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平成 22 年度
外来魚抑制管理技術開発事業結果報告書
霞ヶ浦におけるアメリカナマズの駆除方法の検討と能率向上についての調査
茨城県内水面水産試験場
昨年度は捕獲量、尾数水準の推定と、捕食量の規模など被害状況について調査し、現状では若
令魚を高率に混獲しながらも、0 才魚発生尾数が大きいために残存数が多く、また成魚の捕獲量が
少ないため発生が減少しない状況であると考えられた。密度の高い場所で能率よく捕獲する方法
について検討した。
1
漁業の混獲により未成魚を削減する方策の検討
(1)
漁法別捕獲状況調査
目的:増減傾向や捕獲、残存の尾数水準を把握し、削減規模の基準を得る。
方法:5~11 月に 1 ヶ月に数回、曳き網、定置網、延縄について捕獲状況を調査した。漁港数
ヶ所で、漁法別に混獲物中のアメリカナマズの重量と体重組成を求め、昨年度と同じ方法で 1
操業当たり尾数と年令組成を推定した。年令はH22 年生まれを0才、その前年生まれを 1 才、
前々年生まれを2才とした。
曳き網については捕獲尾数の月平均値に月出漁隻数を乗じて月毎の捕獲尾数とした。出漁
隻数については霞ヶ浦北浦水産事務所調べの月別の主要加工業者所属船の出漁隻数と漁獲量
のうち、イサザアミ対象の横曳き網、エビ曳き網トロールの隻数を 2.8 倍(本統計値のエビ
漁獲量を農林水産統計のエビ漁獲量に準じて引き延ばし)して全湖の隻数とした。
なお、曳き網の1~3才魚については9~11 月のエビ曳き網の混獲物の持ち帰りが半分程度
とみなされた(8 月末以降に外来魚の買い取りを行わなくなったことによる)ため、捕獲尾数
算出の際に9~11 月の隻数を1/2として算出した。0才魚は漁獲物とともに全量持ち帰る
ので隻数のとおりとした。
定置網は湖内2定点での4~11 月の月 1 回操業試料から尾数平均値を求め、これに各月 30
基×15 日、年間 10 ヶ月操業として年間捕獲尾数を算出した。
延縄については、5~7月の 1 隻あたり平均釣獲尾数と年令組成を求め、操業隻数を8隻
×50 日(400 隻)として捕獲尾数を算出した。
刺網については、5~7月の漁業者4名の捕獲記録(尾数、網枚数)平均値を6名分に引
き延ばした。落し網は 10 月に 1 網あたりの捕獲尾数、体重組成調査を行い、年間捕獲総重量
を 100 トンとして尾数換算を行った。
さらに、獲漁期末の 11~12 月に底曳き網調査(1 カ所 6000m曳網を3カ所)を行い、面積
当たりの採捕尾数平均値から漁期末の0~2才魚の残存尾数を概算した(表1)。
104
これに捕獲尾数を加算して本年度4月(漁期前)の尾数を推定し、また、昨年度の漁期末(11
月)の残存尾数と本年度4月の推定尾数が等しいとして、昨年度の若齢魚の残存率を推定し
た(表2)。
結果:昨年に比して0才魚の発生が多かった以外は、尾数水準の大きな変動はみられなかった。
削減状況については、昨年度よりいずれの年級も4月の尾数推定値が小さかったが、削減の
割合が低く、昨年度より残存尾数が多くなった。曳き網の影響が大きく、5~8月の底曳き
網操業(漁獲対象のイサザアミの発生がごく僅かであった)がほとんど無かったこと(図1)
、
9~10 月にテナガエビを対象に出漁数が増加したが、混獲物を沖で放流することが多く、実
質の捕獲尾数が少なかったためと考えられる。
このように混獲量は漁業の都合に影響されるが、昨年度以降の漁期前の水準は、0才魚発生
数が 400~700 万、1才魚で 120~360 万、2才魚で 60~70 万尾で、発生に差があっても1~
2才で十分な量を捕獲できれば、大きな変動は少ないと考えられる。
0才
1才
2才
3才
4~6才
合計
曳網 317.2
30.5 (55.3)
12.1 (17.9)
1.1 (1.9)
361 (392)
漁法別の捕獲状況
捕獲尾数
定置網 延縄 37.1
24.0
0.7
6.3
3.7
2.6
1.5
70.1
5.9
捕獲尾数計 残尾数
刺網 落し網 (4~11月) (11月)
354.3
359.0
55.2
70.4
22.1
43.6
6.2
11.4
0.3
1.0
1.3
0.3
7.2
444.3
473.0
単位 万尾。 曳き網の1~3才 ( )は投棄なしとした場合。
2500
H21
2000
月間出漁隻数
表1
H22
1500
1000
500
0
5月
105
6月
7月
8月
9月
10月
11月
表2 漁期前(4月)の尾数と漁期末の残存率
(2)
2009年 (残存率) 2010年 (残存率) 2011年
407 (0.31)
713 (0.50)
298 (0.22)
125 (0.56)
359
57
66 (0.68)
70
44
0才
1才
2才
3才
漁業の混獲による削減(延縄に
よる3才魚の削減)
目的:ウナギ延縄に混獲される3才魚に
ついて、漁期(5~7月上旬の約 70 日)
内に漁期前尾数を半減(漁期前比)するた
単位
め の 隻
万尾
数を試算する。
500針あたり尾数
140
図1
最近 2 年の底曳き網出漁隻数
H21 2才
120
方法:昨年度、今年度の混獲状況の推移(図
100
H21 3才
25
80
60
2)
20
40
H22 2才
魚について、CPUE の低下が釣獲によると仮定
H22 3才
して、半減程度の削減に要する出漁数の試算
15
20
0
4/27
5/17
6/6
10
6/26
を行った。現状の操業で異なる3つの漁場
7/16
(図3の①、②、③)に相当する CPUE の低
5
図2
2,3才魚の延縄混獲能率の推移
下を直線近似し、この直線から算出される日
0
1
2
3
4
のうち、3才
5
6
7
8
9
捕獲尾数の累積値と CPUE から漁場毎の捕獲
対象尾数と操業日数毎の残存率を求めた(図
140
H21
H22
①
80
②
②
③
①
0
4/27
の値として、これが半減する日数を求めた。
②
①
①
20
の平均を湖央部(北部の湾を除く約 140 ㎢)
②
①
③
60
40
4)
。このうち湖央部にある②、③の2年間
①
100
③
③
6/6②
5/17
②
6/26
③
結果:本年度の 5~7 月の延縄出漁船は8隻×50
7/16
③
①
②
図3
日と推定した。延縄を行う現状の操業状態(1
③
延縄各漁場の CPUE の推移
漁場 10 ㎢中に8隻の操業)を単位とすると
湖央部(140 ㎢)で漁場を変えずに操業
する場合、112 隻の 35 日操業で半減すると算
出された(捕獲対象尾数H22 年 23 万尾~H
21 年 44 万尾)
。現状のように漁場を変更しな
1.2
がらの操業では、隻数は少なくなるが、例年
① 平均
1
の延縄漁業の漁期を超えないためには、最低
0.8
残存率
500針あたり尾数
120
②,③ 平均
0.6
でも 56 隻(漁場を 1 回変更し 70 日)を要す
0.4
ることになる。①の北側の入では、CPUE の低
0.2
下が早く7日、16 隻で半減すると算出される。
0
1
図4
6
11
16
21
操業日数
26
31
両年とも漁期の前半に、同時に捕獲される2
36
才魚の CPUE が低下しない時期がみられるた
め3才魚と同じ方法での予測ができないが、
10 ㎢内に8隻操業の場合の削減経過推定
106
2年間の3才魚との比率の平均値から3才魚の 1.8 倍程度捕獲され、大きな削減に繋がると
みられる。
2.駆除を目的とした捕獲方法の能率向上
(1)
稚魚密度の高い場所での曳き網捕獲試験
目的:漁業による混獲以外で、能率良く捕獲できる方法について検討する。
方法:エビ曳き網(底曳き網)漁期末の捕獲尾数から、漁期外の駆除を想定した0歳魚の削減尾
数推定を行った。11 月末から 12 月にエビ曳き網により、湖内3カ所で試験曳き(図4の①、
②、③の範囲で各 6000m)を行い、曳網時の漁獲効率を 100%と仮定して、3カ所の平均密
度を全湖の面積に引き延ばして残存尾数とした。
曳網の対象面積を全湖面積 171 ㎢、エビ曳き網の網口を8m、曳網速度を 4000m/h、隻数
を 50(トロール漁船隻数の約半分)とし、捕獲の翌日には密度が均一化し、新たな加入はな
いと仮定して残存尾数の半減に要する隻数を算出した。
結果:捕獲状況調査ではトロール漁期末(11~12 月)に南西部のエビ曳き網混獲物の0才魚尾
数が大きく増加した。3地区で行った捕獲試験の結果、CPUE は2地区で 10 月より増加してい
た(図5)
。捕獲試験により推定された当歳魚残存尾数は約 359 万尾で、11 月までの混獲尾数
合計と同等とみられた。
4000
1隻当たり捕獲尾数
①
②
3000
③
①
2000
③
1000
②
0
8/30
9/19
10/9
10/29
図5
11/18
12/8
12/28
当歳魚捕獲尾数の推移
曳網面積比から曳網時間が 1 日4時間では 18 日(900 隻)、6時間では 12 日(600 隻)で、残
存尾数(359 万尾)を半減すると推定された。本年度のトロール漁期中9~11 月に、0才魚
317 万尾を混獲するのに 4400 隻を要しており、漁期中の 2 倍以上の能率と算出される。計算
上は 4000 隻(50 隻×80 日、1 日3時間曳網、漁獲効率 100%)の曳網で、湖底に均等に分布
するものの 90%以上を捕獲可能であるが、実際は5割程度しか捕獲できていない。これは0
才魚の分布と出漁傾向(時期、曳網場所)が合わないことによると考えられる。
0才魚は6~7月に岸近くで発生し、成長しながら順次沖合まで分布するようになると考
えられる。出漁隻数のほとんどが集中した9~10 月には隻数が多いため、0才魚の密度が低
107
下したまま操業し、隻数が減少した 11 月以降も、0才魚の沖への分布が継続したため、沖合
の広い範囲で漁期中より密度が高くなったと推察される。沖合では隻数を多くして曳網しや
すいので、こうした現象を利用して駆除能率の向上が可能と考える。
駆除目的では、日々漁獲物を確保する必要がないため、0才魚が沖合へ分布するのを待っ
て曳網すればよく、エビ曳き網漁がほぼ終漁となる 11 月以降が適していると思われる。また
今回のように、密度に偏りがある場合、高密度の部分のみに絞ることで、より能率が高まる
と考えられる。
(2)繁殖時期の成魚来遊場所における捕獲能率調査
目的:昨年度に規模の大きな岩礁帯で成魚の捕獲能率を調査したが、繁殖時期の来遊場所には
小規模で散在する場所も多数あるとみられる。こう
④
③
②
①
した場所についても、成魚の来遊状況を調べ、対応
を検討する必要がある。
主な岩礁帯
方法:捕獲場所は、規模の大きな岩礁などから離れ
ており、岸近くの水深1~3m付近で、砂、泥底に
囲まれた以下の石積や岩礁4カ所とした。
(図6)
岩礁とは、湖岸付近の浅い湖底に露出した硬い
図6
粘土層で、これに対し石積みの石は人手によって
刺網調査点の位置
投入されたものである。捕獲方法は、6~9月上
旬に週に 1 回程度1~2枚の刺網(目合い 5.5 寸、丈 1.3m、長さ 40m)を①は船から、②~④
は徒歩で同じ位置に設置し、翌日回収した。
調査点の特徴は以下のようであった。
① 漁港の沖側に投入されている石積み。水深は岸側 2~沖側 3mにあり、長さ 50m×幅 10m。
② コンクリートの人工護岸前の砂地の湖底に露出した岩礁。水深 0.8m にあり 2.5m×1.5m、
高さが 0.7m。
③ コンクリートの人工護岸前の砂地の湖底に露出した岩礁。水深は 0.5~0.8mにあり、30m×
10m で高さは周囲の砂地に対して 0.2~0.5m高く、亀裂や凹凸があり全体としては板状。
④
コンクリートの人工護岸前に投入された、元の護岸用石積で水深 0~0.8mまで幅 2m。
調査点①
調査点③
水深 3m
石積み
♂13 ♀4
♂3.5
漁港入口
水深 2
m
漁 港
♂1
♀4.6
♂2 ♀1
♂1
水深 1m
岩礁
コンクリート護岸
人工植生帯
コンクリート護岸
108
調査点④
水深1m
水深1m
石積み
♂3
♂7 ♀2
♂1
植生帯
コンクリート護岸
♂1
♂4 ♀3
コンクリート護岸
岩礁
結果:いずれの調査点でも、
図7
各調査点の捕獲位置
礁に近接して採補され、
複数の雄成魚が石積や岩
同一点で 2 尾の雄が採捕さ
れることが多かった。また、全調査点で雄
より少数の雌が採捕された。付近のコンク
捕獲尾数
5
4
①
リート護岸前ではほとんどあるいは全く
3
②
採捕されなかった。(図7)
2
③
1
④
捕獲の能率は 1 枚当たり 0.7尾~2.4 尾
であり、規模の大きな岩礁帯等での刺網に
0
6/1
6/21
7/11
7/31
8/20
9/9
よる6~7月の成魚捕獲の能率(1尾~
2.7 尾)と同等か、やや低かったが、期間
中分散して来遊するため(図8)、捕獲を継続する必要がある。また、コンクリート護岸は来
遊対象物ではないとみられ、この付近では
図8
ほとんど採捕されず、水底の構造物に近接して
採補されることから、対象物上に正確に
雄の捕獲尾数の推移
設置する必要があると思われた。
来遊状況から、類似した水中構造物のほとんどに雄が来遊しており、この中に繁殖場所が
含まれると考えられた。従って規模の大きな岩礁と同様、こうした成魚の来遊に対し、繁殖
を妨害するための対応を要すると判断される。
霞ヶ浦では湖岸のほとんどは、今回来遊のみられなかったコンクリート護岸となっており、
かつての護岸用の石積みは、わずかにみられる程度となっている。
岩礁の露出は、3m以浅の湖底(沖出しは 0~400mくらいまで)にはしばしばみられ、昨年
度刺網の捕獲状況を調査した岩礁帯は、数 100 沖までほとんどが露出したものである。大き
な岩礁帯では刺網は船から連続して設置できるが、小規模なものでは正確に設置するために
位置決めをしておく必要がある。また捕獲は繁殖時期中に繰り返す必要があり、こうした対
応ができない場合、来遊の対象物自体を撤去したり、付近に埋設することも考えられる。工
事を要しない方法としてはフェンスやネットで囲い、対象物への接触を防ぎ、繁殖行動の場
を与えないことで繁殖の妨害が可能と考えられる。
数値は 6 月中旬 8 月上旬の捕獲尾数合計
(3)網いけす養殖施設の刺網捕獲調査
目的:湖内のコイ養殖用の網いけす施設では、アメリカナマズが生け簀の底面、側面を押して
109
コイに給餌された配合飼料を摂餌し、コイ養殖の妨げとなっている。落し網(網いけす改造
によるトラップ)では毎年 100 トン前後が捕獲されているが、捕獲量が減少する傾向はなく、
さらに捕獲を進める必要がある。
方法: 11~1 月に網いけす施設に、通常の刺網(目合い 5.5 寸、丈 2.7m、長さ 40m)または
浮き刺網(通常の刺し網に浮子を増設した)を夕刻から翌朝まで設置した。
結果:施設外周では捕獲尾数が少なく、施設内に設置した。11~12 月の浮き刺網の場合の 1 枚
当たりの成魚捕獲尾数は、13 尾~27 尾であった。網いけす施設で行われている落し網(5m
×5m×2.5m)の 1 面 1 日当たりの本年の成魚入網尾数は、1 尾前後(0.8~1.2 尾)、繁殖場
所の刺網捕獲では 1 枚あたり平均1~2.7 尾であったので、これらと比較して能率よく採捕さ
れた。11 月中旬の水温は 15℃台、12 月上旬は 10℃台で、1 月は 6℃前後であったが、水温低
下とともに低層に移動するとみられ、浮き刺網は 12 月以降には捕獲数が減少し、底層で多く
なった。
設置可能な枚数は、網いけす 2 列の間に設置する場合、5 面分の距離(2 列で 10 面)に 1
枚設置したので、網いけすの全施設(面数約 2000 面について 200 枚)で 1 回設置した場合、
成魚約 4000 尾が捕獲可能と考えられ、現在の落とし網の年間の成魚捕獲尾数約 1 万尾を短期
間で捕獲可能と考えられる。今回の試験捕獲期間は落とし網の終了後であるので、落とし網
捕獲後にさらに取り進むことが可能と考えられる。
設置方法については、刺網を設置した通路下(養殖施設は網いけすを 2 列に垂下し、その
中央に給餌作業用の通路がある)は幅が狭く、小型の船でも走行が困難なため、施設上から
設置せざるを得なかった。通路上からは支柱、網いけすの固定ロープの内側で刺網を伸ばす
必要があるため、通路下に一旦刺網と同長の紐を張り、これに沿って網を引いて伸ばした。
これらの設置時間は 1 枚 30 分を要し、実用性に乏しいと考えられた。これに対しては伸展用
のループ(刺網設置場所に対し 40m分を、両側を滑車として施設に固定。)を通路下に設置し、
刺網の末端を固定したループを送り出すことで改善可能と思われる。回収は網いけすの間か
ら船外機船で行ったが、浮き刺網では捕獲された魚体のほとんどが浮いた状態であるので、
容易に回収された。
表3
浮刺網
刺網
刺網(施設周辺)
(4)
網いけす施設付近での刺網1枚あたり捕獲尾数
11月(施設外周) 11月(施設内) 12月(施設内)
8
27
13
1
23
2
2
1月(施設内)
0
4
1
刺網の作業負担の改善
目的:捕獲後の刺網修復作業は、操業が敬遠される一因となっている。コイ網の仕様を変更し、
110
撚り、絡みの修復作業を軽減する。
方法:通常網(0.5 号 8 本撚り、目合い 5.5 寸、丈 1.3m、長さ 40m)1 枚を4m×10 枚に切断
し、約 40 ㎝の間隔をおいて浮子綱をつなぎ合わせた。つなぎ合わせる部分 1 カ所に付き、釣
り糸用の撚り戻し 1 個を取り付けた。重り綱の末端が網地に絡むのを防ぐため、切断部分の
重り綱の末端を 15 ㎝ほど持ち上げた状態で、網地の端に固定した。
7~10 月に繁殖場所周辺で改良刺網と通常網を設置し、翌日に回収した。これらの網を報告
者が表5の手順で修復した。修復は約 40mの網のうち 20mを引き延ばし、浮子綱の3カ所を
固定して網をつり下げ、中央から末端方向に向かって絡み等を修復した。修復の終った半分
を収納した後、残りの 20mについても同様に行った。1 枚の作業時間全体を計測し、修復以
外の時間を差し引いて修復時間とした。試料数は改良網 24 枚、通常網 22 枚であった。
全体図
表4
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
修復時間計測時の作業手順
往路側引延ばし 往路側修復 往路側収納 復路側引延ばし 網中央へ移動 復路側修復 網中央へ移動 復路側収納 75秒
接合部分
60秒
75秒
10秒
10秒
60秒
*②と⑥を改善の対象とした。
図9
改良刺網の概観
結果:小区画に仕切ったことで、掛かった区画に巻き、撚りがみられた場合でも他の区画に波
及しなかった。修復は巻きや絡みのある区画のみとなり、撚りを送り出して解消する長さが
短縮された。
平均修復時間と平均採捕尾数は、改良網で7分(3.4~17 分)
、1.9 尾(0~4尾)、対照の普
通網で 11.5 分(2.5~32 分)、1.8(0~5尾)であり、修復時間の平均は4割弱短かった。
漁業者の修復方法は、網を引き出す長さ(修復する場所の広さにより数m~10m)は様々
だが撚り、巻きの追い出しの方法はほぼ同じ(単純に浮子綱に網が巻き付いている形では、
引き延ばした状態で浮子綱を振り回して解く。巻きや撚りが長い場合、巻き付いた浮子綱と
重り綱を引きはがすように引いて、撚りを末端に向かって送り出し、手元の網を広げること
を繰り返す)なので、報告者も同様の方法をとった。改良網は小区画毎に追い出しが完結す
る撚りを先送りする必要が少ないため、順次短く引き出しての修復を容易にすると思われた。
0.5
0.5
0.3
改良
0.4
通常
0.3
頻度
頻度
0.4
0.2
0.1
111
0
0
1
2
3
4
捕獲尾数
図10
5
改良
通常
0.2
0.1
0
2
10
18
26
修復時間(分)
改良網の捕獲尾数と修復時間の頻度分布
34
3.結果と今後の課題
本年度は、底曳き網の漁獲対象の発生状況が昨年度と異なり、出漁傾向が大きく異なったた
め、削減率が低く、0才魚尾数も昨年度より多いと推定されが、混獲の下支えにより尾数水準
は高齢になるほど大きな変化は少ないと考えられる。
0才魚については漁期末に底曳網利用の駆除を行うことで、混獲による削減を補完すること
が可能であると考えられ、成魚の削減については、規模の大きな繁殖場所以外に、網いけす養
殖施設では捕獲を早めることが可能と考えられた。
一方で、散在する繁殖場所等では、捕獲による対応が十分に行き渡らないことが考えられる。
今回の捕獲試験でみられた、繁殖時期の雄の来遊対象物(石積みや岩礁)は、砂泥質の多い霞
ヶ浦の湖岸、湖底では比較的少なく、また人手以外によって増設されにくいため、対象物をな
くすことが繁殖妨害となり、効果の蓄積が可能となる。また2ヶ月しかない繁殖時期に限らず、
周年処理を進めることで進展を早めることが可能と考える。今後は効率の良い成魚捕獲ととも
に、繁殖妨害の方法も検討し、0才魚発生数の減少につなげる必要がある。
4.調査担当者
岩崎
順 ,喜多
明(茨城県内水面水産試験場
112
湖沼部)