- 22 - (2) 本県のエネルギーの状況 東日本大震災の影響を受け

(2)
本県のエネルギーの状況
東日本大震災の影響を受け、企業や家庭で節電が進んでいるため、エネルギー
の消費量に大きな影響がある可能性も想定されますが、現状で把握可能なデータ
により、県内のエネルギーの消費状況を整理するとともに、需給見込みを算定し
ました。
ア
県内エネルギー需給動向
資源エネルギー庁の「都道府県別エネルギー消費統計」によると、埼玉県
における 2009(平成 21)年の県内最終エネルギー消費の推計値は 632,767TJ
(テラジュール)注)でした。
部門別消費量をみると、産業部門のエネルギー消費量は減少しているもの
の、民生家庭部門、民生業務部門、運輸部門では増加しています。
また、経済成長率を示す実質県内総生産は、1996(平成 8)年度推計以降、
ほぼ増加傾向にありましたが、2008 年度には減少に転じています。最終エネ
ルギー消費をみても、2008 年には減少に転じていることが分かります。
注)TJ(テラジュール)
:J(ジュール)は、発熱量を表す国際的な単位で、カロリーに代
わるもの。T(テラ)は、キロ(10の3乗)などと同じ、補助単位で10の12乗(兆)
。
※
グラフの下から、産業部門、民生家庭部門、民生業務部門、運輸部門の順
図 2-15
埼玉県の最終エネルギー消費と実質県内総生産の推移
産業部門
民生家庭部門
民生業務部門
900,000
運輸部門
実質GDP
2009年:
1990年比 +16%
800,000
30,000
25,000
600,000
20,000
500,000
15,000
400,000
300,000
10,000
実質県内総生産(10億円)
最終エネルギー消費(TJ)
700,000
200,000
5,000
100,000
0
0
年度
※
都道府県別エネルギー消費統計(資源エネルギー庁)をもとに埼玉県がグラフを作成
- 22 -
イ
県内エネルギー需給見込
政府が平成 21 年 8 月に改定した「長期エネルギー需給見通し(再計算)」に
基づき、本県における 2020 年度、2030 年度のエネルギー需給の見通しを推
計しました。
まず、長期エネルギー需給見通しにおいては、最終エネルギー消費の将来
推計として、表 2-5 の試算結果が示されています。この試算結果に、県内の
部門別最終エネルギー消費量をあてはめ、2020 年度、2030 年度における埼玉
県のエネルギー需給見込みとして推計しました。
表 2-4 国の「長期エネルギー需給見通し(再計算)」における最終エネルギー消費の試算結果
(原油換算百万 KL)
原油換算KL:種類の異なるエネル
ギーの量を原油に換算したもの
表 2-5
現状固定ケース
努力継続ケース
最大導入ケース
「長期エネルギー需給見通し(再計算)」における各ケースの解説
現状(2005 年度)を基準とし、今後新たなエネルギー技術が導入されず、機器の効率が
一定のまま推移した場合を想定。耐用年数に応じて古い機器が現状の標準レベルの機器に
入れ替わる効果のみを反映したケース。
これまで効率改善に取り組んできた機器・設備について、既存技術の延長線上で今後とも
継続して効率改善の努力を行い、耐用年数を迎える機器と順次入れ替えていく効果を反映
したケース。
実用段階にある最先端の技術で、高コストではあるが、省エネ性能の格段の向上が見込ま
れる機器・設備について、国民や企業に対して更新を法的に強制する一歩手前のギリギリ
の政策を講じ最大限普及させることにより劇的な改善を実現するケース。
埼玉県における最終エネルギー消費の将来推計は、表 2-6 及び図 2-16 のよ
うになります。
産業部門では、我が国の世界最高水準といわれる省エネ努力を今後も継
続・強化することが必要とされます。民生家庭部門・民生業務部門、運輸部
門では、過去 15 年間の間に増加したエネルギー消費量の伸びを減少させるこ
とが必要となります。
推計の結果、努力継続ケースと最大導入ケースにおいて、2020 年度には
2005 年度レベル以下に最終エネルギー消費を抑えることができる見通しとな
り、また最大導入ケースでは 2030 年度に 1990 年度レベル以下に達する見通
しです。
- 23 -
表 2-6
埼玉県における最終エネルギー消費の将来推計
(単位:TJ)
2030年度
2020年度
1990年度 2005年度
産業部門
民生家庭部門
245,075
138,682
現状固定 努力継続 最大導入 現状固定 努力継続 最大導入
208,185
207,035
207,035
203,585
205,885
205,885
200,134
189,779
206,724
189,779
176,223
223,668
189,779
159,279
民生業務部門
運輸部門
合計
127,102
36,718
547,576
-
186,143
56,741
640,849
93,272
17%
1990年度比
210,008
53,268
677,034
129,457
24%
186,143
49,794
632,751
85,174
16%
162,279
45,162
587,248
39,672
7%
207,621
52,689
689,863
142,286
26%
176,597
47,478
619,739
72,162
13%
900,000
2005年レベル
800,000
最終エネルギー消費(TJ)
700,000
600,000
500,000
400,000
1990年レベル
300,000
実績
現状固定
努力継続
最大導入
200,000
100,000
0
年度
図 2-16
埼玉県におけるにおける最終エネルギー消費の将来推計
- 24 -
133,641
39,951
533,005
-14,572
-3%
ウ 再生可能エネルギーの賦存量、利用可能量、導入状況
県内で利用可能と考えられる再生可能エネルギーを主な対象として、表2
-7のとおり、賦存量(存在するすべての量)と利用可能量(制約はあるもの
の、取り出すことが可能な量)の推計を行いました。
この報告書では、次の再生可能エネルギーを対象にしています。
高温の地熱が期待できず、掘削にも多額のコストがかかる地熱と、大規模
な水力については、県内における新たな開発の可能性などを考慮して対象と
しませんでした。
・
・
・
・
・
・
・
太陽エネルギー(光発電・熱利用)
風力エネルギー(風力発電)
水力エネルギー(中小水力発電)
バイオマスエネルギー(熱利用・発電・燃料製造)
廃棄物エネルギー(熱利用・発電(燃料製造を含む)、汚泥焼却炉排熱)
温度差エネルギー(河川水熱、地中熱、下水熱)
工場排熱
【調査結果(表2-7)の概要】
○
太陽エネルギー(光発電・熱利用)
本県で最も利用可能量が多い再生可能エネルギーです。
発電としては、太陽の光が持つエネルギーを、太陽光パネルに内
蔵された太陽電池で直接電気に変えて利用します。
熱利用としては、太陽の熱エネルギーを集熱器で集めて、給湯や冷
暖房に利用します。
今回の推計では、太陽光パネルと集熱器をいずれも屋根に設置した場
合を想定したため、宅地面積の多い県南地域を中心として利用可能量
が多くなっています。なお、太陽光発電パネルと太陽集熱器は、屋根
に半分ずつ設置したと仮定して算出しています。
- 25 -
○
風力エネルギー(風力発電)
県全体における風力発電の利用可能量は全国で第47位です(平成
21年度 再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査調査報告書 平成
22年3月 環境省地球環境局地球温暖化対策課)。
啓発目的のモニュメントや LED を利用するための風車設置の可能性
があります。技術革新により導入可能性が高まることも想定されます。
○
水力エネルギー(中小水力発電)
県内の利用可能量は全国で第41位です(平成21年度 再生可能エ
ネルギー導入ポテンシャル調査 調査報告書 平成22年3月 環境省
地球環境局地球温暖化対策課)。
一般に水力発電を行うには、水が流れる高低差と水の流量、発電機の
設置やメンテナンスがしやすい場所であるかが重要です。
それらの状況を満たす箇所であれば、中小水力発電の検討も可能で
す。
○
バイオマスエネルギー(熱利用・発電・燃料製造)
バイオマスとは、再生可能な生物由来の有機性資源で化石資源を
除いたものをいいます。バイオマスは本県で2番目に利用可能量が
多いエネルギー源です。
今回の調査では、木質系(木材)、農業系(稲わら、もみ殻、麦わ
らなど)、畜産系(家畜のふん尿)、食品系(食料品の残さ)につい
て調査を行いました(「バイオマス賦存量・利用可能量の推計~GI
Sデータベース~」(独立行政法人新エネルギー・産業総合開発機構
(NEDO))を利用)。
木質系では、森林に放置されたままの林地残材、ごみとして処分されてい
る公園樹木や道路街路樹の剪定枝にエネルギーとしての活用の可能性があり
ます。
農業系は、発生量が多い一方で現状利用量が少ないため、利用の可能性が
ありますが、容積がかさ張るため、収集方法が主な課題となります。
畜産系は、たい肥として利用される場合が多くなっていますが、需要との
バランスに課題があり、エネルギー源としてさらに有効に活用できる可能性
があります。
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食品系のうち、生活・事業系厨芥類(生ごみ)は、人口が多い地域での発生
量が多くなっています。分別と収集方法が課題ですが、大きな可能性がありま
す。
現状利用量には、エネルギーとしての利用と堆肥化などの素材としての利用
がありますが、そのほとんどが素材として利用されていると考えられていま
す。エネルギーとしての正確な利用量は把握できていません。
○
廃棄物エネルギー(熱利用・発電(燃料製造を含む))
廃棄物エネルギーとは、廃棄物を燃やした時の熱エネルギーのこと
です。県内でも住宅地や業務地が多い、県南部や県東部における利用
可能量が多くなっています。
市町村のごみ焼却施設では、発電や温水プールなどへの余熱供給が
行われていますが、市街地から離れているため、熱の搬送が難しく、
十分に利用しているとはいえない状況にあります。
清掃センターの再編や更新の際、利用を検討する必要がありま
す。
また、下水汚泥の焼却工程で発生する高温排ガスから回収して利用す
る熱を、廃棄物エネルギーに含めて考えることにします。
利用可能量は少なく発生量も限定的ですが、熱需要のある施設が近隣
に建設された場合などは、検討の余地があります。
- 27 -
○
温度差エネルギー
・
河川水熱
外気と比べ、冬は温かく夏は外気より冷たい河川水の特性を活か
して、ヒートポンプ(エアコンと同じ原理)の熱源として利用する
ものです。
取水施設の設置にかかる多額のコストや河川水熱の搬送などに課
題があります。
・
地中熱
一年を通じてほぼ一定の地中熱をヒートポンプ熱源として利用
するものです。
利用可能量が多くなっていますが、地中熱集熱パイプの敷設に多
額のコストがかかるため、さらなる技術開発が待たれます。
・ 下水熱
冬は温かく夏は外気より冷たい下水の特性を活かし、ヒートポンプ
(エアコンと同じ原理)の熱源として利用するものです。
県内の下水処理場は市街地から離れているため、下水熱の搬送が課
題となります。
○
工場排熱
工場から出る排熱(排ガス、温水および蒸気など)のことです。
工場排熱の県内の利用可能量は多いですが、収集・搬送が難しいため、
工場間における融通や周辺地域への供給なども含めて、十分な調査の上
導入の検討を行う必要があります。
- 28 -
表 2-7 埼玉県における再生可能エネルギーの
賦存量・利用可能量・現状利用量の推計
[TJ]
利用可能量
賦存量
エネルギーの種類
利用率
(制約はあるもの
(存在するすべての
(現在活用している
の、取り出すことが
量)
量)
可能な量)
(1)太陽
エネルギー
①太陽光発電
636,377
18,110
1,015
5.6%
②太陽熱利用
3,916,168
111,448
1,554
1.4%
(2)風力・水力
エネルギー
①風力発電
-
-
0
―
②中小水力発電
-
-
440
―
29,769
27,312
―
―
10,016
7,578
―
―
4,877
2,439
―
―
製材所廃材
334
334
―
―
果樹剪定枝
75
75
―
―
164
164
―
―
バイオマス計
①木質系 計
林地残材
(3)バイオマス
エネルギー
都市内剪定枝
4,566
4,566
―
―
②農業系
建築解体・新築廃材
3,473
3,473
―
―
③畜産系
2,290
2,271
―
―
13,990
13,990
―
―
13,607
13,607
―
―
383
383
―
―
④食品系 計
生活・事業系厨芥類
動植物性残さ
(4)温度差 *3
エネルギー
①河川水
541
132
0
0.0%
②地中熱
117,472
5,876
61
1.0%
③下水熱
860
568
0
0.0%
(5)工場排熱
19,710
5,631
0
0.0%
(6)廃棄物エネルギー *2
18,435
13,588
5,398
39.7%
4,739,332
182,665
8,468
4.6%
合計
※
現状利用量*2
再生可能エネルギー(クリーンエネルギー)地域活用推進事業調査業務報告書(平成23年3月
埼玉県)などを元にして作成。(1)~(4)は再生可能エネルギー。(5)~(6)はその他の未利用エネルギー。
*1・・・現状利用量のうち、バイオマスエネルギーは正確な利用量が把握できておらず、ほとん
どが素材として利用されていると考えられます。
*2・・・下水汚泥の焼却炉排熱を含みます。
*3・・・温度差を利用して、熱を取り出すヒートポンプ技術を利用するものです。
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