人工股関節全置換術後の術後早期の歩容に関して

P1-D21
九州理学療法士・作業療法士合同学会 2016
人工股関節全置換術後の術後早期の歩容に関して
動画フィードバックの影響
山﨑
和博(PT),濱田 哲郎(PT),今吉 彩(PT),髙見 純也(PT)
独立行政法人労働者健康安全機構 九州労災病院 中央リハビリテーション部
Key Words
人工股関節全置換術・歩行・動画フィードバック
【はじめに】
算出後,エクセルにて三角関数を用い算出した。動画
当院の人工股関節全置換術(以下,THA)のクリニカ
フィードバックの効果の検討は,X 線学的脚長差,脚延長
ルパスは 3 週間であり,経過良好の症例では術後 2 週
量を除いた各項目を 2 群間で比較し,立脚後期の術側股
前後で退院となる。術後早期に歩行能力は順調に改善す
関節伸展角度の変化量と立脚中期の骨盤傾斜角の変化量
るが,歩容の改善には至らない症例を経験する。歩容改
に影響を与える要因についても検討した。統計学的解析
善へのアプローチとして鏡での視覚的フィードバックを用
には 2 群の比較に Mann-Whitney 検定,要因の検討に
いることが多いが,前額面での観察が中心となり矢状面
は重回帰分析を用い,有意水準は 5%とした。
の観察は容易ではない。一方,近年タブレット端末の普
【結果】 及により動画撮影とその観察が簡便化され,容易に歩行
2 群間において各項目に有意差は認めなかった。重回
観察が可能となり歩容改善を目的としたフィードバックに
帰分析より,立脚後期の股関節伸展角度の変化量は術後
も有用と考える。そこで本研究の目的は,術後早期の歩
2 週の股関節伸展角度と非術側内転角度で弱い関連(p
容に影響する要因と動画フィードバックの効果を検討する
<0.01,R2=0.340),立脚中期の骨盤傾斜角度の変
こととした。
化 量 は 脚 延 長 量と非 術 側 内 転 角 度 で 弱 い 関 連(p<
【方法】
対象は平成 26 年 4 月からの 1 年間に当院で THA を
0.01,R2=0.280)を認めた。
【考察】 施行した 132 名の中から,本研究に同意が得られクリニ
THA 術後の歩容の改善には様々な要因が関与する。
カルパスに沿ってリハビリを実施できた初回片側 THA 例
特に術後早期では,術部の疼痛,関節可動域,筋力など
とした。そのうちデータに不備がなく術後 1 週で杖歩行
機能的な面の改善が不十分である。そのため,術後早期
が自立可能であった 36 名を抽出し,平成 26 年 4 月か
の THA 患者の歩容に対し動画フィードバックを行っても,
らの半年間をコントロール群(19 名,69.9±5.4 歳),
十分な効果が得られなかった。また術後早期の歩容改善
残 り の 半 年 間 を 動 画 フ ィ ード バ ッ ク 群(17 名,
には強い関連を認める項目はなく,個々の患者ごとに歩
70.3±6.7 歳)として 2 群に分類した。動画フィードバッ
クは術後 1 週から 2 週の間で iPad Air を用い実施した。
容改善の要因を抽出しアプローチをする必要がある。
【結論】
調査項目は術側の術前・術後 1 週・2 週,および非術
THA の歩容改善には動画フィードバックの影響は認め
側の術後 2 週の股関節可動域(屈曲,伸展,外転,内転)
なかった。また,動画フィードックは機能的な項目への影
および等尺性筋力(股関節外転,膝関節伸展),walker
響も認めなかった。術後早期の歩容改善には様々な項目
歩行の開始・病棟自立の術後日数,杖歩行の開始・病棟
が影響する。
自立の術後日数,術後 1 週・2 週の 10m 歩行時間(快適・
最速歩行)と歩行時の疼痛(VAS),術前・術後 2 週の
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は当院倫理委員会の承認(承認番号 13-17)
X 線学的脚長差,脚延長量,術前・術後 2 週の骨盤側
を得て実施した。対象者には研究の趣旨およびプライバ
方傾斜角,術後 1 週・2 週の立脚後期の術側股関節伸
シー保護に関して十分に説明を行い書面にて同意を得た。
展角度とその変化量,立脚中期の骨盤傾斜角とその変化
本研究は独立行政法人労働者安全福祉機構「病院機能向
量とした。歩行時の各角度は矢状面,前額面の歩行をデ
上のための研究活動支援」の一部によるものである。
ジタルビデオカメラにて撮影し,得られた動画より目的の
静止画を取り出し,画像解析ソフト Image J にて座標を