研修だよりNo.25

研修便り
~自信をもって、子どもの前に立つために~
今回のテーマ
No.25
H26.11.18 研究部
校内授業研究からの学び
~日常化・生活化をどのように捉えていくのか~
御薗宇小学校では、後期に入って積極的に校内研修が行われています。
まずは、第6学年担当澄川教諭が本校において初めての“英語科”校内授業研究を実施
されました。扱われた内容は、
「I can ~.We can ~.
」で、グループごとに自分たちの
できることを紹介しあうことを最終目標に設定した授業を公開されました。今回の提案で、
授業者がこだわられたのは、児童に使わせる語の取捨選択でした。自分の考えや自分たち
の考えをできるだけ言葉にして表現できるように、児童自身が ALT の先生に尋ねたり、自
分たちで調べたりしながら原稿を作ってプレゼンテーションをさせられました。
「児童が知
りたい、使いたいと思った時に、言葉は定着する」と、兼重准教授が話されていたとおり、
児童は高いモチベーションで学習に臨み、意欲的に発言していましたが、どんな言葉をど
の程度扱ったらよいのか整理しなければ、学習や指導に混乱をきたす可能性もあることを
澄川教諭は話されていました。
次に、第3学年担当岡本教諭が「文房具の名前に慣れ親しむこと」を目標にした外国語
活動を提案されました。本提案は、広島大学兼重准教授及び東広島市教育委員会西村指導
主事のご指導により全体研修として実施され、東西条小学校からも参加させていただきま
した。今回の研修では、東西条小学校で実施したのと同様にタブレット端末で撮影した児
童の具体的なコミュニケーション場面の様子に基づいた交流も行いました。御薗宇小2名、
東西条小2名、松賀中学校1名の担当者がA規準と判断した児童を紹介しあったわけです
が、見事に同じ児童に集中した紹介になっていました。今後、規準の設け方も含め、評価
の観点について研究を深めていく必要性を実感しているところです。
今回の研修での学びを次のとおり紹介します。
【兼重准教授のご指導から】
○英語の使用場面が、児童の生活場面と合致し、必要感をもって発せられるように
工夫されている点において高く評価できる。
(本提案では、文房具を友達から借り
て、描いたり、ぬったり、切ったりしながらハロウィンカードを作る活動場面が
設定されました。
)
○児童自身の言葉で目標を設けられるように展開している。
(本提案では、教師が目
標を提示するのではなく、児童が学習を成立させるために必要だと考える内容を
自分たちに提案させ、共通の目標にさせていました。)
○活動に適度なハードルを設けることにより、それを解決する過程の中で言葉を発
する必然性が生まれる。
(本提案では、お道具箱の中身がそれぞれ少しずつ違って
いて、必要な文房具が無い状況を意図的に設けておられました。)
○言わされる、聞かされる英語ではなく、自然に発する英語、自ら聞きたくなる英
語を心がけることが大切である。教師の英語運用も、形式的に発するのではなく、
意図や必要性をもって行うように心がけたい。
○今後の研究において、次の2点に期待したい。
・小中同じテーマで英語科、外国語活動の授業を行い、それぞれの校種での取り
扱い方を研究することにより、系統性を明らかにしていくこと。
・出来ていない児童、参加していない児童(いわゆる配慮を要する児童)に
焦点を当て、その背景と手立てを明らかにすること。
・児童の相互評価の場面を位置付け、学びの協働性を高めること。
さて、10 月に松賀中学校において実施された第3学年担当竹添先生の授業に関わる協議
が、広島大学樫葉准教授のご指導によりおこなわれましたのでその概要についても紹介し
ます。今、松賀中学校においては、本事業に関わる中心的言語活動としてプレゼンテーシ
ョンを位置付けようと検討されており、竹添教諭もプレゼンテーションすることを目的と
した授業を提案されました。
(研修だより No.22 参照)プレゼンテーションは、高等学校
においても積極的に取り入れて行こうとされており、上手くいけば、小中高等学校を貫く
言語活動として位置付けられるのではないかと考えているところです。
英語科の授業で行うプレゼンテーションについての協議内容
(1) 授業中の生徒のプレゼンテーションの姿からの考察
<学習成果>
・リラックスしている姿が見られていること
・皆が、よく聞き取れる声で発話している姿が見られていること
・聞き手とのやりとりを交えながら説明をする姿が見られていること
・きちんとした構成で原稿が用意されていること
<更に期待したい学習効果>
・図や表等の視覚資料の内容や提示方法(指示棒活用等含)への意識の向上
(どこからもストレスを感じず見られる、焦点化して見られる資料の提示方法の生徒による工夫)
・相手が考える時間を与える間の取り方の上達
・表情や体の向け方への意識の向上
・原稿に書かれていない英語のやりとりの活性化
→ 生徒の具体的な活動の姿から指導方法を検討し、計画していくことが大切。
(2) 今後の指導の方向性について
○プレゼンテーションにより身に付ける力の明確化を図ること
・原稿有表現(scripted)なのか、原稿無表現(unscripted)なのか、やりとりなのか
(現状では、プレゼンテーションを scripted speech と考えるのが適当)
・
「書くこと」
(まとまりある英文を書く)と「話すこと」
(相手の反応に応じながら効果
的に話す)の2段階で単元を構成し、それぞれ適切に具体的な指導と評価を行うこと
・英語産出量のコントロールを図ること
(発達段階に応じて、言語の機能面を変化させるのではなく、語彙や表現の量や内容
を変化させて対応する)
・聞き手の身に付ける能力を明確にすること
(まとまりで捉える、キーワードを捉える、自分との関わりを捉える、メモをする 等)
○プレゼンテーションの本事業における位置付けを明確にすること
・学習指導要領との関連の整理と新たな言語様式の定義付け
・年間指導計画(教科書)での位置付けの明確化
・他の行事及び他の教科との関連の明確化
・学年間及び校種間による系統性の明確化(小中、中高の接続の円滑化)
【参考】
(地域拠点研修会 樫葉准教授指導資料から H26.7.11)
1 「話すこと」とは
・話すことのメカニズム(conceptual preparation , formulation , articulation )
・発話の指標(正確さ、流暢さ、複雑さ)
2 Core speaking skills
・発音(母音や子音の発音、語の強勢、イントネーション)
・発話機能(依頼、表明、説明、申し出、描写 など)
・相互作用(会話の統制、発話順の交代、話題の変更、言語・非言語の合図の認識)
・談話構成(意味上・形式上のまとまり、談話標識の利用、*詳述:順序立てて述べる、
数え上げる、列挙する などの目的にあった構成の使用)
3 「話すこと」の言語活動の3つの特徴
・発話者(対話か、独話か)
・発展性(相互作用があるか、ないか)
・計画性(話すことが準備されているか、即興か)
次回のテーマ
兼重先生からのご指導内容
~ 小学校低学年では、何に気をつけて指導するのか ~