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7. 今後の課題
7. 1 データベースの拡充
7. 1. 1 データの充実
今回現地調査を実施した箇所は,収集した台帳 601 件(682 箇所)のうち,30 箇所程度と全体の 5%
である。この件数を増やすことで,より精度の高い予測が可能となる。特に現在航空緑化工の適用が
困難と予想される立地条件の妥当性を検討することは重要であると考えられる。
7. 1. 2 データの集計・解析
今後,管理署等でデータの拡充がされた後,それらのデータを全国的に集め解析し,評価する必要
がある。PDCA のサイクルを実施することで,より効率的な手法の展開につながる。効率化は一工事
のコスト縮減ではなく,マネジメント全体でコスト縮減を検討する必要がある。
7. 2 生物多様性対策
7. 2. 1 新工法の開発
生物多様性に配慮した航空緑化工は確立しておらず,自然侵入促進工や不稔外来種子を使うなど対
策の妥当性を評価しながら,新たな対応策を開発する必要がある。
7. 2. 2 モニタリング
自然侵入促進工の場合は,厳しい環境下で実施する場合が多いため,長期的な評価を行うモニタリン
グ結果と併用技術の開発が望まれる。
7. 3 マネジメント
7. 3. 1 地理情報システムの応用
航空緑化工採用の場合,資材運搬方法の検討から採用に至る場合が多いと想像される。資材運搬に
欠かせないのは林道網である。国有林 GIS には林道網,地形図等が記載されており,これらの情報を
利用すれば工事予定地と運搬方法の検討は容易だと思われる。
7. 3. 2 重要度と対処順序の決定
事前に植生自然度,保全対象となる施設などと対象地との距離的,地形的関係を整理することで,
その場所の優先度等が判断可能である。どこまでの崩壊規模を許容できるのか,自然復元までの過程
に時間を要する手法を採用できるのかといった評価を計画段階で実施することができる。
7. 3. 3 計画・設計への活用
生物多様性に配慮する法面技術を航空緑化工に適用した場合,初期緑化が完成するまでに,最低で
も 3 年はかかると思われる。より厳しい環境下で実施される航空緑化工の場合それ以上であることも
容易に想像できる。そのような遅速緑化の場合,その目的が不明瞭となった場合,意図しない維持管
理が実施される危険性もある。それらを防止するには継続的にモニタリングを実施し,それをだれで
も容易に使用できるよう整備する必要がある。森林のように,長期的な時間軸が必要な対象物にたい
しては,計画性を持った事業の継続が必要不可欠である。そのために,工事毎の情報管理から,土地
情報に基づいた情報管理を時系列適に積み上げることが望ましい。この管理手法の実現には,前述の
国有林 GIS とその応用はこれらを容易に進めるツールであると思われる。
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7. 4 治山事業への応用
7. 4. 1 山腹緑化工
山腹対策工は,航空緑化工だけではなく,山腹基礎工や緑化基礎工,その他多様な技術が集まって
技術体系が確立している。今後は,これらの対策工を総合的に評価し,それらと航空緑化工の位置づ
けを明確にすることで,より効率的なマネジメントにつながるものと考える。
7. 4. 2 緑化指標の活用
本業務の調査では,周辺自然植生と緑化で成立している現植生群落との関係を示した「緑化到達指
数」を新たに考案した。山腹工の評価検証を,同じ視点で全国的に実施することにより,より経済的・
効率的な手法の方向性が見いだせると考えられる。
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