西部北太平洋亜熱帯循環域における沈降粒子の窒素安定同位体比 の季節変化 ○三野義尚・鋤柄千穂・阿部理(名古屋大学),川上創・本多牧生・藤木徹一・松本和彦・脇田昌英・ 喜多村稔・笹岡晃征(海洋研究開発機構),才野敏郎 海洋表層で植物プランクトンの光合成活動によって生産された物質の一部は、沈降粒子として中深 層に輸送される。この物質の鉛直輸送は生物ポンプと呼ばれ、海洋の物質循環の中で重要な役割を担 っており、大気--海洋間の CCOO22 収支を左右すると考えられている。全海洋の約6割を占める亜熱帯海域 では、生物ポンプの駆動力である基礎生産力が主に栄養塩条件によって制限される。このため、有機 物生成時の栄養塩環境の指標�となる粒子の窒素安定同位体比((1155NN))は、生物ポンプ効率の変動要因を調 べる上で有用なツールとなる。本研究では、22001100 年 22 月から西部北太平洋亜熱帯域における観測点 SS11 (3300°NN,, 114455°EE)の水深 220000mm,, 550000mm 付近でセジメントトラップ実験を行い、捕集された沈降粒子の 1155 NN を分析することにより、表層の栄養塩環境の変化について考察した。 水深 220000mm と 550000mm における沈降粒子の 1155NN 値はほぼ同様の値を示した。期間平均値は 44..22 ‰であり、 冬季に低下し(22--33 月に最低値:22..33 ‰)、春季から初夏にかけて増大する(〜66 ‰)傾向があった(図 1)。これは、冬季混合によって栄養塩が表層に供給された後、春季にかけて植物プランクトンの光合 成により、徐々に栄養塩が消費されていたことを示している。又、いずれの年も 77 月初旬に 1155NN は 44〜55 ‰ まで低下することから、同期間の表層(有光層)に栄養塩が新たに供給されたと推察できる。このプ ロセスとしては、低気圧性渦などの通過による擾乱、窒素固定の寄与が候補として挙げられる。22001100 年 1100 月に観測した硝酸 1155NN の鉛直分布((図2:AAbbee aanndd KKaaiisseerr,, uunnppuubblliisshheedd ddaattaa))を見ると、表層で 低濃度であっても 1155 NN が比較的低いことから、窒素固定の可能性が高い。このことは、粒子の平均 1155 1155 NN 1155 が深層 NNOO33 の NN 値(55〜66 ‰)よりも低いという結果とも整合性がある。又、77 月初旬の粒子 NN の低 下は 33 年に渡って見られたことから、このような表層生態系への栄養塩供給プロセスは同時期に普遍 的に生じ、夏季の生産力と PPOOCC フラックスを支えていると推察した。 図1 測点 SS11 における水深 220000mm(○,,太線)と 550000mm(●)の沈降粒子の 1155NN 変 化と表面水温の 1133 日移動平均値(細線)の変化。 図2 22001100 年 1100 月の測点 SS11 における NNOO33 濃度(◇) と 1155NN 値 ( ◆ ) の 鉛 直 分 布 ( AAbbee aanndd KKaaiisseerr,,uunnppuubblliisshheedd ddaattaa)。
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