一人っ子政策、緩和してみたけれど… 上海駐在員事務所 藤光 雅之 中国はご存じの通り、世界一人口の多い国です(2013 年末:13.6 億人)。毛沢東時代に出産を奨励 したため、貧困層の増加が大きな社会問題となり、1979 年からいわゆる『一人っ子政策』が導入され ました。しかし、長年同制度が続いた結果、労働人口(15 歳∼59 歳)が 2011 年の 9.37 億人をピークに 減少し始め、一方で現在総人口の 15%を占める 60 歳以上の高齢者が、2030 年までには総人口の 4 分の 1 に達すると予想されています。 そこで中国政府は 2013 年 11 月、共産党第 18 期中央委員会第 3 回総会(3 中総会)で、夫婦のどちら かが一人っ子であれば第 2 子をもうけてもよいという『一人っ子政策』の緩和を発表しました。発表後 は新聞紙上を賑わすなど、そのインパクトは強いものでしたが、発表後1年を経過し果たしてどのよう な変化が生まれたでしょうか。 当初、国家衛生計画生育委員会は、今後政策の緩和 により毎年 200 万人の新生児が新たに誕生するもの と予想していました。しかし、今年 8 月までの状況を 見てみると、政策緩和で対象となる夫婦は全国に 1,100 万組いるのに対し、実際に第二子出産の申請を 行ったのは、僅か 70 万組しかありませんでした。 政府の予想とは大きくかい離してしまったのです。 各省の一人っ子政策緩和対象数と申請者数 単位:人 地区 政策緩和対象数 申込家族数 割合 遼寧省 820,100 9,385 1.1% 湖北省 629,400 10,952 1.7% 吉林省 87,000 6,255 7.2% 湖南省 274,800 11,200 4.1% 山東省 1,270,000 8,121 0.6% 各省衛生計画生育委員会発表(2014年1月∼7月) 各省で発表したデータを見ても同様の結果となっています。 では、どうしてこのような結果になったのでしょうか。その理由は主に二つあります。 ひとつは国民の生活観の変化、もうひとつは経済的な負担が大きいということです。 規制緩和の対象者は、当然一人っ子世代です。そのような世代には、結婚しても子供を作らず、 「夫婦 で自由にいろいろなことをしたい、子供が生まれたらそれができなくなるのは嫌だ」というような考え 方が増えています。また、1 人の子供を大学卒業まで育てるのに 1 百万元(約 19 百万円)必要という データもあり、第 2 子をもうけるのを躊躇しているのも事実です。 日本をはじめとする先進各国は少子化が進み、様々な問題が生じています。中国も例外ではなく、 これから益々高齢化が進んでいきます。労働人口の減少は国力の減退にも繋がってくるでしょう。中国 はこれまでの人口政策を緩和し、子供の数を増やそうとしていますが、現状その効果はまだ表れて いません。この現状を鑑み、今後更なる施策を講じることが必要と言えるでしょう。 (2014 年 12 月)
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