2014年12月 一人っ子政策、緩和してみたけれど…

一人っ子政策、緩和してみたけれど…
上海駐在員事務所
藤光
雅之
中国はご存じの通り、世界一人口の多い国です(2013 年末:13.6 億人)。毛沢東時代に出産を奨励
したため、貧困層の増加が大きな社会問題となり、1979 年からいわゆる『一人っ子政策』が導入され
ました。しかし、長年同制度が続いた結果、労働人口(15 歳∼59 歳)が 2011 年の 9.37 億人をピークに
減少し始め、一方で現在総人口の 15%を占める 60 歳以上の高齢者が、2030 年までには総人口の 4 分の 1
に達すると予想されています。
そこで中国政府は 2013 年 11 月、共産党第 18 期中央委員会第 3 回総会(3 中総会)で、夫婦のどちら
かが一人っ子であれば第 2 子をもうけてもよいという『一人っ子政策』の緩和を発表しました。発表後
は新聞紙上を賑わすなど、そのインパクトは強いものでしたが、発表後1年を経過し果たしてどのよう
な変化が生まれたでしょうか。
当初、国家衛生計画生育委員会は、今後政策の緩和
により毎年 200 万人の新生児が新たに誕生するもの
と予想していました。しかし、今年 8 月までの状況を
見てみると、政策緩和で対象となる夫婦は全国に
1,100 万組いるのに対し、実際に第二子出産の申請を
行ったのは、僅か 70 万組しかありませんでした。
政府の予想とは大きくかい離してしまったのです。
各省の一人っ子政策緩和対象数と申請者数
単位:人
地区
政策緩和対象数
申込家族数
割合
遼寧省
820,100
9,385
1.1%
湖北省
629,400
10,952
1.7%
吉林省
87,000
6,255
7.2%
湖南省
274,800
11,200
4.1%
山東省
1,270,000
8,121
0.6%
各省衛生計画生育委員会発表(2014年1月∼7月)
各省で発表したデータを見ても同様の結果となっています。
では、どうしてこのような結果になったのでしょうか。その理由は主に二つあります。
ひとつは国民の生活観の変化、もうひとつは経済的な負担が大きいということです。
規制緩和の対象者は、当然一人っ子世代です。そのような世代には、結婚しても子供を作らず、
「夫婦
で自由にいろいろなことをしたい、子供が生まれたらそれができなくなるのは嫌だ」というような考え
方が増えています。また、1 人の子供を大学卒業まで育てるのに 1 百万元(約 19 百万円)必要という
データもあり、第 2 子をもうけるのを躊躇しているのも事実です。
日本をはじめとする先進各国は少子化が進み、様々な問題が生じています。中国も例外ではなく、
これから益々高齢化が進んでいきます。労働人口の減少は国力の減退にも繋がってくるでしょう。中国
はこれまでの人口政策を緩和し、子供の数を増やそうとしていますが、現状その効果はまだ表れて
いません。この現状を鑑み、今後更なる施策を講じることが必要と言えるでしょう。
(2014 年 12 月)