課題を活動計画に展開

第2章
課題を活動計画に展開
やらされている意識がリーダーに少しでもある限り、その職場は活性化しな
い。どのようにしてリーダーは意欲的に行動し、職場を導き出すべきか、その
具体的な方法を掘り下げて検討する。
活動予定をリーダーが「見える化」することで、リーダー自身のやらされて
いる意識はなくなり、部下に任せる範囲も明らかにできるから、部下のやらさ
れている意識もなくなる。この問題を本章では掘り下げて記述する。
この章で取り上げる事項の要旨は次のとおり。
内 容
留 意 点
適用しないために伴う損失
①‌‌リーダーとしての
立場にふさわしい
課題の起案
事業計画に示されている課題
の中から担当部署に最適の課
題を選択し、目標は高く設定
する
事業計画に沿わない課題はい
かに内容が良くても部分最適
化に陥る危険性が高い
②‌‌課題を自分のもの
にし「やらされて
いる」意識を部下
に持たせない
③‌‌形式的な課題処理
の問題
担当課題達成は有効な自己啓
発の方法と考えて最善を尽く
すことで企業にも貢献する。
同時に自己啓発の満足感を満
たし次なる目標への意欲が湧
く
指示された課題をリーダーと
して形式的に処理すること
で、部下もそれに倣うことに
なり、仕事の達成感は得られ
ず評価も得られない
④‌‌効果的な課題への
取り組み方
飛び込みは日常的に発生して
いるため、その規則性を見つ
けることで飛び込みの対策を
立てることで、問題解消に寄
与する
課題の目標達成の障害は飛び
込み業務の頻発である。飛び
込みを理由に年間課題未達成
の口実は得るところなし
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第2章
課題を活動計画に展開
⑤‌‌課題の活動計画を
立てる前提条件
⑥‌‌経験から学ぶ
⑦‌‌リーダーの性格に
応じた部下の導き
方
2.2 課題を自分のものにし「やらされている」意識を持たせない
課題の年間活動計画を立てる
ことで、部下に任せる範囲が
決められ、職場を挙げての取
り組みが可能になり、部下育
成、自己啓発、企業への貢献
度が明確になる
活動計画を立てないことで
リーダー自身が全てを手掛け
なければならなくなり、部下
の育成はできず、担当部署の
業績も向上しない
経験から教訓を導き出し、以
降の業務処理に応用すること
は、自己啓発に役立ち、最高
の学習法になる
失敗、成功のいずれからも反
省点を明らかにして教訓を導
き出すことなく、今後注意し
よう、と済ますことは、現状
維持で発展性なし
リーダー自身の性格に適した
部下の導き方を編み出すこと
が有効な部下の扱い方になる
他人の優れた事例をそのまま
取り入れることは、どこかに
無理があり、信頼関係が確立
しない
の成果が上がり、リーダーの責務が果たされることになる。
2.2 課題を自分のものにし「やらされている」意識を持たせない
職場内を生き生きさせるには、企業の目標と個人の目標を一致させることが
以下にこれらに関して具体的に記述していく。
最善の対策である。その具体策を検討する。
事業計画に上げられている課題達成をリーダーとして担う場合の心構えにつ
いて、次のような考え方がある。
与えられた課題を
A:
「指示されたから何とかしなければならない」
B:
「同じ実施しなければならないのであれば、徹底的に取り組み身に着く
ようにしたい」
このいずれの考え方で課題に取り組むのか、仕方なく指示されたことを実行
するのか、自分の時間を大切に使う考えを取るのか、その心構えの差が課題に
2.1 立場にふさわしい課題の起案
掲げられている目標の達成度に影響し、自己の能力開発にも大きく影響し、今
後の人生にも強い影響がある。
リーダーは職場の課題を決めるに当たり、経営方針から導き出された事業計
課題と自己目標を一致させて、同じ実施しなければならないのであれば、自
画の一部を分担する役割を担っている。
分の役に立つように取り組みたい。そのような考え方で行動すると、課題は自
リーダーは事業計画に上げられている課題の一部を選択し、担当職場の活動
分のものになり能力向上が図られる。
計画に展開し、上層部の承認を得て実施することになる。
事業計画の中から選択した職場の課題は、年間で達成しなければならない課
組織の一員として自己の立場に応じた課題を事業計画の中から選択すること
題になる。その目標達成のためにどのような問題を克服しなければならないの
で、部分最適化に陥ることが予防でき会社に貢献する。事業計画との関連性を
か、検討を行い、リーダーの思いが込められた活動計画を作る。
考慮しないで決めた課題は、その内容が魅力的な内容であっても局部最適化の
このような経過をたどらないで、仮に、リーダーの選択した課題でなく上司
活動になる可能性が高く仕事量を増やすことになる。
の指示した課題の場合には、事業計画のどの項目に関連性があるのか、それを
リーダーの所属する職場の従業員に「やらされている」意識を持たせない配
究明し目的を理解することが不足する。目的や目標への理解が不足すると何か
慮として、課題達成を通じて能力向上を図るような運営法を講じることが重要
の問題に直面して判断を迫られた場合、判断の基準が不明のため誤った判断を
である。
行うことになる。
その視点に基づき役割分担を明示し任せることで、やる気を導き出すことが
さらに「会社が指示したことだから、実施しなければならない」、そのよう
可能になり、目標達成により能力向上が図られ従業員に満足感が得られ、職場
な主体性のない説明の仕方では部下が心からやる気になることはない。仕方な
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第2章
課題を活動計画に展開
2.4 効果的な課題への取り組み方
しに指示に従うことになり、
「やらされている」感覚で取り組み、能力開発に
しか果たせていない。売上高の増加や受注処理に注力するだけでなく、経営方
役立たなく成果を上げることも中途半端に終わる。
針に基づき数年先に備え技術蓄積が図れるように努め、職場内に潜在する問題
同じ実施するのであれば、この機会を利用して徹底的に取り組み、自分の能
の改善に取り組み、付加価値向上を継続的に維持することがリーダーの大切な
力を高めることに利用し、部下もそれに巻き込んでいくことで、会社への貢献
責務である。
度を高め、自分たちの能力開発にも役立つ。そのような考え方で信念を持って
課題と最終目標は明らかにされるが、最終目標達成のためにどのような活動
行動し、部下を導いていくことが何よりも大切である。
を行えばよいのか、中間目標が設定されていないため、報告会の直前になって
ここで言う能力開発の定義は、
「課題達成のために問題点を見つけ出し、問
あわてて作文している例が非常に多く、これでは形式的な結果に終わり達成感
題解決することで目標達成し、知識の応用力が体得できる」であり、この一連
は得られない。
の行動を体験することが能力開発になる。いかに多くの知識を保有していて
中間目標設定の仕方は後述する。
も、それを活用する応用力がなければ能力があるとは言えない。
報告に対して「課題の処理が十分でない」と指摘されると「予定外の仕事が
事業計画に含まれている課題の一部を担う場合、それに必要な知識習得の機
入りやむを得ないことであった」というような言い訳でうやむやで済まされて
会を持つのに関連職場の応援は求めやすい。
いる。その反省点を明らかにすることなく、習慣的に課題の遂行状況が報告さ
ただし、事業計画に上げられている課題が抽象的で目標設定が立てにくいよ
れ、形式的な課題への取り組み方が繰り返されていることはないか。
うな内容になっていることがある。それは、社内の報連相が徹底していないた
激しい競争が行われている今日、飛び込みのない温室的な状態に置かれてい
め、代表者の思いとリーダーの思いがまとめられて事業計画に反映していない
る職場はあり得ない。変化の激しい時代には飛び込みが発生するのは当然のこ
ことによる。
とである。飛び込みが常態化していると考えて実態観察し体系的に分析を行う
このような状態にある企業では、報連相の質を向上させて、企業内でどのよ
と、対策を講じる手掛かりが見えてくる。以下にその具体策を記述する。
うな問題が発生し、リーダーはそれにどのように対応したいと考えているの
か、会社の特徴をどのように意識し、それを成長させるために何から取り組ん
2.4 効果的な課題への取り組み方
でいけばよいのか、これらに関する意識が報連相を通じて経営層に報告され、
リーダーの思いが事業計画に反映されるようになると、具体性のある事業計画
a.飛び込み内容の集計分析
が立てられるようになる。
「飛び込みの発生頻度とその作業量、類似性のあるもの、緊急性のあるもの
と余裕時間があるもの」などに区分・集計することで、具体策が立てやすくな
(注)
報連相に関しては「第 5 章 報連相は情報処理の重要な手段」
、事業計
る。以下に例示する。
画に関しては、「第 7 章 経営方針・事業計画と情報感度」で記述する。
b.飛び込みの発生頻度とその作業量
2.3 形式的な課題処理の問題
飛び込み作業全体の傾向を把握し、少な目に見積り、事前に業務予定表に時
間の割り当てを行う。月、週の中でどのような分布をしているのか、その観察
目先の仕事が円滑に流れるように配慮するだけでは、リーダーの責務の一部
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をすることで、割当て方の具体的な方法が決められる。多くは月末、週末に発
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