演題番号13 - 京都府理学療法士会

【第 25回
京都府理学療法士学会】
急性期における股関節可動域訓練方法の
検討
−THA術後患者 1症例を通して−
古川
博章 1)
1)洛和会丸太町病院
リハビリテーション科
【キーワード】
THA
股関節
関節可動域訓練
【はじめに】
近年、急性期リハビリにおいて早期介
入・早期離床の重要性が提唱されてい
る。その中で、手術後の患者において患
部の関節可動域(以下、R
OM)を早期に獲
得することは必要とされる。また、急性
炎症期における関節への負担を減らすこ
とは、疼痛の慢性化や筋スパズムの発生
による ROM制限の予防といった観点から
重要であると考えられる。そこで今回、
THA術後の 1症例を通して、股関節への負
担軽減を目的とした ROM訓練の方法を検
討した。
【症例紹介】
右変形性股関節症と診断された 60 歳代
後 半 の 男 性 で あ る 。6 月 上 旬 に 右
THA(後方侵入)を施行された。
【理学療法評価(術前)】
股関節 ROM(右/左)は、屈曲 60/90、
伸展-5/10、外転 25/30、内転 10/10、股
関 節 90° 屈 曲 位 で 内 旋 10/10 、 外 旋
30/40、股関節 0°位での内旋-10/10、外旋
45/35 であった(単位:deg.)。下肢長
( 右 / 左 ) は 、 SMD80.5/81.5cm 、
TMD75.5/76 ㎝であった。右股関節の疼
痛は、100m程度の歩行でも股関節全体
に出現するとのことであった。独歩での
歩容は、右立脚にて trendelenburg 現象を
認めた。歩行周期全体を通して、骨盤と
大腿骨の分離運動が不十分であった。
【介入方法】
ROM 訓練は、ベッドのヘッドアップ角
度を 0°、30°、45°、60°に設定し、それぞ
れの角度における股関節内外転・屈曲、
内外旋を自動介助運動にて行った。なお
ROM訓練は抵抗感が少なく疼痛の少ない
範囲で実施した。
【経過】
6 月上旬に THA を施行され、翌日より
ROM 訓練を開始した。徐々に R
OMは改善
し、自宅退院となった 18 病日には独歩が
可能となり、日常生活に必要な可動域を
獲得することができた。その後、数回の
外来リハビリを実施し第 40 病日に介入終
了となった。
【理学療法最終評価】
股関節 R
OM(右/左)は、屈曲 90/90、伸
展 5/10、外転 35/30、内転 10/10 であっ
た(単位:deg.)。胡坐座位可能となっ
た。SMD は 81.5/81.5 ㎝となり左右差は
消失した。触診上、股関節周囲に過緊張
の部分は認められなかった。股関節の疼
痛はほぼ消失した。独歩での歩容は、右
立脚での trenderenburg 現象は残存した
が、歩行中の骨盤と大腿骨との分離運動
は改善した。
【考察】
股関節は可動性と安定性が要求される
関節である。今回は、可動性に着目し訓
練方法を検討した。股関節は球関節であ
り、多様な動きが要求されると考えられ
る。そこで、ベッドをヘッドアップしな
がら股関節の相対的な屈曲角度を変える
ことで、各屈曲角度での内外転、内外旋
可動域の改善を図った。骨盤・大腿部の
ベッドとの接触面積を広くしたこの方法
により、ROM訓練中の関節への負担を軽
減することができた可能性が推察され
た。結果、疼痛の程度は少なく股関節の
十分な ROMが獲得できたと考えられた。