空室対策としての「高齢者・障がい者向 けサポート賃貸住宅」のあり方

コンサルティング 実 践 例
― 札幌の事例 ―
高橋 恭平
株式会社 タカラ 専務取締役
はじめに
当社は札幌で昭和58年7月設立以来、一般住宅・
[たかはし・やすひら]不動産流通会社勤務を経て、1987年(株)タカラ
入社、2007年より専務取締役。08年(株)タカラビオトープ代表取締役就
任(兼任)、09年(株)ろく舎代表取締役就任(兼任)。
公認 不動産コンサルティングマスター、マンション管理士、管理業務
主任者。(一社)北海道マンション管理士会副理事長。
の 高 齢 者 数 は2015年 に は3,395万 人( 全 人 口 の
26.8 %) で、2025年 に は3,650万 人( 全 人 口 の
30.3%)
、2055年には3,626万人(全人口の39.4%)
事業用賃貸住宅の販売・仲介と管理を主たる業務とし
まで増加していきます。世帯主も65歳以上の単身世
て行ってまいりました。特に昭和62年後半からは札
帯や夫婦のみの世帯が世帯数全体に占める割合は
幌においても不動産バブルが始まり平成4年の初めま
2015年 で は23.1 % で す が、2025年 で は25.9 %、
で続きましたが、その5年の間に管理戸数も約5,000
2055年では28.0%まで増加する見込みです。特に都
室増加しております。その当時は東京、神奈川、千葉、
市部では75歳以上の人口は急速に増加し、もともと
埼玉を中心に、主に相続対策、事業用買換え特例によ
高齢者人口の多い地方でも緩やかに増加します。埼玉
る節税のために札幌の物件を買われた方が多かったよ
県では2010年の58.9万人(8.2%)が2025年には
うです。人口が年1.5万~2万人増加していたため、
117.7万 人(16.8 %、 お よ そ2.00倍 )
、東京でも
新築・中古物件問わず、大量供給にも関わらず入居に
2010年の123.4万人(9.4%)が197.7万人(15.0%、
困ることはありませんでした。その後も人口増加は鈍
約1.60倍)まで増加します。すでに出生率も年々低
化はしましたが、毎年7千人~1万人ぐらいは増え続
下し、日本全体の人口も減少に入っていることは周知
け、現在では約194万人となっています。当社の管理
のとおりです。
棟数も増え続け現在は384棟、管理戸数も10,800戸
までになっています。
賃貸としてのニーズの変遷
新築賃貸住宅の増加による入居率の低下
2003年ごろより札幌での投資ファンドの資金によ
る建築ラッシュが、特に中央区の創成川東部を中心に
当社が管理業を始めたころの賃借人は、物件数が少
始まりました。新築のしかも高層タワーマンションが
なかったこともあり、立地、間取り(広さ)
、賃料ぐ
多く建ち並び街を一変させる勢いでした。この賃貸マ
らいが決め手のポイントでしたが、近頃はこれらの要
ンションの大量供給が2008年のリーマンショックま
件の他に部屋のデザイン性、セキュリティ、IT関連
で 続 く の で す が、 そ の 間 わ ず か5年 く ら い の 間 に
設備、アメニティ関連の設備等、様々な要素が加わっ
2,500室以上の管理戸数の増加がありました。しかし
ていますので、オーナーの設備投資額も増加している
ながらその反動として中央区、豊平区、白石区などの
のが現実です。特に築年が経っている物件は単身者用
築年数の経っている物件からの移動が進み、旧タイプ
で20㎡~25㎡タイプの部屋が主流でしたが、現在で
のマンションの稼働が相当な勢いで低下してしまいま
は30㎡~40㎡が多いようです。狭い部屋については
した。当社としてもこの頃から真剣に高齢者の受け入
2部屋を1部屋に間取り変更する提案も考えましたが、
れを検討し、具体案を練ってまいりました。
費用がかかる割には賃料アップにつながらないので、
現実的ではありませんでした。
高齢化と少子化が進む現状
日本の高齢者の人口動態を見てみると、65歳以上
空室対策による高齢者・障がい者の受け入れ
当初は既存物件に高齢者や障がいをもった方々に入
居していただくことには問題が生じるのではないかと
の心配はありました。高齢者・障がい者を入居させた
2014. 12 ◆ 不動産フォーラム21
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P ra c t i c e E x a mp l e o f C o n s u l t i n g
空室対策としての「高齢者・障がい者向
けサポート賃貸住宅」のあり方