議事概要

平成 26 年度「協働ロードマップ策定事業(現代アートを活かした地域の魅力づくり)」
(第 2 回)議事概要
参加者:別添参加者名簿のとおり
会場 :愛知芸術文化センター内会議室
1 第1回の振返り
〇協働ロードマップ策定事業について
○前提
・言葉の定義(この会議の中で出た意見)
・愛知県の戦略
・ロードマップの普及啓発の方法について
○課題
①勘違い
・現代アートへの期待 MAX
・目的の相互依存
②人材がいない
・専門性のあるコーディネーターの存在
③現場がない
・支援機能(窓口)の必要性
・育成の場(機会)の提供
④(継続する)仕組みがない
・資金の循環モデルの構築
⑤評価指標がない
・それぞれの目的地の共有
○事例
①三河アート&アーカイブプロジェクト
②横浜 BankART
2 情報提供(国際芸術祭推進室)
市民の意識の変化(トリエンナーレ 2013 アンケート結果の報告)
3 自己紹介(今回が初回となる者)
・愛知県文化芸術課
風岡美紀
文化芸術課ではトリエンナーレの中間年に地域展開事業を実施しており、市町村と
一緒に事業を実施しているが、NPO との連携について新たな仕組みづくりができるか
考えたい。
・愛知県文化芸術課国際芸術祭推進室
拝戸雅彦
トリエンナーレ 2010、2013 にキュレーターとして関わった。現場を作る立場として
現在も関わっており、2016 を組み立てていく中でもみなさんの意見を聞きたい。
・豊橋市文化課
種井英之
トリエンナーレ 2013 に市町村研修生として 1 年間関わった。今後、市として事業を
していくなかで勉強していきたい。
・岡崎市美術博物館
千葉真智子
一昨年に地域展開事業を、トリエンナーレ 2013 では並行企画事業を実施した。街の
なかでの展開の経験はないので、みなさんの意見を聞いてみたい。
4
課題の深堀り(自由意見)
○それぞれが思い描く「地域」の対象範囲は?
・県として考えるのは「県全域」。どこかの地域が飛びぬけるより、県全体、県民個々
の文化度が上がるのが望ましい。
・県全域といっても課題や資源も異なるため、市町村レベルの取り組みが育まれ、最
終的に全体が上がればよい。
○お金の流れは?
・行政的に見ると、福祉や防災に比べ文化に回るお金が少ない。直近の社会課題にお
金がつくのは仕方ないこと。
・福祉で見ると、障がい者アート展などもあるがあくまで副次的な要素である。いろ
いろな社会課題解決のエンジン、手段としての現代アートであっても良い。
(例:国
土交通省の予算を活用。
「道の駅」や「公園」でデザイン(アート)が活かされる場
面もある)
○行政組織では?
・岡崎市のリバーフロント事業では、土木系や河川系、観光系の部署は呼ばれるが文
化部は呼ばれない。民間でも繋がっていないし、行政セクションでも横断的でない。
・行政では人の異動もあり、中長期のビジョンを立てて街を作れる人がいないのでノ
ウハウが蓄積されない。
・県単位でも各自治体でも、現代アート活かしてどういった都市(まち)を目指して
いくのかというちゃんとした戦略がないため、国や民間側との連携もあいまいにな
ってしまっている。
○既存の相談窓口は?
・アーティストがいるかどうかの相談は美術館の学芸員として受けることもある。
・美術館の人間がまちづくりやまちなかのプロジェクトに関わることはない。どこでど
んな相談ができるのか、公表されている窓口がないため、現状は、個人的な繋がりで
相談するしかない。
○まちなかでの展開は?
・アートのまちなかへの展開は、長者町の例をとってみても、NPOの人たちとの相
乗効果で 2001 年頃から始まってきている。
・愛知県でも離島振興のひとつとして、佐久島などで現代アートを活かした取り組み
をやっている。
・オカザエモンの成功例?もある。もともとはアートであったが、現在はまちづくり
のために市が雇用している。活動を継続するには行政の予算を使うしかない面もあ
り、その部分だけで多忙化してしまうということもあり、委託以外の資金調達のチ
ャンネルができていない
○事業費をどのように捻出するか?
・行政以外から流れてくるお金以外では、企業協賛を受けることにより事業そのもの
や地域との関わりもできるのではないか。
・「豊橋オーケストラキャンプ」は企業協賛を受けてやっている。
・
「とよはしまちなかスロータウン映画祭」は行政のお金を貰わず、商工会系などの企
業協賛が多い。エリアが凝縮されているのでネットワークで回りやすい。愛知は地
域企業も多いので可能性はあるが、企業にとってのメリットはどんなものがあるの
かをハッキリさせる必要がある。
・企業や商工会が主催側に回ることもある
・トリエンナーレの企業協賛でも数的には集まるが簡単に受けられるものではない。
瀬戸内や妻有などはベネッセの福武氏や北川フラム氏が個人資産も拠出しており、
行政の負担も少ない。
・妻有はアートフロントという会社がやっているので、日常のベースとなるしかけも
企業の出資や協賛から出ている場合もある。
・アートフロントは、芸術祭だけでなく、アートを核にしたまちづくりや教育、展示
会や出版なども行っている。
・資産家が活動資金を援助するというのも循環のひとつの形となる。
・地域における文化の担い手の資源は、昔から地域の大旦那(パトロン)が面倒を見
ていた面もあり、現在では商工会議所がベースとなり同じような形で協賛もやって
いる。
・企業やパトロンは、税制優遇を受けられることもあり、自治体に対し目的が指定さ
れない寄附はよくしているので、自治体でも「文化振興基金」を立ち上げ、寄付者
とのコネクション(関係性)を作っておいて、文化、現代アートなど目的を示した
寄附を受けられるようにしていくのも選択肢としてある。
・横浜 BankART などは、歴史的建造物なので開館前に雑誌や映画の撮影などに貸した
り、展示スペースを卒業制作展などで貸出したりして、年間予算の半分は民間で収
入を得ていた。
・イベントを続けていくことと日常で関わっていくことはベクトルが違うもの。日常
をどう作っていくかを考え、だからこそイベントも盛り上がるというようにしなけ
ればならない。
・普段から現代アートに関心がある街という状態にしておいて、トリエンナーレを迎
えるという形が望ましい。
○ビジネスモデルとしての成功例は?
・コーディネート側の成功例としては横浜の BankART。スクールの受講料、カフェ、
本屋、部屋のレンタルなどで収入を得ているが、横浜という地域ならではだと思う。
・協力するパートナーとしては、ギャラリーやインテリアショップ等が考えられる。
・ある作家はペンションを持っていて、資産家に貸し出し、自身や友人の作品を置き、
作品販売をするなど、アーティスト自身がビジネスとして考えてやっている例もあ
る。
・アーティストもビジネスとして生活していける人は少ない。先生などもやっている
人も多く、サイドビジネスとなっている例が多い。
・海外でも生活できるアーティストは一握りだが、ドイツでは卒業後、国から生活を
サポートしてもらえる制度もあるし、家賃も安い。大学で非常勤などする人も多い。
・アーティストが住める環境を地域が安く提供するなどし、アーティストが自身の作
品発表の場として考えるのではなく、その視点を街に還元できないかという環境づ
くりが大切。
・受け入れ側(地域)でできることとして、不動産(家賃、アトリエ、倉庫)費用の
軽減がある。東京では無理だが愛知には住める場所、作品を置いておく場所はある
ので可能性はある。稼げるというより軽減できれば、そこに住んで作品を作ろうと
いう気になり、まちへの還元やつながりも自然生まれてくるのではないか。
・作家が年齢を経て転職していくのではなく、アーティストとして食べて行けるため
の方法を地域と関わりながらできないか考えている。
・アーティスト自身がやっているビジネスモデルとしての成功例が少ないのは、アー
ティストの成功例は特殊すぎてコピーできるものではないから。
○地域とアーティストとの窓口は?
・アーティストを呼びたい、バックアップしたいと思っても、窓口がないからどのよ
うにアピールや周知をすれば良いのかわからない。
・愛知県にはアーティストやその活動を支援したい人が登録しているような場所がな
い。
・東京のどこかの区でも表現者とそれを支えたい人が登録できるサイトや、横浜の創
造都市センターがアーティストを紹介するサイトや、企業がアーティストと仕事を
したい人が相談する窓口(アーツコミッション)がある。
・トリエンナーレなどで、せっかくアーティストを誘致しているので、そのネットワ
ークを活かす上でも、登録制度としてアーティストバンクが立ち上げられるはず。
こうしたものができることも、インセンティブになる。
・ポータルサイト的なものができれば、アーティストにとっても学生にとっても、登
録しておくことで、社会とつながったり、仕事につながる可能性が生まれてくる。
・京都市でも市の委託で、HAPS(東山アーティスツ・プレスメント・サービス)
というアーティストに向けての相談窓口を開設している(3年前)。
・東山地区の空き家問題もあり、アーティスト・大家双方への借家貸家などの相談窓
口としてサービス業などをやっている。京都市文化課と文化庁から予算が出ている。
・著名なアーティストを初めに数人呼んだことにより若い人が移り住んだり、海外か
らキュレーターを呼んでスタジオを回ったりして展覧会を開催させるなど空き家紹
介だけでなく、現代アートを核にした活用事業を仕掛けている。
・愛知県でも空き家対策などが問題で、美浜などは 30%を超える空き家などがあるの
で、そういうところで結びつけられれば、よい街づくりにつなげられるのではない
か。
・商業向けの空き家サイトだけでなく、アーティスト向けのものがあると良い。
・焼物の里など、若い人に寛容な街というイメージで人が集まってきている。登録し
ておけるような場があるとそういうイメージが定着していくのではないか。
・行政でそういうものを作るのか民間で作るのかの問題はあるが、住居だけでなく、
現代アートに絡めたまちづくりの先進事例やアーティスト情報などいろいろな情報
提供などができる場があればよい。アートラボにそういう機能があったのではない
か。
・大学も地元の市町村などからは問合せがあり、いろいろと地域に関わっているし、
教員が関わっている地域で繋がっている例もある。
・アートラボのような拠点となる場所が各地域にあれば、その周りに人も集まるし街
が変わる。自治体、JC、商工会議所、学生なども関われば地域との繋がりもでき、
街に活気も出てくるのではないか。
・登録制度や紹介制度(コーディネーション)があれば、アーティストが作品を出す
だけでなく、行政のいろいろなプロジェクトなどの場でアーティストが活用され、
その能力を発揮できるようになるとよい。
・横浜 BankART などでは、アーティストがどうやって社会に出ていくかを考えていた、
かつてアーティストだった人たちが代表(プロデューサー)となって、いろいろな
プロジェクトを動かしている。
○現代アートとまちをつなぐコーディネーターの必要性は?
・公か民かの違いもある。公の学芸員は多忙であり、学芸員の業務にコーディネート
業務を位置付けないと組織として受けるのは難しい。
・行政のなかに、コーディネートできるポジションがあり、美術館の学芸員以外にコ
ーディネーション能力の高い人材がいるのが理想である。現状は、人材がいないと
いよりは、活用する場がない。
・昨年できたアーツ前橋では周辺地域の活性化も美術館の目的のひとつとなっていて、
専任の学芸員が 6∼7 名いるが、そのうちの1∼2 人はまちに出る担当で、空き家情
報を詳しく知っていたり、そこで展覧会を開催したり、現代アートを活かしたまち
づくりを美術館の業務として行っている。
・金沢 21 世紀美術館にも地域コーディネーターがいる。
・新しく開館する美術館はコンセプトも新しく、純粋な美術館ではなくて街の中の美
術館というコンセプトをもっている。
・トリエンナーレ 2013 で菊池さんという女性が、エデュケーターではなく「コミュニ
ティーデザイナー」という肩書で活動した。コミュニティー(地域)をデザインす
る立場であった。美術館の活動をコミュニティーにどういう風に位置づけるかとい
う活動をアメリカでやってきた。現在では、森美術館で美術館と六本木を繋ぐ活動
をしている。
・かなり前だが、愛知芸術文化センターが出来たときにも文化情報センターにパブリ
ックアートの学芸員がいて相談的な業務もしていた。
・これからの時代、美術館にまちなかの展開の機能も加えられていくだろうが、こう
した機能が市の文化課の中にあるよりは、美術館やまちなかにアーティストと地域
の間をコーディネートできる人材の配置が理想である。美術館の中だけではなく外
(人目にふれるところ)に向けて、どういう風に普及啓発活動を展開するかという
ことも求められていく。
・今年の豊川の地域展開事業でも、美術館だけでなく地元との連携もお願いしている
し、うまく協力してやれているので、行政の意識改革もできていくことを期待した
い。
・トリエンナーレが開催された地域には、その後の展開として、美術館などの行政セ
クションの役割の中に、地域に出て助言等ができる人がいるというような形で市町
村に浸透していけばよい。そのために美術館の新しい機能として、
「コミュニティー
デザイナー」的な立場の人がいるようになればよい。
・市町村にノウハウを植え付けていくというのは、県がトリエンナーレをやる意義の
ひとつでもある。
・トリエンナーレでまちなかでの展開はあるが、まだ美術館はその役割は担っていな
いのでこれからはもっと必要となる。既存の学芸員のポストではなく、PR業務や
外とどう繋げるかができる「コミュニティーデザイナー」という新しい専門職とし
ての役割が必要となる。
・豊橋のプラットの中でも市文化振興財団のポストに、富山の芸術劇場のプロデュー
サーを呼んだ。いろいろな事業と連携してプラットを使いながら小学校へワークシ
ョップに行ったり外でも活動している。
5
今後の予定
最終回(5回目)について協議。
4回でこの議論を終えて、公開セッションのようなものをやってはどうか。
次回(3回目)は 12 月 15 日(月)午後 1 時 30 分から愛知芸術文化センターで開催。
※訂正
次回は、午後 2:00∼に変更