【第 25回 京都府理学療法士学会】 急性期における股関節可動域訓練方法の 検討 −THA術後患者 1症例を通して− 古川 博章 1) 1)洛和会丸太町病院 リハビリテーション科 【キーワード】 THA 股関節 関節可動域訓練 【はじめに】 近年、急性期リハビリにおいて早期介 入・早期離床の重要性が提唱されてい る。その中で、手術後の患者において患 部の関節可動域(以下、R OM)を早期に獲 得することは必要とされる。また、急性 炎症期における関節への負担を減らすこ とは、疼痛の慢性化や筋スパズムの発生 による ROM制限の予防といった観点から 重要であると考えられる。そこで今回、 THA術後の 1症例を通して、股関節への負 担軽減を目的とした ROM訓練の方法を検 討した。 【症例紹介】 右変形性股関節症と診断された 60 歳代 後 半 の 男 性 で あ る 。6 月 上 旬 に 右 THA(後方侵入)を施行された。 【理学療法評価(術前)】 股関節 ROM(右/左)は、屈曲 60/90、 伸展-5/10、外転 25/30、内転 10/10、股 関 節 90° 屈 曲 位 で 内 旋 10/10 、 外 旋 30/40、股関節 0°位での内旋-10/10、外旋 45/35 であった(単位:deg.)。下肢長 ( 右 / 左 ) は 、 SMD80.5/81.5cm 、 TMD75.5/76 ㎝であった。右股関節の疼 痛は、100m程度の歩行でも股関節全体 に出現するとのことであった。独歩での 歩容は、右立脚にて trendelenburg 現象を 認めた。歩行周期全体を通して、骨盤と 大腿骨の分離運動が不十分であった。 【介入方法】 ROM 訓練は、ベッドのヘッドアップ角 度を 0°、30°、45°、60°に設定し、それぞ れの角度における股関節内外転・屈曲、 内外旋を自動介助運動にて行った。なお ROM訓練は抵抗感が少なく疼痛の少ない 範囲で実施した。 【経過】 6 月上旬に THA を施行され、翌日より ROM 訓練を開始した。徐々に R OMは改善 し、自宅退院となった 18 病日には独歩が 可能となり、日常生活に必要な可動域を 獲得することができた。その後、数回の 外来リハビリを実施し第 40 病日に介入終 了となった。 【理学療法最終評価】 股関節 R OM(右/左)は、屈曲 90/90、伸 展 5/10、外転 35/30、内転 10/10 であっ た(単位:deg.)。胡坐座位可能となっ た。SMD は 81.5/81.5 ㎝となり左右差は 消失した。触診上、股関節周囲に過緊張 の部分は認められなかった。股関節の疼 痛はほぼ消失した。独歩での歩容は、右 立脚での trenderenburg 現象は残存した が、歩行中の骨盤と大腿骨との分離運動 は改善した。 【考察】 股関節は可動性と安定性が要求される 関節である。今回は、可動性に着目し訓 練方法を検討した。股関節は球関節であ り、多様な動きが要求されると考えられ る。そこで、ベッドをヘッドアップしな がら股関節の相対的な屈曲角度を変える ことで、各屈曲角度での内外転、内外旋 可動域の改善を図った。骨盤・大腿部の ベッドとの接触面積を広くしたこの方法 により、ROM訓練中の関節への負担を軽 減することができた可能性が推察され た。結果、疼痛の程度は少なく股関節の 十分な ROMが獲得できたと考えられた。
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