Aircraft Interiors Expo Americaに参加して

平成27年1月 第733号
Aircraft Interiors Expo Americaに参加して
1.はじめに
(IFE)Systemに新たな方式が複数社(Zodiac、
NEDO委託事業「次世代航空機システムに関
digEcor、BAE systems)から提案されていた。
する技術動向調査」における「装備品システ
従来の方式は各座席からSeat Electronic Box
ムの市場動向調査及び技術開発動向調査」を
(SEB)とDigital Switchを介してMovie Server
行うため、平成26年10月15、16日に米国シアト
に信号を伝えて再生をコントロールする方式
ルで開催されたエアクラフト・インテリア・エ
である。新方式では、各座席にモニター画面
キスポに参加し、海外で行われている客室装
を内蔵したタブレット型端末を配し、ビデオ
備品に関連する新製品・技術動向を調査した。
コンテンツも端末に保存する形式である。こ
の端末はタッチパネル形式であり、コント
2.Exhibition
ローラーも兼ねている。新方式で必要になる
客室装備品のインテグレーターから部品の
配線は、端末に直結する配線と電源のみであ
サプライヤー、MRO専門会社まで120社以上
り、これまでの様な複雑な配線やシステムは
が米国内外から参加した。米国以外からでは
不要となることで、以下の様なメリットが期
ドイツ12社、フランス5社、イギリス4社が参
待される。
加しており、日本からは3社が出展した。
1)IFE System信頼性の向上
2)Trouble Shoot性向上
3.新技術
(不具合のあるTablet端末交換で完了)
(1)In-Flight Entertainment System
3)システム・配線簡素化による軽量化
今回のInteriors Expoでは、
In-Flight Entertainment
4)コスト低減
展示会風景(Zodiac社)
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工業会活動
配線が簡略化されてはいるが、Zodiac社、
(WAP)と各シートに装備されたタブレット
digEcor社とも全て有線である。BAE Systems社
とを無線で交信するIFEシステムを開発中で
は、機内に配したWireless Application Protocol
ある。
従来型のIFE System例
座席の各タブレット
と WAP を 無 線 接 続
(BAE社以外は有線)
新方式IFESystem(BAE Systems社)
新方式IFE端末・コントローラー
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平成27年1月 第733号
(2)Passenger Seat
かったと思われる。軽量化としてのメリット
Seatの背あて部分に複合材を使用している
エコノミークラスシートを出展している企業
は大きいので、他の構造部材への拡大も予測
される。
(ACRO社:英国)があった。Back Panのみが
複合材であり、背あてのフレームやBottomは
(3)素材
Al合金である。展示は無いものの、別の1社
金属粉末冶金とプラスチック射出成型を組
(Geven社:イタリア)もBack Panを複合材に
み合わせたMetal Injection Moldingが出展され
したモデルを販売していた。同様の構造は10
ていた。Praxis Powder Technology社(米国)
年ほど前に国内のシートメーカーが開発した
の製品は、材質がチタニウムに限定されるが、
実績があるが、普及は限定的である。複合材
非常に複雑な形状の部品が精密に仕上げられ
は複雑な形状には向かないので、現行の金属
ており、客室部品だけでなく、他の精密な装
製のフレームとの置き換わりが進んでいな
備品への使用にも適している。
複合材Back Panシート
Metal Injection Moldingサンプル品
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工業会活動
4.所感
(4)ソフトウェア
ソフトウェアそのものを販売している会社
Aircraft Interiors Expo Americaは欧州(ハン
(MSC Software:米国、OPTIS: 米国)と、ソ
ブルグ)に比較すると規模は数分の1程度と
フトウェアは売らずにエンジニアリングサー
小さいながら、14日のConferenceでの解説も
ビスを行っている会社(Tucana:米国)に分
あって客室装備品の動向を掴むことができ
かれていたものの、ソフトウェアを販売して
た。最近、国内外で機内での電子機器の使用
いる会社もユーザーが使いこなせる様な支援
が緩和されており、今後地上でのMobile環境
サービスを充実させている。
が更にIFEに影響を与える傾向が強くなると
MSC社とTucana社は構造・強度解析が主な
対象であり、むしろ機体構造に関連が深い。
感じられた。
それ以外には特に目立った新技術は無かっ
OPTIS社は3次元光学解析であり自動車産業で
たが、今後も軽量化や低コスト化の方向での
は実績があるので、機内照明や機内表示の見
改良が継続すると考える。
え方のシミュレーションに適している。
〔(一社)日本航空宇宙工業会 技術部部長 松田 隆〕
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