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2015/12/28
千葉支店
千葉市中央区中央 3-10-6
北野京葉ビル 2 階
TEL: 043-227-0345(代表)
URL:http://www.tdb.co.jp/
特別企画:2016 年の景気見通しに対する県内企業の意識調査
2016年の景気、「中国経済」が懸念材料
~ 景気回復に必要な政策、消費関連や法人減税が上位を占める ~
はじめに
2015 年 12 月 8 日に発表された 7-9 月期の実質 GDP 成長率 2 次速報は前期(4~6 月期)比 0.3%増、
年率換算で 1.0%増となり、2 四半期ぶりにプラス成長となった。また、住宅着工戸数や有効求人
倍率も改善が続くなど改善傾向を示す指標がある一方、ここにきて公共投資や個人消費にやや足
踏み傾向がみられ、業種や地域で景況感の格差が表れている。
帝国データバンクは、2015 年の景気動向および 2016 年の景気見通しに対する企業の見解につい
て調査を実施した。本調査は、TDB 景気動向調査 2015 年 11 月調査とともに行った。なお、景気見
通しに対する調査は 2006 年 11 月から毎年実施し、今回で 10 回目。
※ 調査期間は 2015 年 11 月 16 日~30 日、調査対象は全国 2 万 3051 社、県内 559 社で、有効回
答企業数は全国 1 万 620 社(回答率 46.1%)
、県内 241 社(同 43.1%)
。
調査結果(要旨)
1. 2015 年、
「回復」局面だったと判断する企業は 7.9%となり、2014 年の景気動向と比べ 1.7
ポイント減少。他方、
「踊り場」局面とした企業は 53.5%で、2006 年(55.2%、2006 年
11 月調査)以来 9 年ぶりに 5 割を超えた
2. 2016 年の景気見通し、
「回復」を見込む企業は 14.5%で、2015 年見通し(2014 年 11 月調
査)とほぼ同水準となった。
「悪化」見込みは中小企業が大企業より 14.1 ポイント高く、
厳しい見通しを示していることが判明
3. 2016 年景気への懸念材料は「中国経済」
(41.5%、前年比 27.5 ポイント増)が最多。中国
の景気減速による影響を懸念する企業が増えている。逆に、
「原油・素材価格(上昇)
」や
「為替(円安)
」は大幅に減少し、景気悪化の懸念材料はこの 1 年で様変わり
4. 景気回復のために必要な政策、
「所得の増加」
「個人消費拡大策」
「法人向け減税」
「個人向
け減税」
「規制緩和」が上位 5 項目にあげられる。
「出産・子育て支援」や「介護問題の解
決(老人福祉、介護離職など)
」を重要施策と捉える企業も約 2 割に
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特別企画:2016 年の景気見通しに対する千葉県内企業の意識調査
1. 2015 年の景気動向、「踊り場」と考える企業が 9 年ぶりに半数を超える
2015 年の景気動向について
尋ねたところ、
「回復」
局面であ
■景気動向の推移(2006年~2015年)
回復局面
ったと回答した県内企業は
7.9%となり、2014 年の景気動
向(2014 年 11 月調査)に比べ
1.7 ポイント減少した。他方、
2006年
2007年
2008年
「踊り場」局面とした企業は
(2008年11月調査)
53.5%で、2006 年(55.2%、2006
(2009年11月調査)
年 11 月調査)以来 9 年ぶりに 5
(2010年11月調査)
割を超えた。さらに「悪化」局
(2011年11月調査)
面とした企業は 18.3%となり、
2014 年実績から 10.5 ポイント
0.5%6.0%
2009年
2010年
2011年
2012年
(2012年11月調査)
2013年
(2013年11月調査)
減少した。
1.9%
47.0%
4.0%
36.6%
40.2%
22.7%
7.9%
(2015年11月調査)
14.2%
39.7%
40.6%
33.8%
2015年
からは、
「インバウンドの増大に
14.7%
50.2%
33.2%
4.1%
9.6%
(2014年11月調査)
(2013年11月調
8.8%
84.8%
5.5%
2014年
2013年
「回復」局面とみている企業
18.9%
32.5%
42.2%
6.3%
(2007年11月調査)
分からない
9.4% 20.3%
55.2%
15.1%
(2006年11月調査)
悪化局面
踊り場局面
44.9%
15.1%
19.2%
10.2% 22.2%
15.3%
28.8%
46.3%
53.5%
18.3% 20.3%
よる国内消費の拡大により、観
光産業を中心に景気回復局面にある」
(経営コンサルタント)や「建設工事には人手不足で強気の
金額を出しても受け入れてもらえる状況が徐々に出来つつあり、好材料が増えてきている」(建
設)など、訪日観光客の増加やコスト増の価格転嫁が進みつつあることを指摘する意見がみられ
た。しかし、
「踊り場」局面が半数超を占めるなかで、「景気は回復傾向にあるが、ユーザー単位
では良いところと悪いところで二極化しつつある」
(鉄鋼・非鉄・鉱業)といった声も多く、業種
や企業間で景気の回復度合いに格差が広がっている様子がうかがえる。
「悪化」局面とした企業からは、
「プレミアム商品券による消費喚起の恩恵もなく、都心のよう
なインバウンド効果もないので、前年売上・入店客数をクリアできない状況」
(各種商品小売)や
「高価格商材の動きが若干良くなってきているが、低価格商材の値崩れがとどまる気配がない」
(化粧品卸売)などの声があがり、中小企業や地方にはアベノミクスの恩恵が届いていないと考
える企業が多かった。
3 年目を迎えたア
ベノミクスだが、回
■2015年の景気動向
(構成比%、カッコ内社数)
回復局面
復を実感する企業
踊り場局面
悪化局面
分からない
合計
全国
7.5
千葉
7.9
(19) 53.5
(129) 18.3
(44) 20.3
(49) 100.0
(241)
年連続で「悪化」局
大企業
7.7
(3) 64.1
(25) 10.3
(4) 17.9
(7) 100.0
(39)
面を下回った。ただ
中小企業
7.9
(16) 51.5
(104) 19.8
(40) 20.8
(42) 100.0
(202)
10.5
(9) 41.9
(36) 22.1
(19) 25.6
(22) 100.0
(86)
は 1 割弱となり、2
し、2014 年と比べて
「回復」と「悪化」
小規模企業
(798) 54.8 (5,820) 19.9 (2,117) 17.7 (1,885) 100.0 (10,620)
注1:網掛けは千葉県全体以上を表す
注2:全国の母数は有効回答企業1万620社。千葉は241社
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の差は-19.2 から-10.4 へと縮まっており、企業の景況感はやや明るさが表れている。他方、
「踊
り場」局面とする見方は半数を超えており、2015 年の景気は弱含み傾向を示しつつ、横ばい状態
で推移したといえよう。
2. 2016 年の景気見通し、「悪化」を見込む企業は減少、「踊り場」が増加
2016 年の景気は、
「回復」局面
■景気見通しの推移(2007年~2016年)
を迎えると見込む県内企業
回復局面
(14.5%)が 2015 年見通し(2014
2007年
年 11 月調査)とほぼ同水準とな
(2006年11月調査)
った。一方、「悪化」局面になる
(2007年11月調査)
と見込む企業は 2015 年見通しよ
り 5.4 ポイント減少。また、
「踊
2009年
(2008年11月調査)
り場」局面を見込む企業は 2.0 ポ
イント増加した。
(2010年11月調査)
込む企業が 3.2 ポイント上回り、
「悪化」は 4.4 ポイント下回って
いることから、県内企業の方がや
6.3%
2011年
2012年
(2011年11月調査)
2013年
(2012年11月調査)
2014年
(2013年11月調査)
規模別でみると、「悪化」と見
17.5%
27.2%
41.3%
9.0%
28.3%
25.2%
67.7%
32.2%
10.0%
35.6%
11.0%
8.5%
分からない
36.5%
33.5%
17.1%
37.9%
20.9%
31.1%
23.3%
27.4%
25.1%
28.6%
29.3%
27.1%
29.5%
16.4%
27.1%
2015年
2013年
14.4%
34.5%
24.9%
26.2%
2016年
14.5%
36.5%
19.5%
29.5%
(2014年11月調査)
(2013年11月調
や楽観的といえる。
40.6%
2.3%12.9%
2010年
(2009年11月調査)
全国平均と比べ、「回復」を見
13.7%
2008年
悪化局面
踊り場局面
(2015年11月調査)
通す県内企業の割合は「中小企
業」が「大企業」より 14.1 ポイント高く、厳しい見通しを示していることが分かった。
企業からは、
「2017 年の消費税率引き上げに向けて消費は慎重になる」
(男子服小売)といった
個人消費について厳しい見方をする意見や、TPP(環太平洋パートナーシップ)協定では「経済へ
の影響が漁業・農業分野で顕著に表れる」
(医療・福祉・保健衛生)ことを懸念する企業もみられ
た。他方、「回復」を見込む企業からは、「雇用、所得環境が改善し、設備投資が増加する動きが
みられることで景気が回復に向かうと期待」
(金融)や「オリンピック特需もあり 2016 年の景気
見通しは良好」(不動産)、「設備投資では更新需要を消費税率引き上げ前に実行する動きが活発
化し、景気の好循環
■2016年の景気見通し
から個人消費も伸び
(構成比%、カッコ内社数)
回復局面
踊り場局面
悪化局面
分からない
合計
ると予想」(娯楽サ
全国
11.3 (1,199) 39.5 (4,198) 23.9 (2,535) 25.3 (2,688) 100.0 (10,620)
ービス)といった、
千葉
14.5
雇用拡大や設備の更
新需要などを期待す
る声もあがった。
(35) 36.5
(88) 19.5
(19)
(47) 29.5
(71) 100.0
(241)
大企業
15.4
(6) 48.7
7.7
(3) 28.2
(11) 100.0
(39)
中小企業
14.4
(29) 34.2
(69) 21.8
(44) 29.7
(60) 100.0
(202)
小規模企業
15.1
(13) 32.6
(28) 19.8
(17) 32.6
(28) 100.0
(86)
注1:網掛けは千葉県全体以上を表す
注2:全国の母数は有効回答企業1万620社。千葉は241社
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3. 「中国経済」の動向を懸念する企業が急増
2016 年の景気に悪影響を及ぼす懸念材料を尋ねたところ、
「中国経済」が 41.5%で最も高かっ
た(3 つまでの複数回答、以下同)
。
「中国経済」は前回調査(2014 年 11 月)から 27.5 ポイント
増加しており、中国の景気減速による影響を懸念する企業が増えていることが浮き彫りとなった。
逆に、前回 1 位だった「原油・素材価格(上昇)
」は前回調査から 22.6 ポイント減の 22.8%、前
回 2 位だった「為替(円安)
」は同 29.6 ポイント減の 15.4%となっており、景気の懸念材料はこ
の 1 年で大きく様変わりした。また、
「消費税制」は 35.7%で 2 位、
「人手不足」は 27.8%で 3 位
となっており、景気を左右する重要項目として上位にあげられた。
企業からは、
「中国経済の成長鈍化、パリのテロ事件の世界への拡散リスクなど予断を許さない
多くのリスクがある」
(建設)
、
「仕事があっても、人手不足等により受注できない状況が続くこと
は避けられない」
(建設)といった声があり、中国経済や人手不足などをあげる企業が多かったほ
か、テロによる影響を懸念する企業も多かった。また、
「食品に対する消費税の軽減税率で混乱が
大きくなる可能性」
(飲食料品・飼料製造)など、消費税率引き上げにともなう影響を指摘する声
も多くみられた。
■2016年景気の懸念材料(複数回答、3つまで)
(%)
2015年11月調査 2014年11月調査
1
2
3
4
5
7
8
9
10
中国経済
消費税制
人手不足
原油・素材価格(上昇)
為替(円安)
米国経済
株価(下落)
所得(減少)
為替(円高)
雇用(悪化)
↑
↓
↓
↑
↑
↑
41.5
35.7
27.8
22.8
15.4
15.4
13.7
12.0
11.2
9.5
14.0
36.2
28.8
45.4
45.0
12.2
7.0
7.0
5.7
7.0
注1: 以下、「地政学リスク」(8.7%)、「金利(上昇)」(8.3%)、「金融市場の混乱」
(7.5%)、「法人税制」(6.2%)、「欧州経済」(6.2%)、「物価下落(デフレ)」(5.0%)、
「物価上昇(インフレ)」(5.0%)、「TPP協定の実行」(4.6%)、「税制(消費税制、法
人税制を除く)」(3.7%)、「政局」(2.9%)、「訪日観光客数の減少」(0%)、「その
他」(2.9%)
注2:矢印は2014年11月調査より5ポイント以上増加、または減少していることを示す
注3:2015年11月調査の母数は有効回答企業241社。2014年11月調査は229社
4. 景気回復に必要な政策、個人消費関連や法人減税が上位を占める
今後、景気が回復するために必要な政策を尋ねたところ、
「所得の増加」が 41.5%(複数回答、
以下同)で最多となった。前回調査で最多だった「個人消費拡大策」は 38.6%と 5.9 ポイント減
少したが 2 位となり、
「法人向け減税」
「個人向け減税」
「規制緩和」がこれに続いて 3 割を超えた。
実質賃金の伸び悩みが続くなか、今後の景気回復には所得の増加、個人消費の拡大とともに、企
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業の競争力向上として法人税など法人向けの減税策が重要な課題であると捉えていることが明ら
かとなった。
また、政府の成長戦略や新三本の矢に掲げられている女性活躍で重要となる「出産・子育て支
援」
(19.1%)
、
「介護問題の解決(老人福祉、介護離職など)
」
(17.4%)も、今後の景気回復に必
要な政策としてあげられた。また、前回調査で 9 位に入っていた「財政再建」は 7.1 ポイント減
少し 10 位へと後退しており、企業がこれまでより景気に配慮した政策を求めている様子がうかが
える。
企業の声としては、「個人が消費できるよう、将来への不安の払拭が優先されるべき」(不動産
代理)や「国内回帰を促し、製造業の国内生産高を増加させ雇用の充実と所得増加を促進し個人
消費拡大をねらう」
(電気機械製造)
、
「減税や手当では溜め込むだけとなる。使った費用に対する
助成が消費拡大につながる」
(一般貨物自動車運送)といった、消費や国内生産の拡大につながる
政策を必要とする意見が多かった。また、
「消費税率引き上げやマイナンバーなど、小さな会社に
とっては対応が大変で非常に手間がかかる。そのため経費もかかり利益は減るばかり」
(建設)と
いった、制度変更にともなう負担増に対する中小企業への支援を求める意見も聞かれた。
■今後の景気回復に必要な政策(複数回答)
(%)
2015年11月調査 2014年11月調査
1
所得の増加
2
個人消費拡大策
3
法人向け減税
4
個人向け減税
5
規制緩和
6
公共事業費の増額
7 年金問題の解決(将来不安の解消)
8
雇用対策
9
出産・子育て支援
財政再建
10
↓
↓
41.5
38.6
36.1
34.9
30.7
29.9
28.2
26.6
19.1
17.4
17.4
38.9
44.5
34.9
34.9
27.1
27.9
24.9
26.6
24.5
介護問題の解決(老人福祉、介護離職など)
注1: 以下、「地方創生」(12.9%)、「TPP協定の実行」(12.9%)、「金融緩和政策」
(11.2%)、「物価(デフレ)対策」(10.8%)、「震災復興」(8.7%)、「原発事故の収束」
(8.7%)、「災害対策」(8.3%)、「研究開発の促進税制」(8.3%)、「地方への税源移
譲」(8.3%)、「個人向け手当の創設」(7.1%)、「女性登用」(6.6%)、「環境関連の
優遇策(補助金など)」(4.1%)、「道州制の導入」(2.1%)、「その他」(2.1%)
注2:矢印は2014年11月調査より5ポイント以上増加、または減少していることを示す
注3:2015年11月調査の母数は有効回答企業241社。2014年11月調査は229社
まとめ
2015 年の景気は 9 年ぶりに「踊り場」局面と考える企業が半数を超えた。企業間で景気の回復
度合いに格差が拡大しており、アベノミクスの成果が中小企業や地方に届いていないとする不満
も広がっている。
さらに、2016 年の景気を「悪化」局面とみる企業は前回調査より減少したものの、
「踊り場」局
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特別企画:2016 年の景気見通しに対する千葉県内企業の意識調査
面と見込む企業が増加している。企業は、海外経済の減速や慎重な設備投資、個人消費の低迷な
どもあり、2016 年の景気が横ばい状態で推移するという方向感を持っている様子がうかがえる。
とりわけ、懸念材料として「中国経済」をあげる企業が急増している。日本経済に対する中国
経済の影響力が高まっていることを背景に、企業が中国の景気減速による影響を注視している様
子がうかがえる。また、消費税率引き上げの影響が長引いている状況とともに、人件費上昇によ
る収益悪化を懸念している一方、原油・素材価格の上昇や円安に対する懸念は急速に低下してい
る。そのため、企業は今後の景気回復に向けて、個人所得増加策や消費拡大策、法人・個人向け
減税など消費や企業の競争力向上に向けた政策の実施を必要としている。
県内企業の景況感はここに来て足踏み状態にある。政府には、アベノミクスが成果をあげ、日
本経済が自律的な好循環を達成するためにも、経済を第一とした政策を実行する重要性が一段と
高まっている。
【内容に関する問い合わせ先】
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