Kumagae-1099-1

博士論文
ブタ用機能性飼料素材の開発とその評価に関する研究
2014年 7月
熊谷 直祐
Study on the development and evaluation
of porcine functional feed microbial materials.
Naosuke Kumagae
目次
第1章 緒論 ......................................................... 1
第2章 機能性飼料素材の開発 ......................................... 9
第1節
諸言 ..................................................................... 10
第2節
材料と方法 ............................................................... 11
2-1)
Bifidobacterium thermophilum P2-91 の培養 ................................. 11
2-2)
菌数測定法 ............................................................... 11
2-3)
精製方法 ................................................................. 11
2-4)
ムラミン酸の測定 ......................................................... 11
2-5)
マウス検定法 ............................................................. 12
2-6)
鶏ひなの成長試験 ......................................................... 13
2-7)
走査型電子顕微鏡による飼料素材の観察 ..................................... 14
第3節
結果 ..................................................................... 21
3-1)
製造用培地の検討 ......................................................... 21
3-2)
素材の安定性 ............................................................. 21
3-3)
鶏ひなの成長試験 ......................................................... 21
3-4)
飼料素材の開発 ........................................................... 21
第4節
考察 ..................................................................... 27
第5節
小括 ..................................................................... 29
第3章 実験動物を用いた各種評価系による飼料素材の選定 .............. 31
第1節
諸言 ..................................................................... 32
第2節
材料と方法 ............................................................... 34
2-1)
機能性飼料素材 ........................................................... 34
2-2)
マウス検定法 ............................................................. 34
2-3)
走査型電子顕微鏡による飼料素材の観察 ..................................... 34
2-4)
パイエル板細胞を用いた IgA を指標とする素材評価 ........................... 34
2-5)
腹腔内マクロファージを用いた IL-12 を指標とする素材評価 ................... 35
第3節
結果 ..................................................................... 38
3-1)
マウス生物検定 ........................................................... 38
3-2)
電子顕微鏡による観察 ..................................................... 38
3-3)
マウス免疫細胞 IgA ....................................................... 38
3-4)
マウス免疫細胞 IL-12 ..................................................... 39
第4節
考察 ..................................................................... 47
第5節
小括 ..................................................................... 49
第4章 ブタ腸管免疫細胞を用いた評価試験 ............................ 51
第1節
諸言 ..................................................................... 52
第2節
材料と方法 ............................................................... 54
2-1)
供試素材 ................................................................. 54
2-2)
リンパ球幼若化活性 ....................................................... 54
2-3)
成熟ブタ由来腸管免疫担当細胞を用いたサイトカイン発現誘導解析 ............. 55
第3節
結果 ..................................................................... 59
3-1)
リンパ球幼若化活性の評価 ................................................. 59
3-2)
サイトカイン発現の評価 ................................................... 59
第4節
考察 ..................................................................... 69
第5節
小括 ..................................................................... 71
第5章 ブタ腸管上皮(PIE)細胞を用いた機構解明 ....................... 73
第1節
諸言 ..................................................................... 74
第2節
材料と方法 ............................................................... 77
2-1)
供試素材 ................................................................. 77
2-2)
供試細胞 ................................................................. 77
2-3)
PIE 細胞を用いた ETEC に対する抗炎症活性試験 ............................... 77
2-4)
ウェスタンブロットによる細胞内シグナル解析 ............................... 78
2-5)
ブタ TLR シグナリングのネガティブレギュレーター発現解析 ................... 80
2-6)
TLR2 及び TLR4 blocking 抗体を用いた解析 ................................... 80
第3節
結果 ..................................................................... 83
3-1)
PIE 細胞への ETEC 刺激に対する抗炎症活性の評価 ............................. 83
3-2)
ネガティブレギュレーター ................................................. 83
3-3)
分解と p38 リン酸化 ................................................. 83
3-4)
TLR2 及び TLR4 の役割...................................................... 83
第4節
考察 ..................................................................... 87
第5節
小括 ..................................................................... 90
第6章 総括 ........................................................ 91
謝辞 ............................................................... 95
引用文献 ........................................................... 97
第1章
緒論
1
離乳期の子ブタは、乳から穀物へと飼料が切り替わることで腸内細菌叢が大きく変化
し[1]、消化管免疫機能の発達が促進すると考えられている[2]。その発達段階で、大腸
菌やサルモネラ属菌などの有害微生物に感染することで消化器の疾病リスクが高まる
[3]。さらに、炎症による下痢が慢性化することで、栄養や水分の吸収が十分にできず
免疫力が低下し、呼吸器疾病などを併発しやすくなり、結果として農場に多大な損害を
及ぼすことになる。また、治癒しても、その後の肥育期での成長に遅滞を生じ、生産性
の低下は避けられない[4]。これらの離乳期の疾病リスクを低減するために、一部の抗
菌性物質が成長促進を目的として子ブタ用の飼料添加物に利用されており(表 1)[5,6]、
ブタの生産性は大きく改善した。しかしながら、「成長促進を目的とした抗菌性物質」
(Antimicrobial growth promoters, AGP)の添加量は微量ではあるものの広範囲で利用
されており、1969 年にイギリスの Swann らが耐性菌の出現リスクを報告[7]したことを
契機に、EU 諸国では AGP の使用を段階的に削減し、2006 年までに畜産における AGP の
使用を禁止した[8]。それに伴い、諸外国でも畜産関連業界への自主的な削減の取り組
みを求めながら、耐性菌出現リスクの高い AGP については安全性を再調査し、指定の見
直しあるいは取り消しを行っている。一方、AGP の使用量削減がもたらすリスクについ
ても報告されている。デンマークは EU 内でも早い時期から AGP 削減に取り組み、2000
年までに AGP の使用を禁止した。さらに、毎年、抗生物質の使用量や耐性菌の分離状況
などをモニタリングし報告書を積極的に公開している[9]。それによると、AGP の使用
量低下に伴い、2001 年から 2009 年にかけて動物用医薬品の使用量が 35%増加し、さら
に AGP 使用禁止以降の耐性菌出現に改善の傾向が認められていない(図 1)。そのため
DVFA(Danish Veterinary and Food Administration)は「Yellow card initiative」[10]
を制定し 2010 年から動物用医薬品の使用量削減に取り組んでいるが、農家や獣医師へ
の負担は大きく、その制度の成否が注目されている。
日本国内でも議論はあったものの AGP の全面禁止の結論には至っていない。その理由
として、先のデンマークの例にもあるように、AGP と耐性菌出現との因果関係を示す科
学的な根拠が十分ではないこと、動物用医薬品の使用量の増加によりむしろ耐性菌出現
リスクを高めることが挙げられている。また、日本では、動物用医薬品を AGP として使
用することはできないが、欧米では獣医師の処方で動物用医薬品を飼料添加できるなど、
抗生物質の制度が異なる点も挙げられている[11]。ただし、抗生物質の過剰利用による
多剤耐性菌の出現や畜産物への残留、それによるヒトへの健康危害リスクを否定してい
るものではなく、抗菌性物質の使用量を減らしていくことは重要な課題[12]である。そ
2
こで、既に動物用医薬品においてはフルオロキノロンや第 3 世代セファロスポリンなど
のヒトの医療に重要な抗菌性物質を、畜産の現場で第 1 次選択薬として使用することを
控える取り組みが進められている[13]。また飼料添加物においても、ヒトの医療用抗菌
性物質に類似する構造や機能を持つ一部の薬剤について、改めて耐性菌出現リスクの科
学的データを取得し、指定を見直す動きが進んでいる[14,15]。
このように抗菌性物質の使用規制を考える一方で、病気の発生や蔓延を予防し、生産
性の維持に貢献できる AGP 代替品が切望され、その探索が行われている。中でも、微生
物を生きた状態で飼料として給与し、宿主に対して有益な作用をもたらす「プロバイオ
ティクス」[16–19]、Bifidobacterium 属菌などの有益な腸内細菌への選択的な基質と
なることで宿主に寄与する「プレバイオティクス」[20,21]、両者を複合した「シンバ
イオティクス」[22]や、短鎖脂肪酸や乳酸などの「有機酸」[23–25]の有効性が多く報
告されている。特に、プロバイオティクスに関して、多様な微生物種が研究開発され、
飼料添加物(表 2)や混合飼料として広く利用されている。Bacillus subtilis [26–29]、
B. cereus [30,31]、B. licheniformis [32,33]などの Bacillus 属、及び Clostridium
butyricum[34,35]は耐熱性の芽胞を形成することから、加熱・加圧が容易で飼料素材と
して適しており、日本国内では広く用いられている。Aspergillus oryzae などの麹菌
や Saccharomyces cerevisiae、Candida utilis 等の酵母[36–38]も一般的な飼料素材で
ある。プロバイオティクスでも特に、乳酸菌や Bifidobacterium 属菌は、発酵食品の製
造を支えてきた微生物[39–41]で、古くからその生理機能が知られている。ヒトのみな
らず動物の健康維持増進にも有効と考えられており[42]、研究の一例をあげると、離乳
子ブタへの大腸菌感染実験より、4 種類の乳酸菌を給与することで下痢の抑制及び大腸
菌の減少が認められた[43]。また、子ブタへの B. subtilis RJGP16 及び L. salivarius
B1 の同時投与が、腸管細胞の IL-6 及び IgA の発現を増加し、腸管粘膜免疫を強化した
[44]。L. plamtarum CJLP243 は、抗生物質の代替として、ETEC による下痢を抑制し、
離乳子ブタの成長を促進した[45]。L. rhamunosus ATCC7469 が F4+ ETEC による下痢を
緩和した[46]。さらに、哺乳ブタへの Bifidobacterium longum AH1206 の給与により回
腸の IL-10 発現が増加し[47]、同様に佐々木らは、ブタから分離した B. thermophilum
P2-91 の菌体から精製したペプチドグリカンがマウス[48–50]及び子ブタ(表 3)[51]の
免疫機能、飼養成績を改善することを報告した。
そこで本研究では、B. thermophilum P2-91 を安全性、安定性の高い機能性飼料素材
として開発するための基礎的検討を行い、既存の機能性飼料素材との比較試験から当素
3
材の優位性を見出し、当素材の免疫調節機能とその作用機構の詳細を解明することを目
的とした。
4
表 1
子ブタ(ほ乳期*1)用生菌剤飼料添加物
飼料添加物名
添加量(g 力価)
亜鉛バシトラシン
42~420 *2
アビラマイシン
10~40
ATAC オキシテトラサイクリン*3
5~70
エフロトマイシン
2~16
エンラマイシン
2.5~20
ノシヘプタイド
2.5~20
バージニアマイシン
10~20
ビコザマイシン
5~20
フラボフォスフォリポール
2~10
硫酸コリスチン
2~40
リン酸タイロシン
11~44
クエン酸モランテル
30
*4
*1:哺乳期は体重がおおむね 30 ㎏以内のブタ
*2:亜鉛バシトラシン(万単位)
*3:ATAC アルキルトリメチルアンモニウムカルシウム
*4:クエン酸モランテル(g)
図 1
デンマークの抗菌性飼料添加物(■)と動物用医薬品(■)の使用量の推移[9]
5
表 2
生菌剤飼料添加物一覧
飼料添加物名
対象飼料
エンテロコッカス フェカーリス 1
牛用、ブタ用及び鶏用
2
エンテロコッカス フェシウム(その1)
牛用及び鶏用
エンテロコッカス フェシウム(その2)3
ブタ用
エンテロコッカス フェシウム(その3)
牛用、ブタ用及び鶏用
エンテロコッカス フェシウム(その4)4
牛用及びブタ用
クロストリジウム ブチリカム(その1)
牛用、ブタ用及び鶏用
クロストリジウム ブチリカム(その2)1
牛用、ブタ用及び鶏用
バチルス コアグランス
ブタ用
バチルス サブチルス(その1)
牛用、ブタ用及び鶏用
バチルス サブチルス(その2)
牛用、ブタ用及び鶏用
バチルス サブチルス(その3)
バチルス サブチルス(その4)
牛用、ブタ用及び鶏用
1
牛用、ブタ用及び鶏用
バチルス セレウス
牛用、ブタ用、鶏用
及び養殖水産動物用
バチルス バディウス
ブタ用
ビフィドバクテリウム サーモフィラム(その1)
5
鶏用
ビフィドバクテリウム サーモフィラム(その2)4
牛用及びブタ用
ビフィドバクテリウム サーモフィラム(その3)
牛用及びブタ用
ビフィドバクテリウム サーモフィラム(その4)
牛用
ビフィドバクテリウム シュードロンガム(その1)
ブタ用
ビフィドバクテリウム シュードロンガム(その2)
牛用及びブタ用
2
ラクトバチルス アシドフィルス(その1)
牛用及び鶏用
ラクトバチルス アシドフィルス(その2)
鶏用
ラクトバチルス アシドフィルス(その3)
牛用
ラクトバチルス アシドフィルス(その4)
ブタ用
4
ラクトバチルス アシドフィルス(その5)
牛用及びブタ用
ラクトバチルス アシドフィルス(その6)3
ブタ用
ラクトバチルス サリバリウス
5
鶏用
1~5:同一番号の製剤を混合したものを飼料添加物とする。
6
表 3
B. thermophilum P2-91 の子ブタへの給与成績(佐々木ら 1987[51])
7
第2章
機能性飼料素材の開発
9
第1節 諸言
基礎研究により有効性が明らかとなった飼料素材を製品化するためには多くの課題
がある。一例として、原料や製品の「安全性」
、
「安定性」の改善が挙げられる。
「安全性」に関しては、異物・毒物の混入防止と、安全な用法・用量の設定が必要で
あり、異物・毒物の例として以下のものがある。ヒ素や鉛などはヒトの食品同様に家畜
の飼料においても重要な検査項目である[52,53]。大腸菌群、サルモネラ属菌などの雑
菌汚染を抑制するための製法の確立、適切な水分量や添加物の管理を検討している
[54,55]。近年では、カビ毒の検査も強化され、輸入される穀物などは水際で管理され
ている[52,56]。飼料やペットフードへの混入で社会的にも問題となったメラミンや組
み換え遺伝子作物についても混入防止が求められている[57,58]。さらに 2001 年の国内
での牛海綿状脳症(BSE)発生後、飼料素材に動物性たん白質を使用することが制限さ
れている[59,60]。これらの条件に適した飼料素材は、動物への安全性を確認する必要
がある。特に、新規の原料では、実験動物を用いた単回投与及び反復投与試験、対象家
畜を用いた安全性の確認が必要となる場合がある[61]。
「安定性」に関しては、原料や製品の保管時の安定性を高める加工処理や、飼料素材
の活性が維持される製造条件を検討することが必要である。本研究で扱う微生物由来の
飼料素材の場合、培地の原料に加えて、製造用の原株や種菌も原料にあたる。それらの
保存、継代による劣化や変異リスクを抑えるための最適なシードロットシステムを構築
する必要がある[62]。また飼料製造時に加熱、加圧処理を施すことがあるため、生菌剤
や酵素などの熱に弱いたん白質は製造条件の設定が重要である。さらに、製品として倉
庫に保管する場合や飼料として出荷し農場で保管する場合などは、食品に比べると比較
的過酷な環境であることが多いことから、製品を室温や恒温恒湿(通常は 40℃で相対湿
度 75%)下で長期保管し、その安定性を評価する。品質の維持が純分ではない場合は、
賦形剤やコーティング、包装容器の検討が必要となる。
そこで本章では、Bifidobacterium thermophilum P2-91を飼料素材として開発するた
めに、製造法の確立と安全性の確認を行うことを目的とした。基礎研究で培養に用いら
れていた改変Briggs liver(MBL)培地には、牛肝臓抽出物が使用されていた。そこで、
肝臓抽出物を除いた製造用培地について検討し、その培養で得られた素材について、家
畜への安全性を評価するために「鶏ひなの成長試験」を実施した[61]。
10
第2節 材料と方法
2-1) Bifidobacterium thermophilum P2-91 の培養
B. thermophilum P2-91 は、全国農業協同組合連合会(全農) 家畜衛生研究所より分
与された。当菌の培養には実験室用の培地として改変 Briggs liver(MBL) 培地を用い
てきた。これは Briggs liver broth[40]からトマトジュース抽出液などを除き、フラ
クトオリゴ糖を加えて設計したものである。この MBL 培地には牛由来の肝臓エキスが含
まれている(表 4)。そこで、肝臓エキスを培地組成から除いた製造用培地を検討した。
B. thermophilum P2-91 の培養は、凍結菌液もしくは前培養液を、新しい培地に対して
1%になるように接種し、アネロパック(三菱ガス株式会社)もしくはフィルター滅菌した
窒素通気で嫌気とし、37℃で 18 時間、静置培養した。
2-2) 菌数測定法
菌数の測定は血球計算盤を用いて行った。培養後の菌体は容器底部に沈殿しているた
め、均質になるように撹拌したのち、観察に適した菌数になるように生理食塩水で希釈
した。希釈菌液を血球計算盤に滴下し、16 区間の菌体を計測、血球盤が定める所定の
計算式に基づき菌数を算出した(図 2)。また、簡易的には培養液の濁度(波長:660nm)
を微生物の増殖性の指標として用いた(図 3)。
2-3) 菌体精製法
B. thermophilum P2-91 の培養液を遠心分離用のボトルに移し、5,000rpm・30min で
遠心分離した後、上清を除いた。生理食塩水を元の液量まで加えて十分に撹拌して菌体
を洗浄し、再度遠心分離により上清を除く洗浄工程を 3 回繰り返した。上清を除いて同
量の水を加え、5%になるように界面活性剤を加え、85℃に加温し、1 時間撹拌した。そ
の後、遠心分離と水による洗浄を 3 回繰り返し、得られた濃縮液を凍結乾燥し乾燥物を
得た。得られた乾燥物はスポンジ状のため、乳鉢やグラインダーなどで粉砕し試験用の
飼料素材とした(図 4)。
2-4) ムラミン酸の測定
当素材の有効成分は B. thermophilum P2-91 の細胞壁を構成するペプチドグリカンと
推測されている[50]。このペプチドグリカンの構成成分である N-アセチルムラミン酸
11
の誘導体であるムラミン酸を品質評価の項目として測定した。試料約 0.1g をネジ蓋付
試験管に量り、4N 塩酸(塩酸(特級)36mL を水で 100mL にした)を 5mL 加え試験管ミキ
サーで攪拌し、予め 100℃に設定し恒温にしておいたアルミブロックで 16 時間加水分
解した。加水分解後、これを 50mL 容褐色メスフラスコにて水で洗い込み、水で定容し
た。この液を 5A のろ紙でろ過し、ろ液 2mL を 20mL 容褐色メスフラスコにとり水で定容
後、0.45 µmのフィルターを用いてろ過して試料溶液とした。別に、ムラミン酸(SIGMA
製)約 10mg を 50mL容褐色メスフラスコ精密に量り、水を加えて溶かし、水で定容し
標準原液とした。
(標準原液として 200 µg/mL 含有)この液 1mL を 100mL 容褐色メスフ
ラスコにとり水で定容し標準液とした。表 5 の HPLC による結果からムラミン酸含量を
以下の式で算出した。
《計算式》
ムラミン酸含量(mg/g)=クロマトから得られた値×500(希釈倍数)/秤取量(g)/1000
2-5) マウス検定法
当試験は当社規定の「生物検定実施手順書」に基づいて実施した。
2-5-1)供試素材
B. thermophilum P2-91 を製造用培地で培養し、精製工程後に乾燥して得られた素材
1 を用いた
2-5-2)攻撃菌株
マウスへの攻撃用の菌株は全農家畜衛生研究所から分与された Escherichia coli
Z72-15 株を用いた。Heart infusion broth で 37℃・18 時間培養した培養液を、凍結可
能なプラスチック容器(通常は 2mL バイアル瓶)に適量を分注したものを攻撃菌原液と
して-80℃で保管した。
2-5-3) 攻撃菌の最小致死濃度の設定
2-5-2)で調製した攻撃菌原液は、試験に供する前に 1MLD(最小致死濃度)を求めた。
をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で段階的に希釈した攻撃菌希釈液をマウスの腹腔内に接
種し、マウスの致死率が 80%以上となる最小の菌量を算出した。マウスに接種する場合
は、攻撃当日に解凍した菌液を1MLD になるように PBS で希釈して供した。
12
2-5-4) 供試動物および飼育条件
供試動物は 29 日齢、雄の ICR マウスを日本 SLC から購入した。動物舎は室温を 22~
24℃になるように制御し、飼料(日本クレア製、標準飼料)は不断給与した。各飼料素材
を投与する試験群と PBS を投与する対照群を設定し、各群間の体重差を揃えて 10 匹/
群となるように区分し、2 日間馴化した。
2-5-5) 試験方法
供試素材を 1 ㎎/mL になるよう PBS に溶解した試験溶液を、試験開始後 2 日目と 5 日
目にマウス腹腔内に 0.5mL ずつ投与した。さらに 6 日目に大腸菌を腹腔内接種し攻撃し
た。攻撃後 6、24、48 時間目にマウスの生死を確認し、生存率を算出した(表 6)。試験
終了時の両群の生存率を Fisher の直接確率検定(exact test)法により検定した。
2-6) 鶏ひなの成長試験
試験は「飼料の安全性評価基準及び評価手続」による「鶏ひなの成長試験」に準じた
(表 7)[61]。
2-6-1)供試素材
B. thermophilum P2-91 を製造用培地で培養し、精製工程後に乾燥した素材 1 を用い
た
2-6-2) 供試動物
初生で導入したブロイラー専用種(アーバーエーカー)を餌付時~3 日目に、1 羽当た
り 10g の市販ブロイラー前期用の基礎飼料(表 8)を給与し、4 日目以降は 1 日 1 羽当た
り 3.5g ずつ給与する制限給餌により育成した 8 日齢ブロイラー雄から体重の揃ったも
のを選抜した。
2-6-3) 試験群の設定
試験群は、供試素材無添加の基礎飼料を給与する対照群と、基礎飼料に供試素材を
10ppm 及び 1,000ppm 添加した試験飼料給与する試験区の計 3 群を設定した。
供試動物は、平均体重が等しくなるよう 6 羽ずつ 3 群に各 3 反復ずつ割り付けた。
13
2-6-4) 試験期間
8 日齢から 13 日齢までの 6 日間実施した。
2-6-5) 観察及び検査
試験期間中は毎日、食欲、便の性状、鳴声、活力等を観察した。試験開始時及び試験
終了時に個体別体重を測定し、群毎の増体量を算出した。試験期間中の飼料摂取量を群
毎に測定し、飼料要求率を算出した。
2-6-6) 試験結果の解析
増体量、飼料摂取量及び飼料要求率について一元配置法により分散分析を実施し、群
間差を解析した。群間差が認められた際は、Fisher の PLSD 法により有意差が認められ
た群間を特定した。
2-7) 走査型電子顕微鏡による飼料素材の観察
飼料素材の形状及び表面を観察するために、走査型電子顕微鏡(SEM、リアルサーフェ
スビュー顕微鏡 VE8800S、キーエンス株式会社)を用いた。電圧は 2kV とし、200 倍、
1,000 倍及び 5,000 倍で観察した。
14
表 4
実験室用培地(MBL 培地)の組成(%)
MBL 培地
MBL-LE 培地
Glucose
0.5
0.5
Yeast extract
0.6
0.6
Peptone
1.5
1.5
Fructo oligosaccharide
1.0
1.0
Liver extract
5.0
0
肝臓エキス(LE):10g の牛肝臓粉末を 170 mL の水に溶解し 50~60℃で 1 時間加温した
のち 5 分間煮沸、冷却後 pH を 7.2 に調整し、ろ過した
MBL-LE 培地:MBL 培地から肝臓エキスを除いた培地
15
図 2
血球計算盤による菌数測定
1.0
菌数 (×10(9)
cells/mL)
0.8
y = 1E+08x
R² = 0.8213
0.6
0.4
0.2
0.0
0
1
2
3
4
5
6
7
濁度 (OD660)
図 3
B. thermophilum P2-91 の濁度(OD660)と菌数(×109 cells/mL)の相関性
16
培養液
生理食塩水で3回洗浄
界面活性剤添加
加温処理(85℃・1h)
水で3回洗浄
濃縮
凍結乾燥
粉砕
図 4
B. thermophilum P2-91 の精製フロー
17
表 5
ムラミン酸測定の HPLC 条件
A 液(移動相)
クエン酸三ナトリウム二水和物
2 g
クエン酸一水和物
5.76 g
塩化ナトリウム
1.76 g
水
1000 mL
B 液(洗浄液)
水酸化ナトリウム
8 g
水
1000 mL
反応液 (0.3mL/min)
①
水酸化ナトリウム
16 g
ほう酸
30 g
水
500 mL
オルトフタルアルデヒド
1.6 g
メタノール
10 mL
メルカプトエタノール
0.4 mL
②
③
①②③の順で混ぜ、最後に残りの水 500mLを加える(用時調製)
反応相
:CTO-6A、またはそれと同等のもの
カラム
:日立#2618(100 ㎜×4 ㎜)
カラム温度:40℃
波長
注入量
:励起波長(EX)340nm、蛍光波長(EM)450nm
:20 µL
18
表 6
マウス検定 試験スケジュール
項目
試験開始後日数(d)
0
導入
○
馴化
○
供試素材投与
2
5
6
○
観察
○
鶏ひなの成長試験 試験スケジュール
試験開始後日数(d)
-7
導入
○
馴化
○
○
○
○
○
項目
8
○
大腸菌攻撃
表 7
7
0
6
○
供試素材投与
○
○
体重測定
○
○
観察
○
○
19
表 8 ひなの成長試験 ブロイラー飼料配合割合
20
第3節 結果
3-1) 製造用培地の検討
MBL 培地から肝臓エキス(LE)を除いた MBL-LE の組成を基に、グルコース、ペプトン、
酵母エキス、フラクトオリゴ糖についてそれぞれ段階的に添加率を設定し、濁度が最大
となる培地組成を求めた。グルコースは 0.5%のままで良好であった。酵母エキスは 0.6%
から 1.2%へと増量したが、ペプトンは 1.5%から 1.0%へと減量した。フラクトオリゴ糖
は 1.0%から 0.5%へと減量した。この組成を 2Y 培地とした(表 9)。各成分を最適化した
2Y 培地での増殖性は MBL 培地と同等以上であった(図 5)。
最大の増殖性を得るために 2Y 培地の最適濃度を検討した。各成分比を維持したまま
培地濃度を段階的に変えて培養した結果、約 3 倍の濃度で濁度は最大に達し(図 6)、こ
れを 2Y*3 培地とした。そこで MBL 培地、2Y 培地および 2Y*3 培地での生産性を評価す
るため 10L ジャーファーメンターを用いて供試菌を培養した。培養液の菌数は、それぞ
れ 0.5×109、0.6×109、1.6×109 cells/mL と 3 倍の菌数が得られた。培養液中の菌体
を精製し得られた乾燥物収率は 0.8、1.0、1.1 g/L、さらに乾燥物のムラミン酸含量は
12.5、14.0、16.1 mg/g であった(表 10)。
3-2) 素材の安定性
飼料素材を室温で保管し、0、6、12、24 か月目にマウス検定を実施した。全期間を
通して、素材投与した試験群の生存率は有意(p <0.05)に高い値であった(表 11)。
3-3) 鶏ひなの成長試験
飼料素材を飼料添加し、8 日齢のひなに連続給与し、13 日齢で試験を終了した。試験
の結果、増体量と飼料摂取量、飼料要求率に群間の差は認められなかった(図 7)。
3-4) 飼料素材の開発
凍結乾燥後、粉砕機で粉砕した菌体粉末である素材 1 を得た。素材 1 は菌体が密集し
た薄片状であることを SEM 観察で確認した(図 8)。この素材 1 を賦形剤に対して 10%に
なるように混合して素材 2 を得た。これをマウス検定で評価した結果、素材 1 は 25
µg/0.5mL/匹以上で、素材 2 は 50 µg/0.5mL/匹以上で対照区に対して生存率に有意差が
認められた(表 12)。
21
表 9
MBL 培地、MBL-LE 培地、2Y 培地の組成(%)
MBL 培地
MBL-LE 培地
2Y 培地
Glucose
0.5
0.5
0.5
Yeast extract
0.6
0.6
1.2
Peptone
1.5
1.5
1.0
Fructo oligosaccharide
1.0
1.0
0.5
Liver extract
5.0
0.0
0
肝臓エキス(LE):10g の牛肝臓粉末を 170 mL の水に溶解し 50~60℃で 1 時間加温した
のち 5 分間煮沸、冷却後 pH を 7.2 に調整し、ろ過した
5
4
濁度(OD660)
3
2
1
0
MBL
図 5
MBL-LE
2Y
MBL 培地、MBL-LE 培地、2Y 培地での B. thermophilum P2-91 増殖性
22
10
濁度 (OD660)
8
6
4
2
0
MBL MBL-LE 40%
80%
100%
120%
160%
200%
240%
280%
320%
360%
400%
2Y培地濃度
図 6
表 10
2Y 培地の濃度を段階的に設定した時の B. thermophilum P2-91 の増殖性
MBL 培地、2Y 培地、2Y*3 培地の培養成績
測定項目
MBL 培地
2Y 培地
2Y*3 培地
総菌数 (×109 cell/mL)
0.5
0.6
1.6
乾燥物収率 (g/L)
0.8
1.0
1.1
12.5
14.0
16.1
70%
70%
70%
ムラミン酸含量 (mg/g)
マウス生存率 (対照群:0%)
23
表 11
長期保管した素材 1 のマウス検定による安定性評価
マウス生存率(%)
保管期間(月)
対照群
試験群
0
10
100
***
6
10
90
***
12
0
100
***
24
20
80
***
***:対照群に対して有意差あり(p <0.001)
増体量 (g)
160
150
140
130
飼料摂取量 (g)
120
Control
10ppm
1,000ppm
Control
10ppm
1,000ppm
Control
10ppm
1,000ppm
190
170
150
飼料要求率
2
1
0
図 7
鶏ひなの成長試験での安全性評価
24
(A)
(B)
(C)
図 8
素材 1 の SEM 観察 (A)200 倍、(B)1,000 倍、(C)5,000 倍
25
表 12
素材 1 及び賦形剤に混合した素材 2 のマウス検定結果
供試素材
素材 1
素材 2
投与量
µg/0.5mL/匹
マウス生存率(%)
対照区
添加区
500
0
100
***
100
0
100
***
50
0
90
***
25
0
60
***
12.5
0
30
**
500
0
100
***
100
0
60
***
50
0
50
***
25
0
20
**
**、***:対照群に対して有意差あり(それぞれ p <0.01、p <0.001)
26
第4節 考察
日本では、11 種 27 株の微生物が「生菌剤」飼料添加物として指定されている。これ
らは、家畜に対する成長促進作用及び安全性が十分に確認されており、指定された製造
施設で製造され、畜種や使用量が定められている[63]。飼料添加物と指定されている以
外にも、多様な菌種・菌株が飼料素材として使用されており、いずれも、その有効性だ
けでなく、安全性や安定性を最大限にするための製法の開発が行われている。製法の例
を挙げると、固体培地で培養してそのまま乾燥したものや培養液をそのまま製品とした
もの、単一の菌株で培養した製剤を複数混合したものや複数の菌種が含まれている種菌
を培養したものなど様々な特性を持つ飼料素材が市場に出ている。さらに近年では生菌
だけでなく、培養後の加熱処理などにより殺菌した「死菌」の飼料素材が増えてきた[64]。
本章で飼料素材として開発試験を行った B. thermophilum P2-91 は、液体培地で培養し
洗浄した菌体を、精製工程を経て死菌体とした飼料素材である。基礎研究時には当菌の
培養に用いていた MBL 培地には牛肝臓抽出物が使用されていた。BSE 発生以降、飼料素
材に動物性たん白質を使用することは制限されているため、これを培地から除いた製造
用培地を検討した[60]。LE 除去により認められた濁度の低下は、LE 由来のビタミン、
ミネラルの不足によるものと推測されたが[65]、同培地の組成成分の一つである酵母エ
キスもビタミン、ミネラルなどの様々な成分を含有しているため、酵母エキスを増量す
ることにより不足分の栄養分を補い MBL 培地と同等以上の増殖性を示した 2Y 培地を得
た。続いて、1 回の培養あたりの生産効率を上げるため、菌数が最大となる 2Y*3 培地
で培養し乾燥物を試作した。3 倍の培地濃度に応じて菌数も 3 倍となったが得られた乾
燥物は 12%の改善に留まり、ムラミン酸含量は 15%改善したがマウスの検定では生存率
に差は認められなかった。これらは高密度培養による菌体の矮小化や有効成分と推測さ
れるペプチドグリカンの減少が推測されたが、明確な理由は判明せず対策を見出すこと
はできなかった。引き続き対策を検討する一方で、現時点では、3 倍の培地コストの費
用対効果が見出せないことから、2Y 培地を製造用培地とした。さらに、2Y 培地で得ら
れた菌体を精製した粉末を機能性飼料素材「素材 1」とした。
ヒトの食品と同様に飼料素材でも品質保証期限を定めており、その設定根拠となる試
験が必要である。そこで本章で得られた素材 1 の安定性をマウス検定で評価したところ、
保管 24 か月目においてもマウスへの有効性に低下は見られず、素材の高い安定性が明
らかとなった。一般にペプチドグリカンは酸やアルカリ、熱などに強く、その分解には
27
リゾチームや熱処理など過酷な処理が必要である[66]。本素材は、界面活性剤により細
胞壁を分解し、生体への作用性を高めているが、長期保管においても有効性は高いまま
維持されており、その有効成分は、ペプチドグリカンのなかでも安定性を維持する物質
であることが推測された。品質保証期限の延長は、長期在庫が可能となり廃棄リスクの
低減と大量生産によるコストダウンが可能となるため評価は継続して行われている。
素材 1 を飼料素材とするための飼料製造業届出には、家畜を用いた安全性試験として
「鶏ひなの成長試験」の実施と報告が必要である。そこで本素材の常用量とする 10ppm
とその 100 倍高用量である 1,000ppm を飼料添加しひなに給与した。本試験は、飼料素
材以外の要因で生育低下が見られない飼育環境下で実施しており、1,000ppm の素材添
加においても、対照区と同等の良好な成績を示したことから、本素材の毒性は否定され
安全な飼料素材であることを明らかにした。
最後に、素材 1 を賦形剤で倍散した素材 2 の有効性を評価した。素材 1 は、凍結乾燥
後粉砕し、篩分により大きな粒子は除去しているが、粒子サイズは様々で、形状は薄片
状であった。そのため飼料への混合時には、飛散や付着により飼料中で偏在することが
危惧された。医薬品などの微量成分を適切な用量で使用するために賦形剤を用いるが
[67]、飼料へ微量成分を精度高く混合する際にも賦形剤を使用する。素材 1 を賦形剤に
対して 10%になるように混合した素材 2 を調製し、マウス検定を実施した。素材 2 の有
効成分量は素材 1 の 1/10 であるが、最小有効濃度の差は 1/2 にまで差が縮まった。賦
形剤により素材 2 は分散性が高まり、その結果、生体への作用が改善したことが示唆さ
れた。賦形剤の決定により、配合飼料や混合飼料に添加する飼料素材として開発できる。
以降の本研究ではこの素材 2 を主要な対象として評価を行った。
本章において、培地の検討、飼料素材の安定性、動物での安全性を確認した。確立し
た製法を基に実際の製造で用いる 30kL の発酵タンクでの試験製造が可能であった。以
上から B. thermophilum P2-91 を飼料素材として開発することが確実となった。
28
第5節 小括
本章では、B. thermophilum P2-91を飼料素材として開発するために、安全性の確認、
及び製造法の確立について検討し、以下の知見を得た。
1. 動物性たん白質を含まず、MBL 培地と同等以上の生育性を示す 2Y 培地を設計した。
培養によって得られた乾燥物の品質、効果が MBL 培地と同等以上であったことか
ら当培地を製造用培地とし、当培地によって得られた菌体乾燥粉末を素材 1 とし
た。
2. 素材 1 の安全性を評価するため、「鶏ひなの成長試験」を実施し、常用量である
10ppm 及びその 100 倍量である 1,000ppm の給与でも、対照区と同等の良好な生育
を示し、素材 1 の安全性を明らかにした。
3. 素材 1 は、24 か月の室温保管での安定性が確認された。素材 1 の取り扱いを改善
するために、賦形剤に 10%になるように混合した素材 2 は、賦形剤により分散性
が改善されることから良好な飼料素材を得た。
29
第3章
実験動物を用いた各種評価系による飼料素材の選定
31
第1節 諸言
飼料安全法における「飼料」とは、家畜などの栄養に供することを目的として使用さ
れるものとされている[68]。また「飼料添加物」は、飼料の品質低下の防止、飼料の栄
養成分その他の有効成分の補給、飼料が含有している栄養成分の有効な利用の促進を目
的として飼料に添加して使用されるものとされている[69]。さらに、直接的な栄養補給
の役割としてではなく、また予防・治療を目的とした医薬品でもない、様々な機能を持
つ素材が「機能性飼料素材」として使用されている。畜産物の価値を高める目的として、
卵殻強化のためのカルシウムやビタミン[70]、卵黄色を改善する色素などがある[71]。
また環境対策を目的として、臭気対策、リン排出低減、堆肥化を促進するための生菌剤、
酵素や鉱物など使用されている[72]。さらに、健康維持を目的として、有害細菌の抑制
や腸内細菌叢のバランスを維持するための生菌剤、多糖類がある(表 13)。これら生菌
剤にはさまざまな機能が期待され使用されているが、実際の作用機構についてはいまだ
推測の域を出ていないのが現状であり、その機構として、抗菌性物質の排出、宿主細胞
結合レセプターとの競合、必須栄養物の奪取競合、宿主免疫機能の亢進などが考えられ
ている[73]。抗菌性物質である抗生物質、バクテリオシン、有機酸の産生により有害細
菌を抑制する[74]レセプターの競合は、競合排除理論(Competitive Exclusion、CE 理
論) [75]が確立しており、初生時に有益な微生物群を優先して定着させ、宿主の腸管を
有害細菌から保護するもので、家畜での有効性が報告されている[76–78]。
前章でブタ由来の Bifidobacterium 属菌から選抜された B. thermophilum P2-91 を、
飼料素材として使用できる開発を行い、安全性、安定性の高い素材 2 を得た。本飼料素
材は、子ブタの IgA 産生を促進し、大腸菌の菌数を抑制した。しかしながら、市場には
既に子ブタの免疫活性を強化することを目的とした同様の飼料素材が商品化されてお
り、その中で当素材の競合品に対する優位性を確認することは営業戦略上、大変重要で
ある。また、その作用機構を解明することで、当素材の使用時期、使用量などを適切に
設定することができるようになり、評価方法、選抜条件を確立することで、さらにすぐ
れた素材の開発を容易に行うことができるようになる。
そこで本章では、前章のマウス検定法により様々な飼料素材を評価し、その特徴を把
握することを目的とした。さらに、マウスを用いた IgA 産生、IL-12 産生を指標とした
評価試験により、飼料素材の機構解明を試みた。
32
表 13
機能性飼料素材の機能と種類
機能
素材の種類
畜産物価値の向上
乳成分
カルシウム、生菌剤、有機酸、油脂
肉質、風味
生菌剤、酵素、ハーブ類
卵黄色、魚肉色
マリーゴールド、パプリカ、ファフィア酵母
卵殻
カルシウム類
環境対策
臭気低減
生菌剤、多糖類、有機酸、鉱物
排泄物低減(糞量、リン)
酵素
堆肥化促進
生菌剤、鉱物
生産性の改善
飼料摂取量
香料、有機酸、ハーブ類、糖類
消化吸収
酵素、有機酸
有害物質除去
鉱物、酵母
健康維持
腸内細菌叢
生菌剤、多糖類、有機酸
有害細菌
生菌剤、有機酸、
免疫調節
生菌剤、多糖類
33
第2節 材料と方法
2-1) 機能性飼料素材
商品として販売されているものおよび試作品も含めて各種の機能性素材を入手した。
我々が開発した Bifidobacterium 属菌の純粋菌体粉末である素材 1、それを賦形剤と混
合した素材 2、素材 3 は精製工程を省略した試験用の粗製品とした。素材 4、5 は B.
thermophilum の標準株 JCM1207 及び JCM1268 を素材 1 と同様の製法で粉末化したもの
とした。乳酸菌を主体とする素材として入手した 8 種類を素材 6 から素材 13 とした。
素材 6 は還元型葉酸サプリメントで、残りは免疫活性の強化をコンセプトとした製品ま
たは試作品であった。Bacillus 属菌として入手した 5 種類を素材 14 から素材 18 とし
た。Bacillus 属菌の飼料素材による家畜の飼養成績への有効性を示す報告は多い。近
年、この Bacillus 属の免疫機能への作用に関する報告もあり、本試験で評価するため
に試験に供した。入手した放線菌 6 種類を素材 19 から素材 24 とした。これらはブタの
体内を通過した後の排せつ物の分解促進として使用されているものであるが、ブタの体
内での作用を期待し試験に供した。酵母を主要な成分とする飼料素材 15 種類を素材 25
から素材 39 とした。多くは牛用としてビール酵母、パン酵母などが使用されており、
海外からの輸入品も多い。素材 40 は麹菌による発酵物、素材 41 はスコプラリオプシス
属の胞子とした。
イナゴマメを主成分とする素材 42、43、ハーブ抽出物として素材 44 から素材 48 の 5
種類、漢方などを 3 種類、全 51 種類を機能性飼料素材として試験に供した(表 14)。
2-2) マウス検定法
前 2 章 2-5)に記載した「マウス検定法」を実施した。
2-3) 走査型電子顕微鏡による飼料素材の観察
前 2 章 2-7)に記載した「走査型電子顕微鏡による飼料素材の観察」により、飼料素
材を 200 倍及び 1,000 倍で観察、写真撮影した。
2-4) パイエル板細胞を用いた IgA を指標とする素材評価
2-4-1) 供試動物
BALB/c 雄マウス(9 週齢、日本 SLC)10 匹
34
2-4-2) 供試素材
素材 2、6、7、9、10、13、24、34 を供試培地で 1,000 µg/mL に懸濁したものを素材
溶液とした。
2-4-3) 供試培地
RPMI1640 培地(SIGMA)、Fetal Calf Serum(FCS)10%添加、ペニシリン-ストレプトマ
イシン溶液 1%添加、2-メルカプトエタノール(SIGMA) 0.0004%添加
2-4-4) パイエル板の採取及び細胞液の調製
マウスを頸椎脱臼後、放血致死させ、マウスの全身に 70%エタノールを噴霧しクリー
ンベンチ内に搬入した。小腸を摘出し、氷冷下の 10%FCS 添加 RPMI1640 培地に浸漬し、
小腸からメスを用いてパイエル板を採取した。10 匹分のマウスパイエル板を集積し、
セルストレーナー(BD Falcon)を用いて単細胞浮遊液を調製した。単細胞を遠心集積
し、10 % FCS 添加 RPMI1640 培地で懸濁したものを細胞液とした。
2-4-5) 細胞培養
集積した細胞液中の生細胞数をトリパンブルー染色下で計測した。細胞数を 2×106
個/mL に調整して、96 穴の CELL CULTURE PLATE に 100 µL ずつ分注した。10 % FCS 添
加 RPMI1640 培地で 4 段階に希釈した素材溶液をそれぞれ 100 µL ずつ分注して、7 日間、
37℃、5%CO2 の条件下で培養した。なお、測定は Duplicate で実施した。
2-4-6) IgA 濃度の測定
培養終了後に培養上清中の総 IgA 濃度を、ELISA キット(Bethyl)を用いて測定した。
2-5) 腹腔内マクロファージを用いた IL-12 を指標とする素材評価
2-5-1) 供試動物
ICR 雄マウス(9 週齢、日本 SLC) 10 匹
2-5-2) 供試素材
素材 2、6、7、9、10、13、24、34 を供試培地で 1,000 µg/mL に懸濁したものを素材
35
溶液とした。
2-5-3) 供試培地
RPMI1640 培地(SIGMA)、FCS 10%添加、ペニシリン-ストレプトマイシン溶液 1%添加
2-5-4) 腹腔内マクロファージの採取及び細胞液の調製
マウスの腹腔内に 1 g/100 mL 濃度のグリセリン溶液を 0.4 mL 注射して1晩飼育した
後、頚椎脱臼でマウスを屠殺し、腹腔内に冷却した PBS を 5 mL 注射して腹部をよくも
んだ後、腹腔内液(約 4 mL)を注射器で取り出し、シリコンコートしたスピッツ管に
入れて遠心分離(1200 rpm、5 分)した。上清及び壁面の赤血球を除去した後、冷 PBS
を加えてピペッティングし、遠心分離(800 rpm、5 分)して上清及び壁面の赤血球を
除去する洗浄操作を 2 回繰り返した。洗浄後、10 % FCS 添加 RPMI1640 培地で懸濁した。
2-5-5) 細胞培養
集積した細胞浮遊液中の生細胞数をトリパンブルー染色で計測した。細胞数を 2×106
個/mL に調整して、96 穴の CELL CULTURE PLATE に 100 µL ずつ分注した。10 % FCS 添
加 RPMI1640 培地で 4 段階に希釈した素材溶液をそれぞれ 100 µL ずつ分注して、7 日間、
37℃、5%CO2 の条件下で培養した。なお、測定は Duplicate で実施した。
2-5-6) IL-12p70 濃度の測定
培養終了後に培養上清中の IL-12 p70 濃度を、ELISA キットを用いて測定した。
36
表 14
供試飼料素材一覧
飼料素材 No.
Main component
1~5
Bifidobacterium 属菌
6~13
乳酸菌
14~18
Bacillus 属菌
19~24
放線菌
25~39
酵母
40~41
カビ
42~43
イナゴマメ
44~48
ハーブ抽出物
49~51
漢方など
37
第3節 結果
3-1) マウス生物検定
Bifidobacterium 属菌の 5 サンプルはいずれもマウスの生存率を有意に改善した。乳
酸菌 8 サンプルでは、素材 6、7、8、11、13 の 5 サンプルで生存率は有意に改善したが、
残りの素材 9、10、12 では有意差が認められなかった。Bacillus 属 5 サンプルはいず
れも生存率が有意に改善された。放線菌 6 サンプルでは、素材 19 と素材 21 以外の 4 サ
ンプルに有意差が認められた(表 15)。
酵母など真菌 15 サンプルでは、素材 27 と素材 41 以外で有意差が認められ、その生存
率も素材 40(生存率 50%)以外は 70%を超えた。植物系 10 サンプルでは、素材 43、素材
47、素材 48 以外では有意差が認められた(表 16)。
3-2) 電子顕微鏡による観察
各試験に供する前に飼料素材について、200 倍及び 1,000 倍の電顕写真を撮影した。
素材 2 は、Bifidobacterium 属菌体粉末(素材 1)を賦形剤で倍散したもので、賦形剤由
来の結晶をもち、表面は滑らかであった。素材 1 に見られた 1 ㎜近い薄片は認められな
かった。素材 6 は、20~30 µm 程度のしわの多い、いびつな球体をしていた。素材 7 は
乳酸菌発酵物であり、10~50 µm の大小の滑らかな球体が集合した形状であった。素材
8 は、繊維質を粉砕した大小さまざまな形状であった。素材 9 の乳酸菌は、いびつな球
体をしており、サイズは 10~30 µm 程度で、表面にはしわが認められた。素材 10 の乳
酸菌は素材 7 と同様、滑らかな球体であった。素材 13 は大豆を基材とした乳酸菌と麹
による発酵物で、100 µm ほどの角柱の形状をしており、表面は繊維状であった。Bacillus
属である素材 17 は、50 µm 程度で均一の結晶状であった。素材 24 の放線菌由来の素材
はふすまを固体培地として培養後乾燥・粉砕したもので、繊維による不規則な構造をし
ていた。素材 34 は酵母をカプセル化した製剤で、2 µm 程度の微小な球体が大量に集ま
って数百 µm の粒子を構成する構造であった。素材 51 は糖蜜から抽出物で 1mm 程度の滑
らかな表面の粒子であった。
3-3) マウス免疫細胞 IgA
素材 2 は各区において blank と同程度であった。素材 7 は 500 µg/mL で blank の 4.2
倍であったが、以降は blank と同程度であった。素材 6 は各区において blank と同程度
であった。素材 9 は 500 µg/mL と 100 µg/mL で blank の約 2 倍であったが、以降は blank
38
と同程度であった。素材 10 は 500 µg/mL で blank の 4.7 倍、100 µg/mL で blank の 2.3
倍であったが、以降は blank と同程度であった。素材 13 は 500 µg/mL、100 µg/mL のと
き、blank の 2 倍の IgA を産生した。素材 24 は各区において blank と同程度であった。
素材 34 は 500 µg/mL で blank の 2 倍であったが、100 µg/mL 以降は blank と同程度で
あった。
3-4) マウス免疫細胞 IL-12
素材 2 は各区において blank と同程度であった。素材 6 は 100 µg/mL のとき最大とな
り blank の 13.0 倍であった。素材 7 は 100 µg/mL のとき最大になり blank の 43.4 倍で
あった。素材 9 は 4 µg/mL で最大となり blank の 63.2 倍であった。素材 10 は各区にお
い blank と同程度であった。素材 13 は 20 µg/mL のとき最も高く blank の 4.5 倍であっ
た。素材 24 は各区において blank と同程度であった。素材 34 は 4 µg/mL のとき最大に
なり blank の 25.3 倍であった。
39
表 15
飼料素材 1~24 のマウス検定結果
生存率
素材番号
対照群
試験群
1
0
80
***
2
0
80
***
3
0
60
**
4
0
60
**
5
0
50
**
6
0
90
***
7
0
100
***
8
10
100
***
9
10
20
10
10
20
11
0
60
12
0
0
13
0
90
***
14
0
60
**
15
0
100
***
16
0
70
**
17
0
80
***
18
0
60
***
19
0
20
20
0
60
21
0
10
22
0
40
*
23
0
60
**
24
0
50
*
**
***
*、**、***:対照群に対して有意差あり(それぞれ p <0.05、p <0.01、p <0.001)
40
表 16
飼料素材 25~55 のマウス検定結果
生存率
素材番号
対照群
試験群
25
0
100
***
26
0
90
***
27
0
30
28
0
70
**
29
10
90
***
30
10
70
**
31
10
80
**
32
0
70
**
33
0
80
***
34
0
80
***
35
10
100
***
36
0
90
***
37
0
80
***
38
0
70
**
39
0
80
***
40
0
50
*
41
0
30
42
10
90
43
20
30
44
10
90
***
45
10
90
***
46
20
100
***
47
20
50
48
20
50
49
0
100
***
50
0
80
***
51
0
70
**
***
*、**、***:対照群に対して有意差あり(それぞれ p <0.05、p <0.01、p <0.001)
41
図 9 素材 2 の SEM 画像 (左:200 倍、右:1,000 倍)
図 10
素材 6 の SEM 画像 (左:200 倍、右:1,000 倍)
図 11
素材 7 の SEM 画像(左:200 倍、右:1,000 倍)
42
図 12
素材 8 の SEM 画像(左:200 倍、右:1,000 倍
図 13
素材 9 の SEM 画像(左:200 倍、右:1,000 倍)
図 14
素材 10 の SEM 画像(左:200 倍、右:1,000 倍)
43
図 15
素材 12 の SEM 画像(左:200 倍、右:1,000 倍)
図 16
素材 13 の SEM 画像(左:200 倍、右:1,000 倍)
図 17
素材 17 の SEM 画像(左:200 倍、右:1,000 倍)
44
図 18
素材 24 の SEM 画像(左:200 倍、右:1,000 倍)
図 19
素材 34 の SEM 画像(左:200 倍、右:1,000 倍)
図 20
素材 51 の SEM 画像(左:200 倍、右:1,000 倍)
45
500 µg/mL
10
100 µg/mL
Relative value
8
20 µg/mL
4 µg/mL
6
4
2
0
LPS
Relative value
図 21
No. 2 No. 6 No. 7 No. 9 No. 10 No. 13 No. 24 No. 34
IgA を指標とする飼料素材評価
70
500 µg/mL
60
100 µg/mL
20 µg/mL
50
4 µg/mL
40
30
20
10
0
LPS
図 22
No. 2 No. 6 No. 7 No. 9 No. 10 No. 13 No. 24 No. 34
IL-12 を指標とする飼料素材評価
46
第4節 考察
近年の抗菌性物質の使用を控える動きに合わせて、微生物素材の注目は高まっている。
しかしながら、多くの微生物素材はその作用機構が明確になっておらず、それにより、
ユーザーの課題に対して微生物素材が的確に選択できていない。そこで本章では、実験
動物で汎用性の高いマウスを用いて、各種飼料素材を評価し、飼料素材の作用機構の詳
細解明を試みた。
グラム陽性細菌である Bifidobacterium 菌の細胞表層のペプチドグリカン層は、糖ア
ミノ酸である N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)と N-アセチルムラミン酸(MurNAc)とい
う 2 種のアミノ糖の交互の繰り返しからなり、そこにタイコ酸、リポタイコ酸、細胞壁
外多糖などが結合している[79]。B. thermophilum P2-91 に由来する製法の異なる 3 種
の素材 1、2、3 はいずれも対照群に対しては有意差があるものの、未精製の素材 3 の有
効性は精製した素材 1、2 に対して顕著に低下した。ペプチドグリカン層の精製により
アミノ糖の結合を分解し、露出されたペプチド鎖やリポタイコ酸などによる刺激により
マウスの生存率が改善されたことが推測された。素材 4、素材 5 は、B. thermophilum
の標準株を P2-91 と同様の精製を行い獲得した素材である。マウス検定において対照群
に対しては有意に改善したものの、素材 1 に比べて低い生存率であった。
Bifidobacterium 属が菌種、菌株ごとに有効性が異なり[80,81]、本菌種 B. thermophilum
も株ごとに有効性と作用機構が異なることが示唆された。素材 2 は、ブタの IgA を増加
させたが[51]、本試験ではマウスの IgA 産生を増強する効果は認められず、宿主の種差
によるレセプターの認識と応答の差であることが示唆された。
乳酸菌は、糖類を消費し乳酸発酵する微生物群の総称で、発酵乳や漬物などの保存食
として一般的であるのみならず、動物用の飼料素材として国内外で広く用いられている
[82]。そこで、本章では乳酸菌を主成分として市販されている飼料素材を入手し比較し
た。これらの飼料素材は、菌種や菌株、製法は非常に多岐にわたっており、しかも詳細
に公開しているものは少ない。素材 6,7 は発酵乳を乾燥したものであるが、SEM 画像
から、サイズのそろった球状の粒子であり、素材 9 及び素材 10 も同様の球状であった。
このような形状は、噴霧乾燥(Spray drying)によって得られた脱脂粉乳や粉末油脂にみ
られ[83]、これらの飼料素材も同様の乾燥で得られた乾燥物であることが推測された。
培養液の乾燥効率の向上および乾燥に対する保護剤として水溶性の物質を培養濃縮液
に溶解して噴霧乾燥を行うことが多く[84,85]、得られる乾燥物は溶解性が高い特徴が
47
ある。一方、素材 8、13 は粕類などを乳酸菌で発酵し乾燥したものを主原料としており、
素材 12 は乾燥した乳酸菌を糟糠類に混合したもので、いずれも SEM 画像で繊維質の構
造を示した。乳酸菌のうち、素材 9、10、12 の 3 種類に、マウスへの大腸菌攻撃に対す
る防御は認められなかった。しかしこれらの素材はヒトの健康食品を転用したもので、
特に免疫機能の亢進に関する報告が多い[86–91]。素材 9 はマウスにおいて IL-12 の産
生を強く誘導することが報告されており[92]、本試験でも IL-12 の産生が誘導されたが、
マウスでの大腸菌攻撃に対する防御に寄与しないことが示唆された。
乳酸菌が主流の欧米に比べ、日本国内では Bacillus 属を主成分にした飼料素材が多
く流通しており[82]、農場における認知、使用頻度も高い[12]。本章において評価した
5 種類の Bacillus 属(B. subtilis が 4 種類、セレウスが 1 種類)はいずれも対照群に対
して生存率を有意に改善した。素材 17 が子牛への給与において、IgG 及び IFN-を増強
すること[28]や、B. subtilis B10 の芽胞がマウスの炎症性サイトカインの分泌を促進
した[93]ことが報告されていることから、Bacillus 属の飼料素材も家畜の免疫活性を
強化することが期待された。本試験で用いた放線菌は堆肥化促進として分離された菌株
[72]で、糟糠類の固体培地で培養、胞子化させたものを乾燥、粉砕した飼料素材である。
SEM 画像からも繊維状が観察された。マウスの検定においては 4 つの素材で有意差が認
められたが、その生存率は高いとは言えず、免疫強化を目的とする機能性飼料としては
十分ではないと判断した。
酵母は、単細胞性の真核生物であり、パンやアルコール飲料の発酵微生物として古く
から活用されてきた。酵母(Saccharomyces cerevisiae)がブタの腸管上皮細胞の p38
MAPK のリン酸化に作用して IL-6 や IL-8 などの炎症性サイトカインの発現を抑制して
おり[37]、本研究においても、15 種類の酵母由来の飼のうち 14 素材でマウスの生存率
を有意に改善し、その生存率も高く、酵母由来の飼料素材は機能性飼料素材として高い
可能性を有していることが示唆された。サトウキビ抽出物を主成分とする素材 51 は微
生物素材ではないが、ブタに給与することで、NK 細胞の細胞障害活性が有意に亢進し
[94]、遅延型過敏反応や CD4 陽性細胞率を有意に高め[95]、これらの植物由来の飼料素
材も AGP の代替素材として期待される。
本章の大腸菌攻撃によるマウス検定の結果、生存率を有意に改善する飼料素材が得
られたが、その機構解明として行ったマウス由来細胞の試験では明確な生存率改善との
因果関係は認められなかった。今後さらなる研究を進めるにあたり、最終的にはブタで
の試験が必要であることから、以降はブタの細胞での評価が必要であると判断した。
48
第5節 小括
開発した飼料素材の既存の飼料素材に対する優位性を明らかにするため、実験動物で
あるマウスを用いて大腸菌攻撃試験を行い、さらにマウスの細胞を用いた機構解明に取
り組み、以下の知見を得た。
1. マウスの腹腔内への大腸菌攻撃による生存率判定では、乳酸菌や酵母を主成分と
する飼料素材の多くで有効性が認められ、素材 2 は比較的生存率が高いことから、
強い活性を有していることが明らかとなった。
2. マウスの細胞を用い飼料素材での刺激で産生された IgA 及び IL-12 は、大腸菌攻
撃に対する防御への寄与は低く、さらなる機構解明にはブタを用いた究明が必要
と判断した。
49
第4章
ブタ腸管免疫細胞を用いた評価試験
51
第1節 諸言
ブタにおける機能性飼料素材の効果を理解するうえで、腸管組織における機構解明が
重要となる。腸管とは、経口的に摂取され、各種消化酵素により分解された食品が最後
に栄養素として吸収される場である。我々は普段から様々な食品を摂取すると共に、多
様な抗原を体内に取り込みやすい状態にある。そのため腸管は病原細菌やウイルス、そ
の他多くのストレス刺激に絶えず曝されており、生体にとって外界ともいえる器官であ
る。従って、腸管の免疫システムは極めて重要である。実際、全身のリンパ球の 60%以
上が腸管に集中しており、抗体全体の 60%は腸管で作られている。腸管免疫系は食品や
腸内細菌などの安全なものに寛容であり、危険な病原性細菌やウイルスを排除するとい
う特徴を持つ[96,97]。この役割を担うのが消化管関連組織リンパ組織(Gut-Associated
Lymphoid Tissue; GALT)
である[98]。
GALT の粘膜上皮は一層の円柱上皮細胞(Intestinal
Epithelial Cells; IECs)で覆われ、パイエル版(Peyer’s patch; PPs)[39,99]や、
小腸上皮細胞間に存在する腸管上皮間リンパ球(Intestinal Epithelial Lymphocytes;
IELs)、粘膜固有層(Lamina propria)とそこに存在する粘膜固有リンパ球(Lamina
Propria Lymphocyte; LPL)
、さらに固有層の下に存在する腸間膜リンパ節(Mesenteric
Lymph Node; MLN)[100]や、腸管特有の T 細胞が作られる場所であるクリプトパッチ
(Criptopatch; Cp)などで構成されている[101]。パイエル板は、腸管管腔側とは一種
の特殊に分化した円柱上皮細胞であるリンパ濾胞被覆上皮(Follicle-Associated
Epithelium; FAE)で境界されたリンパ小節の集合体として存在する[102]。FAE は特殊
な二種類の上皮細胞で構成されており、微絨毛のよく発達した吸収上皮細胞と活発な抗
原補足取り込み機能を有する M 細胞(Membranous epithelial cells; M cell)からな
り、微絨毛の存在しない領域でドームを形成している(20-21)
。このドーム領域を覆う
M 細胞に富んだ上皮細胞層の下には、大食細胞や樹状細胞などの抗原提示細胞やリンパ
球が存在しており、M 細胞や樹状細胞により取り込まれた微生物に対応した的確な免疫
応答を誘導し、腸管免疫組織の恒常性を維持する役割を担っている。リンパ球はレセプ
ターを介して免疫シグナルを受け取ると、細胞が大きくなり、分化の過程を逆行して未
熟で幼若な細胞に戻ったようになる。この反応は幼若化反応[103]と呼ばれ、分化と増
殖あるいはサイトカイン分泌の前段階であると考えられているため、リンパ球の幼若化
52
活性は獲得免疫の指標となっている。
当研究室では、これまでに Lactobacillus 属、Bifidobacterium 属などのプロバイオ
ティクスの有用性や、免疫活性特性を評価するために、リンパ球の幼若化活性やサイト
カイン発現誘導を報告してきた[104]。そこで本章では、ブタ用の飼料素材の評価とし
て、ブタの腸管免疫担当細胞である MLN 及び PPs とを用いたリンパ球の幼若化活性とサ
イトカインの発現から各種素材を評価した。
53
第2節 材料と方法
2-1) 供試素材
すべての素材は十分に PBS で洗浄し、各素材を 60℃、30 min 加熱殺菌した(表 17)。
2-2) リンパ球幼若化活性
2-2-1) 細胞調製
成熟ブタ(LWD)腸管を、
(株)仙台市中央卸売市場食肉市場(仙台市)から購入し、
新鮮な成熟ブタ腸管より腸間膜リンパ節(MLN)とパイエル板(PPs)を摘出した。各組
織 を PBS で 洗 浄 し 、 シ ャ ー レ 内 で 脂 肪 組 織 等 を 除 去 後 ガ ー ゼ に 包 み 、 1%
Penicillin-Streptomycin(Invitrogen, GIBCO, Carlsbad, CA, USA)、2%FCS を含む
RPMI1640 培地(Sigma-Aldrich Co., St Louis, MO, USA)中で穏やかに押しつぶし、
細胞を分離した。同培地で細胞を遠心(1500 rpm,5 min,4℃)洗浄後、0.2% NaCl で低
張状態にし、赤血球を破壊した。その後、直ちに等量の 1.5% NaCl を加えて等張とし、
再び培地で遠心洗浄(1500 rpm,5 min,4℃)することにより、細胞を調製した。懸濁液
を 100 µm 径のナイロンメッシュ(BD Falcon, Franklin Lakes, NJ, USA)に通し、結
合組織等を除去した後、細胞数測定を行った。
2-2-2) 供試素材による刺激
2-2-1)で調製した細胞懸濁液を 2.0×105 cells / well (90 µL)になるように 96 well
プレートに播いた。供試素材の懸濁液を 10 µL ずつ添加し、37℃、32 h、5% CO2 条件下
で培養した。コントロールとして、培地 10 µL+細胞懸濁液 90 µL 入れたもの(cell
control)
、培地を 100 µL のみ入れたもの(medium control)を用意した。
2-2-3) 細胞内放射活性測定
32 h 培養終了後、
各 well に 3-Methyl-[3H]-Thymidine(トリチウムチミジン)
(Amersham
Biosciences、Buckinghamshire、UK)を 10 µL(9.25 Bq)ずつ添加し、さらに 37℃、
5% CO2 条件下で 16h 培養することにより、細胞をパルスラベルした。
16 h 培養終了後、セルハーベスターにてガラスファイバーフィルター上に細胞核を
回収し、ドライヤーで乾燥させた。フィルターペーパーを専用バイアルに入れ、液体シ
ンチレーションカクテル(1L のトルエンに POPOP(1、4-bis [2-(5-phenyloxazolyl)]
54
benzene)を 0.1 g および DPD(2、5-Diphenyloxazole)を 4.0 g 溶解させたもの)を 2 mL
ずつ分注し、核内に取り込まれたトリチウムチミジンを液体シンチレーションカウンタ
ーにより測定した。放射活性測定の結果より、リンパ球幼若化活性の相対値
(Stimulation Index)を以下の計算式により算出した。
(CPM は放射活性測定値を表す)
SI 
供試品のCPM平均値 - 培地対照区のCPM平均値
細胞対照区のCPM平均値 - 培地対照区のCPM平均値
2-3) 成熟ブタ由来腸管免疫担当細胞を用いたサイトカイン発現誘導解析
2-3-1) 免疫担当細胞の調製
2-2-1)を同様の手順により免疫担当細胞を調製した。
2-3-2) 供試素材による刺激
細 胞 を
4.0×106cells/900
µL
に な る よ う に
RPMI1640
培 地 ( 1%
Penicillin-Streptomycin, 2%FCS)に懸濁し、48 well プレートに 900 µL ずつ播いた。
各 well に調製した供試素材を 100 µL 添加し、37℃、5%CO2 条件下で 6 h 培養した。コ
ントロールとして、培地 100 µL + 細胞懸濁液 900 µL を入れたもの(control)を設定
した。
2-3-3) Total RNA の抽出および cDNA 合成
6 h 刺激後、各 well の細胞を回収し、遠心後、上清を取り除いた。得られたペレッ
トに TRIzol reagent(Invitrogen)を 500 µL 添加し、細胞をよく懸濁した後、クロロ
ホルムを 100 µL 加え、激しく撹拌し、室温で 3 min 放置した。遠心分離後(15000 rpm,
4℃, 15 min)上清部分の水層のみを新しい 1.5 mL マイクロチューブに回収し、2-プロ
パノールを同量加えよく撹拌し室温で 10 min 放置後、遠心分離(15000 rpm, 4℃, 15 min)
し、Total RNA のペレットを得た。1 mL の 75%エタノールで遠心分離後(15000 rpm, 4℃,
15 min)、エタノールを完全に風乾し、RNase free water に懸濁した。以上の操作によ
り抽出した Total RNA を NanoDrop ND-1000 スペクトロフォトメーター(Thermo Fisher
Scientific. Chicago IL、USA)で濃度および純度を測定した。得られた Total RNA を
QuantiTect Reverse Transcription Kit(Qiagen Inc. Valencia, CA, USA)を用いて
cDNA の合成を行った。
55
2-3-4) 定量的 Real-time RT-PCR 法
得られた cDNA を用いて Real-time RT-PCR を行った。解析には ABI PRISM 7300 Real
Time PCR System (Applied Biosystem)を用いた。検量線はターゲット遺伝子プラス
ミドを段階希釈して分析した結果として得られた曲線から、指数関数的増幅領域の任意
の蛍光値での Ct(Threshold cycle)から標準曲線を算出した。各飼料素材における Ct
と標準曲線から各条件で振り分けた飼料素材のサイトカイン mRNA 発現量を算出した。
同飼料素材の-actin の発現量を求め、各発現量の値を標準化しコントロールに対する
値(Normalized Fold Expression)を比較した。サイトカインおよび使用したプライマ
ーの配列は表 18 に示した。
56
表 17
供試素材一覧
素材番号
内容
1
B. thermophilum P2-91 の精製乾燥物
2
素材 1 の 10%倍散品
3
B. thermophilum P2-91 の未精製乾燥物
7
乳酸菌発酵乳乾燥物
8
乳酸菌乾燥物
12
乳酸菌乾燥物
13
乳酸菌乾燥物
14
B. subtilis 乾燥物
15
B. subtilis 乾燥物
17
B. subtilis 乾燥物
18
B. subtilis 乾燥物
19
放線菌乾燥物
20
放線菌乾燥物
21
放線菌乾燥物
22
放線菌乾燥物
23
放線菌乾燥物
24
放線菌乾燥物
35
酵母乾燥物
38
酵母乾燥物
40
酵母乾燥物
41
糸状菌乾燥物
57
表 18
プライマー配列
Gene name
Sense primer
Antisense primer
-actin
CATCACCATCGGCAACGA
GCGTAGAGGTCCTTCCTGATGT
IFN-
ACTTATTTCTTAGCTTTTCAGCTTTGC
GGCGCCTGGCAGTAAGAG
IL-2
TGCAGCTCTTGTGTTGCATTG
CTTGAAGTAGGTGCACCGTTTG
IL-4
CGTGACCCACGTCTTTGCT
CCCGGCAGAAGGTTTCCT
IL-6
TGGATAAGCTGCAGTCACAG
ATTATCCGAATGGCCCTCAG
IL-10
TGGGTTGCCAAGCCTTGT
GCCTTCGGCATTACGTCTTC
58
第3節 結果
3-1) リンパ球幼若化活性の評価
精製した B. thermophilum P2-91 の菌体粉末である素材 1 の SI 値(Stimulation Index)
は、MLN では 100 µg/mL の時に、PPs では 10 µg/mL の時に最大となった(図 23)。素材
1 を賦形剤に 10%混合した素材 2 は、MLN で 1 ㎎/mL の時に、PPs で 100 µg/mL の時に最
大となった(図 24)。B. thermophilum P2-91 未精製乾燥物の素材 3 は、MLN 及び PPs で
10 µg/mL の時に最大であった(図 25)。乳酸菌の素材 7 は、MLN では全濃度で対照区に
対して有意に低値であったが、PPs では 100 µg/mL の時に最大であった。素材 8 は MLN
で 100 µg/mL、PPs では 10 µg/mL のときに最大であった。素材 12 は MLN で 1 ㎎/mL、PPs
で 100 µg/mL のときに最大であった。素材 13 は MLN で 100 µg/mL の時に最大、PPs で
は有意な高値は認められなかった(図 26~図 29)。
B. subtilis の芽胞からなる素材 14 は MLN 及び PPs で 1mg/mL の時、素材 15 は MLN
及び PPs で 100 µg/mL の時に、素材 16 は MLN で 1mg/mL の、PPs で 0.1 µg/mL の時に、
素材 17 は MLN 及び PPs で 1mg/mL の時にそれぞれ最大であった(図 30~図 33)。放線菌
の芽胞からなる素材 19 は MLN 及び PPs で 10 µg/mL の時に、素材 20 は MLN で 100 µg/mL、
PPs で 1 µg/mL の時に、素材 21 は MLN で 100 µg/mL、PPs で 10 µg/mL の時に、素材 22
は MLN 及び PPs で 100 µg/mL の時に、素材 23 は MLN で 100 µg/mL、PPs で 1 µg/mL の時
に、素材 24 は MLN で及び PPs で 10 µg/mL の時に最大であった(図 34~図 39)。
酵母からなる素材 35 は MLN で 100 µg/mL の時に最大となったが、PPs では有意差は
認められなかった。素材 38 は MLN で 100 µg/mL、PPs で 0.1 µg/mL の時に最大であった。
素材 40 は MLN、PPs とも有意な高値はなく、糸状菌からなる素材 41 は MLN で 1 µg/mL
で最大となったが、PPs では有意差は認められなかった (図 40~図 43)。
3-2) サイトカイン発現の評価
飼料素材で刺激した MLN または PPs におけるサイトカインの発現について評価した。
MLN では、素材 2 は IL-2、IL-4、IL-6、IL-10 の発現を、IL-13 の素材 8 は IL-4、IL-6
の発現を、素材 12 は IL-4、IL-6、IL-10 の発現を、素材 13 は IL-2、IL-4、IL-6 の発
現を増強した(図 44)。PPs では、素材 2 は IL-2、IL-4、IL-6、IL-10 の発現を、IL-13
の素材 8 は IL-4、IL-6 の発現を、素材 12 は IL-4、IL-6、IL-10 の発現を、素材 13 は
IL-2、IL-4、IL-6 の発現を有意に増強した。素材 2 は IFN-、IL-2、IL-13 の発現を、
59
素材 8 は IFN-、IL-2、IL-4、IL-13 の発現を、素材 12 は IFN-、IL-2、IL-6、IL-10
の発現を、素材 13 は IFN-、IL-2、IL-6、IL-10 の発現を有意に増強した(図 45)。
60
12
*
2.5
Stimulation Index
***
10
2
8
1.5
6
***
1
4
0.5
**
2
***
0
0
Control 0.1µg
図 23
1µg
10µg
100µg
1mg
Control 0.1µg
1µg
10µg
100µg
1mg
素材 1 のリンパ球幼若化活性(左:MLN、右:PPs)
14
4.5
**
**
12
Stimulation Index
***
4
3.5
10
3
8
2.5
6
2
*
1
*
**
2
0.5
0
0
Control 0.1µg
図 24
*
1.5
**
4
*
1µg
10µg
100µg
1mg
Control 0.1µg
1µg
10µg
100µg
1mg
素材 2 のリンパ球幼若化活性(左:MLN、右:PPs)
4
3
Stimulation Index
*
**
3
*
*
2
2
1
1
0
0
Control
図 25
1µg
10µg
100µg
Control
1µg
10µg
素材 3 のリンパ球幼若化活性(左:MLN、右:PPs)
61
100µg
2.5
Stimulation Index
1.2
1
2
**
*
0.8
***
1.5
0.6
1
0.4
**
**
**
0.5
0.2
**
**
0
Control
図 26
0.1µg
1µg
10µg
100µg
1mg
0
Control 0.1µg
1µg
10µg
100µg
1mg
素材 7 のリンパ球幼若化活性(左:MLN、右:PPs)
6
2
**
**
1.8
5
Stimulation Index
**
1.6
*
1.4
4
1.2
**
3
1
*
0.8
2
0.4
1
**
0
0.2
**
0
Control 0.1µg
図 27
*
0.6
1µg
10µg
100µg
1mg
Control 0.1µg
1µg
10µg
100µg
1mg
素材 8 のリンパ球幼若化活性(左:MLN、右:PPs)
3
*
3.5
**
3
Stimulation Index
2.5
*
2.5
**
2
***
2
1.5
1.5
1
1
0.5
0.5
0
0
Control 0.1µg
図 28
1µg
10µg
100µg
1mg
Control 0.1µg
1µg
10µg
100µg
素材 12 のリンパ球幼若化活性(左:MLN、右:PPs)
62
1mg
5
1.8
**
4.5
1.6
Stimulation Index
4
1.4
3.5
1.2
3
1
2.5
***
0.8
2
0.6
1.5
**
0.4
1
0
Control 0.1µg
1µg
10µg
100µg
1mg
1µg
10µg
100µg
1mg
*
7
***
3.5
Stimulation Index
Control 0.1µg
素材 13 のリンパ球幼若化活性(左:MLN、右:PPs)
4
6
3
**
5
2.5
4
2
**
3
1.5
*
*
**
1
0
0
Control 0.1µg
図 30
*
2
1
0.5
1µg
10µg
100µg
1mg
Control 0.1µg
1µg
10µg
100µg
1mg
素材 14 のリンパ球幼若化活性(左:MLN、右:PPs)
9
8
**
*
*
8
Stimulation Index
**
***
0
図 29
**
0.2
0.5
7
7
6
6
5
5
4
4
3
3
*
2
*
2
*
1
1
**
0
0
Control 0.1µg
図 31
1µg
10µg
100µg
1mg
Control 0.1µg
1µg
10µg
100µg
素材 15 のリンパ球幼若化活性(左:MLN、右:PPs)
63
1mg
Stimulation Index
7
**
3.5
6
3
5
2.5
4
2
**
*
*
*
3
**
1.5
2
1
1
0.5
*
**
**
0
0
Control 0.1µg
図 32
1µg
10µg
100µg
1mg
10µg
100µg
1mg
10
**
14
Stimulation Index
1µg
素材 16 のリンパ球幼若化活性(左:MLN、右:PPs)
16
***
9
8
12
7
10
6
***
8
*
5
4
6
3
4
*
2
**
2
0
0
Control 0.1µg
図 33
*
1
*
1µg
10µg
100µg
1mg
Control 0.1µg
1µg
10µg
100µg
1mg
素材 17 のリンパ球幼若化活性(左:MLN、右:PPs)
4
6
**
Stimulation Index
Control 0.1µg
**
**
5
3
4
2
3
2
1
1
0
0
Control
図 34
1µg
10µg
100µg
Control
1µg
10µg
素材 19 のリンパ球幼若化活性(左:MLN、右:PPs)
64
100µg
2
3
Stimulation Index
*
*
2
*
1
1
0
0
Control
図 35
1µg
10µg
100µg
Control
1µg
10µg
100µg
素材 20 のリンパ球幼若化活性(左:MLN、右:PPs)
9
**
4
Stimulation Index
8
7
3
**
**
6
5
*
2
4
**
3
*
1
2
1
0
0
Control
図 36
1µg
10µg
100µg
Control
1µg
10µg
100µg
素材 21 のリンパ球幼若化活性(左:MLN、右:PPs)
9
**
4
Stimulation Index
8
7
3
**
**
6
5
*
2
4
**
3
*
1
2
1
0
0
Control
図 37
1µg
10µg
100µg
Control
1µg
10µg
素材 22 のリンパ球幼若化活性(左:MLN、右:PPs)
65
100µg
5
5
**
*
Stimulation Index
4.5
4
4
*
**
3.5
3
3
2.5
2
*
2
1.5
1
1
0.5
0
0
Control
図 38
1µg
10µg
100µg
Control
1µg
10µg
素材 23 のリンパ球幼若化活性(左:MLN、右:PPs)
6
4
Stimulation Index
5
*
3
*
***
*
4
**
3
2
2
1
1
0
0
Control
図 39
1µg
10µg
100µg
Control
1µg
10µg
100µg
素材 24 のリンパ球幼若化活性(左:MLN、右:PPs)
3.5
1.6
***
1.4
3
Stimulation Index
100µg
1.2
2.5
1
***
2
0.8
1.5
0.6
1
0.4
0.5
**
0.2
**
0
0
Control 0.1µg
図 40
1µg
10µg
100µg
1mg
Control 0.1µg
1µg
10µg
100µg
素材 35 のリンパ球幼若化活性(左:MLN、右:PPs)
66
1mg
2.5
2.5
**
**
Stimulation Index
2
2
*
1.5
1.5
*
1
1
*
*
0.5
0.5
*
**
0
0
Control 0.1µg
図 41
1µg
10µg
100µg
1mg
1µg
100µg
1mg
1.2
1
2
0.8
1.5
0.6
**
1
**
0.4
0.5
0.2
*
**
**
**
**
**
0
0
Control 0.1µg
図 42
1µg
10µg
100µg
1mg
Control 0.1µg
1µg
10µg
100µg
1mg
素材 40 のリンパ球幼若化活性(左:MLN、右:PPs)
3
Stimulation Index
10µg
素材 38 のリンパ球幼若化活性(左:MLN、右:PPs)
2.5
Stimulation Index
Control 0.1µg
2
*
2
1
1
*
*
0
0
Control
図 43
1µg
10µg
100µg
Control
1µg
10µg
素材 41 のリンパ球幼若化活性(左:MLN、右:PPs)
67
100µg
Control
Normalized fold expression
4
**
**
3
No. 2
(FMA5)
No. 8
(FMA6)
No. 12
(FMA4)
No. 13
(FMA1)
**
**
**
**
2
*
*
*
*
*
*
*
1
0
IFN-γ
図 44
IL-2
IL-4
IL-6
IL-10
IL-13
飼料素材の刺激による MLN でのサイトカイン発現。*、**:同一サイトカイン内
で Control に対して有意差あり(それぞれ p <0.05、p <0.01)
Control
Normalized fold expression
4
**
**
**
**
**
**
3
**
*
*
2
*
*
* *
*
*
*
No. 2
(FMA5)
No. 8
(FMA6)
No. 12
(FMA4)
No. 13
(FMA1)
1
*
*
0
IFN-γ
図 45
IL-2
IL-4
IL-6
IL-10
IL-13
飼料素材の刺激による PPs でのサイトカイン発現。*、**:同一サイトカイン内
で Control に対して有意差あり(それぞれ p <0.05、p <0.01)
68
第4節 考察
本章では、Bifidobacterium 属、乳酸菌、酵母などを主成分とする 23 種類の機能性
飼料素材を評価した。リンパ球の幼若化活性では、MLN 及び PPs の 2 種の異なる組織か
ら免疫担当細胞を調製したが、飼料素材ごとの特徴は見られるものの、総じて MLN での
反応が高く、これは腸の内管に面して常に刺激にさらされる PPs に比べると、感受性が
異なるためと考えられた。
素材 1~3 は B. thermophilum P2-91 の純粋菌体粉末、賦形剤添加、未精製菌体粉末
である。本章でのリンパ球幼若化活性の結果は、第 2 章での賦形剤の検討、第 3 章での
マウス検定と同様に、素材 2 は主成分含量が素材 1 の 10%になっているにもかかわらず
同等の活性を示し、賦形剤との混合が分散性を高め、有効成分の作用性が改善されたこ
とが明らかとなった。同様に未精製の素材 3 は、リンパ球の幼若化活性に有意差は見ら
れたものの、精製した素材 1 に比べその活性は著しく低く、精製工程の必要性を明らか
にした。リンパ球の幼若化に伴い、素材 2 は、IFN-、IL-6 及び IL-10 の発現を有意に
増強した。B. thermophilum P2-91 をブタに給与することで、IgA の増加が報告されて
おり[51]、これは素材 2 により適切に免疫が調節されたものと推測された。
乳酸菌の素材では、マウス検定、IgA 及び IL-12 で効果の見られた素材 7 は、ブタの
MLN においてリンパ球の活性を有意に低下させ、マウスに特異性のある素材であること
が明らかとなった。マウス検定で効果の見られた素材 8 は、MLN、PPs でリンパ球の幼
若化を活性化し、IFN-、IL-4、IL-13 の発現を有意に増強した。IL-13 は IL-6、IL-8
を抑制する抗炎症性のサイトカインで、素材 8 は免疫調節に優れる素材であると考えら
れた。素材 12、13 のリンパ球の活性化は中程度であった。
Bacillus 属、放線菌、酵母については、リンパ球の幼若化活性では、素材 17 や素材
22 を除くと、概ね中程度以下の強化であった。これらは免疫活性の強化を主な目的に
選抜された Bifidobacterium 属菌や乳酸菌由来の素材とは異なる。その中で、素材 17
は子牛の免疫活性を強化しており[28]、免疫機能を指標とした選抜により、飼料製造に
適した芽胞または胞子形成微生物を飼料素材として獲得できる可能性が示唆された。
これまでに本研究室で構築してきたブタの腸管免疫担当細胞を用いた飼料素材の評価
試験を実施した。家畜の免疫活性の強化を主要な機能として開発された
Bifidobacterium 属菌や乳酸菌を主成分とする飼料素材は、本試験においても明らかに
ブタの MLN、PPs のリンパ球幼若化活性を強化した。特に素材 2 のリンパ球幼若化活性
69
は著しく強化され、発現したサイトカインも多様で、免疫の亢進と抑制を適度に調節し
ていることが示唆された。また、乳酸菌を由来とする飼料素材にもリンパ球幼若化活性
化を強く強化したものが認められ、サイトカインの発現から免疫を調節する機能を有す
ることが示唆された。さらに、家畜での有効性が明らかな素材 2 が、本試験系であるブ
タの腸管免疫細胞での評価により、その機能の一端が明らかとなったことから、将来の
新規の機能性飼料素材の選抜または機構解明の評価系として有用性が高いことが明ら
かとなった。
70
第5節 小括
ブタの腸間膜リンパ節(MLN)及びパイエル板(PPs)由来の免疫担当細胞を用いて、飼料素
材のリンパ球幼若化活性及びサイトカイン発現について評価し、以下の知見を得た。
1. B. thermophilum P2-91 を主成分とする素材 2 は特にリンパ球の幼若化活性を強
化した。乳酸菌由来の素材 8、12、13、Bacillus 属の素材 17、放線菌の素材 22
にも高いリンパ球幼若化活性が認められた。
2. 飼料素材ごとに発現を誘導するサイトカインは異なり、素材 2 では多種のサイト
カイン発現を増強しており、子ブタの免疫の亢進、抑制を適切に調節しているこ
とで生育を改善していることが期待された。
3. 本評価系は、ブタへの活用が期待され、既存の飼料素材の評価、機構解明に加え、
新規素材の選抜にも有効であることが示唆された。
71
第5章
ブタ腸管上皮(PIE)細胞を用いた機構解明
73
第1節 諸言
ブタの下痢症は、古くから世界中のブタ生産国において普遍的に発生しており、特に
哺乳・離乳期の下痢症は後の成育や呼吸器疾患発生に大きく影響することから、畜産農
家に与える経済的損失が大きい疾病である。下痢症は多様なウイルス、細菌、寄生虫が
単独または複合関与することにより発症する[4]。その中でも腸管毒素原性大腸菌
(Enterotoxigenic E. coli; ETEC)に起因する大腸菌性下痢症は、子ブタの育成上の
障害となっている疾病である[105]。ETEC は 1967 年に子ブタの下痢症の原因菌として
発見され[106]、さらに 1971 年 Sack らによりヒトの病原菌としても報告された[107]。
子ブタの下痢症は、生後 2 週間以内に発生する新生期下痢(neonatal diarrhea)と離乳
後 4~10 日目に集中する離乳後下痢(post-weaning diarrhea)に分けられる。離乳後下
痢症の典型的な例ではブタ群中の栄養状態の良好なものが 1~2 頭、前駆症状なしに急
死する。これは小腸内で異常増殖した ETEC の内毒素によるショック死と考えられてい
る。発生から 3 日目にかけて下痢が観察され、通常 7~10 日ほどで回復するが、その後
の発育は遅延する[4,108]。ETEC は付着因子を介して小腸粘膜に定着し、下痢原性毒素
であるエンテロトキシンを産生して腸上皮細胞の炎症誘導などを引き起こし、下痢症状
をもたらす。ブタにおいても ETEC 感染時に炎症応答が誘導されるが[109]、ETEC の付
着・増殖の場となる腸管上皮細胞における炎症応答誘導機構に関する知見は極めて少な
い。現在用いられている下痢症の予防法として、各種大腸菌繊毛を弱毒化した母豚用ワ
クチンが市販されている。乳汁中に IgG1 を主体とする抗大腸菌抗体が初乳を介して子
ブタに免疫を付与する。しかしながら、ワクチンの主成分である線毛は種類により抗原
性が異なり、交差感染防御が成立しないことや[4]、複数回の免疫注射を含めた煩雑性
や高価格のため普及しにくいという問題がある[110]。下痢症の治療としては、オキソ
リン酸、アンピシリン、オキシテトラサイクリンなどが用いられているが、抗菌剤の過
剰使用は耐性菌の出現や大腸菌性腸管毒血症を誘発するという観点から問題視されて
おり、これらの欠点を補う方法としてプロバイオティクスを始めとする微生物由来の機
能性飼料素材が有望視されている[12]。ブタの生育に有用な機能性飼料素材、及びその
詳細な機構解明について記述された知見は極めて少ない。
2007 年に本研究科機能形態学分野の麻生らは、三元交雑種(LWD)初生子ブタの小腸
管腔の粘膜上皮層から細胞株(ブタ小腸由来腸管上皮細胞株;Porcine Intestinal
74
Epitheliocyte cell; PIE 細胞)の樹立に成功した[111]。さらに、当研究室の研究に
より PIE 細胞の毒素原性大腸菌や LPS、ウイルスに対する炎症応答等の免疫学的特性が
明らかとなり、PIE 細胞を用いたブタ対応型の抗炎症性の微生物の選抜・評価系が構築
された[81,112–115]。それにより抗菌剤代替としてブタに有用な機能性飼料素材の選
抜・評価が期待され、本評価系を用い、ETEC の炎症に対して抗炎症性を発揮する機能
性飼料素材の選抜が可能となった[116–118]。
そこで本章では、腸管で第一線のバリア機能を有する腸管上皮細胞における評価を目
的とし、ブタ腸管上皮(PIE)細胞を用いて、免疫機能性およびその機構解明を試みた。
PIE 細胞を毒素原性大腸菌(ETEC)で刺激すると炎症性サイトカインの発現が誘導される。
刺激に対して速やかに応答しこれらのサイトカインを発現することは生体防御の面か
ら重要であるが、長時間にわたり炎症が持続すると、炎症性下痢症の原因となり、かえ
ってブタに悪い影響を及ぼす。従って、これらのサイトカイン応答の調節性を指標とし
て評価し、その機構解明を行った(図 46)。
75
TLRs
TLR negative regulators
TRIF
SIGIRR
MyD88
IRAK
Tollip
IRAK-M
MKP-1
MAPK
IκBa
JNK,ERK,p38
NF-κB
A20
BCL3
図 46
炎症シグナル伝達の模式図とネガティブレギュレーターによる調節(島津、
[115])
76
第2節 材料と方法
2-1) 供試素材
本章で使用した飼料素材の一覧(表 19)
2-2) 供試細胞
2-2-1) PIE 細胞
本研究で用いたブタ腸管上皮(Porcine intestinal epitheliocyte; PIE)細胞は、
三元交雑種(LWD)初生子ブタの小腸腸管よりクローニングされた細胞[111]であり、本
学研究科機能形態学分野より譲渡された。
2-3) PIE 細胞を用いた ETEC に対する抗炎症活性試験
2-3-1) 細胞培養
PIE 細胞は、コラーゲン(Type Ⅰ)コート済みの φ90 mm シャーレ(SUMILON、Tokyo、
Japan)を用いて、DMEM(10% FCS、100 mg/mL penicillin、100 U/mL streptomycin、
high glucose、L-glutamine、0.11 mg/mL sodium pyruvate ; GIBCO)により培養した。
コンフルエントに達したところで、PBS により 2 回洗浄し、上皮 buffer(0.1M Na2HPO4 /
12H2O、0.45M Sucrose、0.36% EDTA/4Na、BSA)による処理後(37℃、5 min)、トリプ
シン溶液(0.25% trypsin、0.02% EDTA in PBS)を用いてプレートから細胞をはがし(37℃、
5 min)、遠心分離(1200 rpm、5 min、4℃)により細胞を回収した。細胞数計測後、細
胞をシャーレに播き、一晩培養後培養上清をアスピレーターにより吸引除去し、新たに
DMEM を添加し培養を行った。同時に、細胞はセルバンカーを用い、世代毎ごとに-80℃
で保存した。
2-3-2) ETEC の調製
ETEC987P 株(血清型 09:H-:987P+: STa+)は、
(独)農業・生物系特定産業技術研
究機関、動物衛生研究所より譲渡された。-80℃で凍結保存されたものを 5%ヒツジ脱繊
維血液加寒天培地に画線し、37℃で 20 h 培養した。出現したコロニーを滅菌爪楊枝で
釣菌し、5 mL の Tryptic soy broth(Becton)に接種し、37℃、5~8 日間静置培養し
た(繊毛復帰培養)
。明確に形成された菌膜を画線棒により釣菌し、1 L の Tryptic soy
broth に接種し、37℃,20 h 振倒培養した。培養後、遠心し PBS で 3 回洗浄後、100℃、
77
15 min で加熱殺菌した。殺菌後 PBS で洗浄し、DMEM に懸濁した。菌数を 1.5×1010 cells/
mL となるように調製後、-80℃で凍結保存した。
2-3-3) PIE 細胞の飼料素材刺激
PIE 細胞を 12 well plate に 3.0×104 cells/1 mL で播種した後、37℃,5% CO2 条件
下で 3 日間前培養した。培養 3 日目に、供試素材を 100 MOI(multiplicity of infection)
となるよう添加し、48 h 刺激した。刺激後、PBS でよく洗浄し、調製した ETEC 液を 3.4
µL(5.0×107 cells)添加し、12 h 刺激した。刺激後、PBS でよく洗浄し、各 well に
TRIzol Reagent を 500 µL ずつ加え、1.5 mL マイクロチューブに移し、サンプルとし
た。
2-3-4) Total RNA の抽出および cDNA 合成、real-time PCR 法
第 4 章 2-3-3)、2-3-4)と同様に行った。
2-3-5) ELISA アッセイ
刺激後 48 h の培養上清を回収後、遠心分離したものを ELISA 用サンプルとして用い
アッセイした。使用した ELISA キットは、Porcine IL-6 ELISA kit(Ray-Bio, Norcross,
GA)、Porcine IL-8 immunoassay kit(Biosource, Camarillo, CA)および Porcine MCP-1
ELISA kit(E101-800,Bethyl Laboratories, Inc. Montgomery, TX,USA)である。
2-3-6) 統計解析
統計解析は、SAS コンピュータープログラム(SAS、1994)にて GLM および REG の手
順を参考に行った。最終的に、p <0.05 で有意差ありと判断した。
2-4) ウェスタンブロットによる細胞内シグナル解析
2-4-1) 細胞培養およびサンプル刺激
PIE 細胞を φ60 シャーレに 1.8×105 cells/6 mL となるように播いた後、37℃、5%CO2
条件下で 3 日間培養した。培養 3 日目に 100 MOI(Multiplicity of infection)にな
るように供試素材を添加し、48 h 前刺激を行った。刺激後、PBS でよく洗浄し、任意時
間(0、5、10、20、40 min)ETEC を 100 MOI になるように刺激した。また、比較対象
として ETEC 単独刺激区(ETEC control 区)を設けた。
78
2-4-2) 細胞の溶解と SDS 化処理
刺激後、CelLytic M Cell Lysis Reagent(Sigma)にたん白質分解阻害剤(Complete
Mini(Roche)
)と脱リン酸化阻害剤(PhosSTOP(Roche))を規定量添加した細胞溶解液
250 µL を添加し細胞を可溶化した。セルスクレーパーを用いて可溶化した細胞液を回
収し、15000 rpm、5 min 遠心した後上清を回収した。回収した上清 150 µL に 4×SDS
バッファー50 µL を添加し、95℃、5 min 加熱処理後、サンプルとして用いた。
2-4-3) たん白質含量の測定
細胞溶解液中のたん白質含量の測定を BCA protein assay kit(Pierce)を用いて行
った。Multiabel Reader ARVOTM X3(Perkin Elmer)を用い、560 nm で吸光度を測定
することによりたん白質含量を算出した。
2-4-4) SDS-ポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)および膜転写
SDS 化処理を行ったサンプルについてたん白質含量を一定(2 µg/1 レーンを含む同容
量)にし、SDS-PAGE に供した。ゲル濃度は 10%もしくは 12.5%を用い、泳動は 125V、90
min 行った。泳動終了後、 100%メタノールで親水化した PVDF 膜にたん白質を、
Trans-Blot®TurboTM Transfer System (Bio-Rad, Lab. Inc., Hercules, CA, USA) を
用いて転写した。
2-4-5) シグナルたん白質の検出
PVDF 膜を TBS-T(pH7.6)で洗浄し、2% BSA/TBS-T(w/v)に室温で 3 h ほど浸してブ
ロ ッ キ ン グ を 行 っ た 。 TBS-T で 洗 浄 後 、 1000 倍 希 釈 の 一 次 抗 体 ( anti-IBa 、
anti-phosphate-p38、anti-p38、anti-phosphate-JNK、anti-JNK、anti-phosphate-ERK、
anti-ERK、-actin;Cell Signaling Technology, Beverly, MA, USA)を添加し、一晩
振とうした。TBS-T で洗浄後、2000 倍希釈した二次抗体(Alkaline phosphate conjugated
anti-rabbit IgG;SIGMA-ALDRICH,USA)に一時間浸して振とうし、再び洗浄した。洗浄
後、ECF 基質(GE Healthcare、UK)を添加し、Molecular Imager FX(Bio Rad)によ
り化学蛍光検出を行った。
2-4-6) データ解析
79
結果は、画像解析ソフト Image J(NIH)を用いて検出したターゲットバンド濃度を
それぞれの対応するシグナル分子で除し数値化後、 0min の値を1とした相対強度
(Relative Index)として評価した。
2-5) ブタ TLR シグナリングのネガティブレギュレーター発現解析
2-5-1) PIE 細胞前培養
細胞数をカウントし、PIE 細胞を 3.0×104 cells / well になるように 12 well プレ
ートに播き、37℃、5% CO2 条件下で 3 日間培養した。
2-5-2) 供試素材による刺激
12 well プレートに、供試素材を 100 MOI になるように、Pam3CSK4 については 200
ng/well になるように播き PIE 細胞を 48 h 刺激した。刺激後、培地をアスピレーター
で除去し、PBS でよく洗浄し、浮遊菌体を除去した。炎症誘発因子として ETEC987P 株
を 100 MOI になるように播き、3、6、12 h 刺激した。刺激後、各 well に TRIzol Reagent
を 500 µL ずつ加え、1.5 mL マイクロチューブに移し、サイトカイン発現解析サンプル
とした。
2-5-3) Total RNA 抽出および cDNA 合成
第 4 章 2-3-3)の方法に準じて行った。
2-5-4) 定量的 Real-time RT-PCR 法
得られた cDNA を用いて第 4 章 2-3-4)の方法に準じて Real-time RT-PCR を行った。
使用したプライマーの配列は表 20 に示した。
2-6) TLR2 及び TLR4 blocking 抗体を用いた解析
2-6-1) PIE 細胞刺激
コラーゲンコート済み 12 well プレートに 3.0×104 cells / mL 濃度の細胞液を 1 well
あたり 1 mL となるように添加し、3 日間培養した。培地交換後、TLR2 blocking 抗体
( LEAFTM Purified anti-human CD282; BioLegend ) ま た は TLR4 blocking 抗 体
(TLR4(H-80);SANTA CRUZ BIOTECHNOLOGY,INC)で処理した。さらにその後、飼料素材を
添加し、前刺激を 48 時間行った。培養後、PBS で洗浄し ETEC987P 株を終濃度 5.0×107
80
cells / mL となるように添加し、3、6、12 時間刺激した。刺激後、培地を除去し TRIzol
で溶解し、以降のサンプルとして用いた。
2-6-2) Total RNA 抽出及び cDNA 合成、mRNA の定量
前 4 章 2-3-3)及び 2-3-4)と同様の方法で行った。
2-6-3)統計解析
統計解析は、SAS コンピュータープログラム(SAS、1994)にて GLM および REG の手
順を参考に行った。最終的に、p <0.05 で有意差ありと判断した。
81
表 19
供試素材一覧
素材番号
内容
2
素材 1 の 10%倍散品
8
乳酸菌乾燥物
12
乳酸菌乾燥物
13
乳酸菌乾燥物
表 20
real-time PCR で使用されたプライマー
Gene name
Sense primer
Antisense primer
Porcine -actin
CATCACCATCGGCAACGA
GCGTAGAGGTCCTTCCTGATGT
Porcine SIGIRR
ATGTGAAGTGTCGGCTCAATGT
TTCATCTCCACCTCCCCATACT
Porcine Tollip
TACCGTGGGCCGTCTCA
CCGTAGTTCTTCGCCAACTTG
Porcine A20
CCTCCCTGGAAAGCCAGAA
GTGCCACAAGCTTCCTCACTT
Porcine BCL-3
CGACGCGGTGGACATTAAG
ACCATGCTAAGGCTGTTGTTTTC
Porcine MKP-1
AACGAGGGTCAGGCTTTTCC
TCCCCAATGTGCTGAGTTCAG
Porcine IRAK-M
TGGAGCAGCCTTGAATCCTT
TGGATAACACGTTTGGGAATCTT
82
第3節 結果
3-1) PIE 細胞への ETEC 刺激に対する抗炎症活性の評価
PIE 細胞への ETEC 刺激による炎症性サイトカインの発現抑制を指標に素材を評価し
た。PIE 細胞を飼料素材との培養で刺激することによるサイトカイン発現量を測定した。
素材 2 は IL-6、IL-8 を、素材 8 は IL-6、MCP-1 の発現を有意に増加した(図 47 a)。続
いて、飼料素材との培養後に、ETEC 死菌体による刺激後のサイトカイン発現量を測定、
ETEC 刺激の発現量に対して比較した。
素材 2 は、炎症性サイトカインである IL-6、IL-8、
MCP-1 の発現を有意に抑制した。素材 8 は IL-8 及び MCP-1、素材 12 は IL-8、素材 13
は IL-6 の発現を有意に抑制した(図 47 b)。
3-2) ネガティブレギュレーター
免疫応答調節のメカニズムを解明するため、Toll 様受容体(TLR)シグナル伝達経路を
阻害するレギュレーターとして SIGIRR、Tollip、A20、Bcl-3、MKP-1、IRAK-M の発現を
測定し、それぞれの ETEC で感作された時の値に対して比較した。素材 2 が SIGIRR、Tollip、
A20 と IRAK-M の発現を有意に促進した。素材 8 は SIGIRR の発現を、素材 13 は A20、Bcl-3、
IRAK-M の発現を有意に促進した(図 48)
3-3) IBa分解と p38 リン酸化
NF-B 経路により調節された炎症促進応答を評価するために、NF-B 活性の指標とし
て、対抗調節因子である IBaを測定した。対照区では低下した IBaの分解が、飼料素
材 2(FMA5)による前刺激では有意に抑制され、飼料素材 13(FMA1)でもその傾向が認めら
れた。さらに p38 MAPK の指標として p38 の発現を測定した。対照区では p38 の発現が
増加したが、素材 2 では有意にその増加を抑制し、素材 13 でも増加を抑制する傾向が
認められた(図 49)。
3-4) TLR2 及び TLR4 の役割
飼料素材 2 の免疫調節機能での TLR2 と TLR4 の役割を評価するため、抗 TLR2 および
抗 TLR4 抗体を用いて飼料素材 2 と飼料素材 13 を比較した。抗 TLR2 によるブロッキン
グにより、飼料素材 2 は MCP-1 の発現増加が認められたが、抗 TLR4 によるブロッキン
グでは、素材 2 は IL-6 と IL-8 の発現が増加した(図 50)。
83
Normalized fold expression
(a)
4
Control
3
No. 2
(FMA5)
No. 8
(FMA6)
*
**
2
No. 12
(FMA4)
*
*
No. 13
(FMA1)
1
0
IL-6
IL-8
MCP-1
(b)
Control
Normalized fold expression
2
ETEC
*
1
*
*
*
*
*
*
*
*
*
No. 2
(FMA5)
No. 8
(FMA6)
No. 12
(FMA4)
No. 13
(FMA1)
*
0
IL-6
図 47
IL-8
MCP-1
PIE 細胞を用いた(a)飼料素材の単独刺激によるサイトカイン発現量、(b)飼
料素材刺激後の ETEC 刺激によるサイトカイン発現量。*、**:同一サイトカイン内で
ETEC に対して有意差あり(それぞれ p <0.05、p <0.01)
84
Normalized fold expression
3
Control
ETEC
2
*
*
*
*
*
*
*
*
*
1
No. 2
(FMA5)
No. 8
(FMA6)
No. 12
(FMA4)
No. 13
(FMA1)
0
SIGIRR
図 48
Tollip
A20
Bcl-3
MKP-1
IRAK-M
PIE 細胞における飼料素材刺激によるネガティブレギュレーターの発現量。*:
同一因子内で ETEC に対して有意差あり(p <0.05)
ETEC
No. 2+ETEC
2
ETEC
No. 13+ETEC
0
5
10
20
40
min
0
5
10
20
40
min
2
*
*
1
1
0
0
0
5
10
20
40
min
3
3
2
2
**
*
1
1
0
0
0
図 49
5
10
20
40
min
飼料素材による(a)IBa分解および(b)p38 リン酸化への影響
*、**:同一時点で ETEC cont に対して有意差あり(それぞれ p< 0.05、p <0.01)
85
図 50
*: ETEC に対して有意差あり(p <0.05)
86
+anti-TLR4
No. 2
+anti-TLR4
No. 13
ETEC
Control
+anti-TLR2
No. 2
+anti-TLR2
No. 13
ETEC
Control
Normalized fold expression
(a)
(b)
PIE 細胞の飼料素材による免疫調節における(a)TLR2 および(b)TLR4 の役割。
第4節 考察
当研究室でこれまでに PIE 細胞を ETEC や LPS で刺激することで、炎症性サイトカイ
ンである IL-6、IL-8、MCP-1 を有意に増加すること、またこれらの炎症性サイトカイン
により PIE 細胞が損傷を受けることを見出している。さらに、PIE 細胞を ETEC 刺激よ
り先に、Lactobacillus jensenii TL2937、B. longum BB536 などで処理することで、
炎症性サイトカインの発現量を有意に抑制し、さらに NF-B や MAPK 経路も調節するこ
とを確認している[119]。
飼料素材ごとの違いはあるものの、いずれの素材も炎症性サイトカインを抑制し、中
でも素材 2 は他の飼料素材と比較して高い抗炎症活性を示しており、これは炎症シグナ
ルの応答が制御されたためと考えられた。そこで、炎症シグナル伝達を調節する 6 種類
のネガティブレギュレーターの発現を評価したところ、素材 2 が SIGGIR、Tollip、A20、
IRAK-M の発現を、素材 13 が SIGIRR、A20 、Bcl-3 、IRAK-M の発現を増強した。SIGIRR
の過剰発現が NF-B 活性を阻害することで、炎症性サイトカインの産生を緩和し[120]、
また、SIGIRR 欠損マウスで LPS 誘導炎症応答が強化される[121]。IRAK-M 欠損細胞では、
TLR リガンドや細菌による刺激で、NF-B や MAPK 活性が強化され、IL-12、IL-6、TNF-a
といった炎症性サイトカインが増加する[122,123]。Tollip は腸管上皮細胞上に強く発
現し、上皮の応答性低下に寄与している[124]。A20 は NF-B シグナルの末端で機能し、
これを欠損したマウスは TNF 誘導の致死性炎症に感受性が高くなる[125,126]。飼料素
材による刺激がこれらのネガティブレギュレーターを増強したことから、炎症性サイト
カインの過剰発現が抑制されたことが推測された。
さらに、詳細な機構解明に向けて NF-B と MAPK の経路に着目した。NF-B は核内転
写因子の一つで、炎症応答に関与する遺伝子の転写因子とされている。NF-B は通常、
核外に Inhibitor (I) B と複合体を形成し非活性型として存在しているが、免疫刺激
物質による刺激で、IB はリン酸化された後分解する[116]。ETEC の刺激により IB は
分解が進むが、飼料素材による刺激が炎症性サイトカインの発現を Control と同程度に
まで制御しており、素材 2 及び素材 13 が NF-B の経路を調節していることが明らかと
なった。これは、先のネガティブレギュレーターの発現増強も一因であると考えられた。
MAPK 経路の p38 MAPK はリン酸化により活性化され、核内で炎症性サイトカインの転写
に関与する。ETEC の刺激が p38 MAPK のリン酸化を急速に活性化したが、素材 2、素材
13 はその活性化を緩和した。各種ネガティブレギュレーター、NF-B、p38 MAPK 経路が
87
複合的に調節されることで抗炎症活性が強化されていることが明らかとなった。グラム
陽性細菌は TRL2 に認識されていると考えられており、抗 TLR2 抗体を加えることで、
Bifidobacterium 属の刺激が認識されず抗炎症性が抑制されたことが報告されている
[81]。素材 2 はグラム陽性細菌であることから、抗 TLR2 抗体を加えたが IL-6 と IL-8
は調節されず、抗 TLR4 抗体により IL-6 と IL-8 が抑制され、素材 2 は TLR4 に認識さ
れていることが示唆された。TLR4 は ETEC などのグラム陰性細菌の LPS を認識すること
はよく知られているが、グラム陽性細菌を認識しているとする報告は少なく、免疫刺激
因子の詳細な解明が今後必要である。
以上から、素材 2(FMA5)はブタ腸管上皮細胞において、ネガティブレギュレーターの
発現を増強することで、炎症性サイトカイン産生の引き金となる NF-B および p38 MAPK
経路を制御した。それにより、炎症性サイトカインの発現が抑制されたことから、子ブ
タ離乳期において大腸菌に由来する慢性的な下痢症を緩和し、その成長を維持すること
に有効であることを見出した。
88
TLRs(TLR2,TLR4)
素材 2
飼料素材
TRIF
SIGIRR
MyD88
Tollip
IRAK
リン酸化抑制
MKP-1
IRAK-M
分解抑制
MAPK
IκBa
A20
NF-κB
JNK,ERK,p38
BCL3
図 51
素材 2 による抗炎症活性強化の作用機構図
89
第5節 小括
リンパ球の幼若化活性、サイトカインの発現から免疫調節能が期待された飼料素材に
ついて、PIE 細胞を用いた抗炎症活性の評価と、抗炎症のメカニズムの解明を試みた。
1. 各飼料素材は抗炎症性活性を示したが、素材 2 は IL-6、IL-8、MCP-1 の発現を有
意に抑制し、特に高い活性を示した。
2. 炎症シグナルを調節するネガティブレギュレーターの評価から、素材 2、素材 13
が複数のレギュレーターを活性化しており、抗炎症活性に寄与していることが示
唆された。
3. 素材 2、素材 13 は、NF-B、p38 MAPK 経路の活性化を抑制し、炎症性サイトカイ
ンの発現を調節したが、特に素材 2 は TLR4 に認識され、IL-6、IL-8 に起因する
炎症を阻害していることが示唆された。
90
第6章
総括
91
離乳期の子ブタは、大腸菌やサルモネラ属菌などの有害微生物による下痢が頻発する。
慢性的な下痢症になりやすく、斃死や成長遅滞により、生産性は著しく低下する[4]。
この離乳期のリスクを低減するために、
「成長促進を目的とした抗菌性物質」(AGP)が利
用されておりブタの生産性を大幅に改善したが、薬剤耐性菌の出現リスクから EU 諸国
では AGP の使用を全面禁止した[8]。日本国内でも、耐性菌出現や薬剤残留などの健康
危害リスクを回避するため、抗菌性物質の使用量削減を取り組んでいる[11]。その中で、
乳酸菌や Bifidobacterium 属菌などのプロバイオティクスは、ヒトのみならず動物の健
康維持増進にも有効と考えられており、AGP の代替品として有望視されている。
そこで本研究では、マウス及び子ブタの免疫機能、飼養成績を改善する
Bifidobacterium thermophilum P2-91[51]を機能性飼料素材として開発するための基礎
的検討を行い、当素材の免疫調節機能とその作用機構を解明することを目的とした。
BSE 発生以降、飼料素材に動物性たん白質を使用することは制限されているため
[59,60]、これを除いた培地での製造法を検討した。酵母エキスの増量により同等以上
の増殖性を示す製造用培地を設計し、得られた乾燥菌体粉末を「素材 1」とした。これ
は保管 2 年目においてもマウスへの有効性に低下は見られず、また家畜を用いた安全性
試験においても毒性は認められなかった。素材 1 を賦形剤に倍散することで、分散性を
改善し、かつ有効性を損なうことなく飼料への添加が可能となる素材 2 として開発でき
た。
近年、微生物などを用いた機能性飼料素材の需要が高まりつつあるが、多くはその作
用機構が明確になっておらず、農場において期待する効果が得られないこともある。そ
こで、本章では、マウスを用いた大腸菌攻撃による飼料素材の評価と、作用機構の詳細
解明を試みた。B. thermophilum P2-91 の培養後、精製して得られた素材 2 は有意にマ
ウスの生存率を改善したが、IgA や IL-12 の産生誘導は認められなかった。一方、乳酸
菌素材 9、10、12 の 3 種類に、マウスへの大腸菌攻撃に対する防御は認められなかった
が、素材 10 は IgA の、素材 9 は IL-12 の産生を強く誘導し、IgA や IL-12 がマウスで
の大腸菌防御への関与が低いことが示唆された。大腸菌攻撃によるマウス検定の結果、
素材 2 を含む飼料素材に有効性が認められたが、その機構解明として行ったマウス由来
細胞の試験結果と明確な因果関係は認められなかった。さらなる追求には家畜での試験
92
が必要となることから、以降の試験ではブタの細胞での評価が必要であると判断した。
これまでに本研究室で構築してきたブタの腸管免疫担当細胞を用いて、飼料素材の評
価試験を実施した[104]。Bifidobacterium 属菌や乳酸菌を主成分とする飼料素材は、
家畜の免疫活性の強化を主要な機能として開発されており、本研究においてもブタの
MLN、PPs のリンパ球幼若化活性を強化した。特に素材 2 のリンパ球幼若化活性は著し
く強化され、発現を誘導するサイトカインも多様で、免疫の亢進と抑制を適切に調節し
ていることが示唆された。また、乳酸菌を由来とする飼料素材にもリンパ球幼若化活性
を強化したものが認められ、同様に免疫を調節する機能を有することが示唆された。
素材 2(FMA5)は、PIE 細胞において、ネガティブレギュレーターの発現を増強するこ
とで、炎症性サイトカイン産生の引き金となる NF-B および p38 MAPK 経路を調節した。
それにより、炎症性サイトカインの発現が抑制されたことから、子ブタ離乳期において
大腸菌に由来する慢性的な下痢症を緩和し、その成長の維持に有効であることを見出し
た。
以上の結果を基礎として、素材 2(FMA5)のブタ用の機能性飼料素材としての開発が可
能となった。本研究で開発した素材 2(FMA5)は、既にブタにおける試験でその有効性が
確認されており、現在は子ブタ用の飼料に使用されている。本研究により、ブタ腸管に
おける抗炎症免疫機能とその作用機構の一端が明確となったことで、本素材の優位性を
見出すことができた。素材 2(FMA5)は、特にブタ腸管上皮細胞への応答性が高く、サイ
トカインの発現を誘導する一方、ETEC の刺激により誘導された過剰な炎症性サイトカ
インの発現を有意に抑制した。すなわち、子ブタの離乳期において大腸菌などの有害細
菌による下痢発症に対しては予防的に働き、かつ慢性的な炎症性下痢症の防御にもつな
がり大変有意義である。今後この知見をもとに、適切な使用方法をユーザーに提案して
いくと共に、薬剤に頼らない家畜の健全育成の向上に貢献したい。
93
謝辞
本研究を終えるにあたり、本研究を遂行する上で学術面、技術面ともに多大なるご指
導を頂きました主査の北澤春樹准教授、ならびに貴重な研究の機会と多くのご助言を賜
りました齋藤忠夫教授に拝謝申し上げます。本研究を遂行するにあたり、副査として貴
重なご意見を賜りました駒井三千夫教授(本研究科栄養学分野)並びに麻生久教授(本
研究科機能形態学分野)に厚く御礼申し上げます。また、PIE 細胞をご提供頂きました
本研究科機能形態学分野に感謝申し上げます。
社会人博士課程への進学と本研究の機会を与えて頂きました株式会社科学飼料研究
所 開発センター担当常務取締役 柴田勲博士、当研究で用いた Bifidobacterium 属菌の
研究者でもあり多大なご指導、ご鞭撻を頂きました日向工場担当取締役 佐々木隆志博
士に深く感謝申し上げます。激励の言葉を頂きました開発センター所長 関口康則氏、
社会人課程への進学を強く勧めていただき、多大なご配慮を頂きました業務部部長 田
辺博薬剤師及び飼料動薬開発課長 吉田元彦獣医師に厚くお礼申し上げます。
本研究を遂行するにあたり、多大なご協力をいただきました、科学飼料研究所 開発
センター 飼料動薬開発課 堀越淑美氏、大澤昭彦氏、興梠牧氏、村上貴宣博士、前川佳
澄薬剤師、動薬部関東事業所所長 永瀬祐己獣医師、同所長補佐 岩男太郎氏、龍野工場
品質管理課課長補佐 森山英一氏、森山昭氏、津田和宏氏、全農家畜衛生研究所 研究開
発室 今井康雄博士、本研究室社会人博士課程の同期でもある同家畜衛生研究所クリニ
ックセンター 田中剛志獣医師、当研究室の卒業生でもある全農飼料畜産中央研究所 細
矢翔一氏及び友定洋介氏に深く感謝いたします。最後に、Jullio Villena 博士、Paulraj
Kanmani 博士、小林永和氏を始め当研究室卒業生及び在校生諸氏に深く感謝申し上げま
すとともに、皆様の今後の素晴らしい研究成果を心より祈念申し上げます。
平成 26 年度
95
動物資源化学分野
熊谷 直祐
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