【2014年活動報告】 そうだったのか、PMBOK® PM創生研究会WG3 中野悦男 2014/12/25 Copyright(c) PMIJ関西ブランチPM創生研究会 0 WG3の活動実績 【Mission】 【取組み内容】 1.標準の輪読、学習 PMI®標準の再発見、 ・PMI®標準のうち、PMBOK®,PGM-STD,PFM-STD,OPM3®を中心に ・各自で読み込み→担当者の整理、報告→ 全員による発見的議論→整理 本質の理解の深化 【目標】 ①関西ブランチでの成果共有 達成 ②個人テーマの研究サポート 継続中 取り組み項目 担当 全体会合(F2F) 全員 計画/中間/最終報告の 作成 中野 標準の輪読、学習 全員 2.関連する個人テーマの促進 持ち寄りパーティ方式(報告と議論) ‘14/1 2 3 4 5 6 1/18 2/15 3/15 4/19 5/17 6/21 計画 切り口の整理 (2回) 7/19 8 8/23 9 10 11 9/20 10/18 11/15-16 合宿 中間報告 更新 (2回) ( Web meeting) 7 (2回) (1回) (2回) (2回) (1回) (2回) (1回) 12 12/20 最終報告 (2回) PMBOK®の輪読 個人テーマの研究、内 部発表 全員 関西地区成果発表 全員 2014/11/30 (中野) (森) 資料作成 予定 実績 1 なぜ、今、標準(スタンダード)なのか? ・WG3立ち上げ時の課題認識 我々の身の回りで起こるトラブルは、やるべきことができていないことが大半。 →PMBOK®、そうは言うけど、現実はそうはいかんのよ。 PMBOK®で、プロジェクトは救えない。 →だけど、やるべきことをやらないと結局は、失敗する。 原理原則は、無視できない。 ・「論語読みの論語知らず?」 ・スタンダードって本当に使えないの? Good Practiceの再発見・活用、PMI®標準の改定の機会に原点を再確認 ・「青い鳥」は、身近に・・・ 2014/12/25 Copyright(c) PMIJ関西ブランチ PM創生研究会 2 活動状況 標準の輪読、学習 ・PMBOK®ガイド第5版について、これまで17回のWebミーティング実施 ・各人で読み込み→担当者の整理、報告→ 参加者による議論、気づき→結果の整理・業務に活かす No. 主要テーマ 実施日 01 13.ステークホルダー・マネジメント 2014/2/2 02 2014/2/23 03 2014/3/9 04 10.コミュンケーション・マネジメント 2014/3/23 05 2014/4/13 06 2014/4/26 07 2014/5/11 08 9.人的資源マネジメント 2014/6/1 09 2014/6/29 10 2014/7/6 11 2014/7/27 12 5.スコープ・マネジメント 2014/8/10 13 2014/9/7 14 2014/9/21 15 2014/10/5 16 2014/11/2 17 2014/11/30 2014/12/25 主な参加者: WG3メンバー4名とその他の 研究会メンバーも随時参加 Copyright(c) PMIJ関西ブランチ PM創生研究会 3 • 本日は、Webミーティングで得られた知見から、 我々がそうだったのか、と感じた点について紹介 ・PMBOK®の内容から ・第5版の変更点から ・PMBOK®が書いていないことと意味、背景 ・PMBOK®の読み方 • まずは、ステークホルダー・マネジメントをめぐって・・・ 2014/12/25 Copyright(c) PMIJ関西ブランチ PM創生研究会 4 (1)ステークホルダー・マネジメント ①人間系重視の流れ 第4版から第5版でステークホルダー・マネジメント知識エリアが 追加されたことは周知のことですが・・・ PMBOK®第4版の章・節 PMBOK®第5版の章・節 10.コミュニケーション・マネジメント 10.1ステークホルダー特定 - 10.2コミュニケーション計画 10.1コミュニケーション・マネジメント計画 10.3情報配布 10.2コミュニケーション・マネジメント 10.4ステークホルダーの期待のマネジメント - 10.5実績報告 10.3コミュニケーション・コントロール 13.ステークホルダー・マネジメント 13.1ステークホルダー特定 13.2ステークホルダー・マネジメント計画 13.3ステークホルダー・エンゲージメント・マネジメント 13.4ステークホルダー・エンゲージメント・コントロール 2014/12/25 Copyright(c) PMIJ関西ブランチ PM創生研究会 5 (1)ステークホルダー・マネジメント 1.3プロジェクト・マネジメントとは何か (PMBOK®第5版 p.6) 一般に、プロジェクトをマネジメントすることには以下の事項が 第5版で追加された。 含まれる・・・。 考え方の大きな変更? ・要求事項を特定すること →人間系の重視 ・プロジェクトの計画および実行に際して、各種ステークホルダー のさまざまなニーズ、関心事、期待に取り組むこと ・ステークホルダーの間で、アクティブで、効果的で協力的な ステークホルダーマネジメントとコミ コミュニケーションを確立、維持し、 実施する ュニケーションマネジメントは、プ ロジェクトを成功に導く鍵と ・プロジェクトの要求事項を満たし、プロジェクトの成果物を なる二大要素(p.469) 生成するためにステークホルダーの マネジメントを行うこと ・プロジェクトの競合する制約条件のバランスをとること。 以下に制約条件に含む事項を示すが、 これらに限定されるものではない。 ○ スコープ ・スコープ ○ 品質 ・品質 ・スケジュール ○ スケジュール ・コスト ○ 予算 ・人的資源、調達 ○ 資源 ・リスク ○ リスク 2014/12/25 Copyright(c) PMIJ関西ブランチ PM創生研究会 6 (1)ステークホルダー・マネジメント • 知識エリアの間の関係性は、あまり語られていないが、図式 的にまとめると・・・ ( P M 統合マ B ネジメン O ト K ® ) (制約条件・管理対象) スコープ、品質、タイム、コスト、リ スク、調達のマネジメント PMに固有 の分野 (人間系・管理主体) ステークホルダー、コミュニケーシ ョン、人的資源のマネジメント 人間系、マ ネジメント 一般 一般的なマネジメント 2014/12/25 Copyright(c) PMIJ関西ブランチ PM創生研究会 7 (1)ステークホルダー・マネジメント 人的資源、コミュニケーション、ステークホルダー・マネジメントは、 「一般的なマネジメント」の概念を援用していることがわかる。 用語集 1.収録範囲と除外範囲(PMBOK®第5版 p.523) 知識エリア 用語の説明 スコープ・マネジメント ・重要な用語 ・多くは、プロジェクトマネジメントに固有のものや、ほぼ固 有のもの タイム・マネジメント リスク・マネジメント 品質マネジメント ・多くの用語 ・通常よりも狭義で用いる 人的資源マネジメント ・比較的少数の用語 ・ほとんどは、通常の意味とほとんど変わらない コミュニケーション・マネジメント ステークホルダー・マネジメント コスト・マネジメント 統合マネジメント ・比較的少数の用語 ・特定の適用分野に固有な、狭義の意味で用いる 調達マネジメント 2014/12/25 Copyright(c) PMIJ関西ブランチ PM創生研究会 8 (1)ステークホルダー・マネジメント 1.7.1 プロジェクト・マネジャーの責任とコンピテンシー(p.17) 効果的なプロジェクトマネジメントを実践するためには、 下記のコンピテンシーが必要とされる。 ステークホルダーマネジメント知識エリア ・特定分野のスキル など、人間系、マネジメント一 ・一般的なマネジメント能力 般を重要視 ・PMコンピテンシー 知識(知識コンピテンシー) 執行能力(実践コンピテンシー) 一般的なマ PMコンピ 人間性(人格コンピテンシー) ネジメント能 力 テンシー 特定分野の スキル 2014/12/25 Copyright(c) PMIJ関西ブランチ PM創生研究会 9 (1)ステークホルダー・マネジメント 2.2.1 プロジェクトのステークホルダー(p.31) • ステークホルダーとは、プロジェクトの意思決定、アクティビティ、成果に影響したり、影 響されたり、あるいは自ら影響されると感じる個人、グループ、または組織。 • プロジェクト・チーム全員はもちろん、組織内や、組織外にいる利害関係者の全員が含 まれる。 2014/12/25 Copyright(c) PMIJ関西ブランチ PM創生研究会 10 (1)ステークホルダー・マネジメント ② 第4版では、「ステークホルダーの期待のマネジメント」 →「単により良い形でコミュニケーションをマネジメントすればよいことではないし、コミュニケーションを改善 するだけでより良いステークホルダー・マネジメントになる訳でもない(付属文書X1.10(p.469)変更点)」 ・ 新たな概念:「ステークホルダー・エンゲージメント・マネジメント(p.404-p.406)」 「ステークホルダーのニーズや期待を満足させるために、プロジェクト・ライフサイクルを通して、 コミュニケーションし、ともに働き、課題の発生に対処し、プロジェクトの活動について ステークホルダーの適切な関与を強化する」 →実行プロセスでは、ステークホルダー自体をマネジメントする、と言っていない。 ステークホルダー・マネジメントの重要性は経験的にも理解できるが、 説明はピンとこないという意見が・・・。 2014/12/25 Copyright(c) PMIJ関西ブランチ PM創生研究会 11 (1)ステークホルダー・マネジメント 「プログラムマネジメント標準第3版:プログラム・ステークホルダー・エンゲージメント・マネジメント」によると、 ・「マネジメントできるのはステークホルダーそのものではなく、ステークホルダーの期待である。」 →確かに、顧客、スポンサー、経営者はマネジメントなんてできない。 ・「ステークホルダー・エンゲージメントに焦点をあてるプログラム・マネジャーは、顧客関係マネジメント (CRM:Customer Relationship Management)の専門領域への習熟が必要である。」 →CRMのマーケティングの概念で、「関係性」という面からの説明が理解しやすい。 交換・取引 都度の交換や取引を通じて、顧客との 良好な関係が作り出される。 →個々のプロジェクトの活動 買い手 (ステーク ホルダー) 売り手 (プロジェク ト) 関係性 取引の成立や効率は、顧客との関係性 に規定され、影響される。 →ステークホルダー・エンゲージメント 2014/12/25 例えば、信頼関係などステーク ホルダーとの良好な関係が成 立しておれば、支援を受けたり、 交渉がしやすくなる、という体験 とも合っている。 Copyright(c) PMIJ関西ブランチ PM創生研究会 12 (1)ステークホルダー・マネジメント • 受注型Prjのケースでのステークホルダーとの関係性の 葛藤(相反する立場)も説明できるのではないか。 受注側から見たステークホル ダーの複雑性、適切な関与を 得ることのむつかしさ プロジェクト 売り手 受注会社 PM 成果物 (スコープ) 営業 「日本のPM風土に合ったプロジェクトマネジメントの 創造(2012年PMIJフォーラム)」 PM創生研究会WG1発表資料より 2014/12/25 売上 重 売上 買い手 発注会社 引渡 成果物 支払 投資 成果物 軽 Copyright(c) PMIJ関西ブランチ PM創生研究会 投資 軽 成果物 重 13 (2)コミュニケーション・マネジメント ① 日本の参加するだけの非効率な会議? 10.1.2.1コミュニケーション要求事項分析 (p.291) 「プロジェクト資源は、プロジェクトの成功に貢献する情報の伝達、またはコミュニケーション の欠如が失敗につながる場合にのみ割り当てられるべきである」 ② 正しい情報(悪い情報を漏らさず)をどうやって収集するか? 「おおむね順調」の報告が、「突然の嵐」に。 →このような課題、テーマに関する直接の記述はない。 ・日本では、悩ましいテーマだが、説明責任の求められる欧米では、自明なためか? ・このような課題は、プロジェクト固有のものでなく、どの組織でもあり得る、「一般的なマネジ メント」の範囲。そもそも、プロジェクトなど始めようという時に、このレベルの課題に悩むよう では成功はおぼつかない? ・ネガティブ情報を共有できる信頼関係など、ここにもステークホルダー・マネジメントが影響してくる。 2014/12/25 Copyright(c) PMIJ関西ブランチ PM創生研究会 14 (3)プロジェクト人的資源マネジメント ① 使っていないようで、使っているツール、技法 ・ 9.1.2.1 組織図と職位記述:「RACIマトリックス(p.262)」 → RACIマトリックス、 RACIチャートとして使われる ケース以外にも「組織体制図」などで同様の機能を 代替しているケースも多い。 ・ 9.1.3.1 人的資源マネジメント計画書:「資源ヒストグラム(p.265)」 → 「要員山積表」などと呼ばれて、利用されている。 ② 使いこなせていないツール、技法 ・ 9.3.2.6 プロジェクト・チーム育成:「表彰と報奨(p.277)」 →表彰など、ほめることが意外と少ないように感じられる。 失敗を責める、叱咤激励が多い。負の報酬? ・ 9.4.2.3 プロジェクト・チーム・マネジメント:「コンフリクト・マネジメント(p.282-p.283)」 →人間関係を乱さないように、コンフリクト自体を避ける傾向がある。 2014/12/25 Copyright(c) PMIJ関西ブランチ PM創生研究会 15 (4)スコープ・マネジメント ① 5.4「スコープ検証(Verify)」のプロセスが、「スコープ妥当性確認(Validate)」に変更された。 →「スコープを満たしているか(正しくやれたか)」から 「スコープが本来の意図に沿っているか(正しいことがやれたか)」へ。 単なるQCDだけにとどまらず、事業価値への適合性まで確認することが重要。 ② PMBOK®第5版には、BABOK(ビジネスアナリシス知識体系)ガイドVer.2.0の知見が多く取り入れ られるようになってきている。 5.2要求事項収集:「要求事項の分類」(p.112) •ビジネス要求事項。 •ステークホルダー要求事項。 BABOKガイドの「要求の分類スキーム」と 共通 •ソリューション要求事項。 •移行要求事項。 •プロジェクト要求事項。 • 品質要求事項。 2014/12/25 Copyright(c) PMIJ関西ブランチ PM創生研究会 16 (4)スコープ・マネジメント PMBOK®第5版の「5.2.2要求事項収集:ツールと技法(p.114p.117)」とBABOKガイドVer.2.0「引き出し」のテクニックは、共通する ものが多い。 PMBOK®第5版 BABOKガイド Ver.2.0(p.56 図3-1)より 5.2.2.1インタビュー インタビュー 5.2.2.2フォーカス・グループ フォーカスグループ 5.2.2.3ファシリテーション型ワークショップ 要求ワークショップ 5.2.2.4グループ発想技法 ブレーンストーミング 5.2.2.5グループ意思決定技法 - 5.2.2.6アンケートと調査 調査とアンケート 5.2.2.7観察 観察 5.2.2.8プロトタイプ プロトタイピング 5.2.2.9ベンチマーキング - 5.2.2.10コンテキスト・ダイアグラム - 5.2.2.11文書分析 文書分析 - インターフェース分析 2014/12/25 Copyright(c) PMIJ関西ブランチ PM創生研究会 17 (4)スコープ・マネジメント ③ 要求事項収集:ツールと技法: 5.2.2.3ファシリテーション型ワークショップ(p.114) 「主要なステークホルダーを一堂に集めて行う集中的なセッション。 ワークショップは、各 機能部門にまたがる要求事項を迅速に定義し、ステークホルダー間の意見の相違を迅速 に調整するための基本的な技法であると考えられる。グループ内で相互に働きかけるとい う性質により、ファシリテーションが適切に行われたセッショ ンでは、参加者間の信頼が構 築され、相互の関係が親密になり、コミュニケーションが改善される。それによりステークホ ルダーの合意を得る可能性を高めることができる。さらに、個別のセッションよりも問題を早 期に発見し迅速に解決できる。」 →日本では、「合宿(ワイガヤなど)」に該当するかもしれない。 2014/12/25 Copyright(c) PMIJ関西ブランチ PM創生研究会 18 (5)感想とまとめ ということで、改めて読んでみたが、 素材は悪くないはず・・・体にいいのは確かですが、口当たりの よいものではない。 「1.1 PMBOK®ガイドの目的(p.2)」によると、 そもそも、PMBOK®ガイドの目的は、 ・プロジェクトの成功の可能性を高める「よい実務慣行」 ・共通の用語の提供 ・実務へのガイド ≠ ルール だから、 ・具体的な方法論ではない。 →実践にあたっては、種々の方法論やツール(アジャイル、 ウォーターフォール、PRINCE2など)が必要。 ・一律に適用するのではなく、個別にテーラリングが必要。 2014/12/25 Copyright(c) PMIJ関西ブランチ PM創生研究会 19 (5)感想とまとめ PMBOK®の読み方として、 ・ 我々は「成功したい」の思いで、逆に「失敗しない方法」を求めて しまっているのかもしれない。 →PMBOK®はGood Practiceを示すもので、「あれをするな、これを するな」という形で、書かれてはいない。 ・ そうは言うけど、という言い訳せずにやるべきことをやりきること が求められる。 →本来は、プロジェクトは、革新のための手段であり、 PMBOK®は もっとポジティブなものとして捉えるべきもの。 本来は、わくわく、楽しく読みたいもの。 ・ PMBOK®だけで完結するものではない。 過大な期待とそれが満たされない場合の批判は、的外れ。 2014/12/25 Copyright(c) PMIJ関西ブランチ PM創生研究会 20 (6)お伝えしたいこと • PMBOK®は、読むたびに鏡のように読む人のレ ベルを反映して、価値を提供してくれる。 • PMBOK®も意外と変化している。 →読み手もPMBOK®も変化する。新たな気づきが 得られるかも。 (我々の場合、) • ただ、一人で読み込むのは、少々厳しい。道連れ がほしい。 • 仲間で、またはWG3に参加して改めて、読んで みませんか? 2014/12/25 Copyright(c) PMIJ関西ブランチ PM創生研究会 21 (7)今後の予定 ・ 来年は、 PMBOK®ガイド第5版輪読の継続 および個人テーマのその他のスタンダードの 研究を展開予定。 ご清聴ありがとうございました。 2014/12/25 Copyright(c) PMIJ関西ブランチ PM創生研究会 22 (参考・引用文献) ・「プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOK®ガイド)第5版」: PMI®発行 ・「The Standard For Program Management 3rd ed.」: PMI® ・「日本のPM風土に合ったプロジェクトマネジメントの創造 (2012年PMIJフォーラム)」: PM創生研究会WG1発表資料 ・「ビジネスアナリシス知識体系ガイド(BABOKガイド)Version2.0」: IIBA日本支部BABOK翻訳プロジェクト監訳 2014/12/25 Copyright(c) PMIJ関西ブランチ PM創生研究会 23
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