時 の 話 題 ~ 平成17年度 第号(H17

時 の 話 題 ~平成26年度 第17号(H26.12.25調査情報課)~
今夏の中国産鶏肉の賞味期限偽装など、食の安全を脅かす
事件が多発している中、食の安全に対する意識の高まりを背
食料自給率
景に、国産食品の需要が高まっている。
食料自給率の現状と問題点、自給率向上のための国や都の
取組等についてまとめる。
1
食料自給率の現状
図1 我が国の食料自給率の推移
(1)現状
昭和 35 年にカロリーベースで
79%あった我が国の食料自給率
は、下落傾向にある。平成 26 年
8月、農林水産省は、平成 25
(2013)年度の食料自給率を発
表した。カロリーベースでは
39%、生産額ベースでは 65%で
あり、ここ数年横ばいで推移し
ている(図1)
。
出典:平成 26 年 3 月
環境省ホームページより作成
図2 品目別の自給率(主なもの)
また、品目別の自給率をみる
と、米(100%)や野菜類(79%)
図2 国土面積に占める国立公園の割合(H17 年度)
は自給率が高いが、大豆(7%)、
肉類(8%)、小麦(12%)など
は、輸入が大部分となっている
(図2)。
出典:平成 26 年8月
農林水産省「よくわかる食料自給率」
食料自給率とは?:その国で消費される食糧が、どのくらい国内で生産されているかを示す指標
カロリーベースとは?:供給カロリーが国内生産でどの程度賄われているかを示す指標。
一人 1 日当たり国産熱供給量/一人 1 日当たり供給熱量
生産額ベースとは? :国内農業の経済的価値を示す指標。
食料の国内生産額/食料の国内消費仕向額
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〈参考:食料自給率の諸外国との比較〉
諸外国と比べると、我が国の食料自給率は、カロリーベースでも生産額ベースでも、先進国
中最低の水準となっている。
出典:平成 26 年8月
農林水産省「よくわかる食料自給率」より作成
(2)食料自給率の低下要因
食料自給率の低下要因としては、消費と生産、両面の影響が指摘されている。消費面で
は、食生活の変化により、国内で自給可能な米の消費割合が減少する一方、輸入農産物に
依存した肉類、油脂類が増えている(図3)。また、生産面を見ると、住宅用地の需要が伸
びたことなどから、農地面積は年々減少している(図4)。
図3 食料消費の変化
図4 農地面積の推移
出典:平成 26 年8月 農林水産省「いちばん身近な『食べもの』の話」より作成
出典:平成 26 年8月
食料自給率」
農林水産省「よくわかる
これら以外に、カロリーベースの食料自給率が低い要因として、輸入飼料で育てた牛、
豚などは自給に計算されないこと、野菜や果物は国内産が多いが低カロリーのため貢献度
が低いことなどが上げられる。また、推計で年間約 500 万から 800 万トンと言われる巨大
な食品ロスが自給率に与える影響も指摘されている。
図5 生産数量目標の進捗状況(H24 年度)
(3)食料自給率に関する最近の動き
国は、平成 22 年3月に策定された「食料・
農業・農村基本計画」において、我が国の食
品自給率を平成 32(2020)年度までに、カロ
リーベースで 50%、生産額ベースで 70%にそ
れぞれ引き上げることを掲げている。
多くを輸入に頼る小麦・大豆等の増産や、
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出典:平成 26 年3月 農林水産省食料・農業・農村
政策審議会企画部会提出資料「現行の食料自給率目標
等の検証①」より作成
米粉の使用割合の引き上げ等を前提とした目標であったが、平成 24 年度の時点で、小麦及
び大豆がそれぞれ平成 20 年度と比べて2万トンの減産となる等、目標達成は困難な状況で
ある(図5)。国は、今年度中に目標を引き下げる方向で検討に着手した。
食料自給率目標引き下げ要望
財務省 補助金依存に限界
財務省は 20 日、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の分科会を開き、国内で消費する食料を国産品で
どの程度賄えているかを示す「食料自給率」に関して、補助金に依存した自給率引き上げは限界と指摘した。
2020 年度にカロリーベースの自給率を 50%にするとした政府目標は引き下げる方向で見直し、関連予算を
効率化するよう求めた。
日本の 13 年度の自給率は 39%で、先進国で最低水準となっている。20 年度の目標達成は困難との見方が
強く、農林水産省も見直す方針だ。
財務省の試算では、自給率を 1%上げるには国産小麦の場合、年間 40 万トンの増産が必要となる。農家へ
の補助金が膨らみ、国民負担は年間 420 億~790 億円増えるとしている。
農水省は 14 年度中に自給率の目標を引き下げる方向で検討しているが、補助金削減には徹底抗戦する構え
だ。「現状より自給率を引き上げる必要があることに変わりはない。そのための政策は続ける」(幹部)とし
ており、15 年度予算編成の焦点の一つに浮上した。
(平成 26 年 10 月 21 日付 東京新聞より抜粋)
2
国の取組
(1)フード・アクション・ニッポン(FAN)
国は平成 20 年 10 月から、食料自給率向上のため、国・民間企業・団体・消費者が一体
となって、国産農林水産物・食品の消費拡大に向けて取り組む「フード・アクション・ニ
ッポン」を推進している。賛同する企業・団体等が「推進パートナー」として参加し、国
産食材の販売促進やイベント開催等の活動を行っている。
そのほか、FAN に関連する取組として、次のような事業を行っている。
フード・アクション・ニッポン・アワード
FAN 医福食農連携~食でつながるイノベーション
機能性食品・介護食品の開発・普及、薬用作物の生産拡大など、
医療や福祉分野と連携し、食と農に新たな需要を創出する。
国産農産物等の消費拡大に寄与する事業者・団体等の優れた取組
を表彰することにより、国産農産物等の消費拡大に向けた活動を
推進する。
「日本の食でおもてなし」キャンペーン
「こくポ」(国産食品等ポイント事業)
観光業界の企業や団体と連携した、地域食材もしくは国産食材を
活用した食の魅力や意義を消費者に普及啓発し、食と観光との連
携により国産農林水産物の消費拡大を図る。
国産農産物の購入促進を目的とし、対象の国産食料品についてい
るポイントを集めて応募すると、抽選で国産食材が当たる。
「食べて応援しよう!」キャンペーン
「米粉倶楽部」
被災地産食品を積極的に消費することによって、産地の活力再生
を通じた被災地の復興を応援する。
米粉を通じて、新しい食の可能性を広げ、日本の食料自給率を向
上させるための活動
(2)第2次食育推進基本計画の部分改訂
国は平成 23 年3月「第2次食育推進基本計画」を策定し、学校給食での地場産物の使用
割合を平成 27 年度までに 30%以上とする目標を定めた。
これに加え、平成 25 年 12 月には基本計画を部分改訂し、平成 24 年度現在 77%であっ
た学校給食における国産食材の使用割合を、平成 27 年度までに 80%以上とする新たな目
標を追加した。
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3
都の取組
〈「とうきょう特産食材使用店」ボード〉
(1)地産地消の推進
①東京産食材使用店の登録制度
都は、都内産農林水産物を積極的に使用してい
る飲食店を「とうきょう特産食材使用店」として
〈東京産農林水産物を使用した料理例〉
登録し、ガイドブック等により消費者へ広く PR
している。また、島しょ地域の地産地消を推進す
るため、島しょ地域の農林水産物を使ったメニュ
ーを提供する島の飲食店を「東京島じまん食材使
用店」として、今年度から登録している。
出典:産業労働局ホームページ
②「東京味わいフェスタ 2014」の開催
都は平成 26 年 10 月、2020 年東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、東京産
の食材の魅力を国内外に広く発信する「東京味わいフェスタ 2014(Taste of Tokyo)」を
開催した。丸ノ内の有名店シェフが東京産食材を使ったメニューを提供し、東京産農林水
産物の魅力をアピールした。
発信
東京の「味わい」 都内産食材使った料理提供など
ブランド豚「トウキョウⅩ」や東京しゃも、コマツナなど東京産の食材の魅力を伝える「東京味わいフェス
タ」が十~十二日、東京都千代田区の JR 東京駅前にある丸の内仲通りと行幸通りで、初めて開かれる。
都と東京味わいフェスタ実行委員会の主催。舛添要一知事は「世界中から人々が集まるドイツ・ミュンヘン
のオクトーバーフェストのようなイベントにしたい」とフェスタに期待している。
丸の内仲通りは「路上のレストラン」と銘打ち、通りを歩行者天国にしてキッチンカーを並べ、東京駅周辺
に店を構える十人の有名シェフが手掛けるトウキョウⅩやコマツナなどを使った特別料理を提供する。
例えば、フランス料理店「レストラン・モナリザ」は東京しゃもやタマネギ、トマトなどを使ったサンドイ
ッチを出す。中国料理店「CHINESE 青菜」の「汁なし担担麺」には長ネギやコマツナなどが添えられるという。
行幸通りの歩道にはテントが並び、
「東京マルシェ」と題して東京産の野菜や牛乳、伊豆諸島の焼酎、江戸切
子や江戸べっ甲など伝統工芸品を販売する。
(平成 26 年 10 月8日付 東京新聞より抜粋)
(2)安全・安心な農産物への取組
〈左:認証マーク
右:マークを貼付した農産物〉
都は、化学農薬と化学肥料を削減して栽培さ
れた農産物を認証する「東京都エコ農産物認証
制度」を実施している。認証された農産物は認
証マークを表示して販売できるなど、安全・安
心な農産物の地産地消を推進している。
4
今後に向けて
我が国の食料自給率は低下傾向にある。自給率向上のためには、生産から消費まで、そ
れぞれの立場での取組が重要である。都は、安全・安心な東京産農林水産物の生産と消費
の拡大を図り、その魅力を積極的に発信することで、地産地消の取組を推進している。今
後も、2020 年東京オリンピック・パラリンピック等様々な機会を捉え、これらの取組を後
押ししていく必要がある。
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