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平成 22 年度
外来種抑制管理技術開発事業報告書
電気ショッカーボートによる外来魚の駆除調査
地方独立行政法人 北海道立総合研究機構
さけます・内水面水産試験場
1,研究目的
オオクチバス・コクチバス・ブルーギルなど特定外来生物に指定されたサンフィッシュ科外
来魚の効果的な駆除を進めるにあたっては、駆除効果を客観的に評価することが必要となり、
残留生息数を把握する技術が重要である。生息数の推定には標識再捕法が用いられる場合が
多いが、この方法は外来魚に標識を付けて放流した場合、標識作業による再放流後の斃死や警戒
心が強まることによって再捕効率が低下する恐れがあり、生息数推定には必ずしも適さない。さ
らには、一旦捕獲した外来魚の再放流に対する社会通念上の問題も懸念される。
北海道では、外来魚駆除のため平成 16 年から電気ショッカーボート{本体:設置型エレクトロフィッシ
ャー MODEL2.5GPP 型(SMITH‐ROOT 社製)、船舶:組立式 FRP 救命ボート NKM‐1 型 (日軽産業株
式会社製)、図 1 }を導入し、平成 19 年 5 月にそれまで道内に生息していたオオクチバスの根
絶を達成した。さらには、函館市五稜郭公園濠においても電気ショッカーボートによるブルーギ
ルの駆除方法の検討を行った際に、高い抑制効果とともに残留生息数を推定するための方法論的
検討に関する示唆が得られている。国内への電気ショッカーボートの普及は本報で使用されてい
る同型以外も含めて計 8 か所に導入が進んでいることから(平成 22 年 12 月末現在)、今後外来
魚駆除手法の確立のため、早急な駆除技術マニュアルの作成が急がれている。
図 1 電気ショッカーボート(左画像:吊り下げ作業、右画像:オオクチバス捕獲状況)
そこで、電気ショッカーボートが配置されている皇居外苑濠(東京都千代田区、管理者:環
境省皇居外苑管理事務所)および五稜郭公園濠(函館市五稜郭町、管理者:函館市)において、
生息数推定という量的評価を伴う外来魚生息数抑制効果の検証と在来魚回復過程の把握を目的
に調査を行った。
60
2. 方法と結果
(1)皇居外苑濠における外来魚の再生産効率抑制効果の検証
a)調査場所と方法
皇居外苑公園(図 2 )は総面積約 1.15km2,こ
のうち濠の水面部分は 11 の濠(表 1、環境省管
轄分)をあわせて 0.37km2 で苑地全体の約3分の
1を占める。
皇居外苑濠では、平成 18 年度から北海道と同
型の電気ショッカーボートを導入して駆除を実
施しており、現在 5 年目である。平成 22 年も、
過去 3 年同様に 3 月、4 月、11 月~12 月の計 3
回調査を行った他、平成 18~21 年のデータと外
来魚駆除の経過と比較を示した。
外来魚の生息調査対象の濠は、清水濠・大手
濠・桔梗濠・和田倉濠・馬場先濠・凱旋濠・日
比谷濠の計7濠である。本報告では凱旋濠・日
比谷濠のデータを主に解析をした。
電気ショッカーボートでの捕獲調査は、各濠
の石垣沿いを 1 周しながら 1 日あたり 3~4 周繰
図 2 皇居外苑濠の位置
表1
皇居外苑濠の概要(環境省管轄分)
返しを 1 セットとして、1 年間の調査では延べ 4
濠名
標高
(m)
水深
(m)
面積
(ha)
設 定 値 は 全 て 、 A C モ ー ド 、 High レ ン ジ
半蔵濠
15.98
0.89
2.22
周囲長
(m)
-
(50-700V)、50~60%の出力を維持した。航行
千鳥ヶ淵
15.98
1.02
6.65
-
速度は 2~3km/毎時の範囲であった。捕獲は水中
牛ヶ淵
4.17
1.51
1.63
-
桜田濠
3.82
1.57
9.68
-
凱旋濠
2.85
1.94
1.17
清水濠
1.87
0.71
2.41
大手濠
1.87
1.07
2.85
桔梗濠
1.87
0.80
1.64
910
和田倉濠
1.43
1.22
1.34
672
馬場先濠
1.43
1.42
2.00
830
日比谷濠
1.43
1.37
3.59
1,380
~8 セットを行った。調査時の電気ショッカーの
放電時に感電麻痺した、オオクチバスとブルー
ギルをタモ網で掬い上げて行った。環境条件の
測定項目は、表面水温(℃)、電気伝導度(m
S/m)である。捕獲したオオクチバスとブルー
ギルは全て標準体長と湿重量の測定を行なった。
年齢は一部個体の鱗相を解析後、それを基準と
して標準体長によって 0+魚と 1+以上魚に分別し
590
2,780
た。オオクチバスは捕獲数のみを示した。
CPUE は調査毎の捕獲尾数(全数)に対する調査時間 1 時間の値から求めた生息数の推定は、
プログラム Capture(http://www.mbr-pwrc.usgs.gov/software/capture.html)の Population removal
法(変異する確率除去推定)を用いて、各回の捕獲数から 0+魚と 1+以上魚を分けてそれぞれ数
値を求めた。得られた値から本報告の用語として、残留尾数=(調査毎の個体推定数)-(調査
毎の実際の捕獲尾数)、駆除効率(%)={(調査毎の実際の捕獲数)÷(調査毎の個体推定数)}
61
10
×100 と定義した。またオオクチバス・ブルーギ
8
ルの駆除効果の影響を評価するため、電気ショッ
6
カーボートの調査時において一定区間における
尾
数
2
調査対象区濠の全体に引延ばして魚類相と個体
0
250
数の年変化を解析した。
と共同で調査を行った。
1+以上
4
在来魚の捕獲を行い、種類の確認と個体数計数後、
なお、本調査は環境省皇居外苑公園管理事務所
平成22年度
当歳
尾
数
平成21年度
当歳
1+以上
200
150
100
50
b)結果
0
平成 22 年度(平成 23 年 3 月分を除く)および
250
平成 18~21 年度の皇居外苑濠におけるオオクチ
バスの当歳魚と 1+以上の駆除個体数を図 3 に示
した。
平成 22 年度は、オオクチバスの生息は清水・
当歳
尾
数
150
1+以上
100
大手・桔梗・和田倉・馬場先各濠では確認できな
50
かった。しかし日比谷濠では 1 尾(4 月 5 日,標
0
準体長 217mm,体重 314g,雄)、凱旋濠で1
250
尾(12 月 3 日,標準体長 398mm,体重 1976g,雄)、
200
のオオクチバスが確認されたので合計 2 尾であっ
た。オオクチバスの繁殖(再生産)はなかった。
平成20年度
200
平成19年度
尾
150
数
一方、これより 4 年前の平成 18 年度は、オオ
100
クチバスを多く駆除した順では和田倉・凱旋・桔
50
梗・日比谷・大手・清水・馬場先濠であり、年間
0
の全駆除数は当歳魚が 36 尾、1+以上魚が 256 尾
250
の合計 292 尾であったが、特に当歳魚よりも大型
のオオクチバスが多かった。平成 19 年度は馬場
先濠でオオクチバスは確認できなかったが、凱
150
旋・大手・清水・日比谷・桔梗・和田倉の各濠の
平成18年度
当歳
200
1+以上
尾
数
100
順で多かった。当歳魚の合計は 298 尾で特に凱旋
濠で多く出現した。1+以上魚は大手濠で多く出現
50
して、全濠では 294 尾であった。当歳魚と 1+以上
0
清
水
魚の合計は 592 尾であった。平成 20 年度は清水・
大
手
和田倉・馬場先各濠でオオクチバスは確認できな
かったが、凱旋・大手・桔梗・日比谷濠の全駆除
数は,当歳魚が 200 尾,1+以上魚が 49 尾で合計 249
尾であった。平成 21 年度は、オオクチバスの生息
62
図 3
桔
梗
和
田
倉
馬
場
先
凱
旋
日
比
谷
皇居外苑濠におけるオオクチバスの
年別捕獲数
を確認できたのは凱旋・日比谷・桔梗各濠の順で
平成22年4月~12月
8,000
多く、その合計駆除数は当歳魚が 35 尾、1+以上魚
当歳
が 60 尾で計 95 尾であった。前年度と同様に、オ
6,000
オクチバスの当歳魚の生息による再生産が確認し
尾
数 4,000
たのは凱旋濠のみであった。
ブルーギルの各濠の年度別の当歳魚と 1+以上
1+以上
2,000
の駆除個体数について平成 22 年度(平成 22 年 12
0
月まで)は図 4、平成 20~21 年を図 5 に示した。
清
水
平成 22 年度のブルーギルは、多い順から日比
大
手
桔
梗
和
田
倉
凱
旋
馬
場
先
日
比
谷
図 4 ブルーギルの年別捕獲数
谷・馬場先・凱旋・桔梗・和田倉・大手・清水の
(平成 22 年 )
各濠であった。その駆除数は当歳魚が 60,803 尾、
1+以上魚が 1,313 尾で合計 8,122 尾(23 年 3 月分
を除く)であった。
平成21年度
一方,駆除を開始した 2 年前の平成 18 年度の
8,000
当歳
ブルーギル駆除数が多い順から、凱旋・日比谷・
大手・清水・馬場先・桔梗の各濠であった。駆除
尾
数
数は当歳魚が 18,379 尾、1+以上魚が 7,709 尾で計
1+以上
6,000
4,000
26,088 尾であった。平成 19 年度のブルーギル駆
除数は多い順から、大手・清水・日比谷・凱旋・
馬場先・桔梗・和田倉の各濠であった。駆除数は
当歳魚が 26,839 尾、1+以上魚が 5,661 尾で計
2,000
0
平成20年度
8,000
32,500 尾であった。
当歳
平成 20 年度のブルーギル駆除数(図 5)は多い
順から、大手・日比谷・凱旋・清水・馬場先・和田
倉・桔梗の各濠であった。駆除数は当歳魚が 12,745
尾、1+以上魚が 9,106 尾で計 21,851 尾であった。
6,000
1+以上
尾
数 4,000
2,000
平成 21 年度(図 5)のブルーギルは、多い順から馬
場先・凱旋・大手・和田倉・日比谷・桔梗・清水濠
であった。この駆除数は当歳魚が 10,982 尾、1+以
0
清
水
大
手
桔
梗
和
田
倉
馬
場
先
凱
旋
日
比
谷
上魚が 3,469 尾で合計 14,451 尾であった。
平成 21 年 4 月から平成 22 年 12 月の凱旋濠と日比
谷濠におけるブルーギルの生息数の変化について凱
図 5 ブルーギルの年別捕獲数
(平成 20~21 年度 )
旋濠と日比谷濠を図 6 に示した。
凱旋濠の推定生息尾数(尾)と駆除効率(%)は、平成 21 年 12 月上旬は 1,323 尾(69.9%)、
12 月中旬 1,716 尾(74.4%)であった。平成 22 年の 3 月上旬には 745 尾(67.1%)、12 月 10
日 371 尾(83.8%)、12 月 17 日 178 尾(88.2%)となった。このことから平成 23 年 3 月(未
実施)の残留数は当歳魚 18 尾、1+以上魚は 3 尾で合計 21 尾と推定した。
63
同様に日比谷濠の推定生息尾数(尾)
と駆除効率
(%)は、平成 21 年 12 月上旬は 532 尾(61.1%)
、
12 月中旬 441 尾(58.5%)、平成 22 年 3 月上旬 110 尾(64.5%)、11 月下旬 863 尾(58.6%)、
12 月中旬 306 尾(65.7%)となった。この結果、平成 23 年 3 月(未実施)の残留数は当歳魚 102
尾、1+以上魚は 3 尾で合計 105 尾と推定した。
2,000
推定生息尾数
0+残留数
1+以上残留数
1+以上捕獲数
0+捕獲数
凱旋濠
1,500
1,000
500
0
図6
凱旋濠におけるブルーギル推定生息尾数の変化
(平成 21 年 4 月~平成 22 年 12 月)
2,000
0+残留数
1+以上残留数
1+以上駆除数
0+駆除数
日比谷濠
1,500
推
定
生
息
尾
数
1,000
500
0
図7
日比谷濠におけるブルーギル推定生息尾数の変化
(平成 21 年 4 月~平成 22 年 12 月)
ブルーギルの体長組成については凱旋濠を図 8、日比谷濠は図 9 に示した。
平成 22 年 12 月中旬の凱旋濠の体長組成(N=1160)のなかで優先的であったのは、28~62mm
にモードを持つ年齢 0+魚(平成 22 年級群)の当歳魚であり、全個体数の 88.8%(N=1030)を占
64
めていた。これより大型個体(1+魚以上)
のブルーギルは 64~140mm の体長範囲に 11.2%(N=130)
であった。一方、日比谷濠の 12 月中旬の体長組成(N=1099)のなかで優先的なのは、22~52mm
にモードを持つ年齢 0+魚(平成 22 年級群)の当歳魚が 89.7%(1529 尾)が新たに加入した一
方、これより大型個体の 1+魚以上の比率は、10.3%(N=176)であった。
300
300
N=1160
250
200
200
150
尾
数 100
150
尾
数 100
50
50
0
0
N=1705
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
250
体長(mm)
体長(mm)
図7 ブルーギルの体長組成
図 8 ブルーギルの体長組成
(平成 22 年 12 月、凱旋濠)
(平成 22 年 12 月、日比谷濠)
300
300
N=1099
N=2201
250
250
200
200
150
尾 150
数
尾
数 100
100
50
50
0
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
130
140
0
体長(mm)
体長(mm)
図 9 ブルーギルの体長組成
図 10 ブルーギルの体長組成
(平成 21 年 12 月、凱旋濠)
(平成 21 年 12 月、日比谷濠)
これより、前年の平成 21 年 12 月の凱旋濠(図 9)および日比谷濠(図 10)の体長組成を示
した。凱旋濠(N=2201)で優先的な体長組成は、20~48mm にモードを持つ 0+魚(平成 21 年級群)
であり全個体数の 66.7%(N=1467)と平成 22 年よりも少なかった。またこれより大型のブルー
ギルの体長は 62~102mm の範囲に 33.3%(N=734)であったので平成 22 年よりも大型個体の比
率は高かった。一方、日比谷濠(N=1099)の優先的な体長組成は、20~48mm にモードを持つ 0+
魚(平成 21 年級群)であり全個体数の 72.4%(N=796)と平成 22 年よりも少なかった。一方大
型のブルーギルの体長は 50~134mm の範囲に 27.6%(N=303)であったので、平成 22 年よりも
大型個体の比率は高かった。
65
(2)五稜郭公園濠におけるブルーギルの抑制効果と在来魚回復の相互関係
a)調査場所と方法
五稜郭公園は外周囲約 1.8km、面積約 0.25km2 の星型形状の城塁跡である。周囲を平均水深 2.0m
の濠(水面積 5.64ha)が囲んでいる。北海道内でブルーギルが唯一生息する五稜郭公園の濠に
おいて、この場所から道内他水域への拡散を防止するため、根絶を目標にした効率的な抑制手段
の開発が必要となっている。このため、平成 21 年度までに電気ショッカーボートと竿釣りによ
るブルーギルの捕獲効率を比較した。しかし、これまで五稜郭濠では電気ショッカーボートによ
る生息数推定数には非常に誤差が大きくなることが判明した。このため電気ショッカーボート以
外の方法で、竿釣りによるブルーギル親魚の捕獲による繁殖抑制の効果が期待されてきている。
b)結果
平成 21 年度と同様に竿釣りによる捕獲作業を本格化に行った。平成 22 年 5 月から 9 月までの
期間中に合計 18 日間の竿釣りによるブルーギルの捕獲数は計 19,950 尾であった。このうち、濠
内の水温が 20℃以上となって、ブルーギル親魚が産卵時期に入り捕獲条件が高まった 6 月~9
月の計 15 日間(参加者数、延べ 208 名)の捕獲で得た CPUE と累積捕獲数の関係を図 11 に示し
た。このデータから得られた初期資源尾数は 20,589 尾、このうち 18,352 尾を釣獲済みとなるた
め、残留する推定尾数は 1,826 尾となった。この時点で駆除効率は 91.1%となった。
15.0
300
250
頻 10.0
度
分
布
% 5.0
200
150
( )
CPUE(尾/人/日)
N=404
y = -0.0112x + 240.27
R² = 0.7387
100
50
0.0
0
5000
10000
15000
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
110
0
20000
累積漁獲尾数
図 11
体長(mm)
CPUE と 累 積 漁 獲 量 の 関 係
図 12 ブルーギルの体長組成(平成 22 年)
(平成 22 年)
15.0
N=496
250
頻 10.0
度
分
布 5.0
200
150
100
( )
y = -0.0156x + 352.98
R² = 0.6585
50
%
0.0
0
0
5000
10000
15000
20000
累積漁獲尾数
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
110
CPUE(尾/人/日)
300
体長(mm)
図 13 CPUE と累積漁獲量の関係(平成 21 年)
7
66
図 14 ブルーギルの体長組成(平成 21 年)
平成 22 年 9 月のブルーギルの竿釣りによる体長組成を図 12 に示した。
ブルーギルの年齢組成は、
1+魚 8.2%、2+魚 12.4%、3+魚 74.8%、4+魚以上 4.7%であったので、この主群の体サイズは
60~70mm の範囲で示された 3+魚(平成 19 年級群)が中心であることが判った。
一方、これと比較するため平成 21 年の CPUE と累積漁獲量の関係を図 13 に示した。また平成
21 年のブルーギルの体長組成を図 14 に示した。平成 21 年 6 月~9 月の計 13 日間(参加者数、
延べ 127 名)
の捕獲で得た初期資源尾数は 22,425 尾、
このうち 18,223 尾が釣獲済みとなるため、
残留する推定尾数は 4,202 尾となった。この時点での駆除効率は 81.3%となっていた(図 13)。
平成 21年 9 月のブルーギルの年齢組成は、1+魚 6.5%、2+魚 78.2%、3+魚 14.5%、4+魚以上
0.8%であり、主群は 56~66mm の範囲で示された 2+魚(平成 19 年級群)であった(図 14)。
3.考察
皇居外苑濠におけるオオクチバスは平成 22 年 12 月までの調査において再生産(当歳魚)は確
認できなかった。今年度オオクチバスは、日比谷濠と凱旋濠で僅かに各1尾が捕獲したが、いず
れも成魚(性別は雄)であったため、今後これまでと同様な捕獲努力(平成 23 年度計画:日比
谷濠 8 日間、凱旋濠 4 日間)を続けることによって、オオクチバスを根絶できると考えられた。
ブルーギルの年別の捕獲数は、平成 22 年度(全濠合計、8,122 尾)は平成 21 年度(全濠合計、
14,451 尾)に対して比較して 56%程度になっており、平成 23 年 3 月時捕獲は未実施ではあるも
のの、生息数の大幅減少の確認が予想される。特に、当歳魚の比率が高まってはいるが(平成
22 年度 83.7%、平成 21 年度 75.9%)、相対的に繁殖のできる 1+魚以上の比率が低下している
ため抑制効果があることが知られた。
一方、五稜郭公園濠では、電気ショッカーボートによるブルーギルの捕獲効率は皇居外苑濠に
比較して下回っている可能性がある。これまでも五稜郭で用いている電気ショッカーボートの捕
獲時期や捕獲技術の問題点としては、冬季水温時(5~6℃)では石垣間隙内での越冬、夏・秋水
温時には(18℃以上)では大量繁茂した水生植物群落の影響により電気ショッカーボートの航行
障害あるいはブルーギル個体の感電以前の逃避場所となるため作業効率は大きく低下すること
が示唆されている。このため五稜郭公園濠においては、ショッカーボートでは捕獲しにくい繁殖
期(6~8 月)は、竿釣りによりブルーギルの親魚捕獲を行うことによって、再生産の抑制を行
えることが示唆された。このため本年度は、竿釣りによる捕獲努力(平成 22 年度:延べ 208 人、
平成 21 年度:延べ 127 人)を強めたものの、結果として親魚の捕獲数は平成 21 年度と変わらな
かったことからブルーギル資源の抑制効果が効いていることが知られた。
今後、皇居外苑濠および五稜郭公園濠における在来魚の種類数および個体数の増加傾向をあら
ためて定量的な調査を行い、外来魚の生息による在来生態系への影響を明らかにする必要がある
と考えられる。
67
4.成果の公表(22 年度)
報告書:(印刷中)電気ショッカーボートによる外来魚の駆除技術の開発.
(印刷中)内水面外来魚実態調査.
平成 21 年度北海道立水産孵化場事業成績書
広報誌: 電気ショッカーによる駆除効果
全内漁連「ぜんない」第 16 号
口頭発表:ため池における外来魚駆除後の状況について
琵琶湖を戻す会第 6 回外来魚情報交換会 要旨
http://homepage2.nifty.com/mugituku/exchange/2011/photo/fukumoto.pdf
3. 担当者
地方独立行政法人 北海道立総合研究機構
さけます・内水面水産試験場
内水面資源部 研究主査(河川湖沼) 工藤 智 E-mail:[email protected]
TEL:0123-32-2137、FAX:0123-34-7233、 E-mail:
68