宇宙の相対性と量子性 逆座標変換によって宇宙論は甦った ダークエネルギー・ダークマターの正体 宇宙論は,一般相対性理論,特殊相対性理論および量子理論が, 数学的物理的に矛盾なく統一されていなければならない. 船 越 克 巳 [email protected] まえがき 仮説 1 観 測 によって認 識 される宇 宙 は現 象 の世 界 であって,宇 宙 の実 相 ではない. 宇 宙 の実 相 は理 論 によってのみ認 識 される世 界 である. 仮説 2 相 対 論 は積 分 界 ,量 子 論 は微 分 界 として,数 学 的 物 理 的 に統 一 できる. 前提条件 理 論 系 はアインシュタイン・ドジッター宇 宙 モデルとする. (平 坦 なフリードマン宇 宙 モデル,宇 宙 定 数 Λ = 0 ) 記号 真 空 中 の光 速 度 c 万有引力定数 G プランク定 数 h = 2π h ボルツマン定 数 k スケールファクター a (ただし, a 0 = 1 ) ローレンツファクター γ ハッブル定 数 H 0 = 70 km/s/Mpc と仮 定 する (2.2685 × 10 −18 s −1 1 年 1 yr ≡ 3.1557 × 10 7 s 1 光年 1 ly ≡ 9.4605 × 1015 m ) 1. 宇宙の曲率半径と年齢 1.1 物質期 (理 論 系 の場 合 ) 宇宙曲率半径 3 c c ⎛ ⎞ R (τ m ) = a (τ m ) = ⎜H0 τ m ⎟ 2 H0 ⎝ H0 ⎠ 宇宙年齢 τm = 2/3 . (1.1) 1 2 3/2 a . H0 3 (1.2) R (τ m ) を τ m で微 分 して a について整 理 すると dR (τ m ) c ⎛ 3⎞ v (τ m ) = = ⎜H0 ⎟ dτ m H0 ⎝ 2⎠ 膨張速度 ∴ 2 /3 2 −1 / 3 τm = c a −1 / 2 . 3 (1.3) dτ m = c −1a 1 / 2 dR (τ m ) . (1.4) (観 測 系 の場 合 ) 式 (1.3)の v (τ m ) は無 限 小 領 域 の記 述 式 で,局 所 慣 性 系 として特 殊 相 対 性 理 論 の法 則 が成 立 する. そこで, v (τ m ) について逆 座 標 変 換 を行 い観 測 系 の膨 張 速 度 v (t m ) を求 める. ( 参考: 「アインシュタイン 膨張速度 相対性理論」 内山龍雄 ( −1 v (t m ) = v (τ m ) γ m = c a −1 / 2 1 + a −1 ここで [ γ m = 1 − β (t m )2 ] ) 訳・解説 −1 / 2 −1 / 2 dR (t m ) , dt m [ ( = 1 + β (τ m )2 β (τ m ) = β (t m ) γ m = ] 1/ 2 = 1 + a −1 tm dt m = tm = 宇宙曲率半径 R (t m ) = , (1.6) a −1 1/ 2 c ∫0 c (1 + a ) H 0 da (t m ) . [ 1/ 2 v (τ m ) = a −1 / 2 . c ] 1 2 (1 + a )3 / 2 − 1 . H0 3 宇宙年齢 ) (1.5) v (t m ) = (1 + a )−1 / 2 , c dt m = c −1 (1 + a )1 / 2 dR (t m ) . ∫0 訳 者 補 注 23 ) = c (1 + a )−1 / 2 = −1 β (t m ) = β (τ m ) γ m = ∴ 岩 波 文 庫 1988 2 /3 ⎤ 3 c c ⎡⎛ ⎞ a (t m ) = − 1⎥ . ⎢⎜ H 0 t m + 1⎟ 2 H0 H 0 ⎢⎣⎝ ⎠ ⎥⎦ (1.7) (1.8) (1.9) 以 上 より,現 在 の 宇 宙 曲 率 半 径 は式 (1.1)と式 (1.9)より R 0 (τ m ) ≡ R 0 (t m ) = 140 億 光 年 , 宇 宙 年 齢 は,理 論 系 式 (1.2)より τ 0 = 93 億 歳 ,観 測 系 式 (1.8)より t 0 = 170 億 歳 が得 られる. なお,式 (1.4)と式 (1.6)より, dR (τ m ), dR (t m ), dτ m , dt m には,つぎの関 係 が認 められる. sin θ m c dτ m a 1 / 2 dR (τ m ) ⎛ a ⎞ = = =⎜ ⎟ 1 2 / c dt m (1 + a ) dR (t m ) ⎝ 1 + a ⎠ 1/ 2 −1 = γm , (1.10) (c dt m )2 = (dR )2 + (c dτ m )2 . (1.11) 1.2 放 射 期 (理 論 系 の場 合 ) 宇宙曲率半径 R (τ r ) = 宇宙年齢 τr = c c (H 0 2 τ r )1 / 2 . a (τ r ) = H0 H0 (1.12) 1 1 2 a . H0 2 (1.13) R (τ r ) を τ r で微 分 して a について整 理 すると v (τ r ) = 膨張速度 ∴ dR (τ r ) c (H 0 2)1 / 2 1 τ r −1 / 2 = c a −1 . = dτ r H0 2 (1.14) dτ r = c −1 a dR (τ r ) . (1.15) (観 測 系 の場 合 ) 式 (1.14) の v (τ r ) は物 質 期 と同 様 ,局 所 慣 性 系 として特 殊 相 対 性 理 論 の法 則 が成 立 する. したがって, v (τ r ) について逆 座 標 変 換 を行 い,観 測 系 の膨 張 速 度 v (t r ) を求 める. 膨張速度 ( v (t r ) = v (τ r ) γ r−1 = c a −1 1 + a − 2 ここで, [ γ r = 1 − β (t r )2 ] ) = c 1+a2 ( ) = 1 + β (τ r )2 [ ] 1/ 2 −1 / 2 −1 / 2 β (t r ) = β (τ r ) γ r−1 = −1 / 2 = dR (t r ) , dt r = 1 + a −2 ( ) v (t r ) = 1+ a2 c ) ( 1/ 2 (1.16) , −1 / 2 , β (τ r ) = β (t r ) γ r = ∴ ( dt r = c −1 1 + a 2 ) 1/ 2 v (τ r ) = a −1 . c dR (t r ) . tr a ∫0 dt r = ∫0 c ここで,放 射 期 は a ≪ 1 であるから, tr −1 (1.17) (1 + a ) (1 + a ) 2 1/ 2 a c da (t r ) . H0 2 1/2 (1.18) ≈ 1 とみなしうる.したがって 1 ∫0 dt r ≈ ∫0 H 0 da (t r ) . (1.19) 1 a. H0 宇宙年齢 tr ≈ 宇宙曲率半径 R (t r ) = (1.20) c a (t r ) ≈ c t r . H0 (1.21) 式 (1.15)と式 (1.17)より,物 質 期 と同 様 ,つぎの関 係 が認 められる. ⎛ a2 c dτ r a dR (τ r ) sin θ r = = =⎜ 2 ⎜ c dt r 2 1/ 2 1+a dR (t r ) ⎝ 1 + a ( ) (c dt r )2 = (dR )2 + (c dτ r )2 . ⎞ ⎟ ⎟ ⎠ 1/ 2 = γ r−1 , (1.22) (1.23) 2. 宇宙の膨張速度と密度パラメータ 減 速 パラメータは,次 の式 でも求 めることができる. q=− d log v . d log a 2.1 物 質 期 (理 論 系 の場 合 ) 式 (1.3) v (τ m ) = c a −1 / 2 の場 合 → 1 log v (τ m ) = − log a + log c . 2 d log v (τ m ) 1 = . d log a 2 減 速 パラメータ q (τ m ) = − 密 度 パラメータ Ω(τ m ) = 2 q (τ m ) = 1 . (2.1) (2.2) (2.3) (観 測 系 の場 合 ) 式 (1.5) v (t m ) = c (1 + a )−1/ 2 の場 合 → log v (t m ) = − 減 速 パラメータ 密 度 パラメータ 計 算 の結 果 を図 2 に示 す. q (t m ) = − 1 log (1 + a ) + log c . 2 d log v (t m ) d log v (t m ) d log (1 + a ) 1 a . =− = d log a d log (1 + a ) d log a 2 1+a Ω(t m ) = 2 q (t m ) = a −2 = γm . 1+a (2.4) (2.5) (2.6) log a に対 して,理 論 系 の膨 張 速 度 log v (τ m ) は超 光 速 から右 下 がりの直 線 ,現 在 は光 速 c で log a = ∞ で停 止 する.この勾 配 の符 号 を変 えたのが減 速 パラメータで q (τ m ) = 1/ 2 と一 定 である.したがって,密 度 パ ラメータは Ω(τ m ) = 1 である. 一 方 ,観 測 系 では膨 張 速 度 log v (t m ) は光 速 以 下 で始 まり,徐 々に減 速 ,現 在 は光 速 の 1 2 倍 で, log a = ∞ で停 止 する.減 速 パラメータ q (t m ) は a の関 数 として無 限 小 から現 在 は理 論 系 の値 の 1/ 2 倍 で, a = ∞ で最 終 的 に理 論 系 の値 に近 づく.したがって,現 在 観 測 されうるのは q (t m ) ≤ 1/ 4 ,すなわち, Ω(t m ) ≤ 1/ 2 で, a を 0~1 まで加 重 平 均 すると Ω (t m ) = 0.3069 となる.要 するに,実 相 が平 坦 なフリードマン 宇 宙 (Λ = 0 ) であっても,宇 宙 は恰 も開 いているかのような現 象 が観 測 されうると考 えられる. 2.2 放 射 期 (理 論 系 の場 合 ) 式 (1.14) v (τ r ) = c a −1 の場 合 → log v (τ r ) = − log a + log c . (2.7) d log v (τ r ) = 1. d log a 減 速 パラメータ q (τ r ) = − 密 度 パラメータ Ω(τ r ) = 2 q (τ r ) = 2 . (2.8) (2.9) (観 測 系 の場 合 ) ( 式 (1.16) v (t r ) = c 1 + a 2 減 速 パラメータ 密 度 パラメータ ) −1 / 2 q (t r ) = − ( ) 1 の場 合 → log v (t r ) = − log 1 + a 2 + log c . 2 ( ) d log v (t r ) d log v (t r ) d log 1 + a 2 1 a . =− = 2 d log a 2 1 + a2 d log a d log 1 + a ( Ω(t r ) = 2 q (t r ) = a 1+a2 ) . (2.10) (2.11) (2.12) 3. 宇宙の質量とエネルギー 3.1 物 質 期 (理 論 系 の場 合 ) 宇 宙 体 積 V (τ m ) と臨 界 密 度 ρ cr (τ m ) から理 論 系 の宇 宙 質 量 M (τ m ) を求 める. 3 ⎞ 4 ⎛ c a ⎟⎟ , 宇 宙 体 積 V (τ m ) = π ⎜⎜ 3 ⎝ H0 ⎠ 3 H2 ρ cr (τ m ) = , 8π G 臨界密度 ⎞ 4 ⎛ c M (τ m ) = V (τ m ) ρ cr (τ m ) Ω(τ m ) = π ⎜⎜ a ⎟⎟ 3 ⎝ H0 ⎠ 3 H 2 = H 02 a3 から, 3 H2 c3 = = 8.8980 × 10 52 kg , 8 π G 2 G H0 (3.1) となり, M (τ m ) は τ m と関 係 なく一 定 となる. (観 測 系 の場 合 ) 観 測 系 の宇 宙 質 量 M (t m ) は, Ω(t m ) c3 a a M (t m ) = M (τ m ) = = 8.8980 × 1052 kg Ω(τ m ) 2 G H 0 1 + a 1+a (3.2) となり, M (t m ) はローレンツファクター γ m の2乗 に反 比 例 して宇 宙 の膨 張 とともに増 加 し,無 限 遠 において M (τ m ) に近 づく. 3.2 放 射 期 ( うち極 創 成 期 ) 放 射 期 のうち,極 創 成 期 の宇 宙 はまだ十 分 成 長 していないので,物 質 を構 成 する素 粒 子 よりも宇 宙 は小 さく,パウリの排 他 原 理 により,物 質 を構 成 する素 粒 子 は存 在 し得 ない.したがって,すべてが放 射 エネル ギー状 態 と考 えられる.放 射 エネルギーを E とすれば, (理 論 系 の場 合 ) ⎞ 4 ⎛ c M (τ r ) = V (τ m ) ρ cr (τ m ) Ω(τ r ) = π ⎜⎜ a ⎟⎟ 3 ⎝ H0 ⎠ E (τ r ) = M (τ r ) c 2 ( 3 3 H2 c3 2= = 1.7796 × 10 53 kg , G H0 8π G )( c5 = = 1.7796 × 1053 kg 2.9979 × 10 8 m s G H0 ) 2 (3.3) = 1.5994 × 10 70 J . (3.4) (観 測 系 の場 合 ) Ω(t r ) c3 a a M (t r ) = M (τ r ) = = 8.8980 × 10 52 kg , 2 Ω(τ r ) 2 G H 0 1 + a 1+ a2 E (t r ) = M (t r ) c 2 c5 a a = = 7.9972 × 10 69 J. 2 2 G H0 1+ a 1+ a2 (3.5) (3.6) 4. 宇宙の量子性 ( ) ビ ッ グ バ ン 当 時 は R B ≡ dR B と 考 え ら れ , プ ラ ン ク 長 さ L P = 1.6162 × 10 −35 m を 与 え る と , 式 (1.1),(1.9),(1.12),(1.21)の何 れも,ビッグバン時 のスケールファクターは a B = 1.2230 × 10 −61 となる.したが って, R B は dR B が歯 止 めになり,宇 宙 は R B = 0 から始 まったのではなく, R B = L P から始 まり,特 異 点 (無 限 大 のエネルギー密 度 ,無 限 大 の温 度 など)はなく,量 子 力 学 的 要 請 により宇 宙 は誕 生 したと考 えられる. この a B を代 入 することにより, 式 (3.4)より E (τ B ) = c5 = 1.5994 × 10 70 J , G H0 (4.1) 式 (3.6)より E (t B ) = aB c5 = 9.7805 × 10 8 J , 2 2 G H 0 1 + aB (4.2) 式 (1.13)より τB = 1 1 2 a B = 3.2968 × 10 −105 s , H0 2 (4.3) 式 (1.15)より dτ B = c −1a B dR (τ B ) = 6.5935 × 10 −105 s , (4.4) 式 (1.20)より tB = 式 (1.17)より dt B = c −1 1 + a B2 1 a B = 5.3912 × 10 − 44 s , H0 ( ) 1/ 2 (4.5) dR (t B ) = 5.3912 × 10 − 44 s , (4.6) が得 られ, 次 式 のような一 連 のハイゼンベルクの不 確 定 性 関 係 が成 立 する.となれば,微 小 量 dR , dτ , dt などは,量 子 論 的 (離 散 的 )に ΔR , Δτ , Δt などと考 えるべきである. ΔE ⋅ Δt ≥ ハイゼンベルクの不 確 定 性 関 係 理論系 E (τ B ) ⋅ dτ B ″ 観測系 ″ E (τ B ) ⋅ τ B E (t B ) ⋅ t B E (t B ) ⋅ dt B ( = (1.5994 × 10 = (9.7805 × 10 = (9.7805 × 10 1 h = 5.2729 × 10 − 35 J ⋅ s . 2 )( ) J ) ⋅ (6.5935 × 10 s ) = 1.0546 × 10 J )⋅ (5.3912 × 10 s ) = 5.2729 × 10 J ) ⋅ (5.3912 × 10 s ) = 5.2729 × 10 (4.7) = 1.5994 × 1070 J ⋅ 3.2968 × 10 −105 s = 5.2729 × 10 −35 J ⋅ s . 70 8 8 −105 −44 −44 (4.8) −34 J⋅s. (4.9) −35 J⋅s. (4.10) J⋅s . (4.11) −35 理 論 系 では, E (τ B ) は M (τ m ) c 2 の2倍 量 , dτ B は τ B の 2 倍 量 である.観 測 系 では,式 (4.2)により E (t B ) は E P の 1 2 倍 量 である.式 (4.5),(4.6)により t B と dt B は t P となる.式 (4.7)と(4.8),(4.10),(4.11)の各 右 辺 は 完 全 に一 致 している.式 (4.9)の右 辺 は式 (4.7)の 2 倍 量 である.宇 宙 が膨 張 を始 め,レプトン・バリオンなど フェルミ粒 子 が登 場 し始 めるころになると,マクロな宇 宙 の量 子 性 は失 われ,量 子 性 はミクロな宇 宙 ,すなわ ち,放 射 素 粒 子 のみの世 界 になる. 因 み に , 現 在 の 量 子 時 空 に お い て は , 式 (1.4) よ り dτ 0 = t P , 式 (1.6) よ り dt 0 = 2 t P で あ る . (t P = 5.3912 × 10 −44 s : プランク時間 ; E P = 1.9561 × 109 J : プランクエネルギー ) 5.宇宙の実相(理論系)と現象(観測系) ロバートソン・ウォーカー計 量 ⎡ dχ 2 2 2 2 2 2 2⎤ ds 2 = −c 2 dτ m sin + a (τ m )2 ⋅ ⎢ + + χ d θ χ θ d φ ⎥, 2 ⎢⎣1 − Kχ ⎥⎦ (5.1) から共 動 座 標 χ を求 める. ds = 0, dθ = 0, dφ = 0, K = 0 とおいて整 理 すると, c dτ m = a (τ m ) dχ . (5.2) 式 (5.2)に,式 (1.4)すなわち, dτ m = c −1 a 1 / 2 dR (τ m ) を代 入 すると, a 1 / 2 dR (τ m ) = a (τ m ) dχ , (5.3) c a −1/ 2 da . H0 (5.4) ∴ dχ = a e に光 を放 射 した天 体 C e の共 動 座 標 χ e は, χe ∫0 ∴ dχ = χe = c H0 a 0 −1 / 2 ∫a a ここで a e = da , e ( 1 1 + ze ( z e は赤 方 偏 移 ). ) c 2 1 − a 1e / 2 . H0 (5.5) (5.6) 放 射 時 空 における放 射 天 体 C e と地 球 E e の固 有 距 離 de は, de = a e ⋅ χ e = a e ⋅ ( ) c 2 1 − a 1e / 2 . H0 (5.7) 現 在 時 空 における放 射 天 体 C0 と地 球 E 0 の固 有 距 離 d 0 は, d0 = a 0 ⋅ χe = a 0 ⋅ ( ) c 2 1 − a 1e / 2 . H0 (5.8) 未 来 時 空 における放 射 天 体 C f と地 球 E f の固 有 距 離 d f は, df = ( ) c 1 1 ⋅ χe = ⋅ 2 1 − a 1e / 2 . ae ae H 0 ( χ e , A と d H の作図・数値計算においては H0 = 1, c = 1, 4π = 1 とする. ) 式 (5.6), (5.7), (5.8), (5.9)の夫 々の関 係 を図 3 に示 す. (5.9) 現 在 の宇 宙 の実 相 は太 い円 d 0 (理 論 系 ),私 たちが観 測 しているのは de (観 測 系 )の宇 宙 で現 象 の世 界 である. したがって,私 たちには現 在 の宇 宙 の実 相 を観 測 する手 段 はない. 曲 線 de および d f を中 心 軸 の周 りに回 転 して得 られる曲 面 は観 測 点 地 球 E 0 近 傍 において過 去 及 び未 来 の光 円 錐 を形 成 する.そして, de の回 転 曲 面 の表 面 積 Ae 式 (5.11)は観 測 系 の宇 宙 における可 視 領 域 である. Ae は正 に測 地 線 の幾 何 学 的 表 現 である. 2 現 在 の宇 宙 の表 面 積 理 論 系 〃 観測系 ⎛ c ⎞ A0 = 4 π ⎜⎜ a 0 ⎟⎟ = 1 ⎝ H0 ⎠ Ae = 2 π ∫ 1 0 ⎛ c ⎜⎜ ⎝ H0 de (5.10) 2 2 ⎞ ⎞ ⎛d ⎟⎟ + ⎜ de ⎟ da ⎠ ⎝ da ⎠ 2 ⎛ c ⎞ ⎟⎟ × 0.1683 = 0.1683 = 4 π ⎜⎜ ⎝ H0 ⎠ (5.11) また, d f は無 限 の未 来 時 空 において,共 動 座 標 χ = 2R に収 束 する. 2R 以 遠 については永 遠 に観 測 され ることはない. d H は a 0 = 1における粒 子 的 地 平 線 d Hm = 3cτ = c 2a 3 / 2 である. H0 なお,適 当 な3天 体 を選 んで諸 量 を計 算 した結 果 を次 表 に示 す. 3C273 0957+561A,B SDSS J 1148+5251 該当 de d0 df de d0 df de d0 df z 0.158 0.000 ---- 1.413 0.000 ---- 6.42 0.000 ---- a 0.864 1.000 1.158 0.414 1.000 2.413 0.135 1.000 7.42 5.5 χe 0.1414 0.1414 0.1414 0.7125 0.7125 0.7125 1.2658 1.2658 1.2658 5.6 R (億光年 ) 120.6 139.7 161.8 57.9 139.7 337.1 18.8 139.7 1036.5 1.1, 1.9 d (億光年 ) 17.1 19.8 22.9 41.2 99.5 240.2 23.8 176.8 1312.0 5.7~5.9 τ (億歳 ) 74.7 93.1 116.1 24.8 93.1 349.1 4.6 93.1 1882.2 1.2 t (億歳 ) 143.8 170.3 202.1 63.5 170.3 494.1 19.4 170.3 2182.1 1.8 式 No. β (τ m ) 1.076 1.000 0.929 1.553 1.000 0.644 2.724 1.000 0.367 1.5 β (t m ) 0.733 0.707 0.681 0.841 0.707 0.541 0.939 0.707 0.345 1.5 Ω(τ m ) 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 2.3 Ω(t m ) 0.463 0.500 0.537 0.293 0.500 0.707 0.119 0.500 0.881 2.6 ◎ たとえば,クェーサー SDSS J 1148+5251(z=6.42) の場 合 , 理 論 系 では宇 宙 年 齢 4.6 億 歳 当 時 ,観 測 系 では宇 宙 年 齢 19.4 億 歳 ,宇 宙 曲 率 半 径 18.8 億 光 年 ,密 度 パラメータ Ω(t m ) = 0.119 ,地 球 より固 有 距 離 23.8 億 光 年 離 れたクェーサーから放 射 された光 を,150.9 億 年 後 (=170.3-19.4)の現 在 の地 球 E 0 で観 測 していることになる.そして,このクェーサーが現 在 も健 在 であ れ ば 固 有 距 離 176.8 億 光 年 の 彼 方 に あ り , こ の 時 空 か ら の 光 の 放 射 が 地 球 で 観 測 さ れ る の は , 遥 か 2011.8 億 年 後 (=2182.1-170.3)と推 定 される.ただし,これよりかなり早 い時 期 に地 球 は消 滅 していると考 えられる. あとがき 1. 私 たちが観 測 している宇 宙 は,肉 眼 であれ,望 遠 鏡 その他 の機 器 であれ,遠 方 を観 測 するほど過 去 の世 界 であり,宇 宙 の実 相 とはかけ離 れている.それにも拘 らず,私 たちはそれを十 分 承 知 していなが ら,宇 宙 の実 相 を観 測 の中 に求 めようとしている.一 般 相 対 性 理 論 に基 づく理 論 的 宇 宙 は,観 測 によ って直 接 証 明 することは不 可 能 な世 界 である.天 体 よりも若 い宇 宙 の年 齢 ,ミッシング・マスなど,理 論 的 にありえない現 象 も観 測 されうるし,逆 に超 光 速 で膨 張 する宇 宙 など実 相 の世 界 ではありうるかも知 れない.その要 となるのが特 殊 相 対 性 理 論 である. 2. 積 分 界 (R , τ , t など ) を相 対 論 的 な世 界 ,微 分 界 (dR , dτ , dt など ) を量 子 論 的 な世 界 として統 一 で きる. dR (τ m ) ≡dR (t m ) ≡dR (τ r ) ≡dR (t r ) ≡ΔR = L P (プランク長 さ) と考 えると, dR は時 間 の関 数 では なく過 去 ・現 在 ・未 来 に亘 って量 子 力 学 的 期 待 値 としての普 遍 的 な物 理 量 ,すなわち,定 数 である.式 (4.8)と式 (4.9)の不 一 致 は δ ρ / ρ = 2 につながり,「ゆらぎ」の根 本 原 因 である. 3. 図 1 から, dR は実 数 , dτ は虚 数 , dt は複 素 数 であることが窺 える.さらに敷 衍 し,共 役 複 素 数 の世 界 を考 えれば,反 時 間 ,反 エネルギー,反 宇 宙 の世 界 が対 生 成 した可 能 性 も否 定 できない. 余 話 〔 0 1 〕 ア イ ン シ ュ タ イ ン の 特 殊 相 対 性 理 論 の 論 文 に は ,運 動 系 と 静 止 系 と 定 義 さ れ て い る が , 私 の 論 文 「 宇 宙 の 相 対 性 と 量 子 性 」( 以 下 私 論 と い う ) で は , 一 般 相 対 性 理 論 に 基 づ く 座 標 系 を 理 論 系 と し ,逆 変 換 し た 観 測 に 基 づ く 座 標 系 を 観 測 系 と し た .な ぜ な ら ,宇 宙 は 膨 張 し て お り ,一 般 相 対 性 理 論 に 基 づ く 宇 宙 は い か な る 手 段 を 用 い て も ,私 た ち に は 絶 対 観 測 す る こ と が で き な い 理 論 系( 実 相 の 世 界 )で あ る .一 方 ま た ,宇 宙 に は 静 止 し て い る も の は 何 も な い ,私 た ち に 見 え る 宇 宙 も ,も の す ご い 速 度 で 膨 張 し て お り ,私 た ちに見える宇宙を静止系というのは相応しくないので,観測系(現象の世界)とした. 〔02〕 私論では一貫して,空間はスケールファクター a を用い,赤方偏移 z は観測には必要 だが,理論計算では複雑になるので最小限にとどめた.ハッブル定数 H0は観測誤差が 大きいので,とりあえず仮定値を用いた. 〔03〕 私 は ア イ ン シ ュ タ イ ン の 相 対 性 理 論 に 興 味 を 持 っ た と き か ら ,特 殊 相 対 性 理 論 と 一 般 相 対 性 理 論 を 関 連 づ け る も の が 全 く な い の を 不 思 議 に 思 っ た .ま た ,一 般 相 対 性 理 論 と 謂 い な が ら ,私 の 知 る 限 り ,絶 対 的 に 宇 宙 年 齢 が 結 論 付 け ら れ て い る の が 納 得 で き な か っ た .浅 学 の 私 で は ,い ろ ん な 文 献 を 調 べ て も 見 つ か ら な か っ た .唯 一 ,岩 波 文 庫「 ア イ ン シ ュ タ イ ン 相 対 性 理 論 」 で . 原 論 文 (Zur Elektrodyn amik bewegter K&o&rper 1905 ) を 翻 訳 さ れ た 内 山 龍 雄 教 授 の 訳 者 補 注 23 に 一 抹 の 僥 倖 を 見 い だ し た . こ れ に よ り , 理 論 系 か ら観測系に逆変換することができた.それは, 大抵の参考書には,ローレンツ変換は x ′ = γ (x − v t ) , ( ) t′ = γ t − v x c 2 . その逆変換は x = γ (x ′ + v t ′) , ( ) t = γ t ′ + vx ′ /c 2 . γ = ただし 1 ⎛v ⎞ 1− ⎜ ⎟ ⎝c ⎠ 2 . とある. 問 題 は 逆 変 換 の 場 合 で あ る .逆 変 換 の 場 合 静 止 系 の 速 度 v は 未 知 で あ り ,運 動 系 の 速 度 v′から求めねばならない場合がある.すなわち γ = 1 ⎛v ⎞ 1− ⎜ ⎟ ⎝c⎠ 2 ⎛v ′ ⎞ = 1+ ⎜ ⎟ ⎝c ⎠ 2 である. ベクトルとマトリックスで表すと ⎛ x′ ⎞ ⎛ γ ⎜ ⎟ ⎜ ⎜ y′ ⎟ ⎜ 0 ⎜ z′ ⎟ = ⎜ 0 ⎜ ⎟ ⎜ ⎜ ic t ′ ⎟ ⎜ − iβγ ⎝ ⎠ ⎝ ⎛ x ⎞ ⎛ ⎜ ⎟ ⎜ ⎜ y ⎟ ⎜ ⎜ z ⎟=⎜ ⎜ ⎟ ⎜ ⎜ ic t ⎟ ⎜ iβγ ⎝ ⎠ ⎝ 0 1 0 0 γ β = ⎛ x ⎞ ⎜ ⎟ ⎜ y ⎟ ⎜ z ⎟ ⇒ ⎜ ⎟ ⎜ ic t ⎟ ⎝ ⎠ ⎞ ⎟ ⎟ ⎟ ⎟ ⎟ ⎠ 0 0 γ 0 − iβγ ≡ −iβ ′ ⎞ ⎟ 0 0 ⎟ ⎟ 1 0 ⎟ ⎟ 0 γ ⎠ 0 0 1 0 0 ≡ iβ ′ 0 ここで, iβγ 0 0 1 0 v , c β′ = v′ , c β = ⎛ x′ ⎞ ⎜ ⎟ ⎜ y′ ⎟ ⎜ z′ ⎟ ⎜ ⎟ ⎜ ic t ′ ⎟ ⎝ ⎠ 1 γ x ′ = γ (x − v t ), y' = y , z' = z , vx ⎞ ⎛ t ′ = γ ⎜t − 2 ⎟ c ⎠ ⎝ x = γ (x ′ + v t ′) ≡ γ x ′ + v ′ t ′, y = y' , z = z' , ⇒ v x′⎞ v′x′ ⎛ t = γ ⎜t ′ + 2 ⎟ ≡ γ t ′ + 2 c ⎠ c ⎝ β′. 静止系でv > 12cならば, 運動系では v ′ > c となり, 超光速となる . * * 物質期を例にとり, 私 論 の 式( 1.5)v (t m ) = c (1 + a ) [ ] ) = [1 + β (τ ) ] γ (t m ) = 1 − β (t m )2 γ (τ m −1/ 2 −1 / 2 2 1/ 2 m ≡ v, 式 (1.3)v (τ m ) = c a −1/ 2 ≡ v ′ [ = 1 − (1 + a )−1 ( = 1 + a −1 ) ] −1 / 2 ( = 1 + a −1 と置き換えれば, ) 1/ 2 1/ 2 と な り ,ロ ー レ ン ツ フ ァ ク タ ー は γ (t m ) ≡ γ (τ m ) と ,全 く 同 一 に な る が ,逆 変 換 前 は v (t m ) は 未 知 で あ り , v (τ m ) か ら 求 め ね ば な ら な い . こ れ に よ り 求 め ら れ た 私 論 1 章 の 観 測 系 の 宇 宙 年 齢 は 170 億 歳 で あ る . 〔04〕 私 論 の 図 1 で は dR , cd τ , cdt は ピ タ ゴ ラ ス の 定 理 を 形 成 す る . ビ ッ グ バ ン 時 θ B ≈ 0o , 現 在 値 は θ 0 = 45 o , さ ら に 宇 宙 の 膨 張 と と も に 拡 大 し , 無 限 の 未 来 に お い て θ ∞ = 90 o に 収束する. 〔05〕 観 測 系 の 膨 張 速 度 は 光 速 度 を 超 え る こ と は な い が ,理 論 系 は 光 速 度 を 超 え る .参 考 の た め , 私 論 , 式 (1.14) v B (τ r ) = c a B −1 か ら ビ ッ グ バ ン 時 の 膨 張 速 度 を 求 め る . a B = 1.2230 × 10 −61 と お く と ( 私 論 4 章 . 宇 宙 の 量 子 性 参 照 ) ( )( v B (τ r ) = 2.9979 × 10 8 m ⋅ s −1 ⋅ 1.2230 × 10 − 61 ) −1 = 2.4512 × 10 69 m ⋅ s −1 と な る .こ れ は 光 速 度 に 対 し て 8.1766 × 10 60 倍 と 恐 る べ き 膨 張 速 度 で あ る .で も ,無 限 大の速度ではない.加速度を求めると v& B (τ r ) = d 2R dτ B2 = −c H 0 a B− 3 = −3.7176 × 10173 m ⋅ s − 2 と な り ,減 速 膨 張 の 開 始 点 で あ る .だ が ,一 方 つ ぎ に 示 す よ う に 宇 宙 唯 一 の 加 速 膨 張 が 量 子 期 に あ る . い ま 別 法 で v B (Q ) を 表 す . dR B = L P ( プ ラ ン ク 長 さ ) と 式 (4.4) dτ B = 6.5935 × 10 −105 s よ り v B (Q ) = dR B 1.6162 × 10 −35 m = = 2.4512 × 10 69 m ⋅ s −1 − 105 dτ B 6.5935 × 10 s と な る . し た が っ て , ビ ッ グ バ ン に よ る 膨 張 加 速 度 v& B (Q ) は v& B (Q ) = d v B (Q ) 2.4512 × 10 69 m ⋅ s −1 = = 3.7176 × 10173 m ⋅ s − 2 − 105 dτ B 6.5935 × 10 s と な る . な ん と ! 量 子 宇 宙 は ビ ッ グ バ ン に よ っ て vB ≈ 0 か ら , 想 像 を 絶 す る 膨 張 加 速 度でもってはじまったのである. ( こ の 加 速 度 を ビ ッ グ バ ン 膨 張 加 速 度 と 名 付 け る .) 曲 率 半 径 が た っ た L P = 1.6162 × 10 −35 m ( プ ラ ン ク 長 さ )の 量 子 宇 宙 に ,式 (4.1)に み ら れ る , こ の 膨 大 な エ ネ ル ギ ー E (τ B ) の 根 源 は ? 宇 宙 と 反 宇 宙 の 対 生 成 の 反 発( 私 論 付 2 滅多に起きない量子同士の衝突による 参 照 )に よ っ て 得 ら れ た と 考 え ら れ る .v B (Q ) は 先 に 示 し た 減 速 開 始 点 v B (τ r ) と 一 致 し て い る .こ の 直 後 ,減 速 膨 張 に 転 ず る .減 速 し た と は い え , 現 在 の 理 論 系 の 膨 張 速 度 は 式 ( 1.3 ) v (τ m ) = c a −1/2 か ら 光 速 度 で あ る . ビ ッ グ バ ン か ら 現 在 ま で の 平 均 速 度 は 光 速 度 の 1.5 倍 に も な る . 〔06〕 私論2章,大抵の参考書には,減速パラメータ q の求め方は q = − a a&& a& 2 であるが,これから,観測系の減速パラメータを求めるには浅学の私には手に負えず, 私論 2 章では以前によく利用した対数微分によった. こ れ に よ る と 物 質 期 の 理 論 系 の 場 合 , 密 度 パ ラ メ ー タ は 式 (2.3) よ り Ω(τ m ) = 1 で あ る が , 観 測 系 の 場 合 は 式 (2.6) よ り Ω(t m ) ≤ 1/2, 加 重 平 均 値 は Ω (t m ) = 0.3069 で あ る . し た が っ て 私 論 で は ,レ プ ト ン・バ リ オ ン と ダ ー ク マ タ ー の 観 測 値 が Ω (t m ) を 満 た し て お れ ばよい. (太陽ニュートリノ問題もこれにて一件落着) Ω(τ m ) − Ω (t m ) = 1 − 0.3069 = 0.6931 が 理 論 系 か ら 観 測 系 に 逆 座 標 変 換 し た こ と に よ っ て 欠 落 し た 密 度 で あ る ,た と え 実 相 の 宇 宙 の Ω が 1 で あ っ て も ,現 象 の 世 界 に 住 む 私 た ち には絶対に観測することができない,いわゆる「ミッシング・マス」である. これがダークエネルギーの正体である. ( ダ ー ク マ タ ー に つ い て は 〔 1 1 〕 参 照 .) と こ ろ で 本 来 ,物 質 期 の 密 度 パ ラ メ ー タ は ,放 射 エ ネ ル ギ ー 密 度 も 考 慮 し な け れ ば な ら な い が ,計 算 が 複 雑 に な り ,そ の わ り に 結 果 に 与 え る 影 響 は 小 さ い の で 省 略 し ,付 1 に譲った. 〔07〕 c3 c 私 論 3 章 ・ 物 質 期 の 理 論 系 ; 式 (3.1) M (τ m ) = を について解 くと 2G H 0 H 0 R0 = 2G M (τ m ) c = = rg (τ m ) = 1.3969 × 1010 ly 2 H0 c すなわち,宇 宙 曲 率 半 径 R 0 はシュバルツシルドの重 力 半 径 rg (τ m ) となる.要 するに物 質 期 の理 論 系 の宇 宙 は壮 大 なブラックホールそのものであることを窺 わせる. M (τ m ) が時 間 によらず一 定 のため, rg (τ m ) も一 定 である.等 密 度 時 の宇 宙 曲 率 半 径 は R m = r = 7.0549 × 10 5 ly であり (私 論 付 1 参 照 ) , R m = r ≪ rg (τ m ) である.現 在 の宇 宙 はやっとブラックホールの表 面 に達 した.さらに膨 張 する宇 宙 の未 来 についてはブラックホールから脱 け出 すことになる.現 在 理 論 系 の宇 宙 は光 速 度 で膨 張 を続 けているが,ブラックホールは光 も脱 け出 せないと謂 われている.もし,脱 け出 せ なければ宇 宙 は膨 張 できない. c3 a c a を について解くと 一 方 ,観 測 系 では,式 (3.2) M (t m ) = 2G H 0 1 + a H 0 1 + a 2G M (t m ) c a = = rg (t m ) H0 1 + a c2 となり,重 力 半 径 は密 度 パラメータ γ (t m ) の 2 乗 に反 比 例 する.したがって,現 在 の宇 宙 曲 率 半 径 は観 測 系 の重 力 半 径 rg (t m ) の 2 倍 あり,すでにブラックホールから脱 け出 し,さらに未 来 に向 かって膨 張 しつつある現 象 を私 たちに見 せていると想 われる. 観 測 系 のことは現 象 の世 界 のできごとであり,さておくとして,理 論 系 は実 相 の世 界 であり,ブラ ックホールのパラドックスか? 否 ! 中 性 子 星 の密 度 以 上 の高 密 度 でなければ,宇 宙 の重 力 崩 壊 はない.しかし,宇 宙 は重 力 崩 壊 するほどの高 密 度 はおろか,中 性 子 星 ほどの高 密 度 にもなら なかった.したがって,宇 宙 そのもののブラックホールは蜃 気 楼 のようなもので実 体 がない. 〔08〕 一 般 相 対 性 理 論 と 量 子 理 論 は な か な か う ま く 両 立 で き な い と い わ れ て き た .だ が ,宇 宙 論 の 場 合 , 曲 率 半 径 R は 式 (1.1),(1.9),(1.12),(1.21) と も に R = c a H0 R = c H0 であるが, a ∫0 da とおくならば, da は 微 小 量 を 表 し , 0 で は な い , し た が っ て , 積 分 記 号 の 下 辺 値 は R = c H0 a ∫dada でなければならない.このように考えると,この積分式は量子性の世界である dR = c da H0 と,相対性の世界である R = c a H0 と の 架 け 橋 で あ る . ビ ッ グ バ ン の 時 に は R B = dR B と な り , 相 対 性 と 量 子 性 は 統 一 さ れ ていた. し た が っ て ,数 式 で 漫 然 と 下 辺 値 を 0 と 置 い て い る の は 疑 問 で あ る .と も か く,物理的には(少なくとも宇宙論では)長さの微小量の極限値を dR = c c da = Δa = ΔR = L P (プランク長さ ) H0 H0 と考えるのが妥当である. 〔09〕 私 論 4 章 ,宇 宙 の 量 子 性 を 考 え る と き ,宇 宙 は プ ラ ン ク 単 位 で 始 ま っ た と さ れ る の は 観 測 系 で あ る .確 か に ,プ ラ ン ク 単 位 の 諸 量 は 観 測 系 の 実 測 デ ー タ を 基 に 理 論 構 築 さ れ た も の で あ り ,当 然 と 云 え ば 当 然 で あ る .こ こ で ,ハ イ ゼ ン ベ ル ク の 不 確 定 性 関 係 が 適 用されているとは思っても見なかった.驚きである. 〔10〕 私 論 5 章 , 図 3 で は , de , d f が こ の よ う に 描 け る と は 思 っ て も 見 な か っ た の で , こ こ で も 驚 き だ っ た .光 が 曲 線 を 描 い て 進 む の が 実 感 で き た し ,光 が 重 力 に よ っ て 曲 げ ら れ な け れ ば 私 た ち は ,銀 河 や 星 た ち ,否 ,宇 宙 の 全 て の 現 象 も 観 測 で き な い .ま た 光 円 錐 も 実 感 で き た . 特 筆 す べ き は , 式 (5.7) の de は 角 度 距 離 , 式 (5.9) の d f は 光 度 距 離 と謂われている.妙な巡り合わせである. 〔11〕 私 論 5 章 ,過 去 圏 の 光 円 錐 の 積 分 値 Ae = 0.1683 が広 大 な宇 宙 A0 = 1 の中 にあって,私 たちが現 実 に観 測 できる可 視 領 域 はこれだけである. したがって, A0-Ae = 1-0.1683 = 0.8317 が 観 測 系 の 不 可 視 領 域 で ある. 不 可 視 領 域 の 物 質 が,いわゆる「ダークマター」である.ダークマターは可 視 領 域 の物 質 となんら変 わりがない同 質 の物 質 である.ただ,観 測 点 地 球 E0 の位 置 からは観 測 できないだけである.もしも私 たちが自 由 に観 測 系 の宇 宙 を駆 け巡 ることができるならば,観 測 系 の宇 宙 の全 てが可 視 領 域 となる.東 京 からは全 地 球 は見 渡 せない.同 じことである. これがダークマターの正 体 である. 〔12〕 私 論 2章 の物 質 期 ・観 測 系 の密 度 パラメータの加 重 平 均 値 Ω (t m ) = 0.3069 に , 可 視 領 域 Ae = 0.1683 , 不 可 視 領 域 A0-Ae = 1-0.1683 = 0.8317 , それぞれ乗 ずると, バ リ オ ン ・ レ プ ト ン の 観 測 値 Ω (t m )B & L =0.0517 と , ダ ー ク マ タ ー の 観 測 値 Ω (t m )DM =0.2552 の , 夫 々 の 理 論 的 Ω (t m ) が 求 め ら れ る . 付1 等密度時と分離時 (宇 宙 の 晴 れ 上 が り ) 式 (1.3) v (τ m ) = c a −1/ 2 と , 式 (1.14) v (τ r ) = c a −1 を 比 較 し た 場 合 , 数 学 的 に は a < 1な ら ば , 膨 張 速 度 は 放 射 期 の 方 が 物 質 期 よ り も 速 い . a = 1な ら ば , 膨 張 速 度 は 放 射 期 と 物 質 期 は 同 じ で あ る . a > 1な ら ば , 膨 張 速 度 は 物 質 期 の 方 が 放 射 期 よ り も 速 い . し か し , 物 理 学 的 に は 放 射 期 は a ≪1 で あ り , 等 密 度 時 と 分 離 時 の 宇 宙 年 齢 は 放 射 期 を 採 ら ね ば ならない. ( 物 質 期 は 放 射 期 の 後 に 続 く の で 採 ら な い ), し た が っ て 等密度時は,放射期の理論系 約 18 歳 , 観 測 系 約 5800 歳 , 観 測 系 分離時は,放射期の理論系 約 70 万 歳 である. 約 1270 万 歳 で あ る . 諸量の計算値は次の通りである. χ eは H 0 = 1; c = 1; 該 当 式 No. 等密度時 分離時 現在時 スケールファクター a 5.0507 × 10 −5 9.0867 × 10 −4 1.0000 × 10 0 赤方偏移 z 19799 1100 0 5.5 共 動 座 標 χe 1.9858 1.9397 0 5.6 曲 率 半 径 R (ly ) 7.0553 × 10 5 1.2693 × 10 7 1.3969 × 1010 1.1 物 質 エ ネ ル ギ ー 密 度 ε m J/m 3 6.4202 × 10 3 1.1025 × 10 0 8.2718 × 10 −10 ( 注 1) 3 6.4202 × 10 3 6.1282 × 10 −2 4.1779 × 10 −14 ( 注 2) 理論系 2.0000 1.0556 1.0000 ( 注 3) 観測系 0.0001 0.0009 0.5000 2.6 , 2.12 5.3973 × 10 4 3.000 × 10 3 2.726 × 10 0 ( 注 4) 理論系 3.3427 × 10 3 2.5508 × 10 5 9.3126 × 10 9 1.2 ( 注 5) 観測系 7.0554 × 10 5 1.2696 × 10 7 1.7027 × 1010 1.8 理論系 1.7817 × 101 5.7670 × 10 3 6.9845 × 10 9 1.13 観測系 7.0554 × 10 5 1.2693 × 10 7 1.3969 × 1010 1.20 理論系 1.4071 × 10 2 3.3174 × 101 1.0000 × 10 0 1.3 観測系 9.9997 × 10 −1 9.9955 × 10 −1 7.0711 × 10 −1 1.5 理論系 1.9799 × 10 4 1.1005 × 10 3 1.0000 × 10 0 1.14 観測系 1.0000 × 10 0 1.0000 × 10 0 7.0711 × 10 −1 1.16 3 H2 2 c , 8π G (注 2 ) 放射エネルギー密度 εr 密度パラメータ (Ω m + Ωr ) 温度 T 宇宙 物質期 年齢 (yr ) 膨張 放射期 物質期 速度 (v / c ) 放射期 ( ) (J/m ) (K ) εm = (注1) 物質エネルギー密度 ( 注 3) 密度パラメータ 理論系 (注4) 分 離 時 温 度 T DEC = 3000K , (注5) 正確に記するならば,宇宙年齢(物質期・理論系)の現在時は Ω= ( 放射エネルギー密度 εr = εm + εr εm 宇宙背景放射現在時 TCMB = 2.726K ) 9.3126 × 10 9 − 2.5508 × 10 5 − 5.7670 × 10 3 = 9.3124 × 10 9 (yr ) . π2 k4 15 h 3 c 3 T4 付2 宇宙と反宇宙の対生成 あとがきで触れた反宇宙の反粒子は,宇宙の反粒子とは趣を異にする. 宇 宙 U (τ ) で の 粒 子 P (τ ) お よ び 反 粒 子 P (τ ) … … な ら び に , 反 宇 宙 U (τ ) で の 反 粒 子 P (τ ) お よ び 粒 子 P (τ ) … … と す れ ば , 宇 宙 U (τ ) で は 粒 子 P (τ ) と 反 粒 子 P (τ ) が 遭 遇 す れ ば 対 消 滅 す る .こ れ は ,反 宇 宙 U (τ ) に お い て も 同 じ で ,反 粒 子 P (τ ) と 粒 子 P (τ ) が 遭 遇 す れ ば 対 消 滅 す る .し か し ,宇 宙 U (τ ) の 粒 子 P (τ ) と 反 宇 宙 U (τ ) の 反 粒 子 P (τ ) は ビ ッ グ バ ン ( τ ≈ 0 ≈ τ ) に よ り 対 生 成 し た が ,対 消 滅 す る こ と は な い .な ぜ な ら ば , 宇 宙 U (τ ) の 時 間 τ に 対 し て , 反 宇 宙 U (τ ) は 反 時 間 τ の た め , P (τ ) と P (τ ) は 対 生 成 後 全 く 遭 遇 す る ことはない. 宇宙創造のシナリオ 1. ビ ッ グ バ ン 時 ,宇 宙 は ど ん な 物 質 素 粒 子 よ り も 小 さ か っ た .フ ェ ル ミ 粒 子 と 呼 ば れ る パ ウ リ の 排 他 原 理 に 制 約 さ れ る 物 質 素 粒 子 は 存 在 で き な い .し た が っ て 、ゲ ー ジ ボ ソ ン と メ ソ ン と呼ばれるパウリの排他原理に制約されないボーズ粒子のみが生成された. 2. 中 間 子 と 光 子 は 弱 い 相 互 作 用 Z に よ っ て [u, d, e, ν e ]と そ れ ら の 反 粒 子 に 変 換 さ れ た . 役目を終え寿命の尽きた弱い相互作用 Z は強い相互作用 S と重力相互作用gに変換される. 3 . さ ら に , [u, d, e, ν e ]と そ れ ら の 反 粒 子 は 重 力 相 互 作 用 g に よ っ て 質 量 を 与 え ら れ 膨 張 し た 宇宙に物質として,反宇宙に反物質として登場する. 付3‐1.初期宇宙の相対論的挙動 ビッグバン時 Big Bang time スケールファクター a B = 1.2230 × 10 −61 宇宙曲率半径 L B = 1.6162 × 10 −35 m 宇宙年令 τ B = 3.2968 × 10 −105 s 宇宙膨張速度 v B = 2.4513 × 10 69 m ⋅ s -1 宇宙の温度 T B = 2.2289 × 10 61 K 宇宙のエネルギー E (τ B ) = 1.5994 × 10 70 J dτ B = 6.5935 × 10 −105 s 物質部分 Matter part 7.9972 × 10 69 J 放射部分 Radiant part 7.9972 × 10 69 J 宇宙の密度パラメータ Ω(τ B ) = 2.0000 Equi-Density time 等密度時 スケールファクター a eq = 5.0507 × 10 −5 宇宙曲率半径 L eq = 6.6745 × 10 21 m 宇宙年令 τ eq = 5.6226 × 10 8 s 宇宙膨張速度 v eq = 5.9357 × 1012 m ⋅ s -1 宇宙の温度 Teq = 5.3973 × 10 4 K 宇宙のエネルギー E (τ eq ) = 1.5994 × 10 70 J 物質部分 Matter part 7.9972 × 10 69 J 放射部分 Radiant part 7.9972 × 10 69 J 宇宙の密度パラメータ Ω(τ eq ) = 2.0000 Decoupling time 分離時 スケールファクター a dec = 9.0867 × 10 −4 宇宙曲率半径 L dec = 1.2008 × 10 23 m 宇宙年令 τ dec = 1.8199 × 1011 s 宇宙膨張速度 v dec = 3.2992 × 1011 m ⋅ s -1 宇宙の温度 Tdec = 3.000 × 10 3 K 宇宙のエネルギー E (τ dec ) = 8.4417 × 10 69 J 物質部分 Matter part 7.9972 × 10 69 J 放射部分 Radiant part 4.4447 × 10 68 J 宇宙の密度パラメータ Ω(τ dec ) = 1.0556 付3‐2. 初期宇宙の相対論的挙動 LOG Big Bang time log a B = −60.9125 log L B = −34.7915 m log τ B = −104.4819 s log dτ B = −104.1809 s log v B = 69.3894 m ⋅ s -1 log TB = 61.3480 K E (τ eq ) = 1.5994 × 10 70 J Matter part 7.9972 × 10 69 J Radiant part 7.9972 × 10 69 J Ω(τ B ) = 2.0000 Equi-Density time log a eq = −4.2966 * 56.6159 log L eq = 21.8244 m * 56.6159 log τ eq = 8.7499 s * 113.2318=56.6159×2 log v eq = 12.7735 m ⋅ s -1 log T eq = 4.7322 K * - 56.6159 * - 56.6159 E (τ eq ) = 1.5994 × 10 70 J Matter part 7.9972 × 10 69 J Radiant part 7.9972 × 10 69 J Ω(τ eq ) = 2.0000 Decoupling time log a dec = −3.0416 * 57.8709 log L dec = 23.0795 m * 57.8709 log τ dec = 11.2601 s * 115.7420=57.8709×2 log v dec = 11.5184 m ⋅ s -1 * - 57.8709 log Tdec = 3.4771 K E (τ dec ) = 8.4417 × 10 69 J Matter part 7.9972 × 10 69 J Radiant part 4.4447 × 10 68 J Ω(τ dec ) = 1.0556 * differences between Big Bang time * - 57.8709
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