第一次公開授業
1年
道徳の時間
「かぼちゃのつる」(1時間扱い)
授業者
岩
本
愛
≪主題について≫ わがままな行い 低学年 1-(1)基本的な生活習慣,節度ある生活態度
健康や安全に気を付け,物や金銭を大切にし,身の回りを整え,わがままをしないで,規則正しい生活をする。
子供が小学校の時期に身に付けた基本的な生活習慣は,生涯にわたってあらゆる行為の基盤となり,気力と活
力のあふれた生活をする上で欠くことのできないものとなる。このような生活態度を育成するためには,日常の
様々な場面における具体的な指導を積み重ね,継続的に進めることが大切である。また,自己の確立にとって,
自分の生活を見直すという客観的な視点において内省することは不可欠な要素である。したがって,進んで自分
の生活を見直し,思慮深く考えながら自らを節制していくことが大切である。
特に,1年生においては,特に健康や安全に気を付けること,身の回りを整えることなどの具体的な指導を進
めたい。それとともに,わがままをしないで規則正しい生活をすることが自分にとって大切なことであり,その
ような生活が気持ちのよいことであると気付き,基本的な生活習慣が確実に身に付くようにしていきたい。
本時では,他人の忠告を聞かずに勝手につるを伸ばしていくわがままなかぼちゃが,トラックに切られて泣い
てしまう場面を中心に課題解決的に授業を展開する。それにより,節度ある生活態度を養い,日常生活での道徳
的実践力の育成へとつなげたい。その際,単に「つるを伸ばさない」という萎縮した結論にするのではなく,自他
が共に幸せになることができる解決策を考え,かぼちゃが他人の忠告を聞いて自分の畑でのびのびとつるを伸ば
すことの大切さを理解できるようにしたい。
≪資料分析≫「かぼちゃのつる」
(
「小学校道徳1みんななかよく」東京書籍)
わがままな行い 低学年1-(1)節度ある生活態度
場面
主人公の言動・心情
基本発問
児童の反応・価値
つ る を ぐ ん ・かぼちゃのつるは,ぐんぐんの ○ つるをぐんぐん ・楽しいなあ。
ぐ ん 伸 ば し びていきました。
(気持ちいい・
のばしたとき,かぼ ・もっと遠くまで伸びるぞ。
ている場面
楽しい)
ちゃはどんな気持 ・気持ちがいいなあ。
ちだったでしょう。
は ち , ち ょ ・そんなことかまうもんか。
○ はち,ちょう,す ・ちょっとぐらいいいだろう。
う,すいか, ・ほっといてくれ。ぼくは,そっ
いか,いぬに注意さ ・どうしてもそっちにいきたい。
いぬに注意
ちへのびたいんだ。
(わがまま) れたとき,かぼちゃ ・僕の畑は少ししか空いていないん
を さ れ る 場 ・少しぐらいいいじゃないか。け
はどんな気持ちだ
だもの。
面
ちけちするな。
ったでしょう。
・うるさいなあ。
・またいでとおればいいじゃな
・どけどけ,じゃまだ。
いか。
(自分勝手)
ト ラ ッ ク に ・いたいよう。ああん,ああん。 ○ トラックにつる ・いたいよう。ひどいじゃないか。
つ る が 切 ら (反省・後悔・謝罪)
を切られたかぼち ・トラックのせいだ。
れる場面
ゃはどんなことを ・こんなことならみんなの言うこと
考えたでしょう。
を聞いていればよかった。
・ぼくが悪かったよ。ごめんね。
・もうわがまましないよ。
≪アクティブラーニングの3要素≫
【自主的・主体的な学び】
【協同的な学び】
【課題解決型の学び】
① 発問の工夫【展開期:直接型】 ① グループ学習の設定
○ 資料の提示方法の工夫
子供たちが主題について自分事
子供たちが多様な価値に触れる
感動資料や模範資料は,結論部分
として考えることができるように, ことができるように,ペアや3・4 が模範解答となるのを防ぐため,分
「もしあなたが○○(登場人物)だ 人のグループ内で交流をした後,全 割せずに全文を提示する。
ったら,どうする?」という発問を 体で交流する場を設ける。
葛藤資料や批判資料は,次の展開
する。これにより,登場人物と自分 ② 全体での練り合い
を予想しながら議論し多様な価値
を重ね合わせ,即座に資料に入り込
かかわっている人全員が満足す に触れることができるため,道徳的
み,自主的に考えていくことができ るような Win-Win 型の解決方法に 問題場面だけを提示するか,または
る。
ついて,その理由やその後の展開を 分割して提示する。
② 協同的な学び
【展開期:間接型】 明確にし,学級全体で話し合いなが
本資料は批判資料なので,分割し
教師は,日常から一人一人の考え ら練り合うよう促す。これにより, て提示し,その後自分ならどうする
を認め,温かい対話や応答を心がけ その後の日常生活の中での道徳的 かを課題として授業を展開してい
ることにより,子供たちが発言しや 実践力が高まっていく。
く。
すい親和的な雰囲気作りに努める。
≪評価の観点≫
評1
資料の登場人物の言動についての話し合いを通じて,自分の道徳的な見方,考え方,感じ方をひろげ,
よりよい生き方について考えようとしている。
[よりよく生きる]
評2
資料中の登場人物の思いを受け止め,それに対する自分の思いや考えを素直に表し,友達と交流しな
がら,自分の考えをより豊かなものにしていこうとする。
[豊かなかかわり]
評3
わがままをしないで規則正しい生活をすることの大切さに気付き,それを基にしてこれからの自分の
行為について考えようとしている。
[道徳的価値の自覚]
≪道徳におけるルーブリック評価≫
道徳におけるルーブリック評価と主題とのかかわり
【レベル0】 本能的に苦痛を避け,快楽を求める
⇔ このままつるを伸ばす。気持ちいいから。
【レベル1】 他律的に罰を避け,報酬を求める
⇔ つるを伸ばすのをやめる。友達に注意されたから。
【レベル2】 自律的に目先の苦痛を避け,目先の利益を求める
⇔ つるを伸ばすのをやめる。またトラックに踏まれて痛い思いをするのが嫌だから。
【レベル3a】 身近な人の欲求や権利を尊重する
⇔ つるを伸ばすのをやめる。友達に嫌な思いをさせてしまうから。
参考資料:
「問題解決型の道徳授業」柳沼良太著,明治図書,2006 年
≪自主的・主体的な学びを支える動機づけのための支援≫
直接支援
開始期
展開期
〔発問を工夫〕
② 自分事として主題をとらえることが
できるように「もし,自分だったらどう
するか」という発問をする。また,主発
問を考えることができる補助発問を用
意する。
まとめ期
間接支援
〔非日常と関連付ける〕
① 子供が没入しやすいように,非日常の読み物資
料を選定する。また,資料の提示の仕方を紙芝居
形式で分割して提示する等の工夫をする。
〔協同的な学び〕
③ 子供が所属感を高めることができるよう,受容的
態度や共感的理解により子供と教師の温かい関係
を構築していく。また,学級の親和的な雰囲気の中
で様々な発言を認められることを大切にする。
〔日常と関連付ける〕
④ 「私たちの道徳」を活用したり,写真を掲示した
りして,自分の生活の具体的な場面において主題と
のかかわりについて考えることを働きかける。
〔活動への価値づけ〕
⑤ 相互評価(振り返り)の場を設定し,自分の考
えが変わったと思う友達の意見を発表するよう促
す。
《本時に関わる動機づけのための支援》
【展開期:直接型(発問を工夫)
】
② 自分事として主題をとらえることができる発問を工夫する。
「もし,自分だったらどうするか?」という発
問をして,資料中の道徳的問題について自分事として考えられるようにする。そうすることで,資料に深く
入り込み,主体的に問題を解決しようとする意欲が高まる。
【展開期:間接型(協同的な学びの展開)
】
③ 教師の受容的態度や共感的理解によって,学級の親和的な雰囲気作りを行う。子供と教師の温かな関係性
のなかで安心して様々な解決策を出し練り合うことができる。そうすることで集団への所属感が高まり,自
主的・主体的に発言しようとする。
【まとめ期:間接型(活動への価値づけ)
】
⑤ 相互評価の場を設定し,
「自分の考えが変わった」
「心に残ったすてきだ」と思う友達の意見を発表するよ
う促す。そうすることで,自分とは異なる考え方に触れること自体に強い価値を感じたり,他人から評価さ
れることで自己有用感を感じたりすることができ,次の学びへの意欲が高まる。
≪本時案≫
【 本時のねらい 】周りの注意を聞き入れ,わがままをしないで生活しようとする態度を養う。
学習活動(○)と子供の姿
教師の支援(☆)と評価(◇)
読み物資料「かぼちゃのつる」
(東京書籍「みんななかよく」
)
○ 資料の前段
(かぼちゃのつるが子犬に注意されたとこ ☆ 子供たちが進んで主題について考えることが
ろまで)の読み聞かせを聞き,かぼちゃの行動について
できるよう,非日常の世界に浸る場を設定する。
考える。
そのために,道徳的課題の前で分割して提示す
る。
[開始期・間(非日常と関連付ける)
]
☆ もし,自分がかぼちゃだったらつるを伸ばしますか。それはなぜですか。
◇ 登場人物の行動を通して,自主的に自分の道徳
伸ばさない
伸ばす
的な見方,考え方,感じ方をひろげようとしてい
・ 叱られるから。
(L1)
・ のびのびと
る。
評1
・ 注意されたから(L1)
伸ばすのは楽
・ 子犬が怖いから(L1)
☆ 資料に深く入り込み,課題を自分事として考
しいから。
・ 悪いことはいけないとお
(L0)
えることができるようにする。そのために,
「も
母さんに言われたから(L2)
・ 注意されて
し自分がかぼちゃだったらどのような行動をと
・ 他人の畑だから(L2)
も怖くないか
るか」やその理由を問う。
[展開期・直(発問の
ら。
(L0)
工夫)
]
○ 資料の後段
(かぼちゃのつるがトラックにひかれて泣 ◇ 話し合い活動を通して,自分の思いや感じ方
くところ)の読み聞かせを聞き,かぼちゃの行動につい
を交流しながら,自分の価値判断をより豊かに
て考える。
しようとする。
評2
☆ かぼちゃは,つるをどうすればよかったと思いますか。それはなぜですか。
(かぼちゃもみんなもいい気持ちになる方法はどれでしょう。
)
☆ 子供たちが学級集団への所属感をもち,安心
して発言することができるよう,一人一人の考
えを受け止め,学級全体が親和的な雰囲気をつ
くる。そのために,教師は受容的態度で共感的に
理解する。展開期・間(協同的な学び)〕
☆ 構造的な板書を工夫する。そのために,つるが
伸びるかぼちゃを掲示したり,子供達の考えを場
自分の畑で伸ばす(win-win)
。
面展開に沿って板書したりする。
・ 自分も自由に伸ばせるし,みんなの迷惑にもなら
☆ 道徳的判断力を身に付けることができるよう,
なくて,気持ちいいから(L3)
。
様々な考え方が出た後,
「かぼちゃもみんなもい
・ はちやチョウや他のかぼちゃや子犬に注意され
た後,自分でよく考えたから(L3)
。
い気持ちになる方法はどれか」という発問をす
る。ペアやグループで話し合う場を設定したり,
発問をより理解したりできるような言葉がけを
○ 自分の生活を振り返り,
他人の注意を聞き入れてわが
したりする。
まませずに行動できたときの経験について考える。
☆ 今までに誰かの注意をきいて,よく考えて行動できたことはありますか(行為)
。
それは,どんな理由で(判断)どんな気持ちになりましたか(心情)
。
伸ばしてもよい
(win-lose)
・ 自由に伸ば
すのが楽しい
から(L0)
。
伸ばさなければよい
(lose-win)
・ わがままはよくないと,お
母さんが言っていたから(L1)
・ 注意されたから(L2)
。
・ 友達と遊んでい ・ 生活科の「学校探検」のとき,
るとき,
わがままを
グループの友達と一緒に探すこ
言わずに遊んだ。
み
とができたよ。一人で先に行こ
んなと仲良く遊び
うとしたら注意されて,その通
たいから。
そうした
りだと思ったから。みんなで探
ら,楽しかったよ。
すことができてうれしかった。
◇ これまでの自分の態度や言動について自主的・
主体的に考えようとしている。
評3
☆ これまでの自分のあり方について日常の場面
を想像しながら考えるよう促す。そのために,場
合によって写真を活用する。
[展開期・間(日常
生活と関連付ける)
]
○ 学習の振り返りをする。
☆ 今日の学習で,
「すてきだな」
「なるほどな」と思ったお友達の考えはありましたか。
それはどうしてですか?
・ ○○ちゃんの考えを聞いて,みんなが気持ちよ
く生活するためには,自分でよく考えて行動する
ことが大切だと思いました。
☆ 自己有用感が高まり道徳的実践への意欲付け
となるように,相互評価を取り入れる。そのため
に,友達の考えについて影響された言葉や印象
に残った言葉を発表するよう促す。
[まとめ期・
間(活動への価値づけ)
]