料
についてリソースの多様化を図る動きがある。これにも的確に対応していく方向だ。
化成品は、2012 年 11 月期に大幅減益となった。ここでは、表面処理薬品、輸入化成品販
売、写真用薬品などを取り扱っているが、表面処理用と写真用がよくなかった。子会社メ
ルテックスが手掛ける表面処理医薬品は、スマホや自動車用の電子部品など好調なものも
あるが、エレクトロニクス関連の需要不振、海外生産シフトで需要が落ちている。対応と
して、タイに工場を建設することにした。
配当について、2011 年 11 月期は、メルテックスの合併に伴う特別配当を 1.0 円プラスし
て年 7.0 円としたが、2012 年 11 月期については元に戻して年 6.0 円とした。
2013 年 11 月期もメルテックスの赤字化で減益となった
2013 年 11 月期は、売上高 52465 百万円(前年度比+1.0%)、営業利益 1007 百万円(同-
10.6%)
、経常利益 1154 百万円(同-11.4%)、当期純利益 754 百万円(同+2.1%)となった。
セグメント別の業績をみると、医薬品の業績は大きく改善し、主力の医薬品原料も着実に
伸びた。一方で、化成品は大きく悪化し、赤字幅が拡大した。食品原料も減益となった。
医薬品では医療用で新製品が 2 品でたこと、ジェネリックが好調だったことが寄与した。
数量が前年度比 20%ほど伸びて、売上高も+10%となった。一般用は利益面では引き続き厳
しい。取次品が 60%、PB 商品が 40%という構成であるが、ドラッグストア向け PB が+20%
と伸びた。一般用医薬品の 45%が PB 商品になっているが、当社企画のものより、ドラッグ
ストア企画のものが多い、自社企画を増やさないと、収益性の面ではうまみは出ない。
医薬品原料は 2 桁の伸びを見せた。医療用医薬品原料が 40%。一般用医薬品原料が 60%と
いう構成であるが、どちらも順調な伸びであった。医療用は新規の原料が貢献し、一般用
では血管収縮に関係する原料の米国向け輸出が伸びた。しかし、営業利益の伸びが 1 桁に
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
17
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
留まったのは、輸入品原料が円安の影響でコストアップとなったことと、国内原料も競争
が激化しているからである。化粧品原料も 10%近く伸びた。
化成品は内需の減少で赤字幅が拡大した。食品原料では、食品用が約 40%、機能性食品用
が約 60%を占めるが、食品用が厳しかった。機能性原料は堅調であった。
主要セグメントの売上高営業利益率の推移
2012.11
2013.11
2014.11
(%)
2015.11
(会社計画)
医薬品
0.1
0.7
0.6
1.0
医薬品原料
香粧品原料
7.0
6.7
5.9
5.9
化成品
1.7
-0.9
-1.2
-1.1
食品原料
機能性食品
5.4
4.7
4.0
4.3
会社全体
2.2
1.9
1.6
1.7
岩城製薬が順調
岩城製薬の業績拡大が寄与した一方、化成品のメルテックスの業績が落ち込んだ。商社
としてのイワキ単体の業績も低調であった。主要子会社をみると、岩城製薬は売上高 85 億
円、営業利益 6 億円、メルテックスは売上高 70 億円、営業赤字 3 億円というレベルである。
商社としてイワキ単体は売上高 418 億円、営業利益 1.6 億円というところにある。
岩城製薬では、得意の皮膚用の自社製品が MR によるマーケティング効果もあって伸びて
いる。一般用は PB が伸びて赤字幅は多少縮小した。医薬品原料では、インドのグレンマー
ク社と連携して数年がかりで拡大を図る。
岩城製薬は蒲田と静岡に工場を有するが、蒲田では医薬品(皮膚外皮用など)、静岡では
医薬品原料を生産している。
岩城製薬は、医薬品と原料の売上比率が従来 5:5 であったが、2013 年 11 月期はこの比率
が 6:4 と、医薬品の比率が上がってきている。ジェネリック医薬品の自社製品が好調なこ
とによる。香粧品原料も利益は出ている。
岩城製薬の中で作っている化学品は、フィルム向け染料中間体など、いずれも納入先の
需要が低迷しており厳しくなっている。もとの有機原料をベースに周辺多角化を進めてき
たが、これからもこうしたパターンで新しい分野を探していく方向だ。
メルテックスのタイの工場は 2014 年の 5 月から本格稼働に入っている。タイ工場は 2013
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
18
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
年 9 月にスタートしたが、まだテスト生産レベルであった。6 カ月ほどチェックして、出荷
が始まった。日本と同じ品質であると確認され、日系電子部品メーカーの現地工場に納入
できるようになりつつある。
熊谷工場のキャパ(能力)を 100 とするとタイ工場は今のところ 20 のレベルである。3
交替フル生産にすれば 50 まで持っていくことができる。操業 1 年目はまだ赤字なので、2
年目で黒字にもっていけるかどうかがポイントである。
メルテックスはいずれターンアラウンドしてこよう。海外企業からの導入品もあるので、
市場が国内に限られていたが、今では海外にも進出していけるようになった。
イワキ(商社)は、医薬品原料、化粧品原料、サプリメント原料を主力とする。医薬品
原料ではジェネリック原料の法規制が厳しくされたので、品質保証という点では当社に有
利に働こう。化粧品原料では大手の化粧品メーカー向けにノンケミカルの原料が伸びてい
る。サプリメントの原料では、ブルーベリーや韓国のオスコレットなど、様々なものを手
掛けている。今後も伸びる余地は大きいが、今のところやや伸び悩んでいる。
いずれも海外からの輸入品が多いので、円安の影響も受けている。医薬品原料の収益性
は下がっている。医療用医薬品では複数社購買が増えている。ジェネリック原料は伸びて
いるが、一般用医薬品はドラッグストア向けが多いので、ここのプライスは厳しい。
イワキは医薬品原料のサプライヤーとして、インドを開拓している。ジェネリック原料
として中国より品質の良いものが安く入る可能性がある。ポイントは、①品質、②安定供
給、③価格である。当社の目利き力で、原料を入れて、岩城製薬で良い原料に仕上げて販
売できれば、他社に対して差別化できよう。
セグメント別業績予想
2012.11
売上高
医薬品
医薬品原料
香粧品原料
化成品
食品原料
機能性食品
その他
調整額
合計
2013.11
営業利益 売上高
2014.11
営業利益
2015.11(予)
(百万円)
2016.11(予)
売上高
営業利益
売上高
営業利益
売上高
16637
13
17145
127
17435
105
17500
180
18000
営業利益
250
14911
1023
16446
1070
17400
999
17500
1000
18000
1080
9005
156
7970
-68
8091
-94
7500
-80
8000
80
7792
418
7762
365
8055
319
8000
340
8300
370
3983
115
3619
95
3727
79
3100
60
3300
70
-376
-600
-480
-582
-566
-518
-600
-600
-600
-600
51953
1126
52465
1007
54145
-890
53000
900
55000
1250
(注)調整額はセグメントに配賦されない全社費用、予想はアナリスト予想
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
19
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
2014 年 11 月期は海外子会社の連結化が響いた
2014 年 11 月期は売上高 54145 百万円(前年度比+3.2%)、営業利益 890 百万円(同-11.6%)
、
経常利益 971 百万円(同-15.9%)
、当期純利益 505 百万円(同-33.1%)となった。
減益となった要因としては、1 つは化成品分野の子会社メルテックスの海外子会社 5 社を
連結に入れたことによる。メルテックスの海外子会社は、まだ売上が十分たっていない。
費用先行で、これが利益面では 2 億円ほどマイナスになった。タイの工場を始め、まだ先
行投資期にある。
2 つ目は、円安に伴う原料仕入れのコストアップである。円安は輸出にはプラスであるが、
国内調達分も含めて、円安による原料高が全般に響いている。この分の製品価格への転嫁
が十分できていない。とりわけ、食品分野でその影響がみられた。3 つ目は、医薬品原料や
健康食品の原料が当初見込んだほど伸びなかったことも影響した。
実際、2014 年 11 月期は粗利益は伸びているが、販管費の増加で減益となった。これは海
外子会社の連結化で販管費が 2.6 億円ほど増えたことが響いている。
医療用医薬品は、外皮用のジェネリックが好調で順調に伸びている。一般用医薬品は PB
商品が伸びているが、物流コストの増加が負担となった。
医薬品原料では、ジェネリック向けが拡大している。岩城製薬で作る原料も好調である。
また、一般用医薬品用の血管収縮剤原料が東南アジア、南米に伸びた。
化成品では、国内で、スマホの通信インフラや車載用が伸びた。海外は韓国のスマホが
低迷し、その影響を受けた。一方、酢酸は順調であった。
食品原料では異物混入を防ぐフードディフェンスが重要となっている。農産加工品は伸
びているが、原料高で収益面では苦戦している。
円安の影響
イワキ単体では、円安はマイナスに響いている。欧州からの輸入原料で 1 億円ほどマイ
ナスになった。岩城製薬も輸入原料高のマイナスが 1 億円ほどあったが、これは生産効率
のアップなどによって吸収した、メルテックスは輸出があるので、ここは 0.6 億円ほどプ
ラスに働いた。トータルとしては利益面で多少マイナスになっている。
医薬品原料は中国からの輸入が多い。輸入品の約 8 割を占める。ここは、為替の影響と
は関係なく価格交渉をする必要があり、値上げ要請がきつい。メルテックスの輸出は、円
安になって採算性がよくなっている。
2015 年 11 月期も伸び悩み
2015 年 11 月期について、会社側では売上高 53000 百万円(前年度比-2.1%)、営業利益
900 百万円
(同+1.1%)
、
経常利益 950 百万円(同-2.2%)、当期純利益 600 百万円(同+18.7%)
と、横這いの見通しを出している。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
20
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
引き続き事業の拡大、生産性の向上、海外拠点の強化に力をいれるが、医薬品の好調は
見込めるとしても、化成品が厳しいという状況はまだ続くからである。
ジェネリック医薬品及びその原料は引き続き伸びるが、先発品向けの原料が減るとか、
一般用医薬品の原料も動きが鈍い。健康食品は効能や機能がより明示できるようにルール
が変更されるが、具体的な方針が出ていないので、健康食品メーカーは様子をみており、
当社の原料の動きもまだ低調である。化成品のメルテックスは、海外生産は立ち上がって
きているが、全体として赤字脱却というところまではきていない。
一般用医薬品は、ドラッグストアなどで売られているが最近は海外からの外国人観光客
が免税品として大量に買って帰る。この需要が次第にインパクトをもってきた。当社の製
品や原料にもプラスの影響が出ている。
機能性食品の活性化がどこまで動いてくるのか。まだ織り込むほどではないが、期待は
持てる。
よって、業績横這いという見通しを出しているが、この水準より悪くなる可能性は低い。
むしろアップサイドのポテンシャルの方が高い。但し、為替が 130 円の方向に向かうと、
前年に続いて原料高の中で、製品価格への転嫁が遅れるという傾向が出てくるので注意す
る必要がある。
配当については、100 周年の記念配当 1.5 円分は元に戻すので年 6 円配当となろう。
来期から浮上
2015 年 11 月期もまだ苦しいが、
来期からは浮上してこよう。今後の業績拡大については、
1)ジェネリック医薬品の製品及び原料を引き続き伸ばす、2)メルテックスの海外生産、
販売を伸ばす、3)健康食品の表示改正に伴って、健康食品用原料を拡大するということが
期待できる。
表面処理薬品の現地工場での生産品がユーザーに採用されるには少し時間がかかる。韓
国、天津、販売の立ち上がってくるのも、来期からになろう。一般用医薬品の低収益性を
改善しつつ、輸入原料に対する為替対応を進めることも重点的な課題である。
現状の不採算事業を水面に浮上させていけば、経常利益で 13~14 億円は出てくる、これ
に当社の得意とする分野を伸ばしていけば、経常利益で 15~20 億円は達成できよう。そう
なれば、ROE で 5~7%を狙うことができる。現状よりは一歩前進できよう。
6.企業評価
収益力の向上には、もう一段の布石が必要
収益構造改革へ引き続き挑戦
中期 3 カ年計画の最終年であった 2014 年 11 月期の目標は、売上高 579 億円、営業利益
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
21
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
19 億円であったが、結果は 541 億円、営業利益 8.9 億円に終わった、この差は、1)化成品
の内需の落ち込み、2)医薬品原料の国内競争の激化、3)一般用医薬品の卸の収益改善の
遅れに起因する。
今後をみると、1)医薬品のジェネリック製品を伸ばす、2)次のジェネリック原料の製
販を拡大する、3)エレクトロニクス用化成品の内外での収益力を向上させる、4)一般用
医薬品の卸の収益性を抜本的に見直す、ことなどが求められよう。すでに手は打っている
が、その成果を出すには、さらに踏み込んだ対応が必要である。
大事な点は、強みを伸ばすことである。ジェネリック医薬品の自社製品、医薬品原料の
自社製品、自社加工品、化成品の高付加価値分野、機能性食品の新分野などを伸ばし、赤
字商品の収益を浮上させれば、営業利益で 17~23 億円を出すことができる。そうすれば ROE
で 7~8%はみえてくる。その力は持っている。
当社の収益構造をみると、一般用医薬品の卸はドラッグストア向けを中心にするが、収
益的には不採算となっている。一方、現在黒字の部分を足し上げると、営業利益は 15~20
億円となろう。赤字部門の収益を改善すると同時に、得意の黒字部門をさらに伸ばすこと
がより重要である。強みを活かす方が企業には勢いが出てくるからである。
岩城社長は ROE について分かっており、7%の達成を頭に描いている。7%を達成するに
は純利益で 12 億円が必要であり、経常利益では 20 億円が求められよう。黒字部門を伸ば
し、赤字の出血を止めれば達成可能な水準である。
今後の 2~3 年でこの水準を目指すことは十分可能である。そうなれば、0.5 倍に留まる
PBR も改善されよう。岩城製薬の収益拡大とメルテックスの黒字化、原料商社としてのイワ
キの収益改善が合わされば経常利益で 20 億円を確保できる。もうひと踏ん張りが求められ
るところである。
ROE 8%への向上が必須の条件
創業 100 周年を踏まえて、ROE 8%を目標に戦略を練るべきである。中期的には、売上高
600 億円、売上高営業利益率 4%、経常利益 24 億円が見えてくるかどうかがポイントであ
ろう。そうすれば ROE で 8%に乗せてくるので、企業価値創造という観点で見た時、第一の
ハードルはクリアできる。収益源としては、医薬品原料、化成品、機能性食品の成長が期
待できる。とりわけ、化成品のメルテックスがどこまで業績をどこまで回復できるかが鍵
を握ろう。
①OTC 向け医薬品卸事業の赤字を自社企画品などの強化によって黒字化すること、②ジェ
ネリック向け医薬品原料を着実に伸ばすこと、③化成品分野のアジア市場開拓に向けて現
地生産を拡大すること、④健康食品原料で独自の分野を伸ばすこと、などが成果を上げて
くれば、収益力はもう一段向上しよう。経常利益 24 億円に向けての実行戦略については、
まだ相当の努力を要するので、企業評価はCとする。(企業評価の指標については表紙を参
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
22
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
照)
2 月 12 日の株価をベースにすると、PER 12.4 倍、配当利回り 2.7%であるが、PBR は 0.43
倍と低い。2015 年 11 月期の ROE 予想が 3.5%と、資本コストから見て期待される 8%を大幅
に下回っている。一方、時価でみた修正 ROE(EPS/株価)は 8.1%である。つまり、今の業
績を前提にすると、PBR 0.43 倍という数字も妥当性を持つということである。よって、何
よりも ROE の向上に向け、まずは実効性を高めることが求められよう。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
23