生物基礎 テレビ学習メモ 第 36 回 今回学ぶこと 物質の循環と エネルギーの流れ 私たち生物は、炭素や窒素などをもとに して体がつくられています。そして、活動 する際にはエネルギーを利用しています。 これらの物質やエネルギーは、それぞれ、 監修講師 どこからきて、どこへいくのか学習します。 井口 藍 調べておこう・覚えておこう 生産者/消費者/分解者/ アンモニウム塩/硝酸塩/硝化細菌/ 窒素固定細菌/化学エネルギー Point 炭素循環 生物の体を構成している主な物質は、動物ではタンパク質、植物では炭水化物であり、タンパ ▼ ク質や炭水化物の構造を主につくっているのは「炭素(C)」である。つまり、生物は炭素を基 本とした体をもっている。 植物は、光合成により大気中の二酸化炭素から炭素を取り込み、それを食べる動物へと移動す る。そして、植物や動物の呼吸により大気中に二酸化炭素として排出される。つまり、炭素は大 気から植物、動物、大気という順に循環している。 一方、炭素を含んだ動物の遺体や排出物、枯れ葉などは、土壌中の細菌類や菌類によって分解 され、二酸化炭素として大気中に放出される。ここにも炭素の循環が存在する。 植物のように有機物を合成する生物を「生産者」、生産者がつくった有機物を栄養分として利 用している生物を「消費者」、さらに、消費者の遺体や排出物、枯れ葉などの有機物を無機物に 分解する生物を「分解者」という。 − 75 − 高校講座・学習メモ 生物基礎 物質の循環とエネルギーの流れ Point 窒素循環 生物の体を構成するタンパク質や DNA には、「窒素(N)」が含まれおり、炭素と同様に生物 には欠かせない元素である。窒素も生態系の中を循環するが、炭素とは経路が異なる。 大気中には約 78%もの窒素が含まれているが、植物はこれを直接取り込むことができないので、 「アンモニウム塩(NH4+)」や「硝酸塩(NO3 -)」として窒素を取り込む。これらの物質は、動物の 遺体や排出物、枯れ葉などを細菌類が分解することでつくられる。特に、アンモニウム塩を硝酸塩 に変換する細菌類を「硝化細菌」といい、この作用により土壌中には硝酸塩が多い状態になってい る。窒素は、生産者、消費者、分解者へと移動し、再び生産者に戻り、生態系の中を循環している。 実は、大気中の窒素を直接利用できる細菌類も土壌にいる。イシクラゲというシアノバクテリ アの仲間や、マメ科の植物の根に共生する根粒菌である。これらを総称して、「窒素固定細菌」 という。これとは逆に、土壌中の硝酸塩を気体の窒素に変える細菌類もいる。これらの作用は少 量だが、窒素は、大気から「窒素固定細菌」、「硝酸塩を窒素に変える生物」を経て大気へ、とい う循環も存在する。 Point エネルギーの流れ 生物の生命活動に必要なエネルギーのおおもとは、太陽の「光エネルギー」である。この光 ▼ エネルギーを、植物が光合成により「化学エネルギー」に変換する。その後、食物網を通して、 有機物に含まれる化学エネルギーは、生産者から消費者へと次々に渡されていく。そして、化 学エネルギーは遺体や排出物、枯れ葉を経由して、分解者に移動する。そして、この全過程に おいて、少しずつ生物から「熱エネルギー」として体外に放出され生態系の外へ出ていく。エ ネルギーは生態系内を循環せず、一方向に流れていくのである。よって、太陽から常に光エネ ルギーの供給がなければ、地球上の生物は生きていくことができないのである。 地球上では海底に堆積している炭素量が最も多いと言われている。海に限 らず、地底に堆積して長い年月が経過したものが石炭などになって、私たち の社会的活動のエネルギー源として利用されている。これは、3億年程前の column もう半歩 先に 古生代に生きていた生物に由来する。つまり、時代を超えての物質循環も行 われているのである。 一方、大気中の二酸化炭素(CO2)は 0.03%と非常に少ないが、温室効果があるので、これによ り地球は程よく暖かく、我々生物が生活できている。石炭などを使いすぎて二酸化炭素量が増える と地球全体が温暖化する。逆に、減りすぎても寒冷化することになる。地球上の炭素の状態もバラ ンスをとる必要がある。 − 76 − 高校講座・学習メモ
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