Title Author(s) Citation Issue Date Type ポーラログラフィーによる食品中の臭素酸塩の定量のた めの予備的研究 尾崎, 成子 一橋論叢, 111(3): 603-616 1994-03-01 Departmental Bulletin Paper Text Version publisher URL http://hdl.handle.net/10086/10836 Right Hitotsubashi University Repository {135) ポーラログラフィーによる食品中の臭素酸塩の定量のための予備的研究 ポーラログラフィーによる食品中の 臭素酸塩の定量のための予備的研究 尾 崎 成 子 いで、使用基準が小麦粉に対して、臭素酸としてo・冨 の後動物実験を経て一九八二年発ガン作用を示すこと 七六年臭素酸カリウムの遣伝毒性が明らかになり、そ 改良剤として、広く用いられてきた。ところが、一九 を受けて以来、小麦粉改良剤また魚肉練り製品の品質 ることから、一九五三年厚生省から食品添加物の指定 度に抑制したりグルテンの性質を向上させる働きをす 臭素酸カリウムは、タンバク質分解酵素の活性を適 A.O.A.C法では、ヨウ素滴定法が採用されて 法と比色分析法によって定量される。常法、たとえば 小麦粉中の徴量臭素酸カリウムは、主にヨウ素滴定 かつ高精度な分析法が必要とされる。 は、今まで以上により共存物質の妨害の少ない高感度 れた。したがって、食品中の臭素酸カリウムの定量に ので、﹁最終食品には残存しないこと﹂が条件付けら 過程で臭素酸カリウムは分解され臭化カリウムとなる 胴涛①q以下からo・8oq\斥困以下に引き下げられ、製バン が報告された。この報告を受けて、臭素酸カリウムの いる。臭素酸イオンが酸性溶液中でヨウ化カリウムと 1 緒言 魚肉練り製品への弾力保持剤としての使用は禁止され、 反応して生じたヨウ素を、デンプンを指示薬としてチ ︵2︶ ^1︺ 小麦粉改良剤としての使用もバン以外禁止された。次 603 平成6年(1994年)3月号 (136〕 第3号 一橋論叢 第111巻 検出限界である。一方、鋭敏な呈色反応を利用した比 ムo・冨oq\膏の定量が可能であるが、使用基準はほぽ 分離操作を必要とする。この方法により臭素酸カリウ 化カリウムと反応して正の誤差を与えるから、面倒な 酸塩やヨウ素酸塩が共存すると、これら酸化剤もヨウ カリウム標準溶液で逆滴定する方法がとられる。過硫 硫酸ナトリウム溶液を加えたあと、過剰分を目ウ索酸 ム含有量は徴量であるから、あらかじめ既知量のチオ オ硫酸ナトリウム標準溶液で滴定する。臭素酸カリウ イルコビッチ式が与えられている。 われることによる。拡散電流朴について以下に示す ずる結果、補給が起こり、補給は拡散によってのみ行 剤が電解され、界面での濃度がOになり濃度勾配が生 グラムが得られる。この現象は、徴小電極界面で復極 と電解電流が流れ、その後定常となるようなポーラロ 電圧を自動的に変化させるとき、一定の電圧に達する 加されている電解液について、徴小電極と対極間の加 電解質︵支持電解質︶が復極剤に比べて十分多量に添 酸化性物質︵復極剤︶と、電極反応に直接関係しない イルコビヅチ式より、電解液の組成、温度およぴ滴下 朴1−宗・ミ、・O・b長・§芸・、言 色分析法は、適当な発色剤と吸光度の測定波長を選択 することにより、高感度かつ共存塩の妨害も少なくで きるので、精度のよい迅速法として、徴量成分の定量 に有利である。ヨウ素酸塩をはじめ多くの酸化剤の妨 害を小さくするためのマスキングの方法や発色条件、 および共存塩と区別できる臭素酸塩に特異な呈色反応 を用いた方法が報告されているが、制約によって少な ^ 3 ︶ 人 5 ︶ ポーラログラフ法は一種の電気分解法であって、精 水銀電極の特性など電解条件を一定にすれぱ、拡散電 からず感度が低下する。 度ならぴに迅速性に優れている。被還元性あるいは被 604 1137) ポーラログラフィーによる食品中の臭素酸塩の定量のための予備的研究 能となる。ポーラログラフ法は酸化還元反応を利用し 流朴は濃度oに比例することになり、定量分析が可 原液とし、濃度を−・8H×昌■岨昌o;昌.蜆として使用し ラスコに移し入れ、標線まで水を加えた。これを標準 物でも被還元性の結合や原子団をもつ化合物は、ポー 塩化カリゥム溶液︵H,o旨o;昌1。︶を調製し、使用し 支持電解質一塩化カリウム特級品を水に溶かして、 た。 ラログラフィーによる定量分析が可能であり、食品中 た方法であるから、ほとんどの金属イオンや有機化合 の徴量分析に広く応用されている。臭素酸塩がその還 して、塩化ランタン溶液︵ω.ω×昌.阯昌o;∋、ω︶を調製 た。また、塩化ランタン︵7水塩︶一級品を水に溶か ^6︶ 元反応によって電解還元のポーラログラムを与えるこ よって定量するための基礎研究として、塩化カリウム 本研究では、臭素酸カリウムをポーラログラフ法に た方法は確立されていない。 の臭素酸カリウムの定量にポ⊥フログラフィーを用い とについては多くの研究が行われてきたが、小麦粉中 溶液︵o.H訳︶を調製し、使用した。 極大抑制剤一ぜラチンを温水に溶かして、ゼラチン 液︵O自H曽∼HH。竃︶を調製し、使用した。 はいずれも特級品を用い、ブリトン・ロビンソン緩衝 緩衝液一リン酸、ホウ酸、酢酸、水酸化ナトリウム し、使用した。 ︵7︶−︵17︶ ならびに塩化ランタンを支持電解質に用いたときの臭 その他一塩化カルシウム︵2水塩︶、リン酸ニアンモ 2.2 装置およぴ測定方法 水溶液にして使用した。 ニウム、硫酸アンモニウムはいずれも特級品を用い、 素酸カリウムのポーラログラフ的挙動を調べた。 2 実験 臭素酸カリウム標準溶液一市販特級品H、雪HH①qを ○宙は、o︸メータ東亜電波工業製曽峯−︸>型を使 2.1 試薬 はかりとり、精製水︵以下、水︶に溶かし、HHメスフ 605 平成6年(1994年)3月号 1138〕 第111巻第3号 一橋論叢 極︵ω・O.貝︶を使用した。水銀ダメの高さは8o昌と カリウム寒天を詰めた。参照電極には飽和カロメル電 した。電解セルはH型のものを用い、液絡都には塩化 ポーラログラフは、島津製作所製肉勺−呂型を使用 化させ、ポーラログラムに与えるo匡の影響を調べた。 用いた場合、緩衝液を加えて勺■Hあ∼畠の範囲で変 タンの、2種類を用いることとした。塩化カリウムを 解還元を活発にし波高の増加が期待できる塩化ラン 支持電解質には、最も一般的な塩化カリウムと、電 2.3 定量条件の検討 し、一定に保った。滴下極の水銀の流出速度§およ 塩化ランタンを用いた場合、極小現象抑制のために添 用し、室温で測定した。 ぴ滴下時間、は、次の2通りであった。 加するぜヲチン濃度をo∼o・昌訳の範囲で検討した。 液︵o.H昌o;昌.o︶一〇二畠﹁o・雷‘閉回路︶。 ○昌■阯︶一〇葭H.o。一開回路︶、“1−ドミω︵塩化カリウム溶 を調べた。それぞれ最適条件を決めたあと、臭素酸カ ∼竃dの範囲で変化させて、温度による波高への影響 いずれの場合についても、それぞれ測定温度を旨 ︵13︶ A一§1−H.8昌田q﹃、︵塩化カリウム溶液︵PH目o− B一§HH衰昌①qω、、︵塩化ランタン溶液︵ω.ω×旨,蟷 リウム濃度o∼曽X昌.凸目O;昌,岨の範囲で検量線を 2.4 定量操作 作成した。標準試料による再現性の確認も行った。 畠o;旨.岨︶一〇q①−。o.o冒ぎ開回路︶、、Hべ.竃ω︵塩化ラ ンタン溶液︵ω1ω×昌.阯昌o;昌.岨︶一①q①−.ob冒渋一1 典型的な定量操作は、次のとおりである。臭素酸イ 9鶉<一閉回路︶。 試料溶液を電解セルに移し入れ、水素を旨分間通 小麦粉からの抽出溶液または臭素酸カリウム標準溶液 オンとしてO∼H,O×旨⊥昌O−︵S.O∼Hω冒Oq︶を含む、 気して溶存酸素を除去し、通気を止めてから、垣温水 槽中でポーラログラムを測定した。波高およぴ半波点 の作図は交点法によった。 を、8旨−メスフラスコにとる。これに塩化カリウム 606 (139〕 ポーラログラフィーによる食品中の臭素酸塩の定量のための予備的研究 で標線まで満たす。支持電解質に塩化ランタンを用い 溶液︵;昌o;旨.蜆︶㎝邑を加えて、o︸−・o。の緩衝液 ﹂貞ミ﹂o自︶はo・H鵠<であり、ネルンスト式およぴ ぴ波高の変化を示す。貞﹃o︸図における傾斜︵1 ことがわかる。雲旧﹄に、o=の変化に伴う畑竜およ イルコビッチ式から理論的に導かれる傾斜o・冨o。く る場合は、臭素酸イオンとしてo∼o.−×旨−凸昌〇一︵s. o∼H。ω目胴︶を含むように、g邑メスフラスコにと 波形は良好で対称性があるが、傾斜、−﹂畑ミ﹄o①q︵“\ ︵曽d︶とは一致しない。波形解析図をヨ閑・ωに示す。 昌−、さらにゼラチン溶液︵o・H訳︶N昌−を加えて、水で ボー“︶より反応に関与する電子数§を求めると、これ り、これに塩化ランタン溶液︵簑X昌.蜆昌O−象.蜆︶蜆 標線までうすめる。いずれかの方法で調製した試料溶 らはいずれもs︿Hであり、次式に示す6電子が関与 なわち、臭素酸イオンの還元波は非可逆波である。 する還元反応︵§1−o︶に相当する波とはならない。す 液について、8甘o.Ndの恒温槽中においてポーラロ グラムを測定し、波高およぴ半波点を交点法によって 求める。 ︸﹃O阯.十①“十①=、π団﹃.十ω昌阯O 塩化カリウム溶液︵o,H昌o;昌.阯︶を支持電解質と る影響 3.1 臭素酸カリウムのポーラロクラムと口■によ ^11︶・︵18︶ 型のイオン対が拡散種であるのに対して、b匡ト以下 が正電位の側にずれるのは、o︸︷以上では穴十︸﹃p1 く、大きな過電圧が必要とされる。酸性溶液中で畑忘 卑o。.1←零.の還元は非常に電解還元されにく し、種々のo︸で得られた臭素酸カリウム溶液のポー 1←卑、の還元は比較的低い電位で起こるからであ 3 結果およ ぴ 考 察 ラログラムを雲帽一−に示す。o=が高くなるにつれて、 ると考えられる。したがって、定量にはなるべく低い o︸、すなわちo自−.o。を最適条件とした。 では非解離の曽卑O蜆分子が拡散種であり、︸卑O岨 半波電位畑盲は負電位の側に移り、波高は著しく小さ くなって、o■σ以上になるとほとんど波が現れない 607 - i l 3 111 ) - 6 (1994 F) 3 j - (140) →・.1・← pH1.8 pH2.7 口H3−4 ⊥ PH4.5 4 Q' 2μ^ T :- pH5. o o o o D Fig- l V vs S.C.E. Polarograms of Potassium Bromate 4.00X l0-4 mol dm 3 Br03- In KCI (O. Imol du] 3) 80 -1.0 60 E E CJJ H u :1' 40 ;> e, ¥ :> c:S LL, 20 -0.5 2 3 4 5 6 plt Fig* 2 Effect of pll O Wave height ・ Etl2 4.00x l0-4 mol dm 3 Br03- in KCl(O_ Imol dm 3) Sens. 20 ,JL A/ 200ilE! 608 (141) - : ' 7 7 7 4 -}C '" (7) :( ) :J :a)t:d a) Pc 1 f 8 pH3. 4 pH2 . 7 pH4. 5 ¥ 2v vs S.C.E Fig. 3 Log Plots of the Wave of Fig. 1 ul ω ω ω 15〕 ㈹ q, :: ⊥ 5μ^ T 一→O,2剛← -0.5 -0.5 Fig. 4 -O. 5 -O. 5 -0.5 -0.5 V vs S.C.E. Polarograms of Potassium Bromate 1. OOx l0-3 ,uol dm 3 Br03- in LaCi:}(3.3x 10-3mol dm 3) Conc.of Gel (4) O. 005%. 609 (1)0.000%. (2)0.001%. (3]0.003%. (5)0.008%. (6)0.010% Effect of the Concentration of Gelatin Conc. of Gel, (%) id (mm) ') El'2 (V) a) 0.000 67.5 - O .63 0.001 70.0 - O.64 0.003 68.0 - 0.66 0.005 69.0 - 0.67 0.008 68.0 -O.71 0.010 69.5 -0.72 *) 1.00x 10-3 mol dm 3 Br03- in LaC13 (3.3 x l0-3 mol dm 3) Sens, 50pAl200 mm, Damp. 3. オンがつくる電気二重層構造の変化に関係していると 溶液︵ω6×岩ム昌O− わりに塩化ランタン の波高を得ることができるので、低濃度の試料を精度 特に低いo■を必要としなくても、定量に十分な感度 指摘されている。塩化ランタンを支持電解質とすると、 ︵13︶ 庄昌一阯︶を支持電解 よく定量できる。 塩化カリウムの代 質に用いると、緩衝 た。支持電解質に多 ンの還元波が得られ とおり、臭素酸イオ ても、雪旧﹄に示す 添加したぜラチンの影響を調べた結果を、■き5−に かに減少する︵雲閃﹄︶。この極小現象の抑制のために ラムでは、1箒∼まく<ωω。O.甲で限界電流がわず 塩化ランタン溶液中の臭素酸カリウムのポーラログ 3一2 ゼラチンの添加による影響 液で酸性を保たなく 価陽イオン︵く、。︶ ぜラチン濃度の増加に伴って貞高は負電位の側に 示す。 解還元されやすくな 移る。波高にはほとんど影響がないが、ぜラチン濃度 の塩を用いると、電 ることについては、 いる。特にランタンイオンによって虫ミが正電位の側 ︵︸己蟷1︶一、,茗一十が拡散に関与するためと説明されて チン濃度の最適条件を9oε訳とした。 らないように、塩化ランタン溶液を用いた場合のぜラ なくなる。極小現象を抑制し、しかし波形が不良にな 度がo.8ω訳以上でIH・蜆く付近の限界電流の減少は の増加とともに波形の対称性がくずれる。ぜラチン濃 にずれることについては、滴下極表面へのランタンイ ︵19︶ オンの吸着や、ランタンイオンと結びついた臭索酸イ 陽イオンの価数によって形の異なる錯イオン竃、十 Table 1 平成6年(1994年)3月号 (142〕 第111巻第3号 一橋論叢 610 (143) ポーラログラフィーによる食品中の臭素酸塩の定量のための予備的研究 14.7 71.0 -0.55 15.0 71 .O - o.74 20.2 76.5 - 0.54 20.2 76.0 25.7 82.0 - o .54 25.0 81.5 -0.73 -0.74 29.7 85.5 -0.53 29.5 85.5 - o. 75 35.6 92.0 - o. 53 35.6 92.0 -0.75 3.3 波高に及 た。 であるので、昌片o.Ndにおいて測定を行うこととし 感度はよくなるが、常温付近でも感度、精度とも十分 ぼす温度の影響 度を変えて測定し 3.4 検量線 ■■冒−o旧に、温 たポーラログラム し、o=H.o。で、臭素酸カリウム標準溶液o﹄∼Ho。。o× 塩化カリウム溶液︵;昌o;昌1。︶を支持電解質と 昌.凸昌o−ま1、を用いて、曽1+竃dにおいて検量線を の波高およぴ貞、 を示す。 作成した︵ヨ①﹃﹄︶。臭素酸カリウム濃度は昌、蜆∼昌.阯 ム濃度をo.N∼8×昌一、昌o;昌.阯に変化させて塩化 波高の温度係数 で−1ω訳であり、 ランタン溶液︵ω。ω×昌よ昌o−ρ昌−阯︶のポーラログラ ヨOこ昌−阯の広範囲にわたって、波高との間に原点を これらの値は正常 ムを測定し、得られた検量線を昌甲㊥に示す。濃度と は塩化カリウム溶 な拡散電流の温度 波高とは厳密には正比例していない。これは、一律に 通る良好な直線関係があることがわかった。 係数の範囲︵H 等しい量のぜラチンを添加したため、臭素酸カリウム 液中でH,N訳、塩 ∼N訳︶にある。 の濃度が低いときと高いときとではぜラチンの影響が ぜラチン濃度をO・O冒訳に一定とし、臭素酸カリウ 温度の上昇ととも 異なり、波形、波高に差が現れることによると考える。 化ランタン溶液中 に波高は増大して 611 Temp. (iC ) b] id (mm) b) El/2 (V) b) E;,2 (V) ') (mm) ') Temp ( C ) ') Effect of Temperature Table 2 *) 4 OOxl0-4 mol dm 3 BrO3 in KCl(0.1 mol dm 3), pH 1.8, Sens 20 pAl200 mm, Damp. 2. b) 4.00XI0-4 mol dm 3 Br03- 'n LaC13(3.3xl0-3 mol dm 3), gel. 0.004%, Sens. 20 pAl200 mm, Damp. 3. - i i 111 ; f 3 ・ 6i (1994 p) 3; (144) J 50 (1) (2) (3) E lOO to q, J:: a' >( 50 o O. 5 1. O l. 5 2. O Con(:. of Br03- (Elmol dm 3) Relation between Concentration of Brol!!ate and Wave- height Fig. 5 Supp.elecLr. KCl(0_1 mol dm 3). pfl 1.8. Sens- (1)5,lA/200mll]. (2)20LLA/200nm]. (3)50,lA/200mm 150 (1) (3) (2) E s; lOO be e, e, / / ,Q 50 / / l ..- f O O. 5 1. O 1. 5 2.0 Conc. of Br03- (mmol dm 3) Fig- 6 Relation between Concentration of Hromate and Wave-height Supp.electr. l.aC13(3.3XI0-3 Dlol dp]-3), gel. 0.00496. Sens. (1)5,LA/200mm. (2)201LA/200m!!1. (3)50,lA/200Rnn 612 (145) ポーラ目グラフィーによる食品中の臭素酸塩の定量のための予備的研究 したがって検量線の作成には多数の標準溶液を使用す 硫酸アンモニウム墓訳、炭酸カルシウム竃訳、硫酸 と亭を比較するとわかるように、塩化ランタンを支 直線であると近似できる。この濃度範囲では、雲甲ぎ アンモニウム、硫酸アンモニウムである。炭酸カルシ 素酸カリウムと共存が予想される水溶性塩は、リン酸 麦芽・こうじ・酵素などが8﹄訳である。そのうち臭 カルシウム鶉訳、臭素酸カリウム冨訳、デンプン・ 持電解質とするほうが、塩化カリウムの場合より波高 ウムは酸性溶液中で可溶であるから、カルシウムイオ る必要がある。しかし、N.O×昌−凸昌O;昌−阯までは、 の測定が容易で有利である。 ンの共存については塩化カルシウムを用いて検討した。 臭素酸カリウム濃度をトo×昌⊥昌◎;旨■阯とした、 昌o;昌.阯、硫酸アンモニウムミ×昌.蜆ヨoこ目−岨、塩 き×昌■、昌Oこ昌−阯、リン酸アンモニウム鶉×昌−阯 組成から算出したモル比をもとに、臭素酸カリウム o■−・o。の塩化カリウム溶液︵9H昌o;昌.蜆︶、およぴぜ 化カルシウム員蜆XHo、舳旨o;∋.阯となるように混合 3.5 再現性の確認 ラチン9os訳添加の塩化ランタン溶液︵ω.ω×昌.餉 溶液を調製し、支持電解質に塩化カリウム溶液︵o.H 昌o;旨.阯︶を用いて、o曽Hあでポーラログラムを測定 昌o;昌.。︶のポーラログラムを、それぞれ5回繰り返 し測定して、波高の再現性を検討した結果、変動係数 した。リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化 臭素酸カリウムは、単独で用いられるよりもイース 3.6 共存物質の影響 電位の側にずれるが、波形は良好で、波高には影響が 波のみが得られ、員高は共存塩の濃度に影響されて負 液中で波を示さない。共存下では臭素酸イオンの還元 はそれぞれo・s訳とo・3訳であった。 トフードの1成分として使用される。市販のイースト 見られなかった。 カルシウムは、いずれも単独では酸性塩化カリウム溶 フードの組成例を示すと、リン酸アンモニウム①・①訳、 ︵1︶ 613 ! 6i (1994 ) 3 ; - (146) i (3) (2) +) T C:: a; (1) 0'5LIA l! U O Fig. 7a -0.5 -L.O V vs S.C.E. PolarograJ]s of Potassium Bromate Supp.electr. KCl(0.Imol dm 3), pHl.8, Conc.of Br03 (1)0.40X 10-4 mol dm s, (2)0.60x 10-4 Mol dn -3, (3)0.80XI0-4 mol dm 3 JL (4) (3) (2) T ) ,:: Q, 0'5LtA (1) :, U O Fig. 7b -O. 5 -1.0 V vs S.C.E. Polarograll]s of Potassium Bromate Supp.electr. LaC13(3.3x l0-3 mol dm 3) . gel.0.004%. Conc.of Br03 (1)0.40x 10-4 mol dm 3. (2) 0.60X 10-4 mol dn -3. (3)0.80xl0 4 mol dm 3. (4) 1.00X l0-4 mol dm 3 614 1147) ポーラログラフィーによる食品中の臭素酸塩の定量のための予備的研究 塩化ランタンを支持電解質に用いる場合、リン酸塩 る。 が、この方法では必要としないので、操作が簡単とな ︵2一宍ま⋮ぎ一..§︹ミき§き県ト§冨防県 店︶。 顕雄、第6版、D−五二三頁︵一九九二年、廣川脅 −四三五頁︵一九七三年︶、石館守三、鈴木郁生、谷村 ︵1︶ 刈米達夫﹃食品添加物公定書解説書﹄第3版、B 参考文献 赦いただきたい。 不都合が生じ、大変読みづらくなっていることを、.こ容 に印刷されたことによって、一部、数値・記号の表記に [追記] 本稿は横書きで執筆されたものであり、縦書き 幸教授、ならびに御代川貴久夫教授に感謝いたします。 原稿の執筆にあたり、こ指導くださいました、本学矢野敬 さいました、故浅岡博元本学教授に感謝しますとともに、 最後に、本研究を行うにあたりいろいろと,こ教示くだ 分析法として期待できる。 本法は、再現性のよい迅速法として、かつ高感度な はランタンイオンと沈殿を生じてしまうので、リン酸 塩の除去など試料溶液の調製に検討が必要である。 4 むすぴ 臭素酸カリウムは、o自H.o。の塩化カリウム溶液︵旨 旨o;昌.阯︶中、ならぴにゼラチン9o冒訳添加の中性 塩化ランタン溶液︵ω.ωX昌−呵旨O;冒−阯︶中で、いずれ も臭素酸イオンの還元波を示すポーラログラムを与え、 それぞれの波に感度の差は認められなかった。特に支 持電解質に塩化カリウムを用いるとき、濃度と波高と の間に、o∼8X昌.︷昌o;昌■阯、すなわち臭素酸イオ ンとしてo∼曽、藺目\邑の広い範囲で直線性が得られ ^20︶ た。既報例をもとに小麦粉試料昌oqを採取し被検液 を調製したとすると、定量限界はω昌oq\膏である。 これはヨウ素滴定法の昌倍以上の高感度であり、す なわち使用基準の−\昌までの徴量臭素酸塩の定量を 可能とする。また、特に支持電解質に塩化ランタンを 用いると、比色法では呈色反応に不可欠なo=の調整 615 一橋論叢 第111巻 第3号 平成6年(1994年)3月号 {148〕 些導εg婁呈葛聖且g且ざ↓⊥王芋亘葛5§王㌣ 戸 工貫ミ §♀ヌ孟さ虫ジρ …警二簑1二崇二琴…婁 窒華薙§;葦曇曼概募泣 616
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