みんなでつくる国際土壌年 2015 (一社)日本土壌肥料学会会長 小﨑 隆(首都大学東京) 1.国際土壌年(International Year of Soils)とは 2013 年 12 月に行われた国連総会(第 68 会期)において、2015 年を国際土壌年とする決議文 が国連食糧農業機関(FAO)に事務局を置く地球土壌パートナーシップ(Global Soil Partnership: GSP)主導のもと採択された。また、同時に 12 月 5 日を世界土壌デーとすることも採択された。 この決議は、持続的な食料安全保障を希求する国際社会において、土壌に対する認識の向上と適 切な土壌管理を支援するための社会意識の醸成が喫緊の課題であるという強い認識によるもので ある。 2.誰が何をなすべきか? 国際土壌年が目指すゴールとは何か?それは、2015 年という年を、食料供給における安全・安 心の確保、飢餓の撲滅、気候変動への適応、貧困の軽減、そして持続的な発展を実現するために、 土壌肥料学の研究・教育・普及に携わる「私たちがいかに貢献しているかを示す」記念の年とす ることなのである。したがって、私たちは社会に向かって、上記の目標達成のために、いかに土 壌肥料学が重要であるかを訴えることにとどまらず、私たちが何をしているか、また、どのよう に役立っているかを積極的に発信し、一般市民に理解していただかねばならない。すなわち、私 たちは問題の解説者であるのみならず、問題解決の脚本家であり俳優なのである。私たちはその 役割を他人に期待するのではなく、私たちの社会的責任であることを自覚して、今、行動に移す べきである。 3.日本土壌肥料学会は何をするか? 学会は本年 8 月に企画委員会、さらに、10 月に実施委員会を立ち上げ、正・学生・賛助会員各 位のご協力を得て、1)一般市民向け活動(情報発信・交換 Web サイトの整備、教育用ハンドブ ックの増刷、講演会・シンポジウム、展示・現地観察会、フォトコンテスト、ブックレット・啓 発書の出版、新聞記事掲載など)、2)学生・研究者向け活動(国際機関・省庁・他学会との共催 による学術講演会・シンポジウム、出前授業、高校生研究発表コンテスト、学術書の出版、国内 外学会・研究集会でのセッション立ち上げの支援など)をすでに開始あるいは来年度の実施に向 けて準備中である。 4.学会から支部、さらには会員各位の活動が創り出すもの 学会としての活動には自ずとその地域、時期、対象他において各種の制約がある。少なくとも わが国の市民一人ひとりへの働きかけを行うときには、支部さらには個人会員各位のご協力が不 可欠である。例えば、教育・試験・研究機関では市民講座の開講の他、オープンキャンパスや施 設見学会の機会を利用しての成果展示や市民との意見交換を通じて、また、賛助会員の皆様にあ っては自社の広告に「世界土壌年を応援」と追記していただくだけで、私たちの活動を紹介し、 その意義を訴えることは十分可能である。実はそのような「草の根」活動が市民一人ひとりの感 性に働きかけ、土壌肥料学の教養の修得を通して、その中に 21 世紀に生きるコスモポリタニズム が醸成されるものと大いに期待される。それこそが世界土壌年での私たちの活動が自画自賛・我 田引水・自己満足に終わることなく次世代へ継承され、さらに展開するという真のゴールであろ う。会員各位の自主的かつ積極的なご参加・ご協力を心よりお願い申し上げる次第である。
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