顕微鏡下作業において力覚フィードバックを行う 液圧駆動型微細作業用マニピュレータ 富山大 学 目 的 工学部 4年 水戸 康之 大学院理工学研究部(工学) 准教授 笹木 亮 実験装置 微細手術や細胞操作などの顕微鏡下で微細作業を行うマ ニピュレータ操作において,微小な器具を操作したり,肉体 の組織を切開したり刺したりする感覚や,細胞を把持する感 覚を,マニピュレータを操作する施術者に知覚させ,より高精 度な作業が可能となるマニピュレートシステムの実現を目的 とする. 従来研究との比較 関節はユニバーサルジョイントとベローズにより構成さ れる.ベローズの伸縮量は内圧と流量によって求められ る.また関節の手先に負荷がかかり外力を受けると,ベ ローズ内圧が変動するため,この圧力変化分によりマ ニピュレータにかかる外力が推定できる.外力はパスカ ルの原理によって増幅され,シリンジに伝わるため外力 が微小でも検出できる.これより本機構は,センサを関 節部や手先などに取り付けることなく計測できる. 本研究では,微細な感覚を得るためアクチュエータとセン シングの両方の機能を有する液圧駆動型関節を用い,様々 な微細作業においてオペレータが高精度に作業を行うため に必要な力覚の提示方法について検討を行う.本機構は, 従来のマニピュレータに実装可能な力覚センサの測定限界 を下回るような微小応力でも,測定を可能とすることから, 測定技術分野におけるブレークスルーとなり,新規な技術 分野の創出も期待できる. 液圧駆動型関節の原理 実験結果 関節の外観 液供給部に組み込まれた力センサにより推定内圧を検知し,これをオペ レータに力覚的にフィードバックするシステムを開発した.血管縫合練習用 の模擬血管(φ1mm)に微細手術縫合針( φ0.1mm )による刺入を行った 結果,「針が触れる」,「針が突き抜ける」等の感覚をオペレータが判別する ことができた. 1mm 力覚フィードバックシステム 力覚フィードバックによる模擬血管刺入実験の様子 (オペレータが「針が接触した」と感じた瞬間に停止している) まとめ・今後の展望 関節先端にかかる外力により,内圧にはオフセット的な変化が生じる.このことより無負荷時からの内圧変動を検出 することで外力が推定できた.また力覚フィードバックシステムを組み込むことで,オペレータに微細な手応えを感じさ せ,顕微鏡下作業レベルの微細作業において,より精度の高い操作を可能とした. (特許出願2013-167775「関節機構」) 【地域社会や産業界での応用分野・活用方法 等】 富山県は,古くから薬業を中心とした医薬の歴史を持ち,関連企業含め,多くのものづくり企業があることから,本研究 の商品化は医療と工業を直接的に結び付ける,医工連携によるものづくりのベンチマークと成り得るものである.工学部 と医学部を有する総合大学である富山大学が,同じくものづくりと医薬に特色のある富山県において,本研究を実用化ま で実現させることは,医工融合の新しいビジネスモデルを創成するさきがけとなる. 連絡先 富山大学リエゾンオフィス・TLO TEL:076-445-6392 FAX:076-445-6939 Email:[email protected]
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