2014/12/24 松本・長野・飯田支店 【問い合わせ先】松本支店 住所:松本市中央 2-1-27 TEL:0263-33-2180 URL:http://www.tdb.co.jp/ 特別企画: 2015 年の景気見通しに対する長野県内企業の意識調査 「回復」を見込む企業が前年から大幅に減少 「原油・素材価格」 「為替」を懸念する企業が半数超える はじめに 昨年来、アベノミクスによる景気回復が伝えられながら、そのプラス効果を十分享受できてい ない地方経済。回復が力強さを欠いたことは、消費税率が引き上げられた4月以降、国内の景況 感が伸び悩んだことにも示されている。特に夏場以降の企業マインドの落ち込みは顕著で、TDB 景 気動向調査における長野県の景気 DI は 11 月まで4ヵ月連続で悪化し「42.8」まで後退。また、 実質 GDP 成長率は4-6月に続き7-9月もマイナス成長となり、景気の低迷がマインド面だけで ないことが改めて示されている。 今月行われた総選挙では与党が圧勝。来年 10 月に予定されていた消費税率引き上げは延期され る見通しとなる一方、これまで地方で不満の声が小さくなかったアベノミクスは、国民の信を得 た形で今後も継続されることとなった。 帝国データバンクでは、2014 年の景気動向及び 2015 年の景気見通しに対する企業の見解につい て調査を実施した。本調査は、TDB 景気動向調査 2014 年 11 月調査とともに行っている。調査期間 は 11 月 14 日~30 日。調査対象は全国2万 3475 社、長野県 472 社で、有効回答企業数は全国1万 516 社(回答率 44.8%) 、長野県 219 社(同 46.4%)。 調査結果(要旨) ■2014 年が「回復」局面とする企業は 11.9%にとどまる 2014 年が「回復」局面だったとする県内企業は 11.9%と1割強にとどまった。「踊り場」 局面が 48.4%と半数近くに達し、「悪化」局面は 26.9%だった。「回復」は前回調査の 29.1%から 17.2 ポイント減少している。 ■2015 年の見通しは「回復」14.2%、 「悪化」26.5%、「踊り場」37.9% 2015 年の景気見通しでは、多い順に「踊り場」37.9%、「悪化」26.5%、 「回復」14.2% など。 「回復」は前回調査の 25.8%から 11.6 ポイント減少した。「踊り場」は前回から 8.8 ポイント、「悪化」は 4.4 ポイントそれぞれ上昇している。 ■2015 年の懸念材料、半数以上の企業が「原油・素材価格」 「為替」をあげる 2015 年の景気に悪影響を及ぼす懸念材料としては(複数回答) 、半数を超える企業が「原 油・素材価格(上昇)」(57.1%)、「為替(円安)」(53.0%)をあげた。また、景気回復の ために必要な政策としては、「個人消費拡大策」(51.6%)が最も多く、「所得の増加」 (42.5%) 、 「法人向け減税」 (35.6%)などと続いている。 ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 1 2014/12/24 特別企画:2015 年の景気見通しに対する長野県内企業の意識調査 1.2014 年の景気動向、 「悪化」は前年比 2.6 倍に拡大 2014 年も残すところわずかとなったが、今年の景気動向を各社はどうとらえているのだろうか。 「回復」局面だったと回答した企業は 11.9%(26 社)にとどまり、前回調査(2013 年の景気動向、 2013 年 11 月調査)の 29.1%から 17.2 ポイントと大幅に減少した。一方、 「踊り場」局面は 48.4% (106 社) 、 「悪化」局面は 26.9%(59 社) 、「分からない」は 12.8%(28 社)だった。2013 年の 景気動向との比較では、 「踊り場」は 3.8 ポイント、 「悪化」は 16.6 ポイントの増加。「回復」の 構成比が半分以下に減少しているのに対し、「悪化」は 2.6 倍となるなど、2014 年の景気動向につ いては厳しい見方が広がっていることがわかる。 「回復」局面と回答した企業の構成比を規模別にみると、「大企業」10.0%、「中小企業」12.3%、 「(中小企業のうち)小規模企業」11.1%とそれほど差はないが、「悪化」局面とした企業の構成 比は「大企業」12.5%、 「中小企業」30.2%、 「小規模企業」31.7%となり、 「大企業」と「中小企 業」及び「小規模企業」の間に大きな差が生じている。また、主要業界別では、 「回復」としたの は「建設」17.4%、 「サービス」16.7%、 「製造」14.4%、「卸売」7.5%の順。 「悪化」は「サービス」33.3%、 「製 造」26.0%、 「卸売」24.5%、「建設」 21.7%の順。いずれも、「悪化」が「回 復」を上回ったが、両者の差が最も 大きかったのは「卸売」 (17.0 ポイ ント) 、最も小さかったのは「建設」 (4.3 ポイント)だった。 なお、全国の調査結果は「回復」 局面 7.8%、 「踊り場」局面 48.1%、 「悪化」局面 28.9%、「分からない」 15.1%。 2.2015 年の景気見通し、 「回復」は前年の半分近くまで減少 2015 年の景気見通しについて尋ね たところ、「回復」局面を見込む企業は 14.2%(31 社)となり、前回調査(2014 年の景気見通し、2013 年 11 月調査、 25.8%)の半分近くまで減少した(11.6 ポイント減) 。 「踊り場」局面は 37.9% (83 社)、「悪化」局面は 26.5%(58 社)、 「分からない」は 21.5%(47 社) 。 前年からは「踊り場」が 8.8 ポイント、 「悪化」は 4.4 ポイント増加。2014 年 の景気動向と同じく、2015 年の景気見 ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 2 2014/12/24 特別企画:2015 年の景気見通しに対する長野県内企業の意識調査 通しでも慎重な見方をする企業が少なくない。 規模別にみると、 「回復」を見込むのは「大企業」の 5.0%、 「中小企業」の 16.2%、 「小規模企 業」の 14.3%。一方、「大企業」の 37.5%、 「中小企業」の 24.0%、 「小規模企業」の 20.6%が「悪 化」を見込んでおり、「中小企業」「小規模企業」よりもむしろ「大企業」の方が厳しい見通しを 示している。また、主要業界別で「回復」を見込むのは「卸売」20.8%、「製造」16.3%、「サー ビス」5.6%、 「建設」4.3%の順。 「悪化」は「建設」34.8%、 「卸売」28.3%、 「製造」23.1%、 「サ ービス」22.2%の順。前段の 2014 年の景気動向とは対照的な結果である。 全国の調査結果は、 「回復」局面 13.4%、 「踊り場」局面 35.5%、 「悪化」局面 26.8%、「分から ない」24.3%。 3.懸念材料として「為替」をあげる企業が前年から倍増 2015 年の景気に悪影響を及ぼす懸念材料を、3つまでの複数回答で尋ねてみた。最も多かった のは「原油・素材価格(上昇)」で 57.1%(125 社)、 「為替(円安)」が 53.0%(116 社)で続き、 このふたつが 50%を超えた。以下「消費税制」 (39.3%、86 社) 、「人手不足」 (28.8%、63 社)な ど の 順 。「 為 替 」 は 前 回 調 査 の 25.4%から2倍以上に増加しており、 ■2015年の懸念材料(複数回答、3つまで) 同じ 50%以上でも前年を下回った 「原油・素材価格」とは様相を異に 2014年11月調査 2013年11月調査 構成比(%) 回答数(社) 構成比(%) 回答数(社) 1 原油・素材価格(上昇) 57.1 125 63.4 2 為替(円安) 53.0 116 25.4 3 消費税制 39.3 86 — 4 人手不足 28.8 63 — 5 中国経済 16.0 35 23.0 素材価格」が最も多かったが、主要 6 米国経済 13.2 29 17.4 37 業界別にみると「建設」は「原油・ 7 所得(減少) 11.9 26 9.4 20 8 政局 11.0 24 5.6 12 9 物価上昇(インフレ) 9.6 21 10.3 22 10 雇用(悪化) 5.9 13 2.8 6 している。 規模別では、「大企業」「中小企 業」「小規模企業」いずれも「原油・ 素材価格」 、 「製造」 「卸売」は「為替」 、 「サービス」は「消費税制」が最多。 また、 「建設」は「原油・素材価格」 に次いで「人手不足」を選択した企 業が多く、各業界が置かれている環 135 54 — — 49 注1: 以下、「株価(下落)」(5%、11社)、「法人税制」(4.1%、9社)、「為替(円高)」(3.7%、8社)、 「台風などの天候要因」(3.7%、8社)、「金融市場の混乱」(3.2%、7社)、「税制(消費税制、 法人税制を除く)」(3.2%、7社)、「金利(上昇)」(2.3%、5社)、「欧州経済」(2.3%、5社)、「物 価下落(デフレ)」(1.8%、4社)、「電力供給の制約」(0.9%、2社)、「訪日観光客数の減少」 (0%、0社)、「その他」(0%、0社) 注2: 2014年11月調査の母数は有効回答企業219社。2013年11月調査は213社 境を反映した結果となっている。 4.景気回復に必要な政策、個人消費関連が上位に 今後、景気が回復するために必要な政策としては(複数回答) 、「個人消費拡大策」が 51.6%(113 社)で半数を超えた。以下、 「所得の増加」 (42.5%、93 社) 、「法人向け減税」 (35.6%、78 社) 、 「個人向け減税」 (31.5%、69 社) 、 「規制緩和」 (30.1%、66 社)と続き、上位5項目中3項目を 個人消費関連が占めた。特に「個人消費拡大策」は前回調査から 14.5 ポイントと急増。今年4月 の消費税率引き上げが景気回復傾向に水を差す結果となり、それが未だに尾を引いていると判断 ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 3 2014/12/24 特別企画:2015 年の景気見通しに対する長野県内企業の意識調査 する企業が多いことを物語っ ている。 ■今後の景気回復に必要な政策(複数回答) 2014年11月調査 他方、 「法人向け減税」や「規 2013年11月調査 構成比(%) 回答数(社) 構成比(%) 回答数(社) 1 個人消費拡大策 51.6 113 37.1 2 所得の増加 42.5 93 36.2 77 3 法人向け減税 35.6 78 41.8 89 すい環境整備を求める声も強 4 個人向け減税 31.5 69 30.5 65 かった。 5 規制緩和 30.1 66 23.0 49 制緩和」など、企業の収益力拡 大、さらにはビジネスを行いや 雇用対策 27.9 61 19.7 42 年金問題の解決(将来不安の解消) 27.9 61 23.5 50 8 公共事業費の増額 26.9 59 25.8 55 9 財政再建 25.1 55 23.5 50 10 地方への税源移譲 13.2 29 9.4 20 規模別、主要業界別にみても 6 「個人消費拡大策」と「所得の 増加」が上位に入ったが、業界 別で「サービス」は「個人向け 79 た企業が最も多く、「建設」で 注1: 以下、「物価(デフレ)対策」(12.3%、27社)、「TPP(環太平洋パートナーシップ協定)への参加」 (11.9%、26社)、「原発事故の収束」(11%、24社)、「研究開発の促進税制」(10.5%、23社)、「災害対 策」(10%、22社)、「金融緩和政策」(8.7%、19社)、「震災復興」(8.7%、19社)、「環境関連の優遇策 (補助金など)」(7.3%、16社)、「個人向け手当の創設」(3.7%、8社)、「女性登用」(2.7%、6社)、「道州 制の導入」(2.7%、6社)、「その他」(2.3%、5社) は「公共事業費の増額」が3番 注2:2014年11月調査の母数は有効回答企業219社。2013年11月調査は213社 減税」と「財政再建」を選択し 目に多かった。 まとめ 11 月まで4ヵ月連続で悪化した景気 DI(TDB 景気動向調査、全国・長野県) 。特に地方の中小零 細企業の間では、アベノミクスの効果を疑問視する声もあがっていたが、ある意味でアベノミク スを継続するか否かを国民に問うた今回の総選挙では与党が圧勝。消費税率 10%への引き上げが 先送りされる一方で、選択肢が限られていたとは言え、多くの国民が現政権のこれまでの政策を 追認する形となった。 ただ、毎月の景気動向調査や今回の調査をみると、企業が景気動向や経営環境に厳しい見方を 募らせていることは間違いない。今回の調査でも、2014 年の景気動向、2015 年の景気見通しとも 「悪化」局面と回答した企業が前年を上回っている。長年、我が国の基幹を成す輸出関連産業な どを苦しめた円高から円安にシフトしたにもかかわらず、輸入コストの増加といったマイナス効 果がこれまで以上にクローズアップ。4月以降、消費低迷の長期化も加わって、ここに来て企業 の景況感の落ち込みが顕著となっている。 もともと争点がはっきりしないと指摘され、投票率も低かった今回の総選挙。アベノミクスは 基本的に継続されることになるが、これまで不十分だった大都市圏から地方へ、大企業から中小 零細企業への好循環が確立するような政策を果敢に実行し、減速感を強めた経済を早期に上昇基 調に乗せることが急務である。2017 年4月には必ず消費税率が 10%へ引き上げられる。そのとき に今年3月段階程度の景気状況では再び同じことの繰り返しとなりかねず、2015 年は日本経済の 将来を見通すうえでも極めて重要な年となる。 ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 4 2014/12/24 特別企画:2015 年の景気見通しに対する長野県内企業の意識調査 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