生物化学 講義 第17章、第18章

生物化学 講義 第17章、第18章 担当 中村崇裕(植物分子機能学研究分野)
平成25年度 講義予定 12/19(金、本日)
第17章前半
1/ 9 (金)
第17章後半
1/13 (火)
第18章前半
1/30 (金)
第18章後半
18. 電子伝達と酸化的リン酸化
休憩中の人の消費エネルギー:420kJ/h
100W(100V, 1A)の白熱電球のエネルギ
ー消費より少し多いくらい。
人の消費エネルギーはほぼミトコンドリア
で賄われる。
ミトコンドリアにおいて、電圧差0.2Vだが、
500A程度の電流が流れており(100W)、
1秒当り3x1021個のプロトンが流れる。こ
れを用いて、ATPが作られる。
億 兆 京 垓 Chapter 18 Opener
おく
ちょう
けい
がい
じょ
108
1012
1016
1020
1024
解糖系とクエン酸サイクルで生じ
た還元力(NADH, FADH2)
から、生体のエネルギー通貨
(ATP)を作る
NADH, FADH2
生体膜の両側へのプロトン
勾配の形成
(電子伝達系)
プロトンの流れを駆動力とした
ATPの合成
(酸化的リン酸化)
NADH, FADH2から、電子伝達系へ電子が
渡される。すなわち、これら物質が酸化され、
NAD+, FADとなる。
電子は、電子伝達系の4種の酵素複合体
上の酸化還元中心を通り、最終的にO2を
H2Oに還元する。
この過程で、ミトコンドリアの内膜外にプロ
トンがくみ出され、膜の内外にプロトン濃度
勾配が出来る。
この電気化学勾配の自由エネルギーを使
って、ADPとPiからATPを合成する。(この
過程で、エネルギー勾配は解消される)
解糖系とクエン酸サイクルで生じ
た還元力(NADH, FADH2)
から、生体のエネルギー通貨
(ATP)を作る
NADH, FADH2
生体膜の両側へのプロトン
勾配の形成
(電子伝達系)
プロトンの流れを駆動力とした
ATPの合成
(酸化的リン酸化)
解糖系から電子伝達系でのエネルギー供給量
C6H1206(グルコース)+6O2
→ 6CO2+6H20
解糖系
ピルビン酸
デヒドロゲナーゼ
複合体
+2H+
+2H+
クエン酸
サイクル
+6H+
2.5 ATP / 1 NADH
1.5 ATP / 1 FADH2
内訳
C6H1206+6H20
→ 6CO2+24H++24e-
(解糖系〜クエン酸回路)
6O2+24H++24e-
→ 12H20
解糖系から電子伝達系でのエネルギー供給量
解糖系
ピルビン酸
デヒドロゲナーゼ
複合体
クエン酸
サイクル
+2H+
+2H+
+6H+
2.5 ATP / 1 NADH
1.5 ATP / 1 FADH2
ミトコンドリア(mitochondria)語源:mito=糸、chondria=粒(ギリシャ語)
大きさや形は細胞の種類や代
謝状態により異なるが、ふつう
は0.5 x 1.0 μmの回転楕円形。
真核生物には約2000個のミトコ
ンドリアがあり、細胞体積の約
1/5を占める。
内膜と外膜に囲まれ、外膜は
滑らかだが、内膜には多数の
陥入がある。
原核微生物、動物細胞と植物細胞の比較
動物ミトコンドリアの電子顕微鏡写真。人工的に色を塗ってある。
外膜
内膜
クリステ
マトリックス
膜間部
粗面小胞体(ミトコンドリアではない)
Figure 18-2 part 1
ミトコンドリアの3次元イメージ: クリステは複雑な形をとる
OM: 外膜
IM:内膜
C: クリステ
△: 内膜とクリステをつなぐ管状部
Figure 18-3
ミトコンドリアの起源
太古の嫌気性
(原)真核細胞
初期の好気性
真核細胞
細胞
内膜
核
細胞膜 /
好気性原核細胞
Figure 12-4b Molecular Biology of the Cell (© Garland Science 2008)
真核細胞に
由来する膜
ミトコンドリア
Figure 18-4
外膜 ポリンと呼ばれる蛋白質で孔が空いている(細菌の外膜と同様)。
10kDa以下の物質は自由に透過出来る
内膜 電子伝達系、ATP合成酵素、各種低分子化合物の輸送体
が存在。
ミトコンドリアマトリクス内外への物質輸送と濃度勾配形成。
自由に透過出来る物質は、O2,CO2, H2Oに限られる。
電子伝達と酸化的リン酸化によるATPの合成。
クリステ 内膜の貫入部分。プロトンの拡散を抑える構造。
クリステの量が多ければ、効率的に酸化的リン酸化が行われる。
マトリックス クエン酸サイクルを始めとした
多数の酵素、ヌクレオチド補因子、
無機イオン等を含むゲル。DNA,
RNA, リボソーム等も持つ。
膜間部 ポリンの機能により、代謝
産物の濃度はサイトゾルと等価。
還元当量のミトコンドリアへの輸送
細胞質で生じたNADHはミトコンドリアの内膜を通過出来ないため、2つの仕組
みで膜内に輸送される。
リンゴ酸-アスパラギン酸シャトル (肝臓、心臓、腎臓など)
細胞質
ミトコンドリア内
オキサロ酢酸→リンゴ酸
(クエン酸回路の逆反応)
により、電子をミトコンドリ
アに送り込む
(得られるATPは2)。
グリセロリン酸シャトル(筋肉など、肝臓、心臓、腎臓以外の臓器;昆虫の飛翔筋)
ミトコンドリア内膜に結合した酵素のFAD/FADH2変換を利用して
NADH由来の電子を電子伝達系に直接送り込む
(得られるATPは1.5)。
http://www.fujita-hu.ac.jp/~biochem/mitoch.html
ATP/ADPの輸送(マトリクスと細胞質の間)
ATPはマトリクス側で合成される。それをサイトゾルに出して使うために、
内膜には輸送体が存在。膜電位Δψ(外側が正)で駆動
PDB 10KC
ATP/ADP交換輸送体(ADP/ATP tranlocator)
30 kDaの二量体?
その他、リン酸輸送体(ΔpH(プロトン駆動
力)で駆動)がサイトゾルのPiをミトコンドリ
アに輸送。
Figure 18-6
Fig. 1. Dependency of the transport mode on the interaction
energies of the salt bridge networks.
http://www.mrc-mbu.cam.ac.uk/research/mitochondrial-carriers/transport-mechanism
その他、リン酸輸送体がサイトゾルのPiをミトコンドリアに輸送。
ΔpH(プロトン駆動力)で駆動。
膜電位Δψ
外側がプラス
ΔpH
(プロトン駆動力;マトリックスがpH7.5、膜間
部はpH7.0)
クリステ
まとめ
ミトコンドリアの構造は?
電子伝達系はスリステ
膜間部
還元当量、ADP、Piをミトコンドリアに運び込む輸送システムは?
還元当量
・細胞質で生じたNADHはミトコンドリアの内膜を通過出来ない。
リンゴ酸-アスパラギン酸シャトル グリセロリン酸シャトル
ADP
・ADP/ATP translocator (ATP/ADP交換輸送体), 膜電位Δψ
Pi ・リン酸輸送体, ΔpH
18. 電子伝達系
・ NADHの酸化により、電子を取り出す反応
½ O2 + NADH + H+ ⇄ H2O + NAD+
ΔG0’= −218 kJ/mol ・ ATPの合成
ADP + Pi → ATP の反応
ΔG0’= 30.5 kJ/mol 従って、1分子のNADHの酸化で、数分子のATPの合成が可能。
実際には、電子伝達系中の3つの蛋白質複合体のそれぞれに
依存してATPが合成される(約2.5分子)。
エネルギー効率は 30.5 × 2.5 x 100/218 = 0.35 (35%)
(活発なミトコンドリアでは熱力学的効率は約70%に達すると考えられている。
通常のガソリンエンジン等は、30%程度)
電子伝達系: NADHとFADH2の酸化
還元電位の低い方から高い方へ(電子親和力の
順に)、電子が流れる。
NADH:
E0' = −0.32 V
FADH2:
E0' = −0.22 V
CoQ:
E0' = +0.10 V
シトクロムc:
E0' = +0.25 V
最終電子受容体
(酸素):
E0' = +0.82 V
複合体1と2から補酵素Qを介
して電子を複合体3へ。
Figure 18-7
注:ATP合成に十分なエネルギー量を示すだけで、電子伝
達系でATPが合成される訳ではない。
電子伝達系: NADHとFADH2の酸化
複合体1と2: 補酵素Qを介して電子を
複合体3へ。
NADH + CoQ(酸化型)
→NAD+ + CoQ(還元型)
複合体3: シトクロムCによる還元型
CoQの酸化を触媒
CoQ(還元型)+ 2シトクロムc(酸化型)
→CoQ(酸化型)+ 2シトクロムc(還元型)
複合体4: 最終的な電子受容体O2に
よる還元型シトクロムcの酸化を触媒
2シトクロムc(還元型) + 1/2O2
→2シトクロムc(酸化型) + H20
Figure 18-7
電子伝達系: NADHとFADH2の酸化
コエンザイムQ(ユビキノン、コエンザイ
ムQ10、ビタミンQ)
ほ乳類ではR部分が10個のイソプレン
からなるので、Q10と呼ぶ。他の生
物では、Q6、Q8もあり。
Figure 18-7
電子伝達系: NADHとFADH2の酸化
電子伝達系の阻害剤、など
ロテノン(植物由来の毒、殺虫剤など)
アミタール(催眠鎮静剤)
アンチマイシンA(抗生物質)
シアン化物(毒、青酸カリなど)
Figure 18-7
電子伝達系の 複合体I, III, IV
複合体I : NADHデヒドロゲナーゼやNADH-CoQレダクターゼとも呼ばれる。
複合体IはNADHの2つの水素と電子をCoQに渡す。 NADH + H+ + CoQ → NAD+ + CoQH2 ΔGo' = -69.5 kJ/mol 複合体III: シトクロムbc1複合体やCoQ-シトクロムcレダクターゼとも呼ばれる。
複合体Ⅲは還元型CoQからシトクロムcへの電子の受け渡しをする。
CoQH2 + 2 cyt c(ox) → CoQ + 2 cyt c(red) + 2H+ ΔGo'= -36.7 kJ/mol 複合体IV:シトクロムcオキシダーゼ
シトクロムcから複合体IVに渡された電子は,電子伝達系の最終受容
体である酸素(O2)に渡され,水が生じる。
2 cyt c(red) + ½O2 + 4H+ → 2 cyt c(ox) + H2O ΔGo'= -112 kJ/mol 複合体I : NADHデヒドロゲナーゼやNADH-CoQレダクターゼとも呼ばれる。
NADHからCoQに2つの水素と電子を渡す。 ほ乳類では46個のサブユニットで構成
(900 kDa)
Complex I in E. coli
Efremov & Sazanov, Nature (2011)
Figure 18-9
(ヴォート第3版では2006までカバー)
クライオ電子顕微鏡像に基づく立体構造
電子伝達系の複合体と補酵素
複合体I
NADH-補酵素Qレダクターゼ およそ900kDa
43個のサブユニットからなる
補酵素:フラビンモノヌクレオチド(FMN)、1個
鉄硫黄クラスター(2Fe-2S or 4Fe-4S)、8〜9個
複合体I
:NADH-補酵素Qレダクターゼ
補酵素:フラビンモノヌクレオチド(FMN)、1個
鉄硫黄クラスター(2Fe-2S or 4Fe-4S)、8〜9個
FMN: FADからAMP部分がとれ
た形。 ビタミンB2から合成。
セミキノン型が安定なので、1または
2電子いずれの受容体、供与体に
なれる。
FAD:ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体
(ピルビン酸→アセチルCoA)の補酵素
Figure 18-10
複合体I
:NADH-補酵素Qレダクターゼ
補酵素:フラビンモノヌクレオチド(FMN)、1個
鉄硫黄クラスター(2Fe-2S or 4Fe-4S)、8〜9個
・ 1電子の酸化還元を行う一電子キャリア。
・ 4個のCysのSH基が配位。
・ フェレドキシン、ヒドロゲナーゼ、補酵素Qシトクロムcレダクターゼ、コハク
酸デヒドロゲナーゼ、ニトロゲナーゼなど多くの金属タンパク質で見られる。
Page 605
複合体I親水性部分の構造と鉄硫黄中心 NADH結合部位?
Figure 18-11
NADHからCoQへの電子伝達はおそ
らく各酸化還元中心(Fe-Fsクラスター
)の還元電位に従って段階的に起きる。
1分子のNADHの酸化:4個のプロト
ンの膜を介した移動がある。
酸化還元状態により、構造が変化し、
その変化に伴ってプロトンが取り込ま
れたり放出されることで、複合体1はプ
ロトンポンプとして働くと考えられて
いる。(電子伝達とプロトン移動の直
接の関係はまだわかっていない)
プロトンの移動:輸送ではなく、水素
結合間をジャンプしてプラス電荷が移動
複合体I親水性部分の構造と鉄硫黄中心 NADH結合部位?
Figure 18-11
酸化還元状態により、構造が変化し
、その変化に伴ってプロトンが取り込
まれたり放出されることで、複合体1
はプロトンポンプとして働くと考えられ
ている。(電子伝達とプロトン移動の
直接の関係はまだわかっていない)
プロトンの移動:輸送ではなく、水素
結合間をジャンプしてプラス電荷が
移動。
おそらく複合体Iは1電子対がNADHか
らCoQに渡されるごとに4プロトンが
膜を通ってくみ出されるようなプロト
ンワイヤ(プロトンの導線)を持ってい
ると考えられる。
バクテリオロドプシン:光依存性プロトンポンプ(プロトンワイヤのモデル)
a. Lys216にレチナールがシッフ塩基で結合。
b. 光によるレチナールの構造変化、シッフ塩基の脱離
①. Asp85のpK(酸解離指数)が上昇し、シッフ塩基
のプロトンを受け取る。
② 受け取ったプロトンをArg82、Glu194、Glu204と数
個の水分子からなる水素結合ネットワーク(プロト
ンワイヤ)を介して、細胞外に放出
③ Asp96の脱プロトン化とLys216シッフ塩基の再プロ
トン化
④ Asp96の細胞質からの再プロトン化
⑤ Asp85の脱プロトンとプロトン放出部位の
再プロトン化
シッフ塩基:RCH→NR′のような構造をもつ化合物の総称。主にア
ルデヒドRCHOと第一級アミンR′NH2との縮合反応により生じる.
複合体Iでのプロトン移動
Complex I in E. coli., Efremov & Sazanov, Nature (2011)
複合体II
コハク酸-補酵素Qオキシドレダクターゼ
クエン酸デヒドロゲナーゼを含む(クエン酸回路)
コハク酸からCoQに電子を渡す
酸化還元基はFAD、[4e-4S]クラスター、
[3e-3S]クラスター、[2e-2S]クラスター、
シトクロムb-560、それぞれ一個。
Figure 18-7
複合体II
コハク酸-補酵素Qオキシドレダクターゼ
クエン酸デヒドロゲナーゼを含む(クエン酸回路)
コハク酸からCoQに電子を渡す
酸化還元基はFAD、[4e-4S]クラスター、
[3e-3S]クラスター、[2e-2S]クラスター、
シトクロムb-560、それぞれ一個。
大腸菌複合体はキノコ型360kDa
(ホモ3量体)
親水性サブユニット:SdhA, B
疎水性サブユニット:SdhC, D
基質からユビキノン結合部位間を
FAD〜UQの酸化還元中心がつなぐ。
シトクロムb:電子伝達系の電子的性質を
微調整し、副反応で生じるH2O2などの
活性酸素種の発生を防いでいるらしい。
Figure 18-7
複合体III
補酵素Q-シトクロムcオキシドレダクターゼ(またはシトクロムbc1)
還元型CoQからシトクロムcに電子を渡す。
酸化還元基は2個のb型シトクロム、
1個のシトクロムc、1個の[2Fe-2S]
クラスター。
Figure 18-7
複合体III
補酵素Q-シトクロムcオキシドレダクターゼ(またはシトクロムbc1)
還元型CoQからシトクロムcに電子を渡す。
酸化還元基は2個のb型シトクロム、
1個のシトクロムc、1個の[2Fe-2S]
クラスター。
2Fe-2S クラスター
鉄に配位するのが
システインの側鎖だけでなく
ヒスチジンの側鎖。
発見者にちなみ、リスケ中心
とも呼ばれる。
9個のサブユニットからなる2量体
図、酵母の複合体
シトクロムb
緑(膜貫通ヘリックス8)
シトクロムc1
紫(膜貫通ヘリックス1)
鉄硫黄タンパク質 赤紫(膜貫通ヘリックス1)
シトクロムc
赤
Figure 18-7
複合体III
補酵素Q-シトクロムcオキシドレダクターゼ(またはシトクロムbc1)
Qサイクルによる電子の汲み出し。
全体
CoQH2 + 2シトクロムc1(Fe3+) + 2H+ (マトリクス)
→ CoQ + 2シトクロムc1(Fe2+) + 4H+ (膜間部)
サイクル1
CoQH2 + シトクロムc1(Fe3+) → CoQ・- + シトクロムc1(Fe2+) + 2H+ (膜間部)
サイクル2
CoQH2 + CoQ・- + シトクロムc1(Fe3+) + 2H+ (マトリクス)
→ CoQ + CoQH2 + シトクロムc1(Fe2+) + 2H+ (膜間部)
(CoQ・- : セミキノン中間体)
Qサイクル
サイクル1
CoQH2 + シトクロムc1(Fe3+) → CoQ・- + シトクロムc1(Fe2+) + 2H+ (膜間部)
1&2. CoQH2がQ0に結合。
3. [2Fe-2S]タンパク質(ISP)に電子1個を渡し、2H+を膜間部に放出して、セミキノン型CoQ・-中
間体になる。
4. ISP(+電子)がシトクロムC1を還元し、CoQ・-の残りの1電子をbLに渡す(完全酸化されたCoQ)。
6. ヘムbLがヘムbHを還元する。
5. ステップ4で生じたCoQがQoからQ1に移動する。
7. ヘムbHから電子を受け取り、セミキノン型CoQ・-に戻る。
Qo
Qi
Qo, CoQH2と結合
Qi, CoQH2、CoQ・-と結合 Figure 18-15
Qサイクル
サイクル2
CoQH2 + CoQ・- + シトクロムc1(Fe3+) + 2H+ (マトリクス)
→ CoQ + CoQH2 + シトクロムc1(Fe2+) + 2H+ (膜間部)
- 複合体1で生じる新しいCoQH2が1〜6のステップを繰り返す。
1個の電子が[2Fe-2S]タンパク質(ISP)を経て、シトクロムc1を還元、2H+を膜間部に放出。
8. もう一個の電子がヘムbL、ヘムbHを経て、サイクル1で生じるCoQ・-をCoQH2に還元。
(最終ステップで使われるプロトン(2H+)はマトリックス由来)
Qo
Qi
Qo, CoQH2と結合
Qi, CoQH2、CoQ・-と結合 Figure 18-15
Qサイクル
全体
CoQH2 + 2シトクロムc1(Fe3+) + 2H+ (マトリクス)
→ CoQ + 2シトクロムc1(Fe2+) + 4H+ (膜間部)
Qo:阻害剤、スチグマテリンが結合
Qi :阻害剤、アンチマイシンAが結合
Qo
Qi
Qo, CoQH2と結合
Qi, CoQH2、CoQ・-と結合 Figure 18-15
Qサイクル
全体
CoQH2 + 2シトクロムc1(Fe3+) + 2H+ (マトリクス)
→ CoQ + 2シトクロムc1(Fe2+) + 4H+ (膜間部)
Qo:阻害剤、スチグマテリンが結合
Qi :阻害剤、アンチマイシンAが結合
Qo
Antimycin A�
Qi
CoQ�
Qo, CoQH2と結合
Qi, CoQH2、CoQ・-と結合 Figure 18-15
シトクロムc: 可溶性電子キャリア
分子量1万2千程度の可溶性ヘム蛋白質
ヘム色素により、赤色を示す。
ミトコンドリアンの酸化還元に関与
Lys残基が重要
複合体IV
シトクロムcオキシダーゼ
還元型シロクロムc分子の一電子酸化を4連続して行い、
同時にO2の4電子還元を行う。
4シトクロムC(Fe2+) + 4H+ + O2
→ 4シトクロムC(Fe3+) + 2H2O
Figure 18-7
複合体IV(シトクロムc酸化酵素)
4シトクロムC(Fe2+) + 4H+ + O2
→ 4シトクロムC(Fe3+) + 2H2O
哺乳動物の酵素:410 kDa, 13サブユニットからなるプロトマーのホモ2量体
28本のαへリックスからなる膜貫通領域を持つ
3個の大きな疎水性膜貫通サブユニット:ミトコンドリアゲノムにコードされる。それ以外は核コード。
酸化還元中心:シトクロムa, シトクロムa3, CuB, CuA中心
シトクロムc
中心
赤丸:ヘム
青丸:Cu
Figure 18-17
電子は複合体IVの酸化還元中心の間に
ある水素結合ネットワークを介して流れる
と考えられている。
複合体IV全体では
4シトクロムC(Fe2+) + 4H+ + O2→ 4シトクロムC(Fe3+) + 2H2O
従って、酸素に電子を渡すシトクロムa3-CuB二錯体上で起きるべき反応は、
4e- + O2 + 4H+ → 2H2O しかし、シトクロムa3-CuB二錯体中のFeとCuは、
完全還元型Fe(II)-Cu(I)から完全酸化型Fe(IV)-Cu(II)に変化しても、
3個の電子しか渡せない。
もう一個の電子は?
Tyr244が,TyrO・(チロシルラジ
カル)となることにより供給される
と考えられている。
シトクロムcオキシダーゼによるO2の四電子還元
1&2. シトクロムcからシトクロムaとCuAを経た一電
子移動が2回連続し、酸化型二核錯体
[Fe-(III)a3-OH-Cu(II)B]
↓(還元)
[Fe-(II)a3-OH-Cu(I)B]
同時にマトリックスのH+を獲得、H2Oを放出。
Tyr244(Y-OH)はフェノール状態。
3. O2が還元型Fe-(II)a3に配位する。
4. 内部の電子再配置でオキシフェリル錯体
[Fe-(IV)=O2-HO-Cu(II)B]を生じる。
Tyr244は二核錯体に電子とH+を与え
中性ラジカル(Y-O・)になる。
5. Tyr244ラジカルがシトクロムcからの3番目
の一電子供与を受け、同時に2H+を獲得
してフェノール状態に戻り、フェリル状態の
化合物Fを生じてH2Oを放出。
6. 4番目の電子移動とH+の獲得で酸化型二核錯体
[Fe-(III)a3-OH-Cu(II)B]を生じて触媒サイクルが
完了。
複合体IV(シトクロムc酸化酵素)におけるプロトンの動態
4e- + O2 + 4H+ → 2H2O の反応に使われる4個のH+ (スカラープロトン, 化学プロトン)
マトリクスから膜間部に輸送される4個のH+(ベクトリアルプロトン, 汲み出されるプロトン)
↓
1分子のO2還元ごとにマトリックスでは8個の
正電子が失われ、膜電位の形成に寄与する。
8H+ (マトリックス) + O2 +4シトクロムc(Fe2+)
→ 4シトクロムc(Fe3+) + 2H2O + 4H+ (膜間部) 「ATP合成のためのプロトン勾配の形成」
シトクロムc酸化酵素の2個のプロトン輸送チャネル
Kチャネル:膜間部まで達しないので、
スカラープロトン供給用?
D-チャネル:出口チャネルにつながるので、
ベクトリアルプロトン用?
Chang et al., PNAS, (2009)
まとめ
・ NADHからO2への電子伝達で、ATP2.5分子をつくる自由エネルギーが得られる。
マトリックスから膜間部へのH+の汲み出し
・ 複合体I〜IVの流れと、それぞれの役割は?
複合体I : NADHデヒドロゲナーゼやNADH-CoQ
レダクターゼとも呼ばれる。複合体IはNADH
の2つの水素と電子をCoQに渡す(プロトンワイ
ヤ)。 複合体2:コハク酸-補酵素Qオキシドレダクターゼ
。コハク酸からCoQに電子を渡す
複合体III: シトクロムbc1複合体やCoQ-シトクロム
cレダクターゼとも呼ばれる。複合体Ⅲは還元
型CoQからシトクロムcへの電子の受け渡し
をする(Qサイクル)。
複合体IV:シトクロムcオキシダーゼ。シトクロムc
から複合体IVに渡された電子は,電子伝達
系の最終受容体である酸素(O2)に渡され,
水が生じる(O2の電子還元)。
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