環境衛生工学 - 石川工業高等専門学校

環境都市工学科
農耕地からの硝酸性窒素流出抑制
農耕地への施肥が硝酸態となって地下水へ流出しています。硝酸態窒素は
人体にも環境にも悪影響を与え、環境基準でも規制がされています。
【農耕地の肥料】
現在、農耕地では収量増加を見込み、肥料を多量に投入しています。この肥料中に含まれるアンモニアは
土壌中の微生物(硝化細菌)の作用により硝酸塩・亜硝酸塩となります。この硝酸塩・亜硝酸塩の形態で作
物は根から窒素を吸収できるのですが、硝酸塩・亜硝酸塩は負のイオンであり、負に帯電している土壌粒子
はこれを保持できません。そのため、施肥をした窒素分の半分は作物に吸収されず、地下水へ浸透している
と言われています。
硝酸塩・亜硝酸塩は人体に害であり、これに汚染された水を乳幼児が飲用した場合には、チアノーゼの症
状を引き起こす、メトヘモグロビン血症にかかりますし、
•メトヘモグロビン血症
亜硝酸塩は胃でアミノ酸と結合し、ニトロソアミンとい
う発ガン性物質を生成します。また、環境への影響も大
•発癌性
飲料水
きく、肥料中の窒素分は湖沼へ流入し、富栄養化の原因
ともなります。このように農耕地への施肥が人、環境に
拡散
施肥
与える影響は大きく、この対策が必要とされています。
Org-N
しかし、品質の良い作物を育てるには多量の肥料を必
N2
NH4+
要とし、現状の農法を変えるのは難しい問題です。そこ
で、作物に吸収されなかった硝酸塩・亜硝酸塩が地下水
硝化細菌
へ浸透する前に除去する方法を考えました。
脱窒細菌
吸収
【バイオレメディエーション】
昨今、環境浄化技術の一つとして注目を浴びているも
NO2NO3のに生物を用いた浄化技術、バイオレメディエーション
があります。本研究では微生物による脱窒で硝酸塩を窒
素ガス化し除去しようと考えています。この微生物は脱
窒細菌と言い、土壌中に存在し、有機物もしくは硫黄を
餌に、硝酸塩を呼吸に用いて活動を行います。この脱窒
細菌を活性化することで、土壌中の硝酸塩・亜硝酸塩
が除去され、地下水への浸透を防止できるものと考え
ています。そのためには、微生物の住処となる微生物
付着担体を土壌へ混入することが有効であると考えま
した。
【木炭】
微生物付着担体として着目しましたのが、消臭材、
吸湿材などに使われる木炭です。これらは木炭の多孔
質である性質を生かして用いられることから、この性
質を微生物付着担体として活用しようと考えました。
土壌粒子では表面に有機物等が付着し、それらが繋ぎ
役となって土という団粒構造を作っています。微生物
はその団粒構造中に存在していますが、多孔質である
木炭はより多くの微生物を保持できると考えます。ま
た、木炭は間伐材から作られ、森林の保護のために間
伐材を有効利用しようと動きもあります。木炭を農耕
地で有効に活用できれば、森林保護の面からも環境保
全に寄与できると考えられます。
流出
硝酸汚染
環境基準10ppm
高野 典礼
(たかの もりひろ)
[email protected]
076-288-8160
【生年月】1976 年 4 月
【職名】助手
【学位】修士(工学)
【学位論文名】下水汚泥と生物付着担体の添加による農耕
地からの窒素流出抑制効果
【学歴・職歴】金沢大学大学院博士後期課程入学(2001), 石
川工業高等専門学校環境都市工学科助手(2003)
【専門分野】環境衛生工学
【研究課題】微生物による環境浄化
【キーワード】農耕地、肥料、硝酸性窒素、脱窒細菌、微
生物付着担体、木炭、間伐材