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実行計画(事務事業編)の改訂について
このところ、電気の温室効果ガス排出係数がうなぎ上りに増加していたが、それも落ち着き
始めています。事の良し悪しは別として、原子力発電所の再稼働の道筋が出来つつあるから
です。『エネルギー使用量は削減できたが、温室効果ガス排出量は増加した』と言いう自治体
も多かったようですが、漸くエネルギーと温室効果ガスの傾向が同調できるようです。
それにしても平成 23 年 3 月 11 日以降、日本のエネルギー問題は楽観視できる状態ではあ
りません。また、地球の温暖化も徐々に進み、日本でも気候変動の影響をモロに受けるよう
な時代です。エネルギー使用量や温室効果ガス排出量は、これまで以上に削減しなければ
ならないのは必須のことです。
ところで、エネルギー使用量の削減は、エネルギー費用の削減でもあり、行財政改革的に
も少なからぬ意味があります。人口 7~8 万人規模の自治体でも、毎年 3 億円以上のエネル
ギー費用を使って行政運営していますので。1%削減は 300 万円です。計画期間 5 年間で毎
年、前年比 1%削減するならば、期間中で 4,500 万円削減できる計算になります。
エネルギーの需給問題、地球環境問題、行財政問題のいずれにしても、これからの自治体
運営において、実行計画(事務事業編)は、必要不可欠な行政計画のひとつとして位置づけら
れるべきものです。もっと、庁内でアピールして、低コスト運営の自治体に変貌できるように、
予算付けしてもらいながら進めるべきものだと思います。
一方、省エネ・温室効果ガス排出量を削減し続けるのは容易ではありません。特に3次計
画以降になっている自治体では、長く取組みを続けていく中で「下げ止まり」状態に陥ってい
るところが少なくありません。これまで以上に省エネ・温室効果ガス排出量を削減するには、
出先施設での取組を強化していくほかないでしょう。
施設レベルでの取組を強化すると言っても、事務局となる環境部門が、直接、施設等での
取組を、指導・強化できるわけではありません。施設数が多過ぎるからではなく(もちろんこれ
も一つの課題ですが)、環境部門が当該施設を所管していない(予算申請も人員配置も出来
ない)からです。
施設等の温室効果ガスを減らすことは、エネルギー使用量を減らすことであり、エネルギー
使用費用を減らすことにつながります。施設等の光熱水費等の需用費を管理するのは所管
課の仕事であり、設備の補修改修や買替に係る予算申請も、環境法令管理も所管課の仕事
であり、一層の省エネや温室効果ガス削減を推進するには所管課の役割のひとつである、と
言っても過言ではない、と思います。実行計画(事務事業編)の改訂の際には、施設所管課、
及び関係各部局の役割と責任を明確に示すべきでしょう。
今まで以上に、施設等での省エネ・温室効果ガス排出量を削減していくために環境部門に
できることは、次の3点です。
①庁内会議の定期的な開催
②適切な情報提供
③側面支援ツールの提供
●庁内会議での上層部への報告は、設備投資計画を円滑に進める好機
温室効果ガス排出量やエネルギー使用量等に関する実績報告は重大事でもないので、
毎年、会議を開催するほどでもない、と考える方々もいますが、それは間違いです。
これからの省エネ・温室効果ガス削減等には、設備投資等も必要であり、ESCOやリース
を含めた多様な資金調達手段の検討も必要になりますので、全庁的な合意形成が不可欠
です。
ある時、急にお金が必要だ、と言っても、庁内幹部たちも納得しないでしょうし、財源の手
当てなく事が前に進むはずもありません。定期的に会議を開催し、エネルギー使用状況等
の報告と共に、設備更新計画と連動した実行計画(事務事業編)の推進についても検討して
いく必要があります。
●環境部門の役割は、情報提供と側面支援
各部門の出先施設での省エネ・温室効果ガス削減は重要ですが、環境部門の施設等で
ないところが多く、やり難いことも事実です。
だからこそ環境部門としては、第一に、実行計画(事務事業編)に基づく進行管理の仕組
みをしっかりと確立しておく必要があります。そして、第二に、各施設を所管する所属(以下、
「所管課」という。)や、当該施設に対する情報提供と側面支援が重要になります。
第一の「実行計画(事務事業編)に基づく進行管理の仕組み」では、環境部門に役割を集
める集中管理型の仕組みではなく、実態に則した『分散管理型の仕組み』にしなければ、効
果的なものとなりません。省エネ・温室効果ガス排出量の削減に関する取組を、各部局、そ
して、施設所管課が、自らの仕事のひとつとして主体的に取り組まなければ、施設の省エネ
は進まないからです。実は、これからの実行計画では、進行管理の仕組みを如何に効果的
なものにするのか、が重要になってきます。
所管課や施設等の取組を強化するために環境部門にできることは、所管課や施設等へ
の情報提供と側面支援です(行為主体者にはなれないので)。例えば、施設等での省エネ
を推進していくには、施設ごとの設備機器等の実態に合わせた省エネ手順書(含管理標準)
を整備して取り組んでいくことになります。設計事務所や建設コンサル等に管理標準の作成
業務を委託するケースを良く見かけますが、専門家がつくる専門的な書類は、専門家でな
い職員が施設管理者となっているところでは無用の長物です。もっと、実態に則したもので
なければ、省エネは進みません。そのための効果的なひな形(ECO ハンドブック等)の提供
や、その作成方法の説明会や研修会、など、環境部門がやるべきことは多々あります。
また、環境部門が直接、施設等を管理するわけではないので、施設等での取組が適切に
実施されているかどうかは、所管課を含めた施設等への環境監査等の仕組みで確認しな
がら、更なる取組を推進していくことになります。
施設レベルでの取組上の留意点
平成 27 年度は、実行計画(事務事業編)を改訂する団体が多そうです。環境省の「地方公
共団体実行計画の策定・改訂の手引き」では、対象範囲に指定管理者や委託施設も含むこ
ととなっていますので、自治体から排出される温室効果ガスは、増大したように見えます。こ
の大きくなった温室効果ガス排出量を今まで以上に削減するには、進行管理の仕組みの見
直しこそが重要になってきます。
(平成 27 年 1 月 鈴木明彦)
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