第5章 水産開発計画と主要援助プロジェクト 5.1. 上位計画 (1)貧困削減戦略計画 ブルキナファソは2000年にサブサハラ・アフリカで2番目に貧困削減戦略(PRSP:Poverty Reduction Strategy Paper)を策定し、現在その具体的実施に努めている。PRSPでは、均衡のと れた成長の加速、貧困層の社会サービスへのアクセス保障、貧困層の雇用拡大、所得機会の創出 及び良い統治の4つを戦略上の柱と位置付けた。2009年、第2次PRSPを作成すべく作業に取りかか っている(外務省ホームページより) 。 (2)環境国家政策 2007 年にブルキナファソ政府生活・環境省は、環境国家政策(PNE:Politique Nationale en matièred’Environnement)を採択し、その政策の実現のための「生活・環境セクター10 か年行 動計画(PDA/ECV 2006-2015:Programme Décennal d’Action du secteur de l’Environnement et du Cadre de Vie) 」を策定した。行動計画は、a.環境保護・気候変動への適応、b.経済への 貢献、c.ガバナンスと組織強化支援、d.実施・モニタリングの 4 構成になっている。 (3)農業開発計画 農業・農村開発分野については、2003 年 12 月に採択された農村開発戦略書(SDR:Stratégie de Développement Rural)が国家開発計画として位置付けられている(国際農業研究情報No.57 (2008) ) 。 SDR には、農業、畜産、環境、水産、女性、青少年育成等、農村開発に関連する分野の戦略を 一本化し、分野横断的に課題解決に取り組む構成になっており、2015 年までに達成するべき指標 定めている。 SDR の中で取り組むべき課題として、食糧安全保障の強化、農民の収入向上、自然資源の持続 的管理、開発当事者の農民責任の自覚化、の 4 点を挙げている。 その枠組の優先的行動事項として、①農業・畜産・森林・動物・水産生産量の増加、多様化、 発展、②生産と市場の連携強化、③収入源の増大と多様化、④飲料水調達と衛生の改善、⑤自然 資源の持続的管理の保障、⑥関係者の能力向上と制度的枠組みの設置、⑦農村女性・青年の経済 状況及び社会的立場改善の為のジェンダーアプローチの促進等の政策を示している。 5.2. 水産開発計画 農水省はブルキナファソ国内の中・長期的な水産開発を進めるための計画として、2025 年まで の長期計画「2025 年に向けた持続的水産振興国家戦略(草案) :SN-DDRH:STRATEGIE NATIONALE DE DEVELOPPEMENT DURABLE DES RESSOURCES HALIEUTIQUES A L’HORIZON 2025」を作成している。 また、上記の 2025 年までの長期計画を具体的に実行するため、2011 年から 2015 年までの 5 カ年 の行動計画である「水産部門行動計画 2011-2015(草案) :Avant projet de plan d’actions de la filière poisson 2011-2015」を同時に作成している。 - 26 - これらの計画は 2010 年 7 月農業水利資源省の承認を得ており、同年 12 月末までに閣議での承 認を目指している。 (1)2025 年に向けた持続的水産振興国家戦略(草案) SN-DDRH は、今後 15 年間における(2011 年~2025 年)、漁業および養殖に関する諸活動の枠組 みを提案することを目的とする。2025 年に向けた水産部門の全体的な方向性としては、持続的な 資源活用およびプライベートセクターとの連携により、貧困削減や食料安全保障に貢献していく ことを目指している。 この全体目標は、次の6つの個別目標から構成される。 1. 水産物の生産量を 2011 年から年 10%増加 2. 水産資源の持続的管理の確立 3. 水産物の多様化 4. 水産業従事者の能力強化 5. 水産資源に関する研究開発活動の促進 6. 水産物の価格引き上げ これらの目標は次の 5 つの戦略軸に沿って実現される。 1. 漁業の生産量増加および漁獲の多様化 2. 養殖の促進 3. 水産資源の持続的管理 4. 水産資源の品質向上の促進 5. 水産業従事者の能力強化 本戦略の財源は、国家、財政的・技術的パートナー(ドナー等)、民間、裨益住民によって担 われる。本戦略は、5 年ごとに行動計画を見直し実施する。 (2)水産部門行動計画 2011-2015(草案) 本行動計画は、SN-DDRH を実行するための最初のステップとして策定され、緊急性のある課題 に対して適切な解決策を講じることを目的とする。その具体的行動分野は、「漁獲漁業」、「養殖」 及び「制度と組織」の 3 つの分野である。 本行動計画を実施するための予算は 10,457,500FCFA が見積もられており、この予算は施設建設、 機材、人材育成などに当てられる。なお、次のステップとして 2016-2020 年行動計画が策定され る予定である。 水産局は 同行動計画の 目的を達成するため今後 5 年間の具体的な活動として、次のような項目 を掲げている。 ・規則概要:技術的、理論の強化、規則の普及 ・漁獲漁業生産の増加:水産資源の知識、参加型の管理方法や組織の確立、漁業技術の強化 ・養殖生産の増加:養殖施設建設、飼育や餌料生産技術の開発、現代的な養殖生産技術の導入、 養殖業者の支援 - 27 - 5.3. 主要援助プロジェクト (1)我が国からの協力 我が国からの水産分野の国際協力として、国際協力機構(JICA)によって以下の協力が実施さ れた。 ・農業農村開発政策アドバーザー(2005 年 8 月~) ・青年海外協力隊(JOCV)養殖隊員(2006 年 6 月より 2 年間、及び現在後任隊員活動中) ・ベナンとの技術交換(2007 年 6 月) ・養殖促進能力強化計画短期専門家(2007 年 7 月~10 月) ・JICA 本邦研修「持続的増養殖開発」(2008 年 3 月~6 月、2009 年 3 月~6 月) ・技プロ: 2009 年 9 月~2012 年 9 月までの 3 年間の予定で、農水省をカウンタパート機関 として、技術協力プロジェクト「養殖による農村開発促進プロジェクト」が実施され、2 名の調査専門家が派遣されている。また、2010 年 9 月~10 月養殖飼料開発短期専門家が 派遣された。さらに、2011 年 1 月~9 月ティラピア種苗生産・飼育短期専門家が派遣され る予定である。 なお、現在のところ海外漁業協力財団(OFCF)からの水産協力実績はない。 (2)他国、国際機関の援助プロジェクト 1)台湾による協力 ・バグレ養殖プロジェクト(PEP) 台湾による支援による PEP では、近代的な養殖機材と技術を用いた養殖生産量増産支援を主目 的として、2004 年にバグレ湖養殖センターを建設した。このプロジェクトは、集約的養殖技術の 開発と実施、飼料開発と供給、養殖担当官へのトレーニング、養殖農家の育成等の活動を目的と して実施された。2009 年 12 月プロジェクトは終了し、現在水産局は本養殖センターの民間委譲 を検討している。 ・水産物物流調達センター(CADIPP) CADIPP はワガドゥグー市北部に位置する。台湾の資金協力により、1999 年に設立され、2001 年より国内水産物の流通や漁具の調達を目的に活動を開始した。CADIPP へのソフト面に関する台 湾の支援はなく、ブルキナファソ人によって運営管理されている。この施設は、製氷機(4.5 ト ン/0.5 日)、ガス式大型燻製機や乾燥機、研修施設および宿泊施設等が併設されており、保冷ト ラック 2 台、保冷コンテナ 4 台の整備が行われた。 2)ドイツによる協力 ・南西部漁業管理プロジェクト(Gestion Peche dan Sud-west) ドイツ技術協力公社(GTZ)は 1994 年~2002 年まで資源の持続的管理における住民の責任感を 育てるためのプロジェクトを実施した。 3)台湾とドイツとの共同協力 ・水産業活動調整支援プロジェクト(PACAFA) 予算の支出は台湾、実施は GTZ が担当し、2006 年から 3 年間実施され、現在は終了したプロジ - 28 - ェクトである。PACAFA は、養殖業に関する関係者の組織化と生産増加を目標としており、以下の 3 つのコンポーネントで構成されている。 ・PEP の生産物の商品化 ・関係者の商品化能力強化および養殖技術の普及 ・PEP と CADIPP の再組織化 4)FAO による協力 FAO によるボルタ川流域ティラピア種の遺伝的改良プロジェクト(Projet Amelioration de souches genetiques dans le Bassin du lac Volta)や小規模灌漑プロジェクトが実施されてい る。また、 「ブルキナファソにおける食糧安全保障と貧困削減のための革新的総合生産システムを 通じた農業・農村開発プロジェクト」が実施され、その中で「水産/養殖システムに関する実証展 示の実施」により、プロジェクトサイトの稲作水田および低湿地における水産/養殖システム提案 に関する条件と阻害要因に関し、ブルキナファソ国内コンサルタントによって調査が実施された。 - 29 -
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