第 17 回日本在宅医学会もりおか大会 一般・指定演題 (研究報告)抄録用紙 演題名 夫不在時の不安により眠剤を乱用してしまう高齢女性患者に対して健 康食品(ビール酵母)を使用した 1 症例 (全角 80 字以内) 受付番号 3027 発表テーマ 19.連携・多職種協働 研究方法 (右から番号を選 び NO.欄に番号を ご記入ください) 1 .症例報告 ○ 2.症例シリーズ報告 4.症例対照研究 5.調査研究 8.質的研究 3.コホート研究 6.介入研究 7.二次研究 9.その他研究 NO. 1 目的 夫の不在時に眠剤を乱用する高齢女性に対し、身体の安全と良眠の提供を目的とし、眠剤 と称してビール酵母を頓用で使用した。偽薬を使用することの倫理的問題と、本人へのメリ ット・デメリットを検証する。 症例の経過 86 歳女性。糖尿病、陳旧性脳梗塞(基底核)、腰椎圧迫骨折。内縁の夫と二人暮らしで子 供はいない。夫は泊りがけの出張が多く留守がちであった。内服忘れが頻繁となり、同時に 不眠の訴えがあったため眠剤を処方したが、一晩に数錠内服したり、他院受診して追加処方 を受けるなど眠剤の乱用を認めた。また「夫が浮気している」「先日この部屋に女を連れて きた、あいつを殺して自分も死のうと思っている」などの不穏言動も認められるようになっ た。一方、訪問看護やヘルパーの情報から、不眠・不穏症状は夫不在の時に顕著となり、夫 がいると消失することがわかった。夫と一緒の時は表情も穏やかで、眠剤を飲まなくても良 眠できていた。医師、看護師、薬剤師によるカンファレンスで、夫とは入籍していないこと、 夫不在の孤独感の増強、老後の生活や病気に対する不安が、不眠などの精神症状を引き起こ しているのではないかと話し合われた。夫は半年後には定年を迎えることがわかり、定年ま での一時的な対応が必要と考えられた。副作用が無く、大量を内服しても安全なものという 理由で夫が購入した市販のビール酵母を薬局で 1 錠づつ分包し、薬袋には「不眠時」と印字 した。夫から不眠時にこれを勧めたところ、一晩に 1~2 錠の内服で入眠可能となった。現 在は夫が定年を迎え、ビール酵母は時々使用しているものの、不穏・不眠は認めず、穏やか に過ごしている。 考察 倫理的問題は残るが、独居の孤独や不安が原因の一時的な不眠に対しては眠剤の効果より も本人が薬を飲むという行為で得る安心感が必要なのではないかと考えられた。実践に際し て家族、多職種による合同カンファレンスで十分検討すべきである。
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