危機管理 ・ 不祥事対策 二〇一五年

報 の 保 護 に 関 す る 法 律 の 見 直 し、
政府は、不正競争防止法や個人情
注 目 を 受 け る こ と は 間 違 い な い。
事案が刑事事件、民事事件として
おいても、このような情報漏えい
らないからである。二〇一五年に
完璧な防止手段がなかなか見つか
ものであり、完璧な防止策などな
不祥事を起こそうと思えばできる
が業務プロセスの穴を突いて金銭
かれ少なかれ、抜け目ない従業員
たいのは、どの企業においても多
を意味する。ここで注意しておき
金が着実にむしばまれていくこと
を放置しておくことは、企業の資
情報の取扱いに関する従業員の意
定期的な人事異動、内部監査の工
は、適 切 な 業 務 プ ロ セ ス の 構 築、
わゆる 金
「 銭不祥事 は
」 、引 き 続
き 企 業 が 対 処 す べ き 課 題 で あ る。
もとそのような人間であったわけ
ける人間とみえてしまうが、もと
で、情 報 漏 え い 事 案 は、民 事 裁 判
件も大きな話題となった。これま
国企業によって使用されていた事
こ の ベ ネ ッ セ の 事 案 以 外 に も、
東芝の技術情報が持ち出され、韓
起した。
る現状など、さまざまな問題を提
の重要な情報を委託先に管理させ
危機管理・不祥事対策 分野における
二〇一五年 の展望
国外産業スパイ事犯の重罰化など、
いということである。
識にも、大きな変化が生まれる可
夫と実践、上司の決裁機能の見直
金銭不祥事を犯してしまった従
業員は、企業のカネを自分の懐に
金銭不祥事は、企業の業務プロセ
で は な い。新 入 社 員 の こ ろ は、夢
❺ M&A・企業再編
サービスを利用する対象となる児
えいした個人情報は、ベネッセの
セの個人情報漏えいであろう。漏
二〇一四年、世間の耳目を最も
集めた企業不祥事事案は、ベネッ
あることを印象づけた。
とで、情報漏えいが重大な犯罪で
も、被疑者が逮捕・起訴されたこ
し、ベネッセの事案も東芝の事案
となった事例は少なかった。しか
になることはあっても、刑事事件
童生徒の情報であるが、現在は成
1
情報漏えい
社会全体が企業活動を監視する時代へ
いくつかの提案をしており、今後
の企業における機密情報の管理方
能性がある。企業はこれらの動き
しなど、金銭不祥事事案が発生し
これまで、数多くの金銭不祥事
に対応してきた筆者が感じること
を的確に把握し、必要な対応策を
た場合の必要検討事項の対応策だ
法や情報漏えい対策、企業の機密
とることが求められるであろう。
けではなく、もっと従業員そのも
のに目を向けるべきではないかと
大きな報道によって注目される
ことはあまりないものの、従業員
入れて、ギャンブルや夜の飲食な
いうことである。
がその権限を悪用して、企業のカ
ど、派手に遊んで散財している例
2
金銭不祥事
ネを自分の懐に入れるという、い
スに起因する不祥事であり、金銭
と希望を持ってその企業に就職し、
が多いので、自堕落でモラルに欠
不 祥 事 が 発 生 し た と い う こ と は、
仕事で企業に貢献をして給料をも
❹ 人事・労務
企業の業務プロセスに欠陥がある
❸ ダイバーシティ
らい、将来は昇進してもっと大き
❷ 危機管理・不祥事対策
ことにほかならない。そしてこれ
❶ コーポレートガバナンス
危機
危機管
危機
機管理・不祥事対策
という認識を持つべき。
間に落ちてしまった根本の原因は、
業のカネに手をつけ、自堕落な人
で あ る。そ の よ う な 従 業 員 が、企
な貢献をしたいと考えていたはず
こに法規制の穴があること、企業
購入して利用する企業の存在、そ
案 は、名 簿 屋 の 実 態、そ の 名 簿 を
た理由と思われる。ベネッセの事
何らかの形で 被
「 害者 と
」 なった
ことが、さらに世間の関心を集め
る。そ の 親 を 含 め、多 く の 国 民 が
二八〇〇万件以上に上るようであ
まれていると考えられ、その数は
えず考えるべきである。これが究
ために何をすべきかを、企業は絶
を維持しながら仕事を続けさせる
かに注意を払い、高い志とモラル
マインドで日々仕事をしているの
いても情報漏えい事案は発生する。
なりの対策を講じている企業にお
出 さ れ 放 題 で あ っ た。ま た、そ れ
業員により、それこそ情報を持ち
の従業員あるいは退職していく従
づいていない事例も多いと思われ、
なり多い。企業が情報漏えいに気
このような情報漏えいに悩まさ
れている企業は、実態としてはか
人となっている人たちの情報も含
実は企業の側にあるという認識を
極の危機管理である。
日本の企業が、海外当局から法
令違反の指摘を受け、何らかの制
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海外当局対応
対策を講じていない企業は、現職
持つべきである。努力が報われな
い給料や人事制度、企業や上司か
らの理不尽な仕打ち、働かない上
司、雰 囲 気 の 悪 い 職 場 な ど、従 業
を維持しながら仕事を続けること
裁を受ける事案も引き続き増えて
員が次第にやる気を失い、モラル
ができなくなり、その不満や不安
いくものと思われる。
してきたが、
これら以外にも韓国、
カ ル テ ル は、米 国 司 法 省、欧 州
委員会などが従来から活発に摘発
や鬱憤を晴らす手立てが見つから
ず、それが企業のカネに手をつけ
てしまうきっかけになっている例
が多いのである。
ル、中国などの摘発事例もみられ
❽ 独禁法・競争法
❾ アジア・海外進出
日本の企業に対する損害賠償請求
者等がクラスアクションを提起し、
特に米国においては、一般の消費
ら の 海 外 当 局 の 動 き に 連 動 し て、
制 裁 に 動 い て い る。そ し て、こ れ
に乗り出し、日本の企業に対する
いても、海外当局が積極的な調査
車のリコール問題などの事案につ
問題に端を発する国際金融
Libor
市場における各種指標操作、自動
も、
外国公務員に対する利益提供、
カ ナ ダ、オ ー ス ト ラ リ ア、ブ ラ ジ
企業は、このような従業員の心
の中に宿った闇に無関心でいては
るようになった。カルテル以外に
❼ 環境・エネルギー
い け な い。従 業 員 が、ど の よ う な
❻ 知的財産
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会社法務A2Z 2015.1
会社法務A2Z 2015.1
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梅林 啓 Kei Umebayashi 弁護士
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「金銭不祥事の原因は企業側にある」