第1編 調査概要

第1編 調査概要
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1.調査目的
近年、豪雨の増加やこれに伴う洪水の増加が報告されており、水源地域においては、水
源かん養機能の高い森林を整備することが一層重要な課題となっている。
このため、本事業では、森林の整備・保全等が降水の流域からの流出特性や、水質に及
ぼす影響等について調査を行い、水源かん養機能を高度に発揮するための森林及び治山施
設の整備手法の検討に資することを目的とする。
2.調査内容
本事業は、次の(1)~(2)に示す事項について調査し取りまとめた。また、調査の実施に
当たっては、森林水文等に関する学識経験者からなる検討委員会の意見を求めながら進め
た。
(1) 森林の整備・保全が流出特性に及ぼす影響に係る調査
複層林の造成、浸透能促進施設の設置、林道開設等の森林の総合的な整備により、森林
の有する水土保全機能の強化を図る「水土保全機能強化総合モデル事業」では、効果量を
実証することを目的に昭和 58 年度から継続的な水文・水質観測等が行われてきた。
本調査では、平成 17 年度から 22 年度までの森林理水機能調査(水土保全機能強化総合
モデル事業効果調査)による岐阜県、広島県、福岡県での森林水文観測結果をもとに、森
林の整備・保全が水量等の流出特性に及ぼす影響について分析を行った。
(2) 森林等からの流出物質とダム貯水池水質との関連の調査・検討
ダム上流の森林等からの流出物質が、ダム貯水池へ到達するまでの動態及びダム貯水池
水質との関連について分析し、成果のとりまとめを行った。
以下に、調査項目毎の調査内容を記す。
1) 森林の整備・保全が流出特性に及ぼす影響に係る調査
岐阜県、広島県、福岡県の3流域で観測している森林水文データを用いて、次の手順によ
り本数調整伐※前後の流出特性の変化について分析を行った。
① 平成 21 年度と平成 22 年度の森林水文データ、水質データ等について、平成 20 年度
以前のデータとフォーマットの統一化を図り、調査を実施した。
② 各流域における本数調整伐前後の林況や下層植生の状況の変化について、現地調査
により把握した。
③ ①、②のデータをもとに、岐阜県、広島県、福岡県の本数調整伐の進捗に伴う林況
等の変化と流出特性等との関連について分析を行った。また、この分析結果をもと
に、森林の水源かん養機能を高度に発揮させるための森林整備手法等を検討した。
2) 森林等からの流出物質とダム貯水池水質との関連に係る調査
平成 21 年度の薗原ダム流域に係る調査結果に、
これまで調査を行ってきた湯西川ダム、
下茎ダムの調査結果をあわせて、ダム上流域の土地利用や森林の種類等とダム貯水池水質
との関連について分析し、一般化するための検討を行った。本年度は昭和 57 年度から継続
してきた水源地森林機能研究会の最終年度にあたることから、上記の分析・検討結果を冊
子原稿の形にとりまとめ、本報告書の第2編第2章に掲載した。
本数調整伐:治山事業で行う間伐で、森林全体の健全な成長を図るため、育成単層林及び育成複層林の下木のうち不要な
樹木を伐採するもの.
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3.検討委員会の開催
本調査は高度な技術判断を必要とすることから、森林水文や治山砂防、河川工学、河川
生態系に精通した学識経験者で構成する検討委員会を、
「森林の整備・保全が流出特性に及
ぼす影響に係る調査検討委員会」と「森林等からの流出物質とダム貯水池水質との関連に
係る調査検討委員会」の 2 種類設置し、委員の助言を踏まえ調査を進めるとともに、検討
結果を取りまとめた。委員会は「森林の整備・保全が流出特性に及ぼす影響に係る調査検
討委員会」を 2 回、
「森林等からの流出物質とダム貯水池水質との関連に係る調査検討委員
会」を 1 回開催した。
検討委員会のメンバーを表-1~2 に示す。
表-1 森林の整備・保全が流出特性に及ぼす影響に係る調査検討委員会の委員
太田 猛彦
東京大学名誉教授(委員長)
恩田 裕一
筑波大学大学院生命環境科学研究科教授
佐々木 重行
福岡県森林林業技術センター森林環境課長
鈴木 雅一
東京大学大学院農学生命科学研究科教授
坪山 良夫
(独) 森林総合研究所水土保全研究領域水保全研究室長
服部 重昭
名古屋大学大学院生命農学研究科教授
(注)五十音順、敬称略
表-2 森林等からの流出物質とダム貯水池水質との関連に係る調査検討委員会
(水源地森林機能研究会)の委員
池田 駿介
株式会社 建設技術研究所 池田研究室 室長
池渕 周一
京都大学名誉教授(委員長)
太田 猛彦
東京大学名誉教授
鈴木 雅一
東京大学大学院農学生命科学研究科教授
竹門 康弘
京都大学防災研究所水資源環境研究センター 准教授
中村 太士
北海道大学大学院農学研究院環境資源学専攻 教授
道奥 康治
神戸大学工学部市民工学科 教授
虫明 功臣
財団法人 河川環境管理財団 総括研究顧問
森川 靖
早稲田大学人間科学学術院 教授
(注)五十音順、敬称略
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